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第28章「真実の一欠片」

 小春は攻撃に備え、神経を研ぎ澄ましていた。

 ……面倒なことになったな。

 今の状況はどう考えても良くないと小春は思う。

「いざとなれば、逃げればいいとはいえ……」

 呟きながらも周囲の警戒を続ける。

 ……しかし、遠距離爆破攻撃と聞くと厄介だが、威力は大したことないな。

 実際、水月が先ほど跳躍で回避したものは、その場所のみを破壊していた。

 ……もっと広域に大威力で使えるならば、俺はとっくに死んでいるだろう。

「さて、どうするか……」

「小春さん、このままでは……」

「分かってる。水月、ひとまず上の階へ……」

 その時、小春の携帯が振動した。

『小春さん?』

『水月、ひとまず一緒にそこの教室へ跳んでくれ』

『はい』

 水月の能力によって、小春は瞬時に教室の中へと移動した。

 ……こんな時に連絡をするってのは、余程重要な件だろうな?

 そう思いつつ開いた携帯には、一通のメールが届いていた。

『すまないが、翼くんに後輩くんの居場所を伝えて欲しい。翼くんに連絡が取れないので、キミの『テレパシー』をあてにさせてもらう。よろしく頼むよ?』

 その後に、飛鳥を含む全員の位置予測が記されている。

 ……さっきの能力識別装置か……

「しかし、俺の能力にアドレスも知ってるとはな……」

「!」

 小春が呟くと、水月が大げさに反応した。

「水月、どうかしたか――?」

「……いえ」

「お前が話したのか。ならいい」

「いいん、ですか……?」

「ああ。こちらから話したのなら、情報を掴まれていたよりずっとマシだ」

「あ、小春さんの能力を話した時は、驚いていました、よ?」

 ……流石は水月だな。

 どこか抜けていると思わせて、実はしたたかな水月の性格を小春は気に入っている。

 ……そんなこと水月に直接はいえないがな。

「それが分かっているなら十分だ」

 ……さて、問題はコイツだな。

 小春はメールの最後に書き加えられていた情報に目を通す。

「この位置予測、俺たちの居る場所から間違ってるぞ……」

 観測からの時間差だと小春は推測する。示された場所は数分前に居た場所になっている。

 ……こんな時に面倒な仕事だな!

 だが、今は小春にしかできない仕事だ。その的確な指示に舌を巻きつつ、能力を発動する。

「報酬は、後でたっぷりと請求させてもらうぞ!」


                    ●          ●


「はぁぁぁぁッ!」

 飛鳥は気合と共に左の刃を振った。九恩は慌ててバックステップで刃を躱したが、飛鳥は追撃の右蹴りを繰り出す。九恩は左腕で防御しようと構える。

「――っ!」

 蹴りは腕に防がれたが、飛鳥は続けて右の刃を振り下ろす。九恩の左腕に赤い線が走った。

「くっ!」

 九恩は腕を斬られながらも、逆の手に持った槍で反撃に出る。

 ……無駄ね。

 その槍は飛鳥に届く前に、地面に突き立てられた刃によって防がれた。

「かかりましたね」

「なっ――!?」

 黒い槍の先端は確かに飛鳥の刃によって止まっていた。しかし、その穂先から炎が噴き出すと、一気に廊下は火に包まれた。

「くッ」

 飛鳥はすぐに後退し、廊下を駆ける。

「逃しません……!」

 声と共に九恩が追ってくる足音が響く。加えて、周りの炎も飛鳥に迫っていた。

 ……随分と手の込んだ事をしてくれるわね!

 飛鳥は階段を駆け上がると、屋上の扉を蹴破って走り抜けた。

「逃げるつもりですか?」

 飛鳥が振り向くと屋上の入り口から火が噴きだすように溢れ、その中から九恩が現れた。

「あら、逃げるべきなのはあなたの方じゃないかしら」

「随分と自信があるようですが、私は殺せませんよ」

「そう。それは良かったわね」

『おい、鷺崎 飛鳥。聞こえるか』

 再び武器を構えようとした飛鳥だったが、不意に聞こえてきた声に動きを止めた。

『何の用?今忙しいのだけど』

『一つ答えろ。今どこにいる?』

『ちょうど最初に入った校舎の屋上に着いたところよ』

『そうか。分かった』

 その言葉と共に『テレパシー』は終了した。

 ……何の用だったのかしら。

 だが飛鳥は関係ないと思考を切り替え、刃を構え直した。静かな気迫が辺りに溢れる。

 ……関係ないわ、敵が何だろうと……味方が何をしようと。

 そして、飛鳥と九恩は同時に地面を蹴る。

「「あああああああああッ!!」」

 二人の叫びが、屋上に響き渡る――


                    ●          ●


『翼!鷹月 翼!聞こえるか!』

『なんだこれ!声が聞こえる!?』

 ……おお、ようやくまともな反応。

 逆に新鮮だと思いつつ、小春は『テレパシー』に意識を戻す。

『で、何の用だ?こっちは忙しいんだが!』

 ……全く、どこもかしこも忙しいな!

 そう思う小春も暇ではないが、今は水月に警戒を任せている。敵はこちらの会話を聞いていたのか、上の階に行ってしまったので少し時間があった。

『ああ、お姫様の居場所を教えてやる』

『お姫様!?』

 その反応に、小春は一瞬親友の事を思い出した。

 ……そういえば、一樹は無事だろうな……?

 今は会長たちと共に居るはずなので、心配する必要はないと思うと会話を続ける。

『屋上に行け!鷺崎 飛鳥はそこに居る!』

『わ、分かった!』

 ……さっさと行けよ、王子様!


