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プロローグ

 ネオンの光が雨に滲む。

 深夜の裏路地。

 カジノ帰りの男は、煙草をくわえながらよろけるように歩いていた。

 そのポケットは空っぽ。

 勝負に勝ち続けた人生の末路は、

 あっけなく「いかさま」という形で幕を下ろした。


 テーブルの上に散らばったカードのイカサマを見抜いたのは遅すぎた。

 勝率を読み切ったはずの自分が、

 最後には「運」ではなく「ズル」に負ける。

 その事実が、何よりも惨めだった。


 胸の奥に、長年積み上げてきた勝負勘が砕ける音がする。

 喉に絡む苦い笑いを押し殺し、男は夜風を浴びながら歩いた。


 交差点。

 赤信号を無視して突っ込んできたトラックのライトが、

 視界を真っ白に染め上げる。


 ──その瞬間、時間が止まった。


 迫る光の中で、ふと「数字」が浮かんで見えた。

 助かる確率、0.01%。

 生き延びる確率、限りなくゼロに近い。


 だが、男は思った。

 「それでも、俺は最後まで賭けてやる」


 衝撃音と共に、世界が闇に沈む。


 次に目を開いた時──彼は見知らぬ大地に立っていた。

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