私にとってのコスモスは貴方が育てたもの
「何が真実の愛よ。私を陥れたことどう償わせようかしら」
「それについては王様から謝罪があったとお聞きしましたが」
「あら、もう庭師の貴方の耳に入ったの? 屋敷の者は口が軽いこと」
庭師は「余計なことを申しました」と言い、作業に戻る。
風に揺れる花たちと整えられた庭。それは私が幼い頃から大好きな風景。そこにいるだけで幸せな気持ちになる。
けれどそれは今まではの話。今は目の前の花を根絶やしにしたいくらいだ。
「ねえ、そのコスモスとやらを私の目の届かない場所に移し替えてくださらない?」
さすがに根絶やしはできない。この庭師も罰せられてしまう。私の言葉に庭師が手を止めた。
「それはカホ様に立場を奪われたことに関係が?」
「口の悪い庭師ね。そのどぎつい色が落ち着かないというだけよ」
庭の一角に植えられたコスモスは、異界からの迷い子であるカホが手にしていた種から育てたものだ。カホは浄化の力を持ち、国の危機を救った。王子は彼女に懸想し、私との婚約もありもしない罪をでっち上げて一方的に破棄された。
「知っておられますか? カホ様の国では、コスモスは淡い色だそうです。カホ様は土が違っても花が咲いたことを喜ばれ、自分も今ある状況で頑張るしかないと仰っていたとか。いつまでも嘆いている自分を見たら家族が悲しむと」
「それは恨み言ばかりの私への説教かしら」
「いいえ。まさか」
「そう……けれどその話を聞いていい考えが浮かんだわ」
その後私は、淡い色のコスモスの栽培に成功した者には褒賞金を与えるとこの国の庭師たちに広めたところ、栽培に成功。それをカホに贈ると、彼女は大粒の涙を流し、家族に会いたいと王に願い出たそうだ。
カホは身寄りがなくこの国で生きることを望んでいると王子から聞いていた王は驚き、心からの謝罪をし、カホを元の世界へ帰還させた。王子は鬼宰相による再教育の毎日で、どやされながら駆け回っているのだそう。
里心がつけば何か変わるかもという軽い思いつきにしては上出来な結末だ。
「お父様が私にご褒美をくださると仰ってね、私はどこにも嫁ぎたくないからずっとここにいたいと願いでたの」
「それが褒美になるので?」
「この庭がない人生なんて考えられないもの」
私の言葉に、庭師は見たこともない変な表情になった。
「なあにその顔。庭の話よ」
「庭の……そっ、そんなことわかっています。それ以外に何があるというのですか!」
「ふふっ、何があるのかしら」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
タグに歳の差と書いたのに本文で書けませんでしたが主人公は20歳、庭師は38歳です。
今回のなろうラジオ大賞の投稿はこれで終わりにします。今年も一年活動できたことに感謝します。また来年もよろしくお願いします。