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ジーナ  作者: 伊藤 克
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七十一 北の村人・老女ソフィー(一)

「ヒルダはいるかい?」

 夜明け前、暖炉の前の揺り椅子に座っていたソフィーが、弱々しいしわがれた声で女を呼んだ。しかし返事はない。椅子の隣に立つ止まり木には一羽の鷲が羽を休めている。

 ソフィーは揺り椅子に体をまかせながらため息を一つついた。

「しょうがないね。ギギ、おいで。」

 ソフィーが手のひらを差し出して声をかけると、ネズミが手のひらに乗り、腕を通してソフィーの膝に乗ってからソフィーの肩へ飛び乗った。体長十センチはありそうな大きな黒ネズミだ。固そうだか艶のある黒い毛はこのネズミが飼われている事を示していた。

「ギギ、おまえと会ったのは十四年前だったね。まだ生まれたてで目もあいていなかったのだよ。なんでジーナの服に紛れ込んでしまったのだろうね。」 その頃を思い出す様にソフィーはまぶたを閉じた。ギギは、幼かったジーナがここへやって来た時に着ていた服に紛れ込んでいた、生まれたてのネズミだった。当時城で魔術師をしていた従姉妹が持たせたものかとも思ったが、そのネズミにはなんの仕掛けも魔力もありそうには無かった。自分を超える魔術師である従姉妹が持たせた物ならばきっと何か意味がるに違いない、とずいぶん悩んだものだが、聞くべき従姉妹はすでにこの世の人では無い。十四年前の動乱の中で命を落としたのだ。「ネズミの寿命は二年くらいの筈だけれど、お前はずいぶんと長生きをしてきたね。」 ソフィーの肩に乗っていたギギはソフィーの耳を強く噛んだ。耳から血が滲む。ネズミのギギがその血をなめ続けている。

「十四年も長生きするなんて、化けネズミだねぇ。お前がここまで長生きできたのは、私の耳を噛む癖のせいなのか、私の従姉妹が魔術をかけたためなのか、私にはわからないけれど、私の寿命はもうすぐ。そうしたらお前はどうするのかねぇ?」

 ソフィーはギギに本気で答えを求めているわけでは無かった。その質問は独り言の様なものだった。

「今日、ここへおまえを運んできたジーナが久しぶりに帰ってくるよ。」 ソフィーはそう言って血をなめているギギの背中を撫でた。ソフィーの声を聞き流しているのか、ギギはソフィーの耳を舐め続けている。

 静かな時が流れた。「ギギ、ヒルダを起こしてきておくれ」

 その黒ネズミは、長い弾力のある尻尾でソフィーの頬をひとなでしてから奥の部屋へ消えた。


 ぐっすりと眠りについていたヒルダは、顔を這う生暖かい感触に目を覚ました。黒い小さな顔についている真っ赤な二つの目がヒルダの顔に乗っていた。

「きゃー」

 悲鳴を上げてヒルダは飛び起きた。

 布団からはね飛ばされた黒ネズミは、掛け布団のへりを両手で強く握りしめたまま睨んでいるヒルダへ、感情の読めないなまなざしを向けた後、扉の隙間から去った。毎朝の事なのに、ヒルダは、大きな黒ネズミに慣れる事は出来なかった。

 二メータ四方の狭い部屋にベッドが一つ。壁にはヒルダの着替えが何着か吊されていた。他に荷物が無い殺風景な部屋だった。

 小さな窓にはまっている戸を少し開け、外を覗いた。暗闇から冷気が吹き込む。ヒルダは慌てて窓を閉め、吊されていた服の中からカートルとよばれる、長袖の上着とスカートがつながった服を選んだ。外出を覚悟していたヒルダは一番温かそうな服を選んだのだが、裏地がついていない秋物の服では外の寒さに耐えられそうにない。腰に厚手のエプロンを巻き、その上に外套を羽織ってから、部屋を出てソフィーのいる居間へ向かった。

