功績とか。
(そういえば前回で300話でした。おかげさまでありがとうございます。
……やっふぅ! ますます編集画面が重くなるぜ!
現状でも作品編集画面ひらくのに5分、ページ移動に5分とかかかってるのにますます修正が面倒になるんだよ!)
イグニをイッテツにお任せし、俺たちは村へ帰還した。
帰りも背負子で運んでもらったわけなのだが……
「結局荷物増えませんでしたからね、ささっと下山しましょう」
「え、ちょっとまってワタル。なにしてんの?」
「下山の準備ですが?」
「……こっちは崖じゃないか?」
「ちょっと斜度がキツくて登りには使えない最短ルートなだけですよ」
「ちょ、怖い怖い怖い!」
「なるべく気をつけますが、喋ってると舌噛みますよ?」
「おいゴゾー、止めてくれ! こんなほぼ垂直なとこ降りれるかって!」
「何言ってんだ。この程度なら普通に降りれるだろ。あ、ケーマは足ぶらぶらさせんなよ、削れるから」
「マジかよ……」
行きに3時間かかったところを15分で帰還できたのはいいんだが、下手なジェットコースターよりよほど怖かった。
というか、ニクもイチカも平然と斜面を滑り降りてたけど、何、俺がおかしいの? それとも背負子に乗ってると怖さ倍増すんの? 事前にトイレを済ませておいてよかった。
「ん、無事帰ってきたわね」
「あー、おかえりなさいー」
そして、帰還した俺達を出迎えたのはロクコとネルネだった。なぜかロクコは仁王立ちして待ち構えていた。
イッテツからロクコに連絡入ったりしてたのだろうか。
「そろそろ帰ってくる頃だって思ったわ。……ケーマ、こっちきて少し屈んで?」
「ん? なんだ?」
俺はワタルの背から降りて言われたとおりに近づき、屈む。
「……お、おか、おかえりのっ……ち、ち……んんぅ! お、おかえり!」
「おう、だから叩くなって。照れ隠しか知らんが叩くなってば」
お帰りの父ってなんだよ。仕事上がりか。
ロクコはさておき、ワタルの方もネルネに呼ばれていた。うん、仲が良くなってたのは知ってたがお出迎えをするくらいになってたのか。
「でー、ワタルさんー? おみやげはー? フレイムドラゴンの鱗はー? ツノはー?」
「あっ……そ、その、じ、事情がありまして……その、代わりと言ってはなんですが、ファイアラットの毛皮やレッドスライムの体液などいかがでしょうか……」
「……」
「ああっ! すいません、ドラゴンとは和解しちゃったのでそういうの回収できる空気じゃなかったといいますか!」
「今度ー、なにか珍しいお土産期待してますねー?」
「はいっ! お任せください!」
そしてネルネは宿に戻っていった。次は頑張ろうと意気込むワタルを残して。
……おう、コロコロ転がされておるわ。俺の知らないところで貢ぎまくってたりしないか?
「ワタル。俺が言うのもなんだが、いいのかそれで?」
「大丈夫です。むしろ心地よいです」
あっ、ダメだコレ変態だ。
「あ、いや、Mとかそういうんじゃなくてですね、なんかこう、お猫様、みたいな?」
「そうか、ネルネはワタルからはケットシーか何かに見えてるのか」
「ケットシーってこの世界にいるんですか!?」
カタログにあったしいるんじゃないかな。モンスター枠かもだけど。
と、俺たちが帰ってきたことに気付いたのか村人たちもやってきた。5人ほど。
「おお、本当だ、村長たちが帰ってきたぞ! しかも誰も欠けてない!」
「あれ、ドラゴン肉は?」
「全員無事か! で、どうなったんだ!?」
口々に尋ねてくる村人。
「あー、うん。もう大丈夫だ。なんとかなったから」
「そ、そうなのか? やっぱり倒したのか? 勇者様が居たとはいえ、こんな少人数でよく倒せたな」
「それなんだが、別に倒したわけでもなくてだな。……うーん、なんと言ったらいいか」
俺はゴゾーに「お前からも説明してくれ。ただし余計なことは言うなよ」と軽く睨む。
「……結論から言おう。ケーマの秘策でドラゴンを躾けたから、もうこの村がフレイムドラゴンに襲われる心配はない」
「えっ?」
「ドラゴンを躾けた……だと? はははゴゾーさんなにをそんな馬鹿な」
「事実だ。俺もこの目でドラゴンが頭を下げてるところを見た。畑を焼いてごめんなさい、ってな。なぁワタル?」
「いやぁ、今回はケーマさん大活躍でしたね! クロちゃんと2人でほぼ一騎打ちみたいなもんでしたし!」
しまった「余計なこと」の範囲が伝わってなかった。ワタルにもだ。
「ちょっとまて。躾けたというのは誤解があるな、和解しただけだぞアレは」
「おーい、村長がドラゴンテイマーだってよ!」
「マジかよドラゴンスレイヤーよりすげぇじゃん! 俺、村長がダイコンの仇を取ってくれたって皆に自慢してくる!」
「まてってば!? テイムしてないからな!? おい!」
