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「自分は面倒くさい女だけれどでもでも優しい少年の事が好き」

私がミンデガルデの宿屋で我に返ったのはたっぷり一週間後だった。


ミンデガルデの狭いけれど小奇麗な宿屋で、私はずっとクアトくんにお世話されていたらしい。

クアトくんは、


「フローリアちゃんはずっとベッドの上で座って動かなかった」

と言ってた。


ご飯は、私が食べ物を唇に触れさせると飲み込むのでスープを三食飲ませたと言っていた。

お風呂とお手洗いはクアトくんが洗浄魔法「リフレッシュ」の魔石を買ってきて私にかけてくれたらしい。

使い捨ての魔石で一個銀貨5枚する貴重品だ。


私はクアトくんに真っ青になりながら平謝りしたが、


「お世話というかほとんど魔石がやってくれたし、フローリアちゃんの役に立ててうれしいよ。無理しないで」


との優しすぎる返事しかなかった。


言い訳だけれど。

あの時、カラフルなピエロ「遊び人のリゾッタ」に会って、風船が弾けて頭が真っ白になった。


小さい頃聞いた固定職業「遊び人」の前で人が弾けて死ぬ話を思い出してしまった。


私にも誰かが危害を加えようとしたら、あるいは殺したりしたら相手は弾けて死ぬのか。

相手の罪に対しての罰を判断をしているのは誰なのか。


というか、「遊び人」の教訓を経て、周りの人たちは皆私に親切だけれど、本当はどう思われているのか。


何故固定職業「遊び人」と親戚一同が死ぬ前に、「固定職業を殺す相手」を止めてくれなかったのか。

曖昧だけれど強烈な不安で頭が真っ白になった。


考えないようにしていた事、だった。


大好きなクアトくんと恋人で将来結婚して、その後はどうなるの?

子供は? 私みたいな境遇の子供を産んでしまうのかな。

クアトくんはどうなるの?


せっかく私たち代々の花売りが待ちに待っていた人「クアトくん」。

私はクアトくんとこのまま一緒に居ていいのかな?


そんな考えで身動き取れなくなった私にもクアトくんは優しかった。


日中はなるべく私と一緒に居て、私が寝ているときに宿屋の戸締りをして「遊び人リゾッタ」の元に通っているっぽかった。

なんで私が分かったかというと、クアトくんの後ろ髪に紙吹雪が付いていたのを発見したからだ。


クアトくんはこのまま「遊び人」と仲良くなって仲間にするつもりなんだ、と思った。


そして、一か月位たったある日、クアトくんに、


「話がある」


と改まった顔で言われた。


「話、それって………」


やっぱりクアトくんは「遊び人リゾッタ」を仲間にする、というつもりなんだ。

どことなくふわふわして掴み所のないクアトくん。

言いづらいからそんな深刻な顔をしているのかな。

そう思う私に、


「帰ろう。ダンジョン都市リリスに帰ろう。リゾッタのスキルはいつでも使えるようにタイムダンジョンまでクリアしといたけど、放っておけばいい。ね、帰ろう。他のダンジョンとかもあるし。とりあえずリリスに帰って作戦練り直そう」

「ん……」


「帰ろう」というクアトくんの言葉を聞いたと同時に涙が溢れる。

私は気づくと何度も頷いていた。

2人ともテーブルを挟んで宿屋の椅子に座ってたけど、クアトくんが立ち上がる。

そして、クアトくんに頭を撫でられていた。

手が優しくて、もっと涙が出てきて前が見えなくなる。


「ごめんなさい。私、面倒くさくて意味不明なやつで。私が冒険したい、遊び人見たいって言ったのに」

「僕の方こそちょっと事情あって帰るって言うの遅くなってごめん。こんな時は面倒くさくない、とか言う所なのかな? でも僕はフローリアちゃんのそういうとこ好きだよ。フローリアちゃんらしい味があるっていうか」


私はクアトくんの言葉に小さく「ありがと」と言う。


「ごめんね、僕が自信満々にリゾッタの事を発表したからそんな気になっちゃったんだよね。リリスのダンジョンの先に進みたいならもっと他の方法もあるかもしれないし、ごめんね。リリスに帰って考えよう」


違う。私がクアトくんとの冒険に浮かれてて、大事なことも考えなくて……。

花売りと違った事ができるからって浮かれてたの。

胸に色々な思いが渦巻いて、私は首を振った。


「僕と一緒にリリスに帰ってください。お願いします」

「……はい」


私は頷いて、そのままクアトくんに抱きついて泣いていた。

明日は絶対目が腫れている。

でも、商業ギルドに行ってリリスに帰る馬車手配しよう。

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