 ソフィーは居間の暖炉の前にある揺り椅子に座って編み物をしていた。膝の上にはあの忌々しい黒ネズミが乗っている。

「ヒルダ、遅かったね。もうすぐ陽が昇るよ。祠へのお参りはどうするんだい?」

「ソフィー様、もうすぐ冬です。毎日でなくても良いんじゃありませんか?」

「私は構わないよ。でも、私の所にいるのなら、毎日のお参りが欠かせないのだけれどねぇ。」

「えぇ、確かにそうお約束しました。」

「外套を着ているのは外へ出る為なのだろう?陽が昇る前に早く済ませておいで。」 ヒルダは外套の前ボタンを留め、外へ出た。

「ギギ、ヒルダの様子をみていておくれ。何かあったらすぐに報告するんだよ。助けにいかなくてはならないからね。」

 ソフィーにそう言われた黒ネズミのギギは居間から出てキッチンへ消えた。キッチンのどこかにギギ専用の通路があるのだろう。家の出入りをする時、ギギはキッチンを通り道にしていた。

 ギギが去ると、ソフィーはゆっくり椅子から立ち上がるり、居間の窓を開けた。冷たい空気が部屋に流れ込む。

「グルー、散歩にいっておいで。」

 振り返って鷲に話しかけると、鷲のグルーは窓の枠に爪で止まり、ソフィーに頭を一振りした後、二メータはある羽を広げて薄暗い空へ飛び立っていった。


 ヒルダは陽の昇らない薄暗い山道を登っていた。

 まだ枯れずに残っている葉には朝露がついていて、ヒルダが着ているカートルの裾を濡らしていた。決して楽とは言えないこの務めにはささやかなご褒美があった。それは付き合っているフランツと二人だけで会える事だ。

 しかしいつも会える訳ではない。北の村人は皆、何かしら仕事を村人幹事から命じられている。フランツの仕事は、北の村の入り口を通っているカテナ街道を見張る事だ。早朝のこの時間が受け持ちの彼はなかなか抜け出す事が出来ないのだ。今日は彼に会う事が出来るだろうか。

 そう思いながら山道を登っていると、道の先に立つ人影を見つけた。フランツだ。ヒルダは小走りで近づいた。

「ヒルダ、またお参りか?」

 木の陰から荷物を背負ったフランツが出てきてヒルダに話しかけた。ヒルダは笑顔で応えた。

「フランツ、街道を見張る役割があるんでしょ。お勤めは大丈夫なの?」

「ああ、マシューに任せてきた。」

「自分で見張らなくて大丈夫なの?」

「マシューは年寄りだが、真面目だから大丈夫だ。」

「いつもマシューにさせているけど、いいの?」

「断らないのだから大丈夫なんだろう。服や食べ物を与えているんだから働いて貰わないとな。」

 朝から夜まで働いているマシューに比べて、見張り役以外の時間に何をしているのか判らないフランツの方がよっぽど働きが足りないようにヒルダは感じていた。それも村人の特権なのかも知れない。フランツは話を続ける。

「毎日こんな時間に祠へおまいりしろとは、ずいぶん意地悪な事だな、ヒルダ。」

「そうよ。あのババァ、私を虐めたいだけなのよ。毎朝薄汚いネズミが私を起こしに来るのよ。」

「そういえば、ヒルダはネズミが大嫌いだったな」「それを知っててソフィーは私にネズミをけしかけて来るんだわ。」

「たかがネズミ一匹になんでそんなに興奮しているんだ?」

「只のネズミじゃないのよ。こんなに大きいんだから。」

「そんなに大きくはないだろう?」

 フランツは笑いながら言った。ネズミ嫌いのヒルダが大げさに言っているのだ、とフランツは思ったのだ。

「本当よ。それに、もう十年以上生きてるだそうよ。近所の人がそう言っていたわ。」フランツの記憶では、確かネズミの寿命は二、三年の筈だ。代替わりさせながら飼っているネズミを、一匹を続けて飼っていると勘違いをしたのだろう。三十歳をすぎているヒルダがネズミを苦手な事に女らしさを感じた。