とまぁ、そんなこんなであっさりと俺がドラゴンを降したことは村中に広まった。
なぜだ。面倒ごとはワタルに押し付けようとしたのに……
「おいお前ら。俺に功績を押し付けるなよ……なんのためにお前らを連れてったと思ってるんだ」
「生き証人だろ? それにサラマンダー殿のことは言ってないだろ」
「さすがに何もしてないですからね僕ら。押し付けるも何も普通にケーマさんの功績に決まってるじゃないですか」
「そこはほらこう、厄介ごとを引き取るという立派な功績があるじゃないか」
「それは功績とは言いませんよ。たぶんこれでケーマさんも冒険者ランクがBになるんじゃないですか?」
ギルドの連中は俺が二重ランク状態ということを知っている。
機会があればランクを上げて統一しようとしているっていうのは……うん、ありえる。
うぐぐ、表でもBランクとかたまったもんじゃないぞ。Bランクからは貴族なんだろ。貴族は面倒、俺知ってる。
「いやでもさすがに、今Dランクで二階級特進はないだろ」
「いやケーマ。お前が働きたくないのはよく分かるが、今回の件で俺やロップもBランクになるだろうよ。何もしてないと正直に言ったとしても、だ」
「そうですね。……正直に事情を話したらケーマさんはAまでいきますよ?」
「まて。どうしてそうなる」
「ドラゴン討伐はBランクの複数パーティーが犠牲を払いつつ成し遂げる快挙です。つまり参加して生還するだけでBランクと言えるでしょう。それを2パーティー、僕がついて行ったとはいえ、全く手出ししていない。ケーマさんはそこからさらに実質1パーティ、しかも現実として2人でドラゴンに挑み、無傷。そしてあまつさえ躾ける。……それはもうAランク、いや、Sランクの領域の話ですよ。分かってます?」
言われてみれば、事の重大さが理解できた気がする。
多分、俺はドラゴンという存在を過小評価しすぎていたのだろう。
一番良く知ってるドラゴンがレドラで、イッテツと合わせてわりと気軽に接する相手で……一度ダンジョンバトルでガチ戦闘したにも関わらず、その脅威が分かっていなかったのだろう。
いや、こうしている今も分かってない。ぶっちゃけドラゴンの頂点であろう龍王、つまり5番コアのことも「なんか大変だなぁあっちの人も」くらいで親しみやすさしか感じてないもん。
「というか、僕らがケーマさんの功績をなるべくぼかしても、ケーマさんの秘策のおかげで被害者0でドラゴンを退けることに成功した、くらいが限度ですからね? それ以上は事実確認の質疑で通りませんから」
そうだ、この世界は嘘を見抜ける魔道具あるじゃん。
しまったな……根掘り葉掘り聞かれたら誤魔化しきれない、か。
「……えー、ドラゴン退治……いやー、うーん。Bランクとかでそのくらいできないの?」
「だからできませんって。僕でもドラゴン相手に無傷とか厳しいんですからね? 腕の1本や2本は食われることを覚悟しますよ。回復魔法でも2、3日かかるレベルですね」
マジかよ、Bランクって案外弱かったんだな……いや、ドラゴンが実は強すぎるのか?
「まぁBランクは確実ですね、おめでとうございます」
「辞退したいんだけど?」
「それは冒険者ギルドを辞めるという意味です。お勧めしませんよ」
「……じゃあ俺冒険者やめてただの村長かオフトン教の神父として暮らすし」
「どちらにしても今回の件、ハク様からお呼び出しがかかって授爵されると思いますよ。断ったら不敬罪で死刑かと」
あー。ハクさんならやる。絶対やる。ここぞとばかりに不敬罪適用する。だってハクさんだもの。だって、ハクさんだもの!
「まぁ、組織の長が外でも通じる権力を持っていて困ることはあまり無いでしょ。あ、いっそ一緒に帝都まで行きます? 護衛代安くしておきますよ」
「別ルートで行くわ。Sランクの護衛代とかシャレにならないだろ」
「友達料金ってことで、道中の交通費と食費を負担してくれればそれでいいですから!」
……それなら頼むのも良いかもしれないけどな。
ちゃんとしたルートで帝都に行ったことってないし、勇者の護衛となればいい機会かもしれない。道中何があるかさっぱり分からないで帝都の話はできないだろうし。
「まぁ……うん、そんなら呼ばれることになったら頼むかな」
「よーし、それじゃあ今から旅支度整えないとですね! あ、ケーマさん【収納】持ってますよね、どのくらい空いてます? 水と食料はたくさん入れといたほうがいいですよ」
ワタルはどことなく上機嫌でそう言った。……いや、こいつはいつもこうか。
尚、この日のドラゴン退治成功パーティーは、俺の持ちだした酒「秘策・ドラゴン殺し」もあってか大盛り上がりだった。
いやそれ、ただの日本酒だから! 秘策とかドラゴン殺しとか勝手に名前つけないで! あと殺してねえから!
(11月25日、6巻出ます!)