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海に月の光が梳ける時  作者: 稜 香音
35/75

5

細かい事も大事です。

 本題の難関は突破した。


しかし、残っている難関も、それなりではある。


彩香の仕事。


別邸の改装と彩香の別邸での暮らしの準備。


結婚の手続き。


どれも、日常からほど遠いものであるからして、龍志朗は疎い。


彩香の件については雅也に迷惑を掛けているので、気になった。


 ただ、彩香の仕事に関しては面白い現象が起きていた。




曰く、


「森野雅也薬師に付くと素敵な結婚が出来るらしい」


都の薬師乙女達の間で実まことしやかに信じられている、らしい。


これは、彩香が龍志朗に見初められた事が、歪んで伝わっているから、らしい。


そのため、雅也の助手に乙女薬師の希望者殺到しているのだ。


少し前まで、雅也は厳しくて大変だからと敬遠されていたのに、大違いである。


これに一番困惑しているのは、当の雅也だった。


「ないない、ないない、全くない」


「ない」を呪文のように唱えて、今日も雅也は選別をしている。


「ほんとに、どうして、こうなるかな?どっから、こんな事になるかな?」


彩香が突然、怪我をして入院していたので、薬師棟の共通の助手が今日も手助けに借りだされており、今日も雅也は同じ愚痴を呟く。


「先生、毎日同じ事を言っているそうですが、飽きませんか?」


助手達は交代で来ているので、毎日聞いているわけではないが、申し送り書類に「今日も・・・」と、最近は内容を書かずにも分かるようになる程、同じ繰り言が続いている様子らしいと、記されている。


そもそも、交代で来ている助手達も、「またか・・・」と思える程、何度も聞いている。


「ああ、でもさ、言いたくなるんだよね、どうしたらこんな事になるのか、少しも解明されないから、もうね、自分で解明出来ないから、言い続けていれば、誰か解明してくれるんじゃないかと、他力本願になってきた」


雅也は眉頭がぎゅっと寄せて、渋い顔を助手に向けた。


「そんな、顔されましても・・・」


助手も厳しくて有名だった雅也がそんな崩れた顔を見せると、恐怖心は消えて安心なのだが、代わりに「解明しろ」と迫られているようで、圧を感じる。




もう一つ、曰く


「森野雅也薬師に付くと、実は森野雅和教授の研究室に行ける」


都の研究者達の間で実しやかに信じられている、らしい。


これは、彩香の件で雅和が軍事法廷にまで、出た為、元々、雅也の父が雅和である事は一定の人達には知られていたが、この事によって、かなり、関りが深く、雅和が動く事が知られたためである。


ただ、これと研究室については別問題なのだが、これも、歪んで伝わっている、らしい。


そのため、臨床医療よりも実は研究が主体の薬師達も足掛かりにと、応募してくるのだった。


最も、雅也の所も研究室を兼ねている、特殊な状況ではあったのだが。


「いや、もうね、ずっと、君達の手を借りたい、暫く、治まるまでこのままが良い様な気がしてきた、どうだろう?」


雅也が助手に提案する。


「僕らは構いませんが、先生の研究が進みませんよ、ここは臨床と並行して研究も実施している先端室なんですから」


助手はあっさりと痛いところを突いてきた。


「・・・」


押し黙る雅也。




確かにそうなのだ、実は臨床も研究も並行している研究室は数少ない。


それだけ、軍からも、都からも期待されている事を雅也は担当している。


それが滞るとなると、各方面から余計な圧力がかかる。


なので、専属の助手が必要ではあるので、急に欠けた場合、このように急遽、共通の助手が手当されているのだ。


それなりに待遇が良いのは、それなりに責も負っている証だ。


「共通の助手から選任の助手に格上げはどうだろうか?」


雅也が別の提案を繰り出した。


「それはそれで良いと思いますが、それなら、共通の助手の応募を掛けないといけないですから、別の手続きを早くしないと」


助手がすごく真っ当な解を返す。


「そうだね、そうしよう、それが良い、もう、無理、こんな状況で誰か選ぶの、無理」


雅也が両手を上げた。


助手が半ば呆れた顔を外に向けたのには、雅也は気が付かなかった。


そうして、自ら外部選出は諦めた雅也が、共通の助手からの選出に切り替えて、彩香の一時復帰を待つ事にした。


共通の助手の中での選出は意外にすんなりと決まったので、「もっと早く決めれば良かった」と雅也は項垂れていた。


共通の助手は、時間制限などがあって、研究職には付けない者もいるので、誰もが雅也の助手を望んでいた訳でもないためである。

大丈夫、だったかな?


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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