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ミーカンの町 (2)


 ワタルにイジられた冒険者に、迷惑料がわりにギルド併設の酒場で酒を一杯奢った。

 それはさておき引き続き冒険者ギルドだ。


「あ、折角なので道すがら受けられる配達依頼があるか見ておきましょう。実際受けるのは明後日の出発前にしますが」

「ん? そりゃまたなんでだ」

「宿屋に余計な荷物を持っていって無くす心配をするよりいいですから。他に受ける人がいればそっちに譲ってもいいわけですし、今受注する理由がありません」


 それもそうか。

 普通の依頼はどんなのがあるんだろう。と、俺は掲示板を見に行く。既に朝のラッシュで良い依頼とかはみんな取られてるわけだが、残っている依頼を見ても傾向はつかめるだろう。

 ……うーむ、なんか討伐依頼が多いな。採取依頼は少ないし、Dランク以上となっているものが多い。あとはE以下で町中の依頼ってところか。


「ツィーアは初心者向けの薬草採取依頼もありますが、ここだと近場の草は大抵牧畜の餌なので森の方まで行かないと無かったりします。なので、ある程度慣れてるCランク以上の冒険者が多いですね」


 ここの初心者はツィーアまで行くか、町の中の依頼で稼ぐかといったところですね、とワタルは言う。かつては近くに村もあったそうだが、開拓地がツィーアに移って以降、この付近にあった村は大体すべてミーカンに移住して消えたらしい。


 と、受付嬢が1枚の依頼票を持ってやってきた。


「あ、あの。ワタル様。ぜひこの機会に受けていただきたい依頼があるのですが……」

「おや、なんですか? 1日で片付くようなら検討してもいいですけど……ふむ、討伐依頼ですか、これなら簡単そうですね。ケーマさん、一緒にどうですか?」

「俺は宿屋で寝るから行けないな。行きたい奴連れて行ってくればいいだろ」


 ちなみに依頼内容を見たが、エルクベアの討伐依頼だった。頭にヘラジカツノが生えたようなクマらしい。依頼のエルクベアは通常より大きい奴で、既にCランクのヤツが何人か失敗してるんだとか。報酬は金貨1枚。

 ……1人で行ってこいよ、なんならシキナでも連れてけよ。


「というわけでさっさと宿屋行くぞ。ワタル、おススメの宿屋は?」

「この近くに『熟れた果実亭』という宿屋があります。そこがいいでしょう――あ、その依頼受けますね。あとで共同参加者連れてきますから」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ぺこぺこと頭を下げる受付嬢さんに見送られ、ギルドを後にする。

