五十一 ギロの魔術師・バウとギロの闘犬(二)
倉庫の前での休憩はすぐに終わった。ジーナは食器や鍋を馬車に積み込んだ。パンとスープが少し残っただけで殆どが空になっていた。
ハンスが話しかけてきた。
「ジーナ、エニブと馬車は僕たちが塔へ連れてゆくよ」
「あら、どうして?」
「だってこんな沢山の食器を洗うのは大変だろう。荷役の仕事が終わったら僕たちが洗って返すよ」
「いいのよ。気を遣わなくても」
「こんなに美味しかったんだからせめてこの位の事はしないと」
「あの、ジーナさん」
「ハリー、どうしたの」
「残ったパン、僕たちが貰ってもいいですか?」
「夜までにお腹がもたないの?」
「そうじゃなくて僕たちがいる周旋屋では夜の食事は僅かしか出ないんだ」
「スープが少し残っているから小さな壺に移し替えてあげるわ。でもハリーとフロルの夜食には少し足りないかも知れないわよ。ハンス、洗い物とエニブの事、お願いね」
ジーナは残りのスープと肉類を小さな壺に移し替えた。冷たくては美味しくないだろうと思い壺に魔法陣を描き足した。後始末とエニブの事をフーゴとハンスに託して倉庫を後にした。
痩せた二人は満足な食事を与えられていないと言っていた。どんな所で世話になっているのだろうか。可哀想に思ったジーナは明日も彼らの食事を用意する事にした。
エニブの馬車が一緒ではないので、気楽にギロの町を歩いた。バウが横についている。再び魔術師のカラスの気配を感じたジーナはバウに話しかけた。
「バウ、カラスには注意するのよ。私達の事を見張っている気がするわ」
了解したのだろう、バウは歩きながら頭をジーナの足にすりつけてきた。
午前中は痩せて力が入っていなかったハリーとフロルだったが、ジーナが持ってきた牛の肉を食べて元気が出たらしく、ハンスやフーゴに負けない働きを始めた。
共に働いている倉庫番のダニーがその動きに感心している。
「ハリー急に元気になったじゃないか」
「はいダニーさん、あんなに沢山食べたのは久しぶりです」
「だが、初めから張り切るとあとでバテるぞ」
「でもご馳走してくれた分は頑張らないと。なあ、フロル」
「そうだね。それにここは優しい人達ばかりだし。明日もここで働けるといいな」
「そんなにここの仕事が気に入ったのなら、俺から人足頭のホルガーに頼んでやろう」
二人の少年に同情していたダニーは本気でそう思った。
コリアード軍向けの荷物はいちいち量ったりしなかった。違いがあると兵隊を大勢つれて来て文句を言いに来た上に、手当たり次第に暴れて帰った。後悔する事になるため、数や重さを誤魔化す事はしなかった。天秤を持って来て都度量るのは商人達だけだったのだ。
手間のかかる商人が少なかったので、荷役仕事は順調に進んだ。
突然数人の兵士が倉庫にやって来た。
皆コリアード軍の紋章が入った鎧を着て、両刃の剣を腰に吊している。手には周囲を鉄で補強した木製の丸い小型の盾を持っている。その中央に付けられた鉄製の半球には魔術師の文様が彫られていた。どの盾も無傷なのはこの兵士達が一度も戦場に出た事がなく、まともな訓練も行っていないからに違いない。
一人だけ盾を背負った男が大声で言った。
「此処の責任者はだれだ」
その男の盾は傷だらけで、中央に打ち付けられている半球の一部がへこんでいた。
作業していた人足達は全員作業をやめ、倉庫の奥に顔を向けた。
ホルガーが倉庫の奥から出てきた。
「人足頭は俺だが何の用だ」
騒ぎを聞きつけたシモンも慌てて出てきた。シモンは軍隊向けの荷物に過ちがあって文句を言いに来たのかと思ったのだ。
