残念エルフと嘘発見器 (2)
俺はさらに話を聞くことにした。
「ええっと、サリーってのは、あの白の女神率いるダンジョンブレイカーとかいうパーティーの一員だっけ?」
「そうでありますよ、というか、サリー様とケーマ様は親しい仲とお聞きしたであります」
「はっはっは、そんな親しくないぞ?」
「一緒に酒を飲み交わした仲だとか」
「……そんなワケないじゃないか」
水晶玉が俺に向かって赤く光った。
よし、嘘を見抜く魔道具は正常に動作してるな(棒)
……俺は魔石を補充した。はぁ、無駄に1回使ってしまった。
「師匠、今のでアンパンなしにはならないでありますよね?」
「まぁさすがにそれはしないけどさ」
「なら良いでありますが、まさか師匠とサリー様が飲み友達だったとは……」
「友達とは違うんじゃないかな」
赤く光らなかったので信じてもらえたと思う。
さて、それじゃあどんどん真実を明らかにしていこう。
「まぁいい。お前に悪意が無いことは分かったし……もっと詳しく状況を教えてもらおう」
「自分に悪意が無いと分かったのにまだ続けるのでありますか?」
「事実を確認したいだけだ。お前に悪意が無くても、利用されている可能性があるからな。……お前に、他人の精神や肉体に作用するスキルはあるか?」
「他人に作用するスキル……【身体強化】があるであります! 効果は弱まるけど他人にもかけられるであります」
「俺にかけた事はあるか?」
「無いであります」
赤く光らない。うーん、正直だな。言い回しで回避してることは無いか?
「他には無いか?」
「うーん、無いでありますね……」
「スキル以外に何か思いつくことは無いか?」
「わからないであります! 少なくとも、自分にケーマ師匠をどうこうする気は、ちょっとしかないでありますゆえ!」
赤く光らなかった。ちょっと、何かする気あるの? え?
「抱き枕係を狙う程度には、師匠の事が好きなのであります。……赤く光らないでありましょう? 本気でありますよー」
にこりと笑うシキナ。
……そして言葉の通り、水晶玉は光らない。本気かコイツ。
「……マジかよ。だけど俺にはロクコがいるから断る」
「クロイヌ殿もいるであります。抱き枕ならいいのでは?」
「ニクは娘枠だからいいの!」
水晶玉が赤く光った。俺に。
さ、さすがに抱き枕を娘って言うのは無理があったかなー?
あるいは、その、ペット枠? うん、これだな。これが引っかかったんだなー。
「本当は良くないんじゃないかと思ってるのでありますな」
「くっ! 今のは無かったことに!」
「師匠が一晩お試しで自分の事を抱き枕にするのなら黙ってるでありますよ?」
あれ、なんてこった。俺脅されてる?
……いやぁ成長したなぁ。俺は魔石を追加するフリをした。
「成長したな、だがシキナ。今のは演技だ」
「なんと! ではクロイヌ殿に欲情したりはしていないと……」
「してないよ」
「反応してないでありますな」
あぶねぇ、ニクの足も結構好みだから、魔石入れてたら反応してたかも。
と、俺は袖からこっそり魔石を投入する。こんな事もあろうかと袖にマジックアームなゴーレムと魔石を仕込んでおいたのだ。
「それで話を戻すが、サリーさんからどんな命令を受けたのか詳しく教えてくれ」
「命令は、師匠から『汚さ』や『卑怯』といった点について学んでくるようにというものであります」
内容は前に聞いたそのままか。
「他に何か言ってなかったか。何かしたらいい、とか、行動の方向性を決めるような」
「んー……あ、そういえばケーマ師匠は頼まれると断れないから、色々おねだりしたらいい……と言ってたであります」
「おねだり、か」
「こんな感じでありますな。……師匠、自分のこと抱き枕にしてほしいであります。師匠の言う事何でも聞くでありますから」
と、シキナが上目遣いで、物欲しそうに人差し指を唇に当てるおねだりポーズをとった。「おねがい助けて?」と言わんばかりにハの字になった眉が可愛らしい。
……美形のエルフがやるとかなりの破壊力があるな。
「駄目だ。というか、見えてきたぞ。陰謀が……」
「陰謀でありますか?」
「ああ」
この件、恐らくハクさんが関わっている。そして目的は、恐らく……
「ハニートラップじゃないかなと」
「色仕掛け、でありますか。……自分、そのためにここに送り込まれたのでありますか?」
シキナは目を見開いて驚いていた。
無理もない。自分が、勝手に駒に使われていたのだから。それも憧れである第一騎士団団長にだ。
そして、ぎゅっと目を瞑り、ぷるぷると震えるシキナ。……相当ショックだったんだろうな。ここは師匠として慰めて――
「つまりこの身が帝国の役に立つと判断されたのでありますな! やったであります!」
うわぁめっちゃ喜んでた。
何この子、帝国に身を奉げすぎ。水晶玉も光らないってことは本心だぞコレ。
「でもハニートラップって相手にバレたらもうダメだからな?」
「……しまったであります!? 師匠、師匠のお力でどうにかできませんか!」
「できたとしてもするわけないだろ」
「……ま、まぁ、まだ色仕掛けが自分の目的だったとは決まったわけではないでありますしな。きっと普通に師匠から学ぶのがメインの目的でありますよきっと、おそらく、そう信じるであります、きっと!」
動揺してるな。
「……サリー様に問い合わせてみるであります。こういう時のための便箋を貰っていたのを今思い出したであります。本来は自分で満足いく結果がでた時にするようにと言われてたのでありますが……」
それ完全にハニトラの連絡用だよね。うん。
「そうだな。サリーさんが何を思ってお前を送り込んできたかは知らないが、とりあえず俺も頼まれてるお前の教育をこなすか……金は貰ってるしな」
「はいであります! よろしくお願いするであります、師匠!」
「だが過度な接触を防ぐため、これから教育はイチカやニクに任せることが多くなるだろうな」
「自分、師匠に直接教えて欲しいであります……」
「そうだな……俺が教えられるのは昼過ぎ、午後の3時から5時くらいの間か。今よりは減らすぞ」
そのくらいなら睡眠時間は取り戻せるはずだ。
ちなみにウチの村には俺がダンジョンでとってきたという事になっているゴーレム時計がいろんなところにあり、ツィーアと違って時間ごとに鐘を鳴らしたりするという事はない。鐘の音で睡眠を妨害されることも無いという事だ。
あとはダンジョンのレアドロップ枠にもゴーレム時計がある。懐中時計型で。
「むー、それでもいいであります」
「じゃ、そういうことで。……それじゃあ俺は自分の仕事に戻るとしよう」
「はっ! お仕事頑張ってくださ……あっ」
水晶玉が赤く光った。しまった。寝るだけのつもりがバレてしまった。
「……寝るつもりでありますな? 自分もお供させてください!」
「駄目だっつってんだろこのハニトラ要員。宿の仕事でもしてろ」
今後、シキナはハニトラ要員として送り込まれていると断定して行動しよう。
……結局シキナは一度も嘘をつかなかったし、明日は休みにしてアンパンをくれてやらないとな。
俺は宿の受付に座っていたニクに、シキナと交代して部屋に来るように言って部屋に戻った。
さて、昼過ぎまで二度寝するかなー。
(6/25に5巻発売! でも早売りとかもありそうなので実際何日に本屋に並んでいるかは不明です)





































