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「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」  作者: ひとみんみん


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「固定職業『花売りのフローリア』」の私に「遊び人」と「魔女」が話しかけてくる」

クアト視点長くなったから「自分は面倒くさい女だけれどでもでも優しい少年の事が好き」の続きのフローリア視点にいって話を早く進める作戦です。話の展開について来れなかったらすみません。

 昨日は、クアトくんがダンジョン都市「リリス」に帰ろうと言ってくれた。


 今日は私一人で商業ギルドへ行って馬車や護衛の手配をしたいと思う。


 クアトくんは1人でミンデガルデのダンジョンで頑張ってくれたみたいで、金貨や不思議な靴(星……の靴とかなんとか)を見せてくれた。

 だから休んでいて欲しいと言ったのだ。


 それにしても、行きのように商人がちょうど引き上げる馬車に乗せてもらえたらいいけれど、どうなるかは分からない。

 何といっても私は大荷物の花売りのワゴンも持っている。ただのフローリアだったら身軽にクアトくんとミンデガルデへ旅行できたのに、と思わなくもない。


 でも、とりあえず商業ギルドへ行ってみないと分からないよね。


 久しぶりに宿屋「綺麗なネズミ亭」を出ると、強い日光が目に染みた。


「おはよー☆ 君が一人になるの待ってたよ☆ 話しかけるチャンスなかったらリリスまで追いかけていくつもりだったけど良かった☆」

「っ………!!」


 目の前に遊び人のリゾッタが立っていた。

 星のメイクにピエロの鼻。

 怖くて悲鳴を上げかけた私の口を誰かが塞いだ。


「静かにしなさい。あなたの大事な人にあなたの卑怯さがばれてもいいの? ずるいのよ。あなただけ」


 意味深な言葉に口を塞がれたまま振り返ると、そこには本でしか見たことのないタイムアタックダンジョンの魔女がいた。

 トレードマークの星屑の箒を背負っているから多分間違いない。

 ダンジョン内に現れては冒険者を殴ってくる魔女だ。


「自分ね、おいしーいパフェが食べられる個室カフェ予約したんだ☆ 各地回ってる自分が言うんだから間違いなし☆ 食べるよね? そして、自分とお話するよね☆ お話してくれないと……☆」

「リゾッタ、回りくどい事言うのやめてくれる? アタシ達と一緒に来て。でないと固定職業についての悲惨な事ある事ない事全部あなたの大事なクアトに言う。そしたら今すぐ離れたくなるでしょうねクアトは」


 嘘、嘘嘘。どういう事?

 前からは嫌いな遊び人が、後ろからは魔女が喋ってくる。


 クアトくんがやっぱり私から離れる?

 どういう事よく分からない。

 でも、そう言われると、私は着いていかないわけにはいかなかった。


 ---


 ミンデガルデの宿屋「綺麗なネズミ亭」からちょっと離れた所にあるカフェの個室に入ると、さっそくリゾッタが話始めた。

 それは昔、お母さんが話してくれた話の続きだった。


「昔々………君も知っているかもね☆ 「怖いもの知らず」が固定職業の一族を皆殺しにしたらどうなるのかを試してみた事があった☆ 迷惑な話だね☆ で、「遊び人」の家系を根絶やしにしようと、その時の「遊び人」を殺した☆ めぼしい親戚から何から、親戚もね☆ 放っておくと血筋から必ず生まれちゃうからってね☆ そういえば、この話の「怖いもの知らず」はね☆ 固定職業の人たちが憎かったらしいよ☆」


 いつの間にか運ばれてきたバナナパフェを食べながらリゾッタが話始める。

 魔女は特に何も食べずにお冷をがぶ飲みしている。

 私はもちろん運ばれてきたパフェは食べる気がしなかった。


「周りが生活に困っても、絶対にお金に困らないからね☆ 君も経験あるでしょー☆ 花をどこからか買う人が現れて買ってくれる☆ 自分もそう、「遊び人」は特にイラつかれる対象かも☆ 周りが飢えてる時もバルーンアクションしてたりするとお金貰えちゃう☆ 食べ物も入れられたりするんだよねー、バナナとか☆ バナナいる?」

「いらない」


 目の前にバナナが差し出されたけどはじいた。

 リゾッタの意外な話はなるほどと思わせるものだった。

 だけど、人を殺すまでとは思わないのは、私が固定職業の「花売り」だからだろうか。


「あ、お冷お替りください。リゾッタ、早く話しなさいよ」


 水をがぶ飲みしていた魔女が店員を呼んでお冷を頼む。

 ピ、ピッチャーで頼んだこの魔女。空気読めないのかしら。

 あ、店員にチップ渡してる。この魔女できる………っ。


「急かさないでよ、魔女ちゃん☆ で、さっきの「怖いもの知らず」の話ね☆ 「遊び人」はあらかた皆殺しになった☆ するとね、どこからか「遊び人」の親戚が現れたみたいなんだ☆ 一応、遠縁の親戚という事だけど、ほんとかな☆ それでね、遠縁の親戚の前で「怖いもの知らず」はバラバラーって弾けて死んだって☆ 同じ時間にね「怖いもの知らず」のほとんどの親戚も弾けて死んだそうだよ☆ 怖いね☆」


 ふふふ、とリゾッタが笑う。

 ピエロの顔で笑われると本当に怖いからやめて欲しい。

 小さい時のトラウマが蘇って漏らしそうになる。


「でね☆ ここからが本題だよ☆」


 リゾッタが唇の前で指を立てた。

 秘密の話、という事だろうか。


「この話のどこからか現れた「遊び人」はね、自分の祖先☆ 当たり前だよね☆ これはね、魔王が適当にこの世界の人を任命して連れてきた人☆ つまりー? 親戚でも何でもない☆ 魔王がこいつ「遊び人」ねって決めると「遊び人」になった人☆ わお、かわいそー☆ 自分もかわいそーだねー☆」


 芝居ががってリゾッタが私にウインクしてきた。

 混乱する。

 魔王? 全然意識してなかった。そういえば。

 背中に汗が伝う。


「魔王はね、普段はこの世界の自分たちに全然意識されてないよ☆ 時々街を壊したりしてるのにね☆ 皆、不自然に気にしないよね☆ そんな魔王と戦うための力を付けるダンジョンがあるのにね☆ 固定職業を弄んでいる嫌な奴☆ じゃあ、誰が魔王と戦うのか? もう答えは出てるかと思うけど、変な人いるでしょ? 普段、固定職業の自分たちを連れていける、自由に動かせる変な人☆」


 リゾッタの言葉に私はハッとした。

 そう、居る。変な人。

 というか、「花売りのフローリア」達が待ち望んでいた虹色のリボンをあげられるクアトくん。


お読みいただきありがとうございました。

小説を読んで、もしよろしければ、

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