「私は魔術師の館の警備班長だ。魔術師様のご命令で馬と磁石を持って行く」
「班長、此処では馬は飼っていないぞ、フレッドさんの館がこの倉庫の裏にあるからそこで聞いてくれ。フレッドさんが馬を二頭持っている」
「その馬ではない、倉庫の前に止めている白馬だ」
「あれはここの物ではないぞ」
「班長さん、あの馬はジーナという娘が連れてきた馬ですよ」
シモンはホルガーに続いていうと、兵士が言った。
「あれは魔術師の館で飼っている馬だ。返して貰おう」
フーゴも説明した。
「兵隊さん、エニブはガサの町にある魔術師の塔で飼っている馬ですよ」
「小僧、エニブとはなんだ?」
「あの馬の名です。魔術師のジェド様からいただいた馬です」
「俺たちはそのジェド様の命令で来ているのだ。仕事の邪魔をするな」
皆の見ている前で他の兵士達が馬車の乗っている食器や鍋を地に降ろし、エニブから馬車を外す作業を始めた。
フーゴは抗議をしかけたが、命令されて来ている兵士に何を言っても無駄だと思い、止めた。警備班長は言葉を続けた。
「この馬は戦闘用の馬で荷役用の馬ではない。こんな粗末な馬車を引かせるなんて馬の知識がない奴がする事だ」
ホルガーが、前に出ようとするハンスの肩を掴んでその動きを止めた。
「この倉庫に鉄の塊がある筈だ。それも持って行くのでここへ出せ」
人足の一人が、午前中にジーナが商人から取り上げた磁石を持ってきた。
「俺たちは命令されただけなのだ。文句があるなら俺たちでは無くて魔術師のジェド様に言ってくれ」
警備兵達は白馬のエニブを連れて去った。後には引き手のいない馬車と食器や鍋が残された。
ギロの魔術師の館近くの路地裏に居酒屋チョップがあった。一般の居酒屋は食堂も兼ねている為陽が昇りきる頃には開いている店が多かったが、この店が開くのは昼からかなり時間が過ぎてからだった。
犬を連れた商人のランスが入口の木に犬を繋いで店に入った。この店はならず者が集まる事で有名だったため、町の人が食事に来る事は珍しく、昼間から酒をあおる者が数人いるだけだった。開店する時間が遅いのも当然だった。
ランスは奥のテーブルに座っている男に向かって歩きながら声をかけた。
「トッシュ、お前が貸してくれた闘犬は役立たずだったぞ」
「そんな事はなかろう。ランスに貸したバニッシュは先月の闘犬で十位に入ったのだからな」
「トッシュ、足を怪我してから頭が悪くなったのではないか? もう一度言うぞ、あの犬は駄犬だ」
「今まで何回もお前に貸しているのだぞ。なんで今日だけそんな事になるのだ?」
トッシュは立ち上がった。左腰に両刃の剣を下げ、右手で杖をついている。
「トッシュも哀れな姿になったものだな」
「何だと」
トッシュは杖を左手に持ち替え、剣を抜いた。
「片足が不自由になったとはいえおまえを殺す事はできるのだぞ」
トッシュは剣先をランスの腹に突きつけた。
「わかったよ。トッシュ」
ランスは両手の平をトッシュへ向けて後ずさった。
トッシュの兄貴分であるダミアンがいれば短気なトッシュを押さえてくれるのだが今日はいなかった。
トッシュがこんな商人にまで馬鹿にされる様になった原因は数週間前に遡る。魔術師の塔のルロワがまだ生きている頃の事だった。
ルロワはガサのはずれにある魔術師の塔の二階でひっそりと生きているのだが、トッシュを含めた町の人達はルロワがレグルスに成敗されたと信じていたのだ。