「こんな仕事、早く辞めたいわ。」

「でも、幹部からの命令だぞ、辞める訳にはいかんだろう。」

「だから二ヶ月も我慢しているのよ。でも、もう限界だわ。」

 ヒルダは顔をゆがめてそういった。


 しばらく山道、時には獣道を昇った先に、高さが十メータ以上はありそうな岩壁に囲まれた、細長い通路が現れた。それは巨大な岩を真っ二つにした狭間の様だった。

「ここよ。」 片方の岩壁の下に数十センチ四方に掘られた窪みがあり、そこに小さな像が彫られていた。

「ソフィーはこの中に入りなさい。って言うのよ。入れる訳ないじゃない。」 ヒルダが示した祠をフランツは屈んでのぞき込んだ。

 岩を彫り上げたのだろう、手前に像が立ち、奥の壁には細かな模様が彫られている。供物を置く台のつもりなのか、像の足下には石の箱が置かれている。フランツがその箱を持ち上げようとしたがびくともしなかった。

「フランツ、それは岩を削りだして作ったものよ。動かないわよ。」

 ヒルダはフランツの顔を見ながらそう言った。

「ヒルダ、とても人間が入る事はできないぞ。」

「当たり前じゃないの。ソフィーは呆けてるんだと思うわ。」

「じゃぁ、なんで幹事はヒルダをソフィーの所へ行かせたんだ?」

「知らないわよ。ソフィーを二ヶ月も探って何も見つけられなかったのよ。あれはただの婆さんよ。幹事達が気にする様な秘密なんてないのよ。」

 ヒルダは二ヶ月前に村人幹事から呼び出しを受けた時の事を思い出していた。


 ギロの港町の北にある、一度廃村となったサッタ村の、海側の崖の上にある屋敷。他の家の二倍以上はあるその屋敷は村人の集会所となっていたが、集会に参加出来るのは村人幹事だけだった。一般の村人がこの屋敷に入る事ができるのは、ヒルダの様に、幹事に呼ばれた時だけだった。勿論村人と認識されていない村の住人は近づく事もできない。集会所を守る様に建つ、周囲の家には村人幹事が住んでおり、常に監視をしていたからだ。

 ヒルダは集会所の小部屋に案内された。窓が開けられていたが、ガラスが嵌まっていたため、冷たい外気が部屋に入る事は無かった。それでも室内の半分のランプは灯されていた。

 高価な透明なガラスは王族や貴族の邸宅に使われていたが、このような僻地の民家に使用される事はありえなかった。

 部屋の正面には顔をすっぽり覆った黒い三角頭巾を被り、黒いローブに身を包んだ男が座っていた。首には金色のペンダントが下げられていた。それが幹事の階級を示すのだろうと想像はついたが、村人幹事について知識の無いヒルダには判断がつかなかった。

「ヒルダの家系はバリアン大陸の東側だったね。」

「はい、そうです。今はドリーセン公国となっている地に百年前に存在していたバーセルト家です。でも、ドリーセン公国が出来た時に一族はちりぢりになったと聞いています。」

