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海に月の光が梳ける時  作者: 稜 香音
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22

噂は噂に過ぎませんよね~

「だから、動くなと、術は使うなと言いましたよね、言ったよね、どういう事かな?」


まだ、皆がいる間に柊医師が龍志朗の病室に来た。


北や対馬は病室の片隅に避難している。


時々、その隅にも射る様な視線が投げられるのだが、先程の龍斗の視線に比べれば、全く痛くない二人は顔だけ反省している。


当の龍志朗はずっと黙っている。


“動くな使うな”と言われたのに対して、“動いて使って負荷を負った”ので、何も言い返せない。


彩香の件が龍志朗にとって、譲れないのは誰もが知っている、それでも敢えての苦言だったのだから、言い訳が無い。


「で、どこまでが共犯なんでしょうか?」


病室の中を隈なく見回して睨ねめ付けた。


それに応えて『はい』と手を上げる者は皆無だ。


「で、この怪我人は治る気があるのでしょうか?」


「たぶん・・・」


年長者の星北が気を遣って呟いた。


「そんなに守れないなら、眠らせますよ」


声高な柊の言葉が棘の様に刺さったが、龍志朗が掛布の隙間から見たその瞳は辛そうに潤んでいた。


龍志朗の歯痒さも、彩香への想いも、誰もが同じに思っていた。


龍志朗はそっと掛布を上げ頭まで隠していた。


明日の朝には敷布も乾くだろう。


それぞれの想いを抱いて明日へと向かった。




「さて、どうかな」


「どうでしょう」


「試すか?」


「当然でしょう」


「そうか?」


「そうでしょう」


朝早くから、軍港では龍斗と星北が準備していた。


この二人元は攻撃と防御で組んでいたのである。


実践を離れてからも側近として星北が側に居たので学生時代からの腐れ縁であった。


「ふっ」


「はっ」


空気が流れる。


「はぁっ」


「ううっ」


空気を斬る音がした。


「ふっうぅ」


「はぁぁ」


空気が止まった。


「何とか成るものだな」


「そうですね」


「ま、長時間はきっと持たないな」


「当然でしょう、無理は禁物ですよ、今回は」


「わかっている、若気の至りは通用しないからな」


「今、それ、言い訳に考えますか?」


「だから、使えないと言っているだろう」


「いえいえ、例示しませんよ、普通」


「うむ」


「まったく・・・」


乗船する船の側まで並んで歩いてきた。


「お二方とも諸々の準備はよろしいでしょうか」


田沢が乗船口から声を掛けてきた。


「ああ、良い」


「大丈夫だ」


二人が返事をしていると近くに気配を感じた。


振り返れば、『現在の特殊部隊の面子』が並んでいた。


「ご一緒してもよろしいでしょうか?」


北が静かに伺いを立てた。


「休みの日に軍の船に乗るのは良いのか?」


星北が北に尋ねた。


「自力で教わった地点まで飛ぼうかと思ったのですが、無暗に体力も魔力も使わない方が良いのではないかという、結論に至りました」


波に揺られながら甲板に立っていた。


「そうだな、余力はあった方が良いな」


「ありがとうございます」


手を焼く者の側近同士なので、波長が合うのか、気が合うのか、年代を超えて親密になっていく。


『役に立たない者は切り捨てる』そんな噂が、常に付き纏う龍志朗だが、部下には慕われていた。


弱い者は戦場で命を落とす、だから、連れて行かない、他の道へと送り出す。


これが噂の真相であると、部隊に残っているものであれば、誰もが実感している。


それ程、この部隊は厳しい局面での戦に勝利する事を求められる。


だから、この船に乗っている『休暇者』は多い。


対馬の上司の近江も乗船していた。


本人曰く、「当然だろう、表裏なんだから」と対馬の休暇届けの受理の見返りに理由を問われて、話さざる負えなかった。


目的地へと強兵達が向かっていく。


海は凪いでいた。



大丈夫、だったかな?


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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