トッシュが、元気だったルロワの依頼でガサの居酒屋にいるエマを襲った時の事だ。港町ギロの路地裏で破落戸二人を連れて三人連れのエマを囲んだ。エマの連れは漁師と少女だった。絶対に成功する筈だったのだが、連れの少女が意外と手強く、トッシュは右手と右足に大きな怪我をした。手の怪我は治ったが、足は筋が切れてしまったらしく、歩く為に杖を手放せなくなってしまった。
小娘に怪我を負わされた事が噂になっては困ると思ったトッシュは、その時に手伝わせた男二人を口封じの為に殺して自分は兵隊に襲われたと嘘をついたのだ。しかしこの居酒屋では片足が不自由になったトッシュを相手に酒を飲む者は次第に減っていった。今では兄貴分のダミアンくらいだが、ここ数日は居酒屋に姿を見せていなかった。
今では人足の周旋屋を営んでいる女の世話になりながら暮らしていた。
トッシュは人足として集めた子供達を監禁していたのだがある日、一人の子供が逃げた時、闘犬のバニッシュを借りてきて逃げた子供を追わせたのだ。その時は子供を血だらけにして引きずってきた実績がある。それほどヤワな闘犬ではない。
「判った。調べてみよう、二、三時間待ってくれ」
フレッドの倉庫では荷役人足達が馬車から荷を下ろしたり、積んだりしていた。魔術師の館の警備兵に邪魔をされはしたものの、午後は意外に仕事がはかどり、数時間すると運ぶ荷はあらかた無くなっていた。
ホルガーが子供四人に声をかけた。
「お前達、今日は終わりにしていいぞ」
倉庫番のダニーが振り向いて言った。
「ホルガー、まだ陽は高いぞ。いいのか?」
「ダニー、ハンス達はともかく、痩せた二人は早じまいさせないと疲れ果てて明日来られなくなるぞ」
「じゃあ、ハリーとフロルは明日も此処で働かせて良いのだな?」
「あの体格では何処へいっても満足に働けないだろうし、他の人足達に虐められるのも可哀想だ。ダニー、面倒を見てやれ」
「ハリー、フロル、こっちへ来い」
二人は怯えた目でホルガーを見ている。一度ならず荷役の途中で穀物の入った袋を落とした。また、重たい木箱を一人で運べない時もあった。自分達の働きが良く無かった事を十分自覚していた二人は怒られると思っていたのだ。
「何でしょう、ダニーさん」
「人足頭のホルガーがお前達を明日も使ってくれるそうだ」
「有り難うございます。僕たち明日も此処で働かせて欲しいなと思っていたんです」
「お前達それは只で昼飯が食えるからだろう」
会話を聞いていた他の人足達が一斉に笑った。
「ハンス、明日の昼飯はお前達四人分だけでいいからな。人足達を甘やかしてもろくな事にならない、とあの少女によくいっておけ」
「でもジーナならまた沢山持ってきちゃうかも知れませんよ」
「それなら食事代をお前の給料から天引きしてジーナという少女に俺から払ってやる」
「判りました。明日は余分な食事を用意しない様に僕から伝えます」
給料がへらされては叶わない。ハンスは慌てて言った。しかしジーナが少女などではなく、十八歳になる強い女だという事は黙っておいた。
「裏に小川があるからそこで食器を洗っていいぞ。今日の給金はシモンから貰え。それと荷馬車は邪魔だから元の場所へ引いていけよ」
「わかりました」
フーゴが答えて馬車の脇に置いてある食器を抱えた。他の三人も鍋や食器を抱えて倉庫の裏に回った。そこはフレッドの館の庭になっていて、境に堀のような小さな川が流れていた。その小川は庭へ続いていた。庭には様々な植物や木が植えられていたが、秋も深まった今はどの植物も枯れていた。
庭の中央には直径数メートルの楕円形の泉があり、小川の水はその泉から流れ出ていた。小さな流れに向かって四人並んで食器を洗った。手が冷たくなったが、苦とは思わなかった。
