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返り咲かせろ!邪神ちゃん!  作者: MA


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6/7

適当な邪神ちゃん

 交差路をすぎれば途端に人は増えた。

 なんでこの道からこんな子供が?という視線はあれど来た道のせいで関わりたくないのか、興味はそれ以上ないのか人々はすれ違い、通り過ぎてゆく。


『嘆かわしいの、こんな痩せた子供をもみても知らんぷりとは……これが末法』


 仮に自分だったとしても知らんぷりして他の神が悪いからとあとでいうタイプである邪神ちゃんは他人事ではないからこそ不満を漏らす。


『人間なんてそんなものです』

『あー、ワシに全盛期の力があれば……なぁー』


 あってもなにもしないのが邪神ちゃんである。


『都合よくお偉いさんの馬車が襲われてたりせんかな?』

『この人通りで……?物騒すぎますよ……』

『これだけ無関心なら襲われても逃げるんじゃないかの?ひとえに神々の政治が悪いせいで……』


 まともに働かない神だったくせにひどい責任転嫁であった。


『うーん、邪な思いもあんまり感じんなぁ。大抵誰でも持ってる程度なんじゃが、その中でとても大きいやつがいればそいつが何かしでかすから……追跡すれば面白いことが起きるんじゃがなぁ』

『と言っても死なないくらいなのでなにかができるとは思えません』

『そうじゃな、未然に防いでも礼も言われなそうだし口封じされそうじゃ。まぁええか。病人おらんかの倒れてるとこ助けてお礼でも貰ったほうがええじゃろ。…………おらんの』

『流石に路上で倒れていたら気がつくのでは?』

『生と死を司るということはそれくらいはわかるものじゃ、もうすぐ倒れて死ぬなとか、数年で死ぬなぁとか』

『もうすぐ倒れて死ぬのであれば助けてもお礼はもらえないのでは?』

『じゃあ数年で死ぬやつを探すか……』

『数年後に死ぬ相手を介抱しても今が元気だったらお礼を言われるだけで終わるのではないでしょうか?』

『人々は貧しくなったの……』


 邪神ちゃんの経験上、人間にそう対応すればお礼をいっぱい貰えるから大丈夫と思っての発言だがそれは相手が邪神ちゃんとは言えども神だからだ。

 神から数年後に死ぬぞ、医神のとこ行けば治るぞと言われ紹介状まで渡されればお礼も弾むだろうが、一般人からお前数年後に死ぬぞ、お礼は?では詐欺師でしかない。

 邪神ちゃんが探しているのは数年後に死ぬけど手を尽くせば助かる金持ちであって、そうでもない相手は数日後に死んでもいいから言っていないだけである。

 実際すれ違って怪訝な目を向けた中には数日後には心臓発作で死ぬなと言う人間がいたが別段助ける義理はないので放置しただけである。


『死なないだけでも十分ですよ』

『良き使徒がいてくれてワシも嬉しい……』


 まともに使徒を作ったこともない邪神ちゃんは様々なことを忘れているし知らないが現状役立つことはないのであった。

 最も、もし知識があっても別段この状況は変わらなかったのだが。


『お約束がなさすぎるの、貴族の令嬢もいなければ商人の馬車もない』

『田舎ですから……』

『街にはなにがある?最悪の場合違う街に行く羽目になるぞ?』


 ギャンブルで金を稼ぐ気満々の邪神ちゃんは金欠の状態では健全な街に興味はなかった。本当にろくでもない神であった。


『商家と……宿はありましたね』

『街の範囲なら大まかワシが視れるかの?まぁよほど大きい街でもなければ……どこになにがあるか一発よ。他神の眷属とかおるのかな?神殿はさすがにないだろうが教会はあるのかのう?』

『小さいものが……商神教会があります、他の教会はありません』

『アヤツの場所か……。ということは賭場はあるな、うむ解決解決……教会が一つ?』

『はい、一つです』

『各教会がいくつかあったりはしたはずなのじゃが……小さい街だったかの?』

『教会制度が整備されたので街には一つです。神へ救いを求める際には教会で申し上げるのですが……詳しくは……』

『まぁ、神に願っていればお主の境遇は改善したかもしれんしな、あるいは忙しすぎて改善されないか』


 自分に願われたところでワシ知らんと働かない邪神は他の神の仕事量を低く見積もっていた。


『かならず叶う訳では無いでしょうし、儲かりたいとかそういうことは流石に叶えてはくれないのでは?』

『全員金持ちになるからの、流石にそんな自堕落な願いは叶えんわ』


 自堕落の化身の説得力ある言葉だった。


『暴飲暴食で病気になって医神に縋っても知らんと一蹴されるだろうしの、願いを上げても叶うかわからんし教会でまとめて上で各神に振り分けたほうがいいということか。どうせ論外は弾かれるしの、一番強い教会を残して撤退したのかのぉ……神殿勢力も人不足なのか……あるいは効率化の一端なのか、神々の喧嘩の結果か。ああ、嘆かわしい』


 仮に失脚しなかったとしても陳情全てに目を通さず適当に使徒を作って全部仕事を投げたであろう邪神ちゃんはあーワシならそんなことにはならないのになぁ!と自分で自分の退路を断っていった。そんな地位に戻りたいわけではないのでいくらでもでかいことをいえるのである。

 そもそもユダがそこまでできるとも思っていない。


『邪神ちゃんが復活したらどうしますか?』

『あまねく信徒に光を与えよう』


 眷属にすら恩恵を与えなかった神とは思えぬ言いっぷりである。個々の神を崇拝する信徒、神に仕える眷属、加護を持つ使徒。眷属にすら恩恵を与えずほぼすべての眷属と信徒が宗旨替えした結果が今の邪神ちゃんなのでこれほど説得力のない言葉もない。

 ユダは失脚したせいだと思っているがもう少し成長していたら流石におかしいなともう少し疑ったであろう。

 唯一残った信徒と眷属の村でユダの父以外眷属も信徒もいない状況に陥ったのは間違いなく邪神ちゃんのせいなのだから……。


 まぁそもそも顕現できるまで何年かかるんだかわからんがな。と思う邪神ちゃんをよそにユダはやる気を溢れさせていた。

 そんなこんなでとうとう街についてしまうのであるが邪神ちゃんはずっとお約束がないとぼやき続けていたのは余談。

 むしろお約束が起きないほど治安が良いということは全く思わないあたりが邪神ちゃんらしかった。

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