                    ●          ●


 屋上では、戦闘が再開されていた。

 飛鳥の刃は何度も九恩に迫っていた。しかし、そのたびに槍と炎によって阻まれる。

 ……鬱陶しいわ、本当に。

「いくら死なないからといって、簡単にやられるつもりもありませんよ」

 淡々と話す九恩に、飛鳥は少し苛立っていた。しかし急に足を止め、静かに言い放った。

「そう、あなたにこんな手を使いたくはなかったのだけど」

 九恩は身構えたが、飛鳥は一歩も動かない。ただ、飛鳥の周りに赤いものが浮かんでいた。

「何……ですか?」

 九恩が訝しんだその時、浮かんだ赤いものは弾丸のように一斉に襲い掛かった。

「くっ……!?」

 いきなり赤い弾丸を全身に浴びた九恩だったが、槍の端に目を向けると疑問を口にした。

「これは……血ですか?」

「ええ。あなたの血よ」

 高速でぶつかった血は、九恩の体に大量のかすり傷を作っていた。

「そして、これからあなたを殺すものよ」

「え……?」

 九恩の後ろに、傷から滲んでいた血が浮かび上がる。

「さて、何発持つかしら?」

 そして文字通り、血の雨が降り注いだ。


                    ●          ●


 秋時は目の前に降り立った十和の動きに集中していた。

 ……全く、こんなに近寄られるとは射撃武器の持ち手としては失格だな。

 いきなり目の前にナイフの刃がきらめいた。

「……ッ!」

 ゆっくりと刃が進んでくるが、その刃は寸前で止まった。

「え……?」

 ナイフの両側に、秋時の手が添えられていた。そして十和の表情が珍しく困惑に変わる。

「どうした?理解が追いつかないか?」

「真剣、白羽取り……!?」

 ……ま、こんな刃なんか止まってるようなもんだがな。

 秋時は素早く蹴りを叩きこみ、距離を取る。

「悪戯好きの上司と、身体能力抜群の姉貴に散々仕込まれたんでな」

 ……あの時は死ぬかと思ったが、役に立つもんだ。

 秋時は続けて拳銃『アルテミス』を抜くと射撃を加える。

「くっ……」

「とはいえ、あんまり寄られるのは好きじゃないんでな」

 近くにある椅子や机を放ると『魔法の弾丸』を使って操作し、十和へと飛ばす。

「しばらく大人しくしててくれ」

 そう言い残し、秋時は教室を後にした。

 ……さて、どこに行くべきか……?

 まずはここから離れるべきと判断し、廊下を走っていく。

「ん?」

 と、秋時は廊下の奥が妙に暗いことに気が付く。

 ……なんだ?

 嫌な予感がした秋時は、先ほどとは別の教室に飛び込んだ。

 そして、廊下は爆発した。


                    ●          ●


 飛鳥は、立ち上がれなくなった九恩を見下ろしていた。

「くっ……」

 九恩は手足を貫かれながらも、飛鳥を睨みつける。

 ……こんな状況でも随分と反抗的なのね。

「そんな状態でまだこちらを睨んでいられるなんて、痛みは感じないのかしら?」

「この体では痛みなど余計なものでしかないので」

「そう、便利なものね」

「それほどではありません」

 飛鳥はクスリと笑ったが、九恩は表情を変えずに言葉を返した。

「さて、そんなどうでもいいことは置いておくとして、また質問させてもらうわ」

 そう言うと、飛鳥は九恩の首元に刃を付きつける。

「これは脅しですか?」

「いいえ。妙な動きをすればあなたの首が飛ぶという、ただの保険よ」

「そうですか。ちなみに、先ほどの私の質問には答えてもらえるのですか?」

「先ほどの質問?なんだったかしら?」

 飛鳥は首をかしげたが、その反応に少し早口で九恩が応えた。

「私が『逸能連』討伐部隊だったことに気付けた理由、です」

「ああ、それのこと。まあいいわ、隠すほどのことでもないから答えてあげる」

 ……というか、わざわざ尋ねてくるってことは分からなかったのかしら?

 飛鳥は小さく息を吐き、九恩に冷たい目を向ける。

「あの戦闘で私が、あなたと戦った仲間を助けに行ったときにまだ息がある人がいたのよ」

「つまり、話を聞いていたということですか……」

「ええ、不死の能力なんてそんなに多くは居ないわ」

 ……最近、やたらと会っている気がするのは翼のせいね。

「それだけで気付いたのですか?」

「あとはそのメイド服ね。戦場にそんな恰好で出てくるヤツなんて、他に居ないと思うわ」

「確信はなかったのですか?」

「あなたが言い淀んだので十分だったわ」

 ……あんな稚拙な鎌掛けにひっかかるとは、正直思ってなかったのだけど。

 九恩は一瞬表情を歪めたが、すぐに普段の無表情な顔に戻る。

「それで、そちらからの質問は?」

「ええ。あの戦闘で私以外にもう一人助かった子がいるのだけど……」

 ……燕はあの日の復讐のためにも動いて、行方不明になったのだから……

「入洲 燕ですね」

 その一言に、飛鳥の表情が険しくなった。

「名前を知ってるってことは、何か知ってるわね」

「ええ」

「あら、随分と簡単に肯定するのね」

 そう言いつつ、飛鳥は違和感を覚えていた。

 ……そんなあっさりと答えることじゃないわ。

「ただ、私が答えるまでもなくあなたは答えを知るでしょう」

「?」

 その時、飛鳥の背後に何かが降りたつ。同時に、飛鳥は全身が動かない事に気が付いた。

 ……まさか……『正義の乙女(アストライアー)』!?

「これが答えです」

 そして、飛鳥の目の前で九恩のナイフが煌めいた。

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