ズルいズルいと言う妹
色んな意味で酷い作品ですがこれは本編に名前が出てくる邪神が暴れた結果です。ぼくはわるくないとおもいますまる
「ズルいズルい!お姉様ズルい!お姉様だけ新しいドレスを作って貰ってズルい!」
私がデビュタントの為に作ったドレスを家族の前で披露した時、妹がいきなりそんな事を言い出しました。
私はもちろん、両親やお兄様も思わずギョッとした顔で妹を見てしまいます。
それはそうでしょう。こう言っては何ですが妹は見た目も儚げな美少女で、性格も控えめ(なお胸部装甲は控えめでない模様。おのれこれが姉妹格差……!)、到底今のような台詞を大声で言い出すような子ではないのです。
と言うか妹本人も自分で言ってしまった言葉に顔を青ざめさせ、口を手で覆ってプルプルと震えています。
「ち、違うんですお姉様ズルい! いやこれはズルいズルい! って何これーっズルいズルい!」
どう見ても尋常な状態ではありません。
「何か語尾にズルいってつける愉快な状態になってますわね……」
「ズルいズルいお姉様ズルい! お姉様は普通に話せてズルい! あ、これはわりと本音です」
「草」
お兄様、伯爵家の嫡子としてその言いようはどうかと思います。分かりますけど。
「語尾変化と言えば、以前学校のクラスメイトに罰ゲームで語尾に「にゃ〜」を付けて話す呪いってのをかけた事がありましたね」
「息子よ、お前のクラスは男子率99%の領地経営専攻だよな……?」
「身長2mの偉丈夫が語尾ににゃ〜を付けて話すのはもはや災害でしたね。猫耳カチューシャも凶悪でした」
何やってんですかお兄様。
しかし呪いと言うのはあり得る話です。陰湿なやり取りも多い貴族業界では呪いの類は良くある事です。それだけに防御手段もそれなりにあるのですが、何らかの拍子に防御に失敗する事もなくはありません。私達家族は早速契約している魔女様に相談をする事にしました。
「はー、コイツは厄介だねぇ。こりゃ邪神の呪いだよ」
「「「「「邪神!?」」」」」
魔女様はとんでもない事を言いました。
「邪神の中でも愉悦系のナロー・サッカーってヤツだねぇ……世界を滅ぼすタイプと言うより人の人生を弄んで破滅させるヤツさね。
貴族なら男の貞操観念と知能を低下させて浮気させ婚約者を蔑ろにさせる「婚約破棄の呪い」とか、令嬢の髪をピンクに染めて妄想を植え付け、現実と妄想の区別を付かなくさせる「ヒドインの呪い」とか有名だろう? アレを振り撒く根源さね」
「「「「「なっ!!」」」」」
それは貴族にとって最悪の呪い! 最も忌むべき呪いではないですか!
なろう作家……もといナロー・サッカーとは何という恐ろしい邪神なんでしょうか。人の人生を弄んで愉悦するなんて、きっとストレス解消にパワハラ上司にザマァして成り上がる作品を書くサラリーマンとか、モテないから代償行為でハーレムものとか夜想曲作品とかを書く童貞とか、働いてないのに現代にダンジョンが出来た途端に命がけの戦いに身を投じるとか言うあり得ないことを書くニートとか、理想が高すぎてハードル上がった恋愛を創作の中でイケメンにチヤホヤされる事で解消しようとする喪女みたいなどうしようもない性質の存在に違いありません!(あくまでネタです本気じゃないですやめて!物を投げないでグワーッ!)