 ギルドを出たところで、すぐに食べ物を抱えたロクコたちと合流した。


「遅かったじゃないの。あ、サラダ巻き食べる? 串焼肉もあるわよ、羊の」

「……まぁ貰うけど。あんまりウロウロするなよ、初めて来た知らないところなんだから」

「イチカとロップもいたし大丈夫よ。2人ともここは初めてじゃないんだって」


 まぁチームバッカスの面々はそれなりに経験豊富だし、イチカも奴隷になる前はCランク冒険者だもんな。


「明日、エルクベアの討伐するんですけど来たい人います? ケーマさん不参加ですが」

「俺はパスだ。酒の飲み溜めしねぇと」

「私も今回はパスね。ゴゾーに付き合うから。ワタルも終わったら合流ね」

「自分は行くであります! オークには後れを取ったでありますが、ベアなら大丈夫でありますよ!」


 チームバッカスはワタルのみ参加で、シキナも行くようだ。


「私はもう少しこの町を見てみたいわね。ケーマ、一緒に回りましょ?」

「いや俺は宿で寝る。ニクも抱き枕だからイチカ連れてけ」

「むぅ……」


 というわけでうちのパーティーは全員不参加――


「ならニク、ケーマの抱き枕は私がやるから、エルクベアの方手伝ってきなさい」

「……ご主人様」

「あー……ニク、狩り行きたいなら行ってきていいぞ。折角だ、勇者の強さを学んでこい」

「はい。では、いってきます」

「んなら、ウチは御者さんと食料調達しとくで」


 というわけで、うちのパーティーはそういうことになった。

 ニク、狩りに行きたかったんだろうな。尻尾がぱたぱたしてる。けど俺の方をちらっと見ては尻尾をしゅんとさせてる。大丈夫、怒ってないから行ってきな。


「じゃ、私はケーマの抱き枕ね!」

「……えーと、まぁ、抱き枕は無くてもいいかな。町が見たいならロクコはイチカたちと」

「あ、その。……町が見たいってのはケーマとデートしたかっただけの口実だからそれほど見たいわけでもないのよ。だからその、だ、抱き枕で」


 ロクコは顔を真っ赤にしてそう言った。

 …………

 やっぱり俺、帝都についたらハクさんに殺されるんじゃないかな。


「おいワタル。何ニヤニヤしてやがる」

「いえ別に。これはハク様に報告しなければと思っただけですよ?」

「俺が死んでもいいっていうのか、薄情者!」

「大丈夫ですよ。死にはしません、ただ投げられる仕事が増えるだけです」


 仕事が増えるだけで済めばまだいいんだけどね。自分の首と胴体を切り離す系のお仕事は嫌だよ俺は。


「あれ? ケーマとロクコはまだ結婚してなかったっけか? さっさとしちまえばいいのに」

「そういうゴゾーはロップとどうなんだよ。え? オイ」

「あー、おう、まぁその、なんだ。タイミングってのはあるよな。うん」

「Bランクになるのはいいタイミングじゃないかと思うぞ。結婚式はオフトン教でやるか?」


 ゴゾーがからかおうとしてきたので返り討ちにしてやった。


「ケーマ、オフトン教の結婚式に必要なものって何かしら。用意しなきゃね?」

「……検討しとく」


 盛大な自爆込みで。



 翌日、本当にロクコが俺の部屋に来たので、悩んだ末にやっぱり抱き枕は無しとなった。

 まぁ抱き枕なしに「部屋に居ていい?」と聞かれたのでこちらはOKしといた。

 俺が寝てるだけの部屋で別段面白いこともないだろうに……(遠い目)



  *


 さて、丸1日寝溜めして、ミーカンの町を出発する時間となりました。

 正直に言えば若干寝足りないところだが、オフトンは持ち込みのものを使えたし、夜はエルクベアを狩って満足げなニクを抱き枕にできたし、普段の環境に近い睡眠をとることで一応は回復できた。


 ちなみに2日目の晩御飯は熊鍋だった。いやぁ新鮮な熊肉はワイルドな味わいだったね!


「そういやミーカンの領主に挨拶とかしなかったけど大丈夫だったのか?」

「ここの領主とはあまり面識ないですし、別に構いませんよ」


 曰く、「貴族用の通用口使ったりギルドに挨拶したので報告は間違いなく入ってるでしょうし、あちらからアプローチがなかったということは不要ということでしょう」とのこと。

 呼ばれてないのに出向くと「格下が挨拶に来た」と舐められるとかいうのもあるらしい。今回はツィーア家の紋章入りの馬車を使ってるのでツィーア家の格がどうのということもあって、ああうん、貴族めんどくせぇの一言に尽きるわ。


「それじゃ、忘れ物ないですね? 次の町までは3日です。今度は安全なルートなので、ケーマさん待望の宿場町もありますよ」

「お、これで野宿しなくてもいいってことか……ん? 今『今度は安全なルート』って言った?」

「あ、御者さん出してください」

「おいワタル。おい。もしかしてツィーアからも野宿しなくていいルートとかあったんじゃ」


 吐かせたところ、右方向にずっと見えていた『奈落の森』の近くを通る最短ルートの他、山の向こうを通る迂回ルートがあり、迂回ルートの方が圧倒的に安全で主に使われてるルートだそうな。日程が倍以上に変わるらしいが……


 道理でやけにオークやらのCランク冒険者で対応がギリギリのモンスターが集団で出てくるなと思ったよ!



(感想にあった危険な短期ルート説を採用しました)

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新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[気になる点] ハクが怖いのはわかるがでもやっぱりロクコの気持ちを無下にするのは可哀想だからいい加減に覚悟を決めてほしいわ。と言うかこれ添い寝自体はもうしたことあるしキスもしてるし部屋の中なら監視があ…
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