「フーゴ、ハンス有り難う。僕たち久しぶりに美味しいものを食べたよ」
「じゃあ、ハリー達はいままでどうしていたんだい?」
フーゴが聞くとハリーが答えた。
「他の人達の食べ残しを貰うか、食事抜きになるかのどちらかなんだ。だからお腹が空いてどうしょうもなかったよ」
「ハリー達は周旋屋にいるんだろ。そこの親方は酷い人だね」
「うん。さっき言っていたケルバライト先生というのはハンス達の親方なの?」
「違うよハリー、先生は先生さ。僕たちに親方はいないんだ」
ハンスが更に説明しようとするのをフーゴが脇腹をつついて止めさせた。ハンスが喋りすぎる事を牽制したのだ。フーゴとハンスが魔術師である事を隠して働く様、ケルバライトから強く言われていたのだ。
洗い物が終わった。残り物を入れた壺をハリーに渡そうとしたフーゴは、その壺が暖かい事に気付いた。壺を良く見ると模様の中に、新しく描かれた魔法陣を二つ見つけた。急いで描いたのだろう、小さくてフーゴにも扱える簡単な魔法陣だ。ケルバライト先生が気を利かせたに違いないと思ったフーゴはこの暖かさが夜中まで続く様に、他の三人に背を向けて古代語を唱えた。
「この食べ物、持って帰っていいんだね? ありがとう」
フーゴから壺を受け取ったフロルがいった。
「ハンスもフーゴも給金を直接貰えるんだろう? 羨ましいな」
「そう言うハリーやフロルだって後でまとめて貰えるんだろう? 同じだよ」
ハリーとフロルは顔を見合わせた。
「僕たちの給金は食事代や宿代にみんな消えてしまうんだ」
「でもハリー、さっき食事が殆ど出ないといっていたじゃないか。何で食事代にお金が消えちゃうんだ?」
「うん。僕たちがいる周旋屋は最悪な場所なんだ。でも契約書があるから逃げられないんだよ」
ハリーは寂しそうに笑った。
フーゴとハンスは壺とパンをハリー達に渡してからシモンの所へ寄り、二人分の給金として銀貨一枚を受け取った。
朝預けたダガーは返して貰って二人の腰に収まっている。
二人は馬車に食器や鍋をのせると引き棒を持ってガサの町へ向かった。
陽が傾き始めた頃、杖をついて右足を引き摺ったトッシュが、ギロの町の北東にある小山へ向かっていた。鎖に繋がれた闘犬のバニッシュがその後ろを付いて歩いている。
トッシュは、商人のランスと居酒屋チョップで別れた後、仕事にあぶれている者を使ってフレッドの倉庫の様子を調べさせた。いかさま商人のランスの天秤のしかけがバレてしまった事はその近所でちょっとした噂になっていた。その仕掛けを見破ったのが白い犬を連れた少女だというのだ。小柄な為に少女と勘違いしてしまったあの女。
忘れもしない。この足を駄目にしたあの女に違いない。あの時も白い大きな犬を連れていた。こんな形で自分の仕事の邪魔をしてくるとは予想できなかった。エマを襲った時も油断さえしなければ負ける筈は無かったとトッシュは思っていた。仕返しをしてやりたいが、他の者に手伝って貰う訳にはいかない。居酒屋チョップに出入りしている大女のゼルダならともかく、小娘に負けた等とは口が裂けてもいえない。トッシュはその恥を隠す為に二人の若者を殺しているのだ。
小山への道を上るにつれて周囲に獣特有の臭気が漂ってきた。同時に犬の吠え声が近づいてくる。昇りきると二、三十メートル四方の板塀に囲まれた空き地へ出た。板塀と言っても粗末な物で、高さは一メートル前後しかなかった。
トッシュは板塀の隙間から敷地内に入った。数メートルおきに木の杭が地面に打ち付けられていて、その杭には一匹ずつ犬が繋がれていた。闘犬を飼育している商売人の飼育場だった。周囲に流れていた異臭は闘犬のものだったのだ。
