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「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」  作者: ひとみんみん


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「大好きな花売りのNPCをお世話しながら通うタイムアタックダンジョンがなんかおかしい」

 次の日、僕は自信満々でミンデガルデの街の「ダンジョン」に来た。

 先にリゾッタは来ていて、今日は大きな赤いボールに乗っていた。


「じゃあ、クアトくんと自分は今からタイムアタックダンジョンで対決だね☆」


 そんな僕に遊び人リゾッタが宣言する。昨日に「来て」とは言われたけど、対決するとは言ってない。

 まあ、いいけれど。そのつもりだったから。


「うん」

「なぁーんと、自分に勝つとクアトくんと自分は一緒に冒険できるようになるよ! すごーい☆」

「うん、そっか」


 何故か僕はフローリアちゃん相手にはいくらでも優しい気持ちが湧いてくるのに、リゾッタには少しも湧かない。

 きっと、リゾッタは悪くないとはいえ、リゾッタの言動でフローリアちゃんが倒れる事になったからだと思う。

 まあ、でも一緒に冒険できるようにしておくと何かに役立つかもだし、良いアイテムもらえるしな、と思う。


 もちろん、リゾッタが着いてくると言っても断固として拒否するから大丈夫だ。

 ゲームのコマンドでも、

「連れていきますか?

 はい

 →いいえ」

 で「いいえ」を選ぶと、リゾッタは「ざんねーん☆」と喋っていた。


 まあとりあえず、この学術都市ミンデガルデのタイムアタックダンジョンだ。

 ここは遊び人リゾッタと一緒だと、通常のダンジョンがタイムアタックダンジョンへと変わる。

(常設のタイムアタックダンジョンももちろんある)

 攻略に時間制限があるダンジョンだ。

 それだから、石積みのダンジョン(ところどころ妙なアスレチックと罠あり)を猛スピードで駆け抜けなくてはならない。


「じゃあ、そろそろクアトくん対自分の対決しようか☆」

「うん、よろしく」


 リゾッタがそういうと石積みのダンジョンに赤いスタートラインが浮かび上がった。

 ちなみにゴールラインは相当先だから見えない。

 スピーカーも何もないのに、カウントの音が鳴り響く。


「やっほー☆ やっほー☆」


 リゾッタがカウントがゼロになると同時に叫んだ。

 ボールに乗ったままダンジョンを走り出す。

 遊び人のキャラ付けは大変だな。


 僕もダンジョンの中を走り始めた。

 しかし、ここからがゲームのチート知識の見せ所だ。

 何せこのタイムアタックダンジョンは道中に金貨30枚が浮かんでいて、触れると獲得数がカウントされる。

 ダンジョン終了後に金貨がもらえる仕組みだ。

 僕は当然のように寄り道して、金貨に手を伸ばした。

 その間にリゾッタが金貨には目もくれずに横を通り過ぎていく。


「自分が勝っちゃうよー☆」


 とか喋っている。

 けどこのタイムアタックダンジョンには何回も挑戦できる。

 30枚の金貨は回収されたらもう2度と出現しない。金貨は全部取ってからリゾッタに勝った方が良い。

 ゲームでもそうだった。


 とりあえず、楽勝……そう思っていた時もあった。


「はぁはぁ……」


 早くも走るのに息が切れてきた。


 やばい。


 僕は時間制限がやばいので、金貨を5枚取った後はゴールに向かって一直線に走った。


 しかし、怠けきった僕の体は思うように動かない。

 ダンジョン都市「リリス」のダンジョンで、スキル「絶対花売り」の威力に頼りきっていたからだ。ダラダラ移動してろくな戦闘も今までしてない。

 体力がついてない。レベルは上がってると思うのに。


 一生懸命走っているけど、ゴールが遠い。

 ゲームではコントローラーを操作しているだけだったのに。


 ビーッビーッビーッ


 と、スタートの時に鳴っていたカウントの音が連続して鳴り始める。


「遅れてる冒険者がいるみたいね!」


 ダンジョンに女の子の声が響いた。


「うわ、み、見逃してください!」


 そう言って僕は振り返った。


 ほうきに乗った魔法少女がいた。

 いかにもな黒いローブを着ている。

 黒髪のポニーテールが揺れ、黒い大きな目が可愛い子だ。

 しかし、追いつくと冒険者をぶん殴ってきてダメージを与える。(魔法使いなのに物理)

 3回ダメージを受けると、どんな高レベルの冒険者でも戦闘不能状態になる。

 タイムダンジョンであったらどこにでも出現するんだ。


 名前は「セイイ」ちゃんだ。

 前世のネットでは「せっちゃん」と呼ばれていた。


「誠意が見たいわ誠意がね!」


 せっちゃんが後ろから呼びかけてくる。

 ちらっと振り返るが真顔だ。

 取り立てだからだろう。


 仕方ない。

 僕の想像力が足りなかった。殴られたくない。

 明日から何か対策考えないと。


「せっちゃん、これで許してください!」


 ネットでお馴染みの名前を呼びながら、金貨1枚を後ろへ投げる。

 そう、これで『じゃあ、ちょっとだけ周り散歩してくるわね』って少しの時間見逃してくれる……はず……。


 え、あれ?

 せっちゃんの返事が?


 後ろを振り返ると、魔法少女が箒に乗ってなかった。

 こちらを見て呆然と立っている。


「なんでアタシの名前知ってるの?」

「ん? セイイのせっちゃんだよね?」


 タイムアタックダンジョンのお邪魔女キャラの。

 誠意誠意ってお金要求するキャラだからセイイちゃん。

 何でって前世の攻略に書いてあった。


「アタシの真名なんで?」


 え? 真名?


 せっちゃんの呟きが耳に届いて、僕はいつの間にかうるさかった時間制限の警報が止んでるのに気づいた。


 ゲームでは、こんなやり取りなかったなぁ。

 どうなってるんだろ。分からない。


 頬をカリカリと指先でこする。

 うーん、困ってしまった。


 ちなみにこの雰囲気で歩いてダンジョン攻略したらダメだよね? 

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