「いつまでも好きな人と一緒にいたいの……」
話的にはフローリアちゃん側で少しだけ時間が過去です。
クアトが合流する前から。
※これはジャンル恋愛です。
……私は何か忘れてる事がなかったか考えていたけれど、思い出せない。
そうこうしてる内に、ステージでベリーダンスがまた始まった。
今度は最初から大きな声で応援する事にした。
「頑張ってー!! 素敵ー!!」
皆が銀貨や金貨をステージに投げている。
え? そんな事もしていいの?
私はさっそく財布を取り出して、銀貨を一枚投げた。
踊っていた銀髪のお姉さんが、ステージにお金を投げた人にウインクしてくれる。
私の時にはなんと投げキッスをしてくれて、なんだか皆に優越感を感じた。
そんなこんなでベリーダンスを最大限楽しんでから休憩時間になると、黒服の人が寄ってきて、
「お連れ様がお待ちです」
と声をかけてくれた。
振り向くと、クアトくんがにこにこしてこちらを見ている。
ベリーダンスの話をして、明日もこのダンジョンカジノへ来ると聞いて嬉しくなる。
さっき休憩時間に明日のステージ予定を見たら、お芝居もやるみたいだから見てみたかったのよね。
テンションがどんどん上がってきたところで、周りが暗くなってクアトくんと二人でライトに照らされた。
なんだか周りがキラキラしている。
「え、え?」
クアトくんが小さな箱を取り出して、私の前でパカッと開けた。
中には複雑な光り方をする宝石がはまった指輪が入っていた。
オレンジのような金色のような不思議な光を放っている。
「『陽光の指輪』っていうんだ。状態異常を50%の確率で防ぐアイテムだよ。フローリアちゃんにもらって欲しい」
「……クアトくんっ……」
うまく言葉が出てこない。
私は急いで首を何回も縦に振った。
クアトくんが指輪を左手の薬指にゆっくりとはめてくれる。
魔導椅子に座っている自分がもどかしい。
座ってなかったら、今だってクアトくんに抱きついているのに。
「フローリアちゃん。好きです。僕と恋人になってください」
「うんっ、私もクアトくん大好きっ……。ずっと一緒にいてね」
「もちろん、ずっと一緒だよ」
はっきりとクアトくんに言葉にしてもらって嬉しかった。
私だけがクアトくんを思っているのかと不安だった。
クアトくんは、私のめんどくさい所も受け入れてくれるけれど、私とのことをどういう風に考えてるんだろうって。
私とのこれからをどういう風に考えてるのかなって。
「これね、この月雫の指輪とペアになっててこっちも状態異常を防ぐんだけど、はめてるとお互いどこにいるかだいたいの場所がわかるようになるんだ。ゲームではよくあるアイテムだけれど」
クアトくんが銀色に光る指輪を出して左薬指にはめた。
便利なアイテムだ。こういうアイテムってあるのね。
涙で曇る視界で、自分の指輪とクアトくんの指輪を見比べる。
嬉しい。クアトくんとのペアリング。便利な機能も付いてるなら無くさない。
いつでも私たちって繋がってるってことね。
「皆様! 二人の新しい門出に今一度拍手を!!」
黒服の人がそう叫んだ。
黒服の人やバニーガール、他のお客さんたちが盛大な拍手をしてくれる。
私、こんな幸せでいいのかしら……。
そう、私が幸せに浸っていた時だった。
「待て、我、思う。男子よ、貴様、クズ」
クアトくんの背後から、そんな言葉がかけられた。
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