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海に月の光が梳ける時  作者: 稜 香音
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雪乃強し!

すっかりしょげて家に戻った龍志朗。


「ただいま」


「お帰りなさいませ、坊ちゃま、どうなさったのですか、その落ち込みは?彩香様に何かありましたか?」


雪乃が心配そうに聞いてくる。


「いや、彩香は元気だった、柊先生に怒られた」


龍志朗は手短に事実を告げた。


「坊ちゃまが怒られたのですか?柊先生に?何で?」


雪乃の疑問は当然だ。


仕事では無関係で、彩香を助けてくれた先生に対して龍志朗が何か仕掛けるはずはないので、柊の怒りをかう何かが起きるはずが無いと思っていたのだから。


龍志朗の着替えを手伝い、晩ご飯を取りながら、龍志朗が細々と事の顛末を語った。


「はっはっはっはっは」


雪乃が大笑いしている。


「そんなに笑わなくても良いだろう」


龍志朗が眉間に深い皺を作り、言う。


「いえいえ、坊ちゃま、ここは笑うところです」


雪乃のがはっきりと言う。


「・・・」


龍志朗は不機嫌なままだ。




「で、坊ちゃま、そろそろ、彩香様も退院なさる予定が立つ頃ではないのですか?坊ちゃまは今後どうなさるおつもりですか?」


雪乃は一頻り笑った後に、真顔で龍志朗に迫った。


「どうって、何がだよ」


龍志朗は急に真顔で雪乃に迫られて、今度は雪乃に何か言われるのかと、戸惑った。


「何って、彩香様とのご婚約とか、彩香様とのご同居とか、御父上へのお目通し等、色々とお考えなさる事がございますでしょう?」


雪乃は呆れた顔で更に龍志朗に迫った。


「あ、そうなの・・・」


龍志朗も全く考えていないわけではなかったのだが、事の順番が良くわかっていなかったのである。


彩香に毎日会いに行ってはいる、側に居ろとも言った、でも、それがどの程度の物事になるのか、彩香にどう伝わっているのかが今一つ、確信に至っていなかったのである。


「そうなのって、坊ちゃま!」


雪乃の声が裏返っていた。


「え?」


龍志朗は晩ご飯が済んでいて良かったと思った。


本気で雪乃から怒られ始めた気がして、気持ちが後退りを始めた。




「坊ちゃま、良いですか!」


雪乃が本気で説教を始めた。


迫るものがあった。


月夜家の当主は御父上なのだから、彩香様をお目通しして、ご許可を頂かなければならない事。


確かに、お母上の事があるので、別に暮らしているけれども、ご婚約となれば当人だけでなくお家の事である。


彩香様に色々とご事情がある事の説明も必要であり、本来であれば月夜家にふさわしくないと、言われるかもしれないが、そこは森野家が後ろ盾となってくれるだろうから、森野家にもご挨拶に行き、根回しをしなければならない事。


ご同居するにあたり、この別邸に彩香様のお部屋をご用意し、必要な物を揃えなければならない事。


薬師のお仕事をまだ続けるとして、いずれは、月夜家に入って頂くので、良家の子女であれば問題ないが、彩香様ではそうではないので、その準備も必要な事。


「何より、彩香様がどうしたいか、お聞きになっていない事、龍志朗様が彩香様とどうしたいか、告げていない事は決して見過ごせない事です、坊ちゃま、毅然となさいませ!」


雪乃に檄を飛ばされた。


「・・・はい・・・」


ここでも大人しく返事をするしかなかった龍志朗であった。


「坊ちゃま、女性にとって、想っている方から想われていると、告げられるのは、この上なく幸せな事なのですよ、彩香様は辛い思いをされてきて、今は、大層なお怪我もなさっているのですから、しっかりお幸せにしてあげてください、これは雪乃からのお願いでございます」


急に雪乃は声を低くして、いつものゆったりとした調子で、話した。


「そうだよね、きっと、最近、彩香がいつも笑ってくれるから、何だか安心していたのかもしれない、このまま、ずっと当たり前のように変わらないと思っていたかもしれないなぁ」


龍志朗も改めて思い返して応えた。


(明日、彩香に話そう)


そう思いを決め、夜が更けた。



大丈夫、だったかな?


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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