「ゼップ、いるか!」
トッシュは大声で呼んだ。
犬の餌を入れているのだろう、大きな木の器を持った大男がやってきた。毛皮のベストを着、両手両足には何重にも分厚い革を巻いている。犬たちが噛みついた時に怪我をしないよう、防護しているのだ。何度も咬まれているのだろう、どの毛皮も染みだらけでボロボロになっていた。
いつ洗ったのか判らない程汚れた毛が、薄くなった頭に張り付いている。顔にはいくつもの傷があった。
衣服に染み付いてしまったのだろう、トッシュに近づく男からは犬たちと同じ臭気が漂っていた。
「やあトッシュ、バニッシュを返しにきたのか?」
「ゼップ、この犬は駄犬になってしまったぞ」
「どうしたのだ?」
「命令をしても人間に噛みつかなくなったのだ」
「バニッシュは優秀な闘犬だぞ。此処の犬の中で一番頭がいいんだ。そんな事はあるまい」
「ゼップ、俺も疑って調べさせたのだ。バニッシュを連れて行ったランスの命令を全く聞かなかったというのは本当の事らしい」
トッシュは、仕事にあぶれていた男達に調べさせたフレッドの倉庫前での出来事をかいつまんで話したが、小柄な女の事は言わなかった。やがてゼップの耳に入るだろうが、たいした問題とは思わないだろう。
「トッシュが言うのなら本当なのだろう。判った、もう一度躾け直そう」
「そんな事が出来るのか?」
「荒療治だが、それでだめなら処分するしかない」
「トッシュもつき合うか?」
「ああ、どうせ暇だしな」
二人は鎖で繋がれた犬たちの間を歩いた。獰猛な犬たちが見慣れないトッシュに吠えかかったが、鎖の長さが計算されているのか、噛みつく事はできなかった。繋がれている犬が地面を掘った跡なのだろうか、地面には杭を中心とした半径一メートル位の円状の筋がついている。
「トッシュ、その円に近づくなよ。咬まれるぞ」
犬たちが地面に付けた円の間を恐る恐る歩いているトッシュを見たゼップが注意した。
トッシュがゼップの後をついて行くと、敷地の奥に大きな鉄格子の檻があり、数匹の犬が押し込められていた。どの犬も口からよだれを垂らし、濁った目をしている。興味を引かれたトッシュが近づこうとするとゼップが止めた。
「よせ、咬まれると死ぬぞ」
「この犬たちは何なのだ?」
「疫病犬だよ。病気が他の犬たちに移るのでな、閉じこめてあるのだ。人間が咬まれると狂い死ぬぞ」
「ゼップ、この病気の犬達をどうするのだ?」
「檻ごと燃やしてしまうのだ。それ以外に方法はない。早く処分しないと他の犬に病気が移ってしまう」
ゼップはそう言いながら敷地の反対側に向かった。そこには高さ二メートルはある何本もの木の柱と網で囲われた五メートル四方の空間があった。天井も網で覆われていて逃げられないようになっている。その意味はトッシュにも判った。闘犬の訓練をする為に闘犬場と同じ広さに作ってあるのだ。
出入り口にしているのだろう、一カ所だけ木の板が貼り付けてあり、その近くには犬を繋ぐための杭が何本も並んでいる。
陽が少しずつ傾いていて夕闇がせまりつつあった。
「もうじき暗くなる。陽があるうちにやってしまおう」
ゼップはバニッシュの首輪を外すと柵と網で囲われた中へ入れた。
バニッシュは不安げにゼップの顔を見上げている。
飼育場へ戻ったゼップは鎖で繋がれている犬の中から数匹を選び、闘犬場の出入り口の杭に繋いだ。
網の中でゼップの様子を見ていたバニッシュは不安に駆られているのか、尻尾を又の間に巻き込んで体が震えている。何度も経験し、自分も荷担した事のある犬同士のリンチが始まる事に気がついたのだ。