風船が取れない少女
空にたくさん
ぷかぷかと風船が浮かんでいる。
どうしても、
手を伸ばすのに届かない。
風船は、色とりどりだった。
幸せな色ばかり。
いっしょに
ショートブレッドを作った 風船
いっしょに
花屋併設のカフェに行った 風船
いっしょに
ゲーム屋めぐりをした 風船
いっしょに
東京に行った 風船
取れそうで取れないね。
届きそうなのになぁ。
これらは
どれが古くて どれが新しいんだろう
わからないね。
おおむかしの 風船たちは
綺麗に 古い順で
並んでいるね。
整列して えらいねと褒めてあげる。
どうして
あのとき以来の風船たちは
きちんと じょうずに 並べないんだろう。
届きそうで 届かない
こんなに 目の前に 見えているのに。
つるつるしている。
私の手のひらが、
こんなにつるつるしているから
取れないのかなぁ。
取らないと
どっか 飛んでいってしまいそうで
怖いよ。
すでに、たくさん風船たちが
遠くへ飛んでいってしまっていると思う。
行かないでほしい。
遠くへ行ったら もう本当に届かなくなるよ。
あぁどうして掴めないの?
飛んで掴もうとすると 苦しくなる。
なんでだろう。
なんでだろう………………
こんなに 平凡に生きてきたのに
どうして私の手のひらは
つるつるとして 掴めないんだろう。
みんな 風船を掴んでいるよ
ねぇ、どうして
風船たち きれいに並ばないの
くっついて、
私にくっついて、お願い。