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3_04_戦闘とは呼べない戦い

***


「ふん、まったく、張り合いがないねえ」


 馬に(またが)った5人組。

 その頭株(あたまかぶ)である()り目の女が、つまらなそうに鼻を鳴らした。


「もうちょっと、獲物らしく俊敏に逃げられないのかい?」


 吊り目の女は、銃を構えて、逃げていく奴隷少女の足元を狙撃する。

 少女は、転びそうになりながら、よたよたと力なく走り続けていた。


「そりゃあ、仕方ねえですよ(あね)さん。あのガキ、食うものもろくに食わねえで逃げてんですから」


 (いや)しい笑みを浮かべた取り巻きの男が、彼女から撃ち終えた銃を受け取って、新しい銃を手渡した。


「もっと他にいなかったのかい? 筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な、見るからに持久力がありそうな大男とかさあ」

「採掘作業に影響がない奴隷ってなると、女のガキになっちまいまさあ」


 つまらないねえ、とぼやく女。

 取り巻きたちは従順にご機嫌を取っている。

 地平線から上がる土煙に一番に気がついたのは、吊り目の女だった。


「なんだい、ありゃあ?」


 何かが、音を立てて自分たちの方に向かってきている。

 それが見たこともない金属の塊(バケモノ)であると視認するまでに、そう時間はかからなかった。


***


「ちょ、シルヴィ、なんで正面から突っ込んでるんだよ!?」


 敵に向かって真っ直ぐ進むゴルゴーン。

 そのコクピットで、俺の絶叫が響いていた。


『アンタの命令に従ってるだけよ! あの子を助けたいんでしょ』

「つまり陽動です。5人組がゴルゴーンに気がつけば、あの少女を追うどころではなくなりますから」


 興奮気味のシルヴィと、その言葉を冷静に補うネオン。


「でも、これじゃあ、ただの的じゃないかっ」


 相手は銃を持っている。

 そう焦る俺の前の座席で、ネオンがやはり冷静に首を振った。


「この文明の武器ではゴルゴーンを損傷させられないことは、司令官も一度ご覧になっているはずです」


 言われてみて、思い出した。

 俺をピラミッドに投げ落とした帝国の兵士たちが、銃でゴルゴーンを攻撃していたけれど、傷ひとつついていなかったっけ。


「ですので、この作戦に問題があるとすれば、こちらを視認した敵がばらけてしまうことで、殲滅効率が――」


 途切れてしまうネオンの言葉。

 モニターの向こうで、5人組が馬を操り、密集して横一列に並んでいく。


「あいつら、逆に一箇所に集中したみたいだぞ」


 どうやら、マスケット銃を一斉掃射するつもりらしい。


『バカなの?』

「バカですね」


 シルヴィどころか、ネオンにまで言われている。


「では、シルヴィ」

『わかってるわよ。【ネルザリウス】起動、ターゲット照準』


 ゴルゴーンの内部で、ゴウンゴウンと(とどろ)くような音がした。

 モニターの映像上には、白い四角いマークが明滅している。

 マークは、馬に乗った5人組を捕捉すると、赤く色を変えた。


発射(シュート)!』


 ガチン!

 操縦室に甲高い衝撃音が響き渡った。


「な、何だ、今の」


 車体には何の変化もない。

 何かが飛んでいったわけでもない。

 しかし、モニターの中では、5人が馬もろとも、パタリとその場に倒れていた。


「いったい、何をしたんだ?」

『ネルザリウスによる砲撃よ。一発で終わっちゃったわ』


 つまらなそうに言う割に、満足気な雰囲気のシルヴィ。

 再び、ネオンが補足した。


「このゴルゴーンは、砲身と砲弾を持たない代わりに、複数の指向性エネルギー兵器を搭載しています」


 また、全くわからん用語がでてきたぞ。


「不可視のエネルギーの投射によって、対象をピンポイント攻撃可能な兵器のことです」


 エネルギーってのは、たしか、この戦車の動力がどうのこうのって話のときにもでてきたような。


「つまりこれも、ディグなんたら、っていう力なのか?」

「いいえ。【DGTIA(ディグティア)】は自律可動型軍事兵器に安全かつ安定的に動力を供給するための特化型エネルギーです。今回使用したネルザリウスが投射したのは、また別の【BF(ビー・エフ)波】というエネルギーですが、話すと長くなりますので、詳細は省かせていただきます」


 うん、ぜひそうしてくれ。


「また、ネルザリウスは非殺傷設定が可能な兵器です。先ほどは低出力射撃で、対象を気絶させるに留めています」

「え? てことはアイツら、生きてんの?」

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