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「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」  作者: ひとみんみん


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「クアトくんが危ない!」【魔王の両手】

※本日2回目の更新です。最新話のリンクから飛んでいる方はお気を付けください※

【魔王の両手】


 本当にきっかりの10分後、今度は半透明の大きな手が現れた。

 クアトくんには、『魔王の両手』がどういう攻撃をしてくるのかを事前に聞いている。


『魔王の右手』は木属性。

『魔王の左手』は風属性。


 両手ともに共通の技は『掴み取り』という、パーティーの誰かが拘束される技。

『ぶん殴る』というこぶしの手がぶつかってくる技。


『魔王の左手』の固有攻撃は『吹き飛ばし』。

『魔王の右手』の固有攻撃は『指差し』。


 特に聞いた話では、私は『指差し』が怖かった。


 どういう技かというと……、


「次、『指差し』と『吹き飛ばし』のコンボ来る! リゾッタは初撃控えてくれる?」


 クアトくんが、予備動作から皆に指示を出す。


 半透明の巨大な右手が一点を指差すと。狭い円が地面に緑の線で浮き上がる。

 安全地帯だ、とでもいうようにそこにだけ草が生え、小さい木が生えた。

 その木にはすぐに綺麗なピンク色の桃が実る。


 もう一つの巨大な左手が、空中に魔法陣を描き、強い風が吹く。

 打ち合わせ通りに、緑の円からはみ出さないようにパーティー皆で木の周りに集まった。

 円からはみ出すと、一気に風属性の大ダメージで画面外(? 画面外ってどこだろう。遠くという事かな)まで飛ばされるらしい。

 そして、私たちは風に吹き飛ばされないように気を付けながら、桃をもいだ。


 このステージでは、属性攻撃だけではなく、右手が利き手ゆえに有り余っている力を放出したせいで実る桃が攻略のカギになるそうだ。


 皆が収穫された桃を、リゾッタが渡されて右手と左手に向かって投げた。

 どちらも『魔王の両手』に当たり、ゲージが大幅に減る。


「大体、風に邪魔されて当たらないんだけれど。当たった! 初撃確定優秀だね!」


 クアトくんが嬉しそうに手を叩く。

 ただ、腕は飛ばされないように木に引っ掛けた状態だ。

 皆も同じ。

 ちなみにクアトくんは、


「飛ばされないようにするにはボタンを連打すればよかったのに……」


 とかなんとか呟いていた。

 クアトくんの言うことはいつも謎だらけだ。

 まあ、そういうミステリアスなとこも好き好きなんだけれども。


 そんなこんなな騒動をしながらも、私たちは順調(?)に『魔王の両手』を攻略していたはずだった。


 それが崩れたのは、バックダンサーズの黄色の銃を持った『フォー』が『魔王の左手』のしかける強い風に飛ばされそうになったことだった。


 円からはみ出そうになった『フォー』をクアトくんが、


「あっ、風属性のダメージ源が! 次で必要なのに!」


 と言って、助けようと手を伸ばしたことだった。

 クアトくんの木に引っ掛けていた腕が外れてクアトくんも飛ばされそうになる。


「えっ、ちょ、うっ! や、やだっ!」


 クアトくんが何故か必要以上にパニックになり、腕を振り回した。


「クアトくんっ! 私の手を握って!」

「フ、フローリアちゃん! 僕、僕は!」


 私はクアトくんが飛ばされそうになることに焦り、手を伸ばす。

 だけれど、クアトくんは完全にパニック状態で汗を流し、苦しそうに顔を歪めていて、私の声は届かなかった。


「フローリア! だめよ! あなたまで飛ばされちゃうじゃない!」

「でも、クアトくんが居なかったら、私!」


 魔女に止められたのに、私は無駄なあがきを続けた。

 とうとう強い風に、『フォー』とクアトくんと私で、空中に浮いて投げ出される。


「フローリア! クアト! フォー!」


 絶叫する魔女の声を背に、強い風に乗って目の前が一気に真っ暗になって何も見えなくなる。

 何も……見えない。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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