表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第5話:親友の言葉(中編)

中編と言っても短いです。後編とまとめたら、ちょっと長いかなと思って。

後編も連続投稿しております。

 腕がちぎれそう……!

 ハードルってこんなに重かったっけ。しかも持ちにくいし。 ここまで運んでくる間に何回足をぶつけたことか。


 中学時代は三年連続100メートル走に抜擢された(じゃんけんで勝っただけ)私にとって、ハードルに触れるのは小学生以来となる。

 奥にしまってあった、あの黄色くて柔らかいやつがよかったな……。


「南、ハードルの向き逆。」


「ひっ。」


「……そんな警戒されるとちょっとへこむんだけど。」


「ご、ごめん……なさい。」


 教えてくれたのはクラスメイトの男子。

 そうだった。今日は男子も一緒なんだった。男女混合リレーだっけ? それがあるから合同なんだって。堂々と女子の授業に混ざってきた変態さんかと思った。


「まぁいいけど。これ戻しておくから高さの調整よろしく。」


「あ……男子の高さってどのくらいにすればいいの?」


「一番上でお願い。」


「わ、わかった。」





 全てのハードルを調節し終えて、その出来栄えを見渡す。


 うん。綺麗にできた。

 それにしても男子のハードルの高さにはびっくりした。私のおへそぐらいだったから……え、もしかして1メートルくらいあるんじゃない? いつの間にこんな差が。


 ふと辺りを見回すと、人が少なくてどうも寂しい。この様子だと2レーンくらい用意すれば十分だったかも。


 個人種目を選んだのは、私と同じで運動が苦手な人ばかり。全員とまではいかないものの、体育祭のモチベが低く、やる気ない人達ばっかりだった。きっと私以外の女子も、日陰でガールズトークに花を咲かせているんだろう。

 

 まぁ、気持ちは分からなくはないけどね。リレーならまだしも、授業中の練習量で個人種目の順位が変わるとは思えないし。


 とはいえ、サボる玉でもないから練習するんだけど。

 あ、夢羽とディズニーに行くのはノーカウントでお願いします。もし実現するなら、私にとってサボりというより一大イベントだ。それこそ体育祭なんか目じゃないくらいの。


 スタート地点に立つ。

 今でさえ少し緊張してるのに本番大丈夫かな。


「……よし。」


 意を決して足を動かす。無理そうだったら止まればいい。


 迫ってくる一つ目のハードル。


 や、やっぱり高くない?


「きゃっ。」


 私にしては度胸を決めたと思う。なんとか一つ飛び越えることができた。

 後ろを見てみると、ハードルは私が設置した時の状態を維持している。


「ふぅ……。」


 助走なしでは二つ目を飛べそうになかったので、再びスタート地点に戻る。レーンを独り占めしてるからできることだ。


 今度は一つ目、二つ目、そして三つ目まで飛ぶことができた。

 全部飛んでからにしろよって感じだけど、私の中では十分感動モノだ。




 それから私は何度か繰り返し飛び続けた。

 速さなんてどうでもいい。最下位でも、穏便に本番を乗り越えるためだけに頑張った。


「次終わったら休憩しようかな。」

 確実に初めより上達していて、その嬉しさからつい独り言をいってしまう。


「よしっ。」


 ———六個目、七個目、八個目……やった、次で……次で最後だ———



 そこで油断したのがいけなかった。



「あっ———」


 私が最後に記憶しているのは、抜足(ぬきあし)がハードルとぶつかった感覚。

 あとは重力とか諸々の物理法則に身を任せて、気づけば地面に手をついていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