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海に月の光が梳ける時  作者: 稜 香音
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頑張っている女の子ではあるかも

(最近、見かけないな、椿おばさんからも連絡がないし、あれから連絡手段が思いつかないんだよな、いっそのこと雅也君を訪ねてみるかな、従弟だから、まったく関係ない訳ではないし、一番誤魔化せる理由だよな、ただ、そもそもの何か尋ねる理由が欲しいな)


龍志朗は彩香を見かけない事が気になっていたので、何か行動したかった。


しかし、噂になった後で、しかも「行動に気をつけろ」と対馬から釘を刺されている事もあり、躊躇して、自制していた。


対馬が作った封式を渡しているので、その面では、心配はないはず、と思っていた。


でも、会えないのは気がかりなのである。


気になるのである。


龍志朗は、自分の動揺の振り幅に、自分で驚いていた。




龍志朗の執務室の扉が叩かれた。


「入れ」


一先ず、思いを止めて龍志朗が返事をした。


「失礼します、駿河浅葱するがあさぎ入ります、月夜少佐、次回の演習予定をお持ち致しました」


細身の女性が書類を抱えて入ってきた。


「あ、ご苦労」


龍志朗の目線は彼女の顔に向いていなかった。


「あ、合同演習の組み合わせか」


龍志朗は向けられた目に何が込められているかなど、全く関心がないようで、書類を無造作に受け取った。


「はい、出来ましたら、私と組んで頂けませんでしょうか?」


浅葱はそれでもめげずに目的である、直訴を始めた。


「いや、断る」


全く、躊躇なく龍志朗は断った。


「実力は対馬さんに及びませんが、防御の型は違うので演習には良いかと思います」


浅葱も最初からすんなりいくとは思っていないので、次の手を打ってきた。


「いや、対馬でさえ実践に向けてもっと上げていかねばならない」


龍志朗は演習の意義を説いた。


「しかし、当面出撃の予定の無い、今ならではの演習も出来るのではないでしょうか?」


浅葱は、なおも食い下がった。


「確かに、現状は国境も安定しているようにも見えるが、だからこそ、各自の技量を上げる必要があるのだ」


「でしたら、部隊全体の底上げという事もご考慮頂けませんでしょうか?」


「それならば各部隊長が考慮する事であって、個人から進言されるべきものではない」


龍志朗の一段低い声に、明らかな苛立ちと断固として受け入れない冷たさが入ってきた。


「ですが・・・」


「諄くどい」


尚も縋ろうとする浅葱の発言に、凍る様な声が遮った。


「申し訳ありませんでした」


流石に、これ以上は無理だと浅葱にもわかった。


静かに龍志朗の執務室から退出した。




(どうして私ではないの!何のために軍に入ったと思っているの!)


引き下がってきた浅葱は、唇を嚙みしめながら、自分の部隊に戻ってきた。


「だから、無理だって言ったのに」


戻ってきた浅葱の顔を見るなり、対馬が言い放った。


目が吊り上がり、赤い顔からは怒気を感じられる浅葱が入ってきたので、結果は浅葱自身が、駄目だった、と言い触れているようなものだった。


浅葱はそう言われて、対馬を睨みつけるが、当の対馬は知らぬ存ぜぬの涼しい顔である。


対馬は龍志朗がより高度なものを求めているので、演習だからと言って自分の目的外の事を容認するとは思えなかったのである。


ましてや、浅葱が純粋に実力を上げるために龍志朗と演習したい訳ではない事も知っていた。


龍志朗は、そんな事に気が付きもしないかもしれないが、対馬にしてみれば、そんな邪推で演習されても困るのである。


実践ではなく、演習なら良いなど言っていたら、実践でしくじるのは眼に見えていえる。


ここは命がかかっているところである。


そして、対馬も、龍志朗の実力に及ばないので、もっと上げていかなければと思っていた。



大丈夫、だったかな?


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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