「それで、今まではどうしていたのかね?」

 黒い頭巾の男がヒルダに聞いた。

「その後、祖母と両親とで、首都ハダルで暮らしていたのですが、十数年前のダンク・コリアード王の混乱で私の家族もちりぢりになりました。」

「その後、家族はどうしたのかね?」

「判りません。探したのですが、見つからなくて。ガエフ公国までたどり着いた時に、偶然サッタ村の人に会って、その人の紹介でここにやってきたのです。」

 ヒルダは三角頭巾の男から目をそらさずにそういった。しかし、全てが真実ではない。ヒルダは真実をここで言う気は無かった。

「ここを紹介したのはフランツだったね」

 ヒルダは無言で頷いた。

「ヒルダは魔術をつかえたな?」

「はい」

 そう言うと、右手人差指を消えているランプに向け呪文を唱えた。幼い頃、祖母から教わった何の意味があるのか判らない呪文。ランプが灯った。

「ほう、我らの仲間は、魔術師と違って魔方陣で魔術を使うものが殆どだが、魔術師の様に魔力のみでその力を発揮できる者はなかなか居ない。」

 魔術師という言葉を聞いてヒルダは体を固くした。

「申し訳ありません。なかなか魔方陣を覚える事が出来なくて。だから魔方陣を扱うのは苦手なんです。」

 ヒルダの言い訳を聞き流してその男は話しを続ける。

「北サッタ村にソフィー・ラスタバンという名の老婆がいる。知っているか?」

 ヒルダは首を横に振った。サッタ村に潜んでいる北の村人の仲間になってまだ半年、外回りを殆どしなかったので近隣の情報には疎かった。

「ちょうど良い。その老婆は有名な魔術師だ。お前は魔術師に化けて、老婆の所に行って弟子にして貰え。」

 自分の正体がばれた訳では無い事を知ってほっとしたヒルダだったが、その命令の意味がわからなかった。


 ヒルダは誰にも明かして無かったが、祖母は魔術師だった。母にその素養は無かったようだが、まだ幼かったヒルダの魔術能力に気付いた祖母が魔術を教え込んだのだ。だからヒルダも魔術師と言えた。

『ヒルダ、私たち魔術師はコリアード王家に睨まれているの。決っして人に知られてはだめなのよ。勿論恋人にもね。判ったかい?』

 幼い頃から何度も言い聞かせられた言葉。だから首都ハダルで知り合った元恋人のコルネリウスにも明かさなかった。結婚を約束してくれたコルネリウスの前で魔力を使っても不自然では無いように、ヒルダは司祭師の遠い親戚だ、と彼に偽っていた。

 司祭師の次男だったコルネリウス・バーセルトは、付き合っている一年の間に、バーセルト家の様々な事を教えてくれた。

 コルネリウスの実家には丸池がある大きな庭があって、年中きれいな花が咲いていたのだという。

 コルネリウスは、炎の魔方陣やバリアをはる魔方陣などを知っていたが、広い庭全体を常夏にする魔方陣だけは、親にいくら頼んでも教えてもらえなかった。それは、バーセルト家に代々伝わる魔法陣の力で、その秘術は後継者の長男しか教えてもらえなかったらしい。

 複雑なバーセルト家の家紋を完璧に表現でき、バーセルト家の遠縁として村人になれたのも彼、コルネリウスが司祭師についての様々な事をヒルダに教えてくれたおかげだった。そんなバーセルト家も十数年前のダンク王が王位を継いだ時の混乱の中で完全に没落し、彼コルネリウスはヒルダの元を去ってしまった。


「どうしたのかね?」

 目の前にいる男の声で我に返ったヒルダは聞いた。

「それで私は何をすれば良いのでしょうか?」

「ソフィー・ラスタバンは何もないこの地に長く滞在している。その理由を知りたい。秘宝を隠しているのか、あるいは誰かを待っているのか。」

「では、その老女から秘密を聞き出せば良いのですね?」

「いや、何もしなくて良い。ソフィーは高名な魔術師だ。何かを探ろうとすればすぐに感づかれるだろう。変った事があったら報告するだけで良い。連絡係にはフランツにやって貰おう。君たちは仲がよいのだろう?」