「呪いは……娘の呪いは解けるんですか!」
動揺して魔女様に詰め寄るお母様。魔女様はそれに対して顔を顰めて答えます。
「馬鹿言うんじゃないよ。邪神とは言え仮にも神の呪いだよ? 人間ごときに解けるもんかい。……ただ、方向性をずらすのは出来るかもしれないよ」
「方向性をずらす、ですか?」
「呪いを解くんじゃなく少しだけ書き換えるのさ……普通なら邪神が再度干渉すれば戻されちまうんだけど、この邪神は愉悦系。より面白くなれば放置してくれるさ。
その状態で一年もすれば邪神の注目も薄れるからそこから更に呪いに干渉……そうしていきゃ完全に呪いが解ける日も来るかもしれないねぇ。どうしても長期戦になるがねぇ」
「具体的にはどう書き換えるのでしょうか?」
「とりあえず「ズルい」を一字変えるかね」
魔女様からその方法を聞き出すと、私達家族は妹を救う為にそれを受け入れるのでした。
……お父様は何故か泣きそうでしたけど。
「ツルいツルい! お父様ツルいですわ!」
「グハァッ!」
呪いを書き換えられた妹の一言に、お父様が最近後退しつつある生え際を抑えて悶絶します。
うん。確かにこれなら邪神も納得の愉快さでしょう。……プッ。
ちょっとお父様の情緒が心配ですが妹の為なら仕方ないよねっ! コラテラルダメージコラテラルダメージ。
「お父様、耐えてください。この子の為には仕方な……」
「ツルいツルい! お姉様お胸がツルい!」
「よろしいならば戦争だ」
ここじゃ物が壊れる……屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったぜ……
「おいやめろw 辛いのはwお前だけじゃwないんだからwww」
それはお兄様が笑いすぎて辛いって事ですか? それとも笑うに笑えない使用人達の事ですか? 何ですかその「笑ってはいけない伯爵家24時」って幕は。さっきお兄様付きの従者が思わず吹いた時に鳴った「デデーン」って効果音とお尻叩いた竹刀はどっから出てきたんですか。え? 吹き矢よりマシ? お尻に吹き矢ブッ刺すとか正気の沙汰じゃないですよね?
関係者の精神と尻に多大なダメージを与え、ついでにお父様の毛根にも多大なダメージを与えて頭頂部をすっかりツルくしてしまった一年が過ぎました。
魔女様によると邪神も飽きてきたのか興味が薄れて呪いも弱くなったとの事。まあどんなに面白いネタのお笑いでも一年も見続けたら飽きますよね。それでも解くには至らないので、興味が薄れている隙に再度干渉し、「ズルい」→「ツルい」から更に「ツラい」に変化させ、「お姉様ツラい!」にして「邪神の呪いを受けて苦しむ可哀想な子」とする方向へと舵を切る事にしたそうです。名付けて「あれ?俺がさっき見てた番組これだったっけ?もう終わっちゃったのかな?じゃあ別番組見るかー」作戦だそうです。
お母様とお兄様と共に魔女様の施術を受ける妹を待っていると、遅れていたお父様が部屋に入って来ました。
「すまん、遅くなった」
「いえ、施術はまだ終わっては……」
お父様の声に応えて振り向いた私は、その姿に思わず目を見開いて絶句します。
心労ですっかりツルくなってしまった頭頂部、それがフサフサになっているではありませんか。
「ああこれかい? あの子の呪いによる言動の的になる為に放置していたけど、もう「ツルい」とは言わなくなるんだろう? だから今日からカツラを、ね?」
……! お父様! そうです。もしお父様が頭を隠していたら、妹に私の胸をツルい呼ばわりされる頻度が増えていたはず……! なんて言う事でしょう。私はお父様にずっと守られていたのです。
ツルいって呼ばれてorzってるの見て面白いとか思っててごめんなさい……
私が密かに反省していると、魔女様の「終わったよ」との声と共に魔女様と妹が入って来ました。
「ツラい……お姉様ツラいでs……」
言いかけて私達を見た妹が硬直、まるで時が止まったかのように身動き一つしなくなります。その姿に魔女様が焦って叫びました。
「な!? 邪神が再干渉だって!?」
その言葉に騒然とする私達家族。
ぶわり、と黒い霧に包まれる妹。その霧はたちまちのうちに妹の体へと吸い込まれて消えてゆきます。
霧が消え去った後には、顔を青ざめさせ、ワナワナと震える妹の姿がありました。妹は顔を引き攣らせながらゆっくりと震える手を上げていき、お父様を指差しました。
「ヅラいヅラい! お父様ヅラい!」
とっぴんぱらりのぷー
ナロー・サッカー……いったいどんな邪神なんだ……!(迫真)
たぶん誰も気にしてないでしょうが、「ツラい」に変化した時に妹ちゃんは「ツラい、お姉様ツラいです。妹なのにお姉様よりお胸が大きくて嫉妬がツラい! あと肩凝りがツラい!」って言おうとしてました。
邪神さんのおかげで最終戦争は回避されたんや……
ちなみに「とっぴんぱらりのぷう」とは東北あたりの昔話の終わりにつける定型句です。だいたい「めでたしめでたし」とかと同じ感じ。他にも「どっとはらい」とかあるんですが、「とっぴんぱらりのぷう」の響きが面白くて好き。
ところで最近知ったんですが、「おあとがよろしいようで」は結びの言葉ではなく、「自分の後の演者の準備が整ったようなので自分はこれで失礼いたします」って意味らしいです。また誤用してたよ!( ;∀;)




