はじめのはじめのだいいっぽ(2)
荷解きがひと段落ついた
ふと部屋の隅の段ボールに目をやる
「あれからずっと触ってないけど、もってきちゃったなぁ」
あの中には…
こんこん!
「奏、いるかー」
高唱だ。僕はそっとドアを開ける。
「おぉ、結構片付いたな、手伝いに来たんだけど必要なかったみたいだな」
「まぁ、荷物少なかったし。高唱は?用事終わったの?」
「あ、あぁ、まぁな」
やっぱり逃げるためだけのウソだったか。
「立ち話もなんだしとりあえず入って。」
「ありがとう、っとその前に。宇佐、早く来いよ」
高唱は宇佐の手を引っ張る。
「ちょ、ちょっと引っ張んないでよ。」
さっきのきれいな女性だ、やっぱり絵奈だったんだ。
「ひ、久しぶりね、奏。」
絵奈はちょっと顔が赤い。きっと久しぶりだから照れてるんだろうな。
こっちまで照れてくる
「久しぶり、絵奈。」
しばらく二人で見詰め合って沈黙が流れる
「お前ら、いつまでそうやってるつもりなんだ?」
「それもそうだね。二人とも入って。」
こうやって3人そろうのは何年ぶりだろうか。
すごく懐かしい。
「奏ではこっちに引っ越してきたってことは、高校は、翔陽か藤高か?」
高唱が聞いてきた。
「えーっと、確か甘楽学園だったかな?」
「甘楽!!!!って言うと偏差値86だぞ。お前そんなに頭いいのか?」
そんなそんなこと言う高唱と一緒に絵奈まで前のめりになってきた
「まぁ勉強以外にすることなかったし」
これはほんとだ特別塾とか行ってたわけじゃない。
ただ友達と遊ぶこともなく毎日すぐ家に帰って、することもなかったので宿題と予習復習をしてただけだ。
「絵奈たちは一緒の高校なの?」
「いや、高唱は翔陽で私は藤高よ」
唖然としている高唱をよそに絵奈が答えた
「それにしたって、あの弱虫の奏が甘楽なんて行くエリートになってるなんて驚いたわよ」
「弱虫はいらないだろ」
絵奈はいたずらに笑って見せた。
「でも、そっかぁ高校はみんなバラバラかぁ~」
っと残念そうに高唱が呟いた
「そうね、でも藤ヶ祭にはみんなで出れるんじゃない?」
「おぉそっか!藤ヶ祭があった!」
高唱が急にうれしそうになった!
藤ヶ祭?なんだろそれ?まぁお祭りなんだろうな、夏祭りかな?
「あっ奏、今《藤ヶ祭?夏祭りかなんかかな?》って思っただろ?顔に出てたぞ。」
また顔に出てたのか、心の声ダダ漏れはきついな。
「藤ヶ祭って言いうのはね、藤が丘にある3つの高校が合同でやる文化祭なの。もちろん藤が丘以外の人もたくさん来るわよ。」
「まぁ要するに町を挙げての高校生祭りだな。」
へー藤が丘にそんな祭りがあったなんて知らなかった
「それっていつなの?」
「たしか・・・12月のクリスマス2日前からクリスマスまでの3日間だったような」
へークリスマスかぁ~そういやクリスマスはいつも帰省してたからなぁ~
「なんかそういうお祭り始めただからわくわくする!」
「いや、奏、12月だからな!いま、まだ4月だぞ。」
「あっそうか。なんか聞いたらわくわくしてきちゃって(笑)」
「まぁ、いいじゃない。春夏秋は3つの高校それぞれでで文化祭があるんだから。」
「そうだな、はじめは甘楽からだったよな?」
甘楽って僕のところか・・・まだ学校になじめるか心配なのに。
いきなりそんな行事があるとか聞いてないよ!
「まぁ心配そうな顔するな、3つの文化祭にはすべてに意味があって、
はじめの甘楽は《出会い》って意味なんだ。だから甘楽は友達ができやすい文化祭なんだ」
へー、文化祭に意味なんてあるんだぁ~
この町にとって、文化祭はすごく大きなイベントなんだなぁ~
ますます興味がわいてきた
「後二つの高校にはどんな意味があるの?」
「えーっと、たしか…」
この顔は高唱たぶん覚えてないなw
「もう、わからないなら分からなの??」
「なんだよ!うさはわかるのかよ!!」
「わかるわよ、夏の翔陽は、『procedure』《行動》秋の藤高は、『rechallenge』《再挑戦》
そして最後の藤ヶ祭が『restart』《再スタート》らしいよ」
あっ、夢希望とかじゃないんだ…
なんか変わったスローガンだなぁ。
でもなんか期待がふくらんできた!
「それでな!それぞれの文化祭にはステージがあって、そこで音楽祭があってそれでトップをとった3組が最後の藤ヶ祭で勝負をして最終的なこの町の音楽のトップをきめるんだ!!
なっ!楽しそうだろ?」
高唱が目をキラキラさせながら机にのしかかるほど前のめりになった。
音楽か…
「はいはい、お楽しみのところ悪いけど、そろそろ時間じゃないの?」
絵奈があきれるように言った。
「あーそうだな腹が空いてきたやw」
ちょうどそのときマスターが帰ってくる車の音が聞こえた。