 ヒルダは赤面しながら頷いた。

「よろしい、準備ができたらとりかかってくれたまえ。我々の事を決して悟られないように、細心の注意を払う様にな。」

「あの、お給金は?」

「悟られる可能性があるので渡す訳にはいかないが、欲しい物があればフランツに言ってくれ。彼からの贈り物ならソフィーも疑わないだろう。」

「あの、無給で働くという事でしょうか?」

「我々全員の為だ。我慢して欲しい。ただ、大きな情報が得られれば幹事への道が開けるかも知れない。だが、期待はしない事だ。」

 そう言われて男との会談は終わった。


 それから二ヶ月、未だにソフィーの弟子になれずにいる。

 岩壁の祠を探っていたフランツが立ち上がった。

「仕掛けはなさそうだな。」

「そうよ。何日も調べたのだから。」

「なんでソフィーはこんな小さな祠に入れとヒルダに言ったんだ?」

「判らないわ。でも、私が弟子にして下さいと言ったら、『祠に入る事が出来れば弟子にしてやろう』と言ったのは本当よ。初めて聞いた時には簡単な宿題だと思ったの。でもこの小さな祠を見で驚いたわ。こんな小さな祠に人間が入れる訳ないじゃないの。」

「そうだな。ヒルダ、ソフィーに馬鹿にされているんだよ。」

「あのババァ、絶対私に意地悪をしているのだわ。それに魔術なんて一度も使った事が無いのよ。ただの呆けた婆さんだわ。村人幹事の人が間違えているのよ。きっと。」

「本当に一度も魔術を使った事はないのか?」

「そうよ。それに、夜中に変な声でうなっていたりするわ。」

「寝言か?」

「ううん、動物のうなり声みたいな変な声。この前なんか昼間からうなっていたわ。最初は病気かな、と思ったけれど、あれは呆けちゃってるのよ、絶対。」

 もしヒルダに古代語の素養があれば、そのうなり声が古代語の詠唱である事に気付けたかも知れない。しかし、古代語を魔術呪文として暗記しただけではそれを推測する事は不可能だったろう。

 特に、ジーナが魔術師の塔にある古代の魔方陣で異界の扉を操作していた時に、ソフィーがジーナの詠唱に会わせて離れたこの地から力を送っていた事情など知るよしも無い。


 ヒルダは高名な魔術師の弟子になれば、新しい魔術を覚える事が出来るかも知れないと思っていたが、それも叶っていない。

「おい、ヒルダ、幹事を非難する事はやめておけ。聞こえると追放されるぞ。」

「その方がよほどスッキリするわ。」

「永久追放された者達がその後どうなったかヒルダは知らないのか?」

「知らないわよ。あなたの紹介でここに来てからまだ半年だもの。」

 フランツは小声で言った。

「追放された後に再会できた者は誰もいないんだ。これがどういう事か判るか?」

 ヒルダは思わず大きな声をだした。

「消されたっていう事?」

「大きな声をだすな。その可能性があるというだけの事だ。だから彼らに嫌われない事だ。」

 臆病になったフランツは思わず周囲を見回すが、岩壁に挟まれたこの場所に人影はいない。

「もう戻りましょう。」

 ヒルダは来た道を引き返し始めた。

「おい、お参りはいいのか?」

「いいのよ。誰が見ている訳でもないし。こんな古ぼけた祠を真剣にお参りする気はないわ。」

 先を歩くヒルダにフランツは話しかける。

「御利益は何も無かったという事か。」

「フランツ、少しはあったわ。その祠で金貨を拾ったの。数枚だけれど。でも全部私が拾ったからあそこにはもう何もないわよ。」

 ヒルダに促されてフランツが道を下りはじめた。その後ろをヒルダがついて歩く。

 岩壁から離れると、陽が昇っていて山道は明るくなっていた。

 ヒルダが先を歩くフランツの手にそっと触れると、フランツが握り返してきた。二人だけの時間が取れる二人だけの合図だ。

「フランツ、いいの?」

「ああ、今朝は大丈夫だ。」


 坂道を下る二人の少し後を赤い目をした黒ネズミが後をつけている事に二人は気付いていなかった。

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