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海に月の光が梳ける時  作者: 稜 香音
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密談です

「おや、花嫁様をお一人にされて良いのですか?」


部屋に入るなり、北に龍志朗は声を掛けられた。


「疲れているから少し休ませている、朝から重たい衣裳に気疲れで、大変だったのだからな、雪乃に付いてもらっている」


龍志朗も端的に応えるとソファに座った。


「そうですね、あのか細い体であれだけの花嫁衣装は中々の重さになりますよね、しかも宴は軍関係者ばかりだ」


星北がもっともだと言わんばかりに言葉をつづけた。


「まぁ、帝自らお出ましとあれば、お偉い所はほぼ呼んでおかないと、僻ひがまれる」


龍斗は自分だけが理由では無いとばかりに、被せる。


「否、ある程度は覚悟してましたし、別に、偉い偉くないに関わらず、彩香は見知らぬ人の中になるわけですから、気疲れはしますよ」


龍志朗も誰の何がと、責め立てる気は無く、月夜家の婚礼なのだから、こういうものと思っていた。


「具合が悪い訳では無く、晩ご飯も楽しみにしていましたし、少し休めば、問題はないですよ」


龍志朗は先程見せた、彩香の笑顔を思い出していた。




「そうか、宴の最中はほぼ食べられなかったから、同じ様な物を作ってもらえるのか?」


食べた自分が気に入った物があったのか、播磨が聞いてくる。


「ええ、一応、今日の料理は事前の打ち合わせの時に頂いているのですが、彩香が特に気に入った野菜の炊き合わせや肉のソースがあるのと、皆さんにお出ししたのと同じ量は彩香が食べられないので、幾つかを晩ご飯に、朝ご飯は新しい料理を料理長が出したいと言われているので、それが出て来るそうですよ、どうも、彩香は料理長に気に入られたようで、今日の宴の前の軽い食事も好みの物を用意して頂いて、喜んで食べていました」


龍志朗が昼間の出来事を思い出したのか、喉の奥で笑っていた。


「とても可愛らしい方でしたよね」


にこにこと笑顔で褒めてくれるのは信濃だった、彼は今日初めて彩香を見た。


「そうなんだよ、“可憐な人”って本当に存在するんだって初めて知ったよ」


田沢も最初に会ったのは島で粗末な着物を着た彩香が初めてだったので、“傲慢なお偉いさん所のご婦人”とは似ても似つかない彩香の好感度は高い。


「うむ、性格も可愛いぞ」


龍斗も眉尻が下がっている。


「そうですよね、とても素直で謙虚な方です」


北が言葉を足してくる。


「褒めて頂くのは大変ありがたいが、我妻なので、私の妻、なのでね」


最初は褒めてもらって嬉しかったのだが、何事も過ぎると良くないとはこの事かと思うようになった結果、眉間に皺が寄って、周囲を睨ねめつけていた。


「誰もそこは疑っていませんよ」


星北が肩を震わせながら答えていた。


「ま、お前に勿体無くは無いと思わない訳でもないがな」


龍斗が混ぜ返す。


「本邸には連れていきませんから」


一瞬も間を開けずに龍志朗が応えた。


今度は龍斗の眉間に深い皺が寄る。


「何を今から嫁の取り合いしているんですか、今日は目出度い日なのに」


播磨に小言を言われると、ふむと息を飲む龍斗と相変わらず肩が震えている星北だった。


龍志朗は聞き流していた。




「まぁ、余興はそのくらいにして、折角この面子なので、今後の交流についての意見などがあれば、先程の続きをしたいかと思いますが?」


北が肩を震わせながら、場を締めた。


「そうだな、各国の動きを越境近辺とは密にした方が、動きが早くなると思う、昨年の天候不良を都や周辺は凌げたが隣国などはかなり苦しかったと聞こえてきている、その不満分子が不穏になれば・・・」


播磨が論じれば、信濃が答える。


「先だっての小競り合いもそこが元凶かと思われます、民に悪意は無いとしても、飢えが凌げなければ、隣の畑が羨ましくなるでしょうし」


「そうですね、陸程国境線が明確でない海上はもっと顕著に表れます、魚が陣地に居る間に取ってしまえば良いし、海流がずれたら、追っているうちに入り込んだという態できますから、面倒です」


田沢も何度も“超えた超えていない”で揉めているらしい、吐き出すように訴える。




「いずれにしても、彩香の存在が隣国までに知られなければ良いのだが、先の大戦の時に向こうが手酷くやられたのは月海一族の巫女にだから、今度は取り込もうとするだろう、もしくは戦になる前に抹殺しようとするか」


「そんな事はさせません!」


龍斗が懸念している言葉を吐露すると、被せる様に龍志朗が遮った。


「勿論、私もそんな事はさせない、だからこそ、絶えず護衛を付けるのだし、内外にも配置させている」


龍斗は現実的に対策を講じていた。


「全く、何故、彩香がそんな危険な事に関わらなければならないのか」


龍志朗は持って行きようのない感情を持て余す。


「仕方があるまい、血筋が由縁なのだから、志朗坊の妻になったのは良かったではないか、自然に最強の護衛が付いたのだから」


星北が片方の口角を上げて、悪い笑顔を見せた。


頬を少し桜色にしている龍志朗だった。


幼い頃から見知っている星北は“龍”が代々付く月夜家の息子の下を取って呼んでいた。


「当然、守りますよ、私が彩香を、何だったら、専属の護衛の任務が一番良いのですがね、安全で安心します」


「働け」


良い事を話しているという満足げな龍志朗に、呆れ果てた顔の龍斗が低く冷淡な声で制する。


「隊長に抜けられたら困りますよ、わが部隊も対馬さんも」


北も呆れた顔を向ける。


「日々の鍛錬が足りないからだ」


これには龍志朗が冷淡だった。


「まぁ、まだ、都内でも彩香さんの一族の事を知っている人は限られているわけですし、越境近辺でもそれ程大々的な事が起きている訳でもありませんから、現状、出入りを厳密に見張る事からでしょうか」


日々、越境に携わる田沢が意見をする。


「そうだな、出来るだけ早めに、魔力軍から各越境軍に対して情報交換と確認する場を設けるのが先決だろうな」


星北の頭の中では既に、予定計画が作成されているらしい。


その後も、同じ越境でも陸の国境と海の沿岸警備では、ほとんど交流が無いのか、隊員の話だとか悪意の無い隣国の困った民の話とか話が沸いてきた。


日程調整をして後日先振れを出す事で、解散した。

大丈夫、だったかな?


守られていますよね


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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