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「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」  作者: ひとみんみん


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17/48

「好きな人と一緒だとダンジョンってこんなに楽しいものなのね」

※このお話のジャンルは「異世界(恋愛)」です。

 クアトくんが疲れていたようだから、次のセーブ兼魔法陣の所でお昼という事になった。

 魔法陣近くのこじんまりとした空き地で敷物を広げる。(魔法陣の近くはもちろんモンスターは寄ってこない)


「これとこれが魔女さんとリゾッタさんの分のお昼、はい」

「ありがとーう☆」

「女子力高めなのね、ありがと」


 魔女とリゾッタがお礼を言って、私が差し出した弁当箱を受け取った。


 受け取った魔女の手は滑らかでかさついている所など少しもない。


 私の手はハンドクリームを塗っているのだけれど、所々かさついてしまっていた。

 やっぱり花を扱っているからだろう。

 最近は前ほどにクリスタルフラワーを売らなくても良くなったから、栽培はそこそこなんだけれど。

 花の世話をしたり、冷たい水に手を浸したりするのでハンドクリームを何回塗っても手があれるのは止められない。


 さっき魔女がクアトくんを自分の箒に誘っていた。

 クアトくんとお似合いの黒髪黒目だし、手も綺麗だし魔法も唱えられるし、箒に乗せてクアトくんを楽させられるし、やっぱりクアトくんはこういう子が好きかしら。

 私も花売りのワゴン片付けてクアトくんを乗っけてみるとか、金髪染めて黒髪にしてみるとかそういうことやった方が………。


 いけない、お昼お昼。


 私は首を振って、花売りのワゴンからクアトくんと私のお弁当と水筒を出す。


「はい、クアトくん。お待たせ、お弁当いっぱい食べてね」

「うわ、ありがとう。フローリアちゃん」


 クアトくんが歓声をあげて、サンドイッチを手に取った。


 今日のお弁当は卵とハムのサンドイッチ、から揚げ、甘い卵焼き、ブロッコリーとツナのサラダだ。

 久しぶりのクアトくんとのダンジョンなので張り切って作ってきた。

 特にサンドイッチにはハートの焼き印を入れて可愛くしたし、から揚げもスパイスを一生懸命研究してカラッと揚げて会心の出来だ。


 全員の分のお弁当は花売りのワゴンに入れてあったから、出来立てあつあつがキープされている。

 花売りのワゴンが「マジックボックス」(※出し入れ可能で状態保存もできる異次元の箱)で良かったと思う瞬間だ。


 クアトくんはサンドイッチを美味しそうに食べてくれている。


「はい、クアトくーん。あーん」


 クアトくんが両手でサンドイッチを持って食べているので、おかずも食べられるようにから揚げをフォークで刺して口にもっていってあげた。


「あ、ありがとっ………んっ………、あふっ、おいし………」


 素直にクアトくんは口を開けて食べてくれる。

 ハートのサンドイッチとから揚げを頬張るクアトくん。


 その様子はかわいくてかっこよくて幸せで、好き好きだ。


 さっき水着で恥ずかしかったことも許せそうな気がしてきた。

 ………、いや、まだかな。

 いや、私たちは付き合ってるし、もう3年後には私たち結婚するんだし。

 それまでにはクアトくんと一緒に魔王を倒して、私の家で住んで、毎日一緒で私のご飯食べてもらってー。

 それで、子供が生まれても家族でいつまでも幸せに暮らすんだ。

 ふふっ。


「自分たちは何を見せられてるのかな、魔女ちゃん☆」

「知らないわ、アタシに聞かないで」

「魔女ちゃん、ここは公園?」

「ダンジョン」


 魔女とリゾッタが何かを話し合っていたけれど、幸せな私には内容が頭に入ってこなかった。



 楽しいお昼が終わった後は攻略の続きという事になった。


「クアトくん、何回も言うけど疲れたら言ってね。私、クアトくんと一緒じゃなきゃ寂しいから」


 私はクアトくんにはずっと一緒に居て欲しい。

 手を握って言うとクアトくんの顔が少し赤くなった。


 ---


 それから一週間、私たち冒険者パーティー「クリスタルフラワー」は10階の木のボスの扉の前にいた。

 ひたすら4人で最短距離を走った成果だ。

 クアトくんと二人の時に目ぼしい宝箱は開けてしまったし、本に載ってないような細かい罠も調査済みだ。

 寄り道は一切ない。

 人手が2倍になったからというのもある。


「1か月以上たってるからもう木のボスはリポップしてるよね」


 クアトくんが扉の前で呟いた。


「リポップ? 本には1か月近く経つとボスはまた出てくるって書いてあるわ」


 クアトくんの言う「リポップ」とはよく分からないけど、文脈的に時間が経ったらボスがどうなるかみたいな事をいってるんだと思う。

 クアトくんは私の言葉に「うんうん」と頷いた。


「こっちは準備オッケー☆」

「アタシも問題ないわね」


 リゾッタと魔女は初めてのボスに前のめり気味のようだ。

 リゾッタは火の投げナイフを指にいっぱい挟んでいるし、魔女は指先にもう炎を浮かべている。


 そして、クアトくんは前回と同じく火炎瓶を大量に抱えている。


「じゃ、フローリアちゃん。前と同じく、花を売るところからお願い。後の二人と僕はフローリアちゃんを避けてボスにありったけ攻撃を打ち込むという事でよろしく」

「うん、分かった」


 私はクアトくんの言葉に頷いて、今回もボス部屋の扉を足で開け放った。



 ………結論から言うと、木のボスは火柱を上げてすぐに消えた。

 今回はレアドロップ品は落ちなかったけれど、金貨と魔石を落としてすぐに消えた。

 木のボスの儚さがちょっと、いえ、だいぶ気になった……。


 私が木のボスの足止めをしている間に、針山みたいにリゾッタの投げたナイフが刺さってるし、魔女の火魔法で枝が家が燃えたみたいな規模になってるし、クアトくんは火炎瓶を張り切って投げて魔女の炎とそうそう変わりない感じで火をつけていた。


「フローリアちゃん、分かるよ。何でボスってすぐに死んでしまうんだろうね」


 クアトくんが私の肩をポンッと叩く。


「あっ、ごめんなさい」


 呆気に取られて木のボスのドロップ品を拾うこともしていなかった事に気づいた。

 でも、リゾッタと魔女がせっせと拾って、いつものように花売りのワゴンに放り込んでくれている。


「ありがとう、クアトくん。ありがとう、リゾッタさん、魔女さん」


「こっちこそいつもありがとう。フローリアちゃん」

「いえいーえ☆ ダンジョン攻略ってこんな簡単で楽しいんだね☆」

「こちらこそなんだからね! ……うふふっ、アタシ、こんなにのびのびと張り切って魔法撃つの楽しいって思わなかったわ」


 パーティーメンバー皆がにこにこと笑っている。


 優しい彼氏もいて仲間もできて、冒険もできてお金も入って、私こんなに幸せになれるなんて思わなかったわ。

 いつまでもこんな毎日が続きますように……。

お読みいただきありがとうございました。

小説を読んで、もしよろしければ、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。

いつもいいねを押してくださってありがとうございます。次を書こうって気が湧いてきます。ありがたい……。

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