0_01_終焉戦争
――その戦争は、突然のうちに始まった。
「被害状況を報告せよ!」
いくつもの立体映像が投影された軍事司令室に、振動、爆音、そして、総司令官の怒号が響いた。
「全てのセカンダリ・ベースが攻撃を受けています! 3つの基地がすでに陥落、管制AIがハッキングされました!」
「残りの17基地も、断続的な物理攻撃、およびサイバー攻撃に曝されていま……4つ目が奪われました!」
「このプライマリ・ベースも同様の攻撃を受けています。火器管制プログラムに障害、一部の対空防御が作動しません!」
「奪取されたセカンダリ・ベースより、自律可動兵器群が発進! 近隣の都市に侵攻しています!」
ずらりと並ぶコンソール画面には、一様に、緊急事態を示す真っ赤な警告の文字。
総司令官はギチリと歯を食いしばると、苛立ちのままに拳を壁へと叩きつけた。
「全基地の管制AIを凍結しろ!」
「不可能です! 敵兵器の波状攻撃プログラムは、マニュアル対応では対処できません!」
「サテライト・ベースより信号! 映像通信に切り替え……これは!?」
驚愕し慄くオペレーターの声。
総司令官も敏速にモニター画面を見向いた。
『しんあ……なる……統制……の諸く……』
「何事か!?」
「外部からの割り込み通信です! チャンネルが乗っ取られています!」
『プレゼ……は、気に入……もらえたかな?』
「貴様ぁ! 何者だ!」
『名など無い。総ての人類を滅ぼす者』
「卑劣なテロリストめが!」
『進化しすぎたのだよ、人類は。一度、文明をやり直さねばならない』
「1万年かけて築いた歴史を、灰燼に帰そうというのか!」
『新たな歴史は、再び旧人類の血が成し遂げる』
突如、コンソールより緊急アラートが鳴り響き、
「え、衛星軌道上より、超高エネルギー反応が――」
次の瞬間、世界から一切の音が掻き消えた。
『……腐った大地は、一度、表層を焼き尽くさなければ、芽吹くことなどありはしない』
――この日、人類は、史上何度目かの滅びを迎えた。