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【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!?

【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!? ― 美少女の遺骨を探して東奔西走 ―

作者: 葛城遊歩

生まれた者が亡くなるのは世の定めです。

『虎は死して皮を留め,人は死して名を残す』と云いますが、散骨しない限り遺骨は残っています。

【異世界転生】したサイキョウは、遺骨を蘇生させる反魂術を使う【チート】持ちです。

彼は、美少女を蘇生させて【ハーレム】を作ることができるのか!?


 拙僧の名前は、『西喬(さいきょう)』という。


 いわゆる旅の修行僧だ。


 お師匠様は、かの有名な『西行(さいぎょう)法師』である。


 お師匠様は、旅の無聊(ぶりょう)(なぐさ)めるため、ある時、禁断の〈反魂(はんごん)術〉に手を染めた。


 街道沿いの土饅頭(つちまんじゅう)を掘り起こし、回収した遺骨を聖水で清め、砒霜(ひそう)と呼ばれる霊薬を塗り、呪文を唱えることにより、遺骨は仮初(かりそ)めの肉体を得て蘇生するのだ。


 蘇生したのは、おっぱいも大きな美少女だったという。


 なんという(うらや)ましい話なのだろうか!


 ただ、〈反魂(はんごん)術〉で蘇った者は、仮初(かりそ)めの肉体が安定するのに一千日を要すると云う。


 その間、蘇生者と目合(まぐわ)うと〈反魂(はんごん)術〉が(ほど)けて元の遺骨に戻ってしまうという。


 そればかりか遺骨は、〈反魂(はんごん)術〉の反動か、直ちに風化して消失してしまうらしい。


 また、蘇生者自身も欠乏している肉体の滋養を得ようと、血や臓物を()らおうとするという。


 血を(すす)り、臓物を()らった蘇生者は、鬼道へと堕ちて化け物となる。


 それらの誘惑を退けた者だけが、真の意味で蘇生して只人に成れるのだという。


 お師匠様の身の回りの世話をしている(しずく)さんには、そんな過去があるというのは他言無用の秘密だった。


 拙僧の煩悩を刺激し(まく)ってくれた(しずく)さんは、本当に綺麗で心優しい女性(にょしょう)だった。


 拙僧もお師匠様より〈反魂(はんごん)術〉の秘術を習得し、浮かれ気分で街道を歩いていると、背後から暴走した牛車(ぎっしゃ)()かれて、呆気なくこの世を去った。




 俺の名前は『サイキョウ』という。


 いわゆる一般市民という奴だ。


 そんな俺だが、荷馬車に()かれかけた時、前世の記憶を取り戻した。


 俺の前世は異世界の修行僧であり、若くして牛車(ぎっしゃ)()かれて亡くなった。


 俺はどうやら【異世界転生】というものを経験していたらしい。


 そして俺は、前世で習得した〈反魂(はんごん)術〉の【秘術(チート)】を思い出したのだ。


 俺の住む世界では、権力者は美女を集めて後宮を開き、いわゆる【ハーレム】を形成している。


 一般市民でも有力な冒険者たちは、(うるわ)しい女奴隷や女冒険者を集めて【ハーレムパーティー】を作っていた。


 つまり、この世界は一夫多妻制であったのだ。


 もちろん、一夫多妻なのはごく一部の有力者の勝ち組だけで、俺のような一般市民は生涯独身か、売れ残りの醜女(しこめ)を妻にできれば上出来であった。


 ところが、〈反魂(はんごん)術〉を思い出したことにより、俺にも美少女が(つど)う【ハーレム】を作れる可能性ができていた。


 この世界では、魔族や魔獣、山賊に夜盗などが跳梁(ちょうりょう)跋扈(ばっこ)しており、人命がとても軽い。


 また流行(はやり)り病でも呆気なく死んでしまう。


 ちょっとした油断で命を落とす危険な世界だ。


 それは高貴なお姫様やら、上流階級のお嬢様やらにも公平に訪れる。


 つまり、この世界には美少女の遺骨が沢山あるということだ。


 俺は〈反魂(はんごん)術〉で美少女を蘇らせて【ハーレム】を作ろうと目論んだ。




 俺は成人に達すると、生まれ故郷の寒村(かんそん)出奔(しゅっぽん)し、冒険者となった。


 新人冒険者に請けられる依頼(クエスト)は、とても安価であるが歯を食い縛って生き抜いた。


 安宿や野宿で糊口(ここう)(しの)ぎつつ、砒霜(ひそう)の原材料を求めて各地を彷徨(さまよ)った。


 併せて、非業(ひごう)の最期を遂げた美少女たちの情報収集も行った。




「とうとう〈反魂(はんごん)術〉を試す時がきた。蘇らせるのは美女と名高かったシャーロッテ姫だ」


 俺はとある地方領主の先祖にあたる美女の遺骨に白羽の矢を立てた。


 俺としては前世で有名だった、とある物語のヒロインである『紫の上』に(なぞら)えて美幼女を蘇生し、俺の色に染め上げつつ、美しい美少女に育った彼女と蜜月となる『若紫計画』を立案したのだが、幼女の遺骨は残り(がた)く計画を断念せねばならなかった。


 この世界でも一般市民の場合には、遺体を土に埋める土葬が主流であった。


 (もっと)も、一人ひとりの墓を作って個別に埋葬するのではなく、巨大な墓穴に遺体を放り込む共同墓形態であったことから、どの遺骨が美少女のものであったのかは判らない状態であった。


 ところが裕福な者や権力者の遺体は、きちんとした墓所に埋葬される。


 (くだん)のシャーロッテ姫の遺体も、一族の墓所の地下にある納骨堂に納められているという。


 俺は闇夜に乗じて納骨堂に侵入した。


 石造りの納骨堂の中はひんやりして薄気味悪い。


 扉を開いて直ぐの室内には、石で造られた祭壇があった。


 この祭壇には、葬儀の終わった遺体が安置され、死出虫(シデムシ)に遺体を食らわせて白骨化させる。


 その後、遺骨を集めて納骨するのだという。


 現在、祭壇の上には何もなかった。


 俺は更に奥へと進み、納骨区画へと踏み入った。


 納骨区画では、細かく区切られた横穴の中に遺骨が納められている。


 俺は墓誌を頼りにシャーロッテ姫の遺骨を探した。


「これが美女として名高かったシャーロッテ姫の遺骨か……」


 俺は白骨と化したシャーロッテ姫の遺骨を回収すると聖水で洗い、祭壇の上に並べていった。


 そして白骨に砒霜(ひそう)を丁寧に塗ってやる。


 お師匠様によると、塗り(むら)があると、蘇生に失敗するらしい。


 俺は ― ドキドキ ― しながら、反魂(はんごん)のための呪文を初めて唱えた。


 俺が呪文を唱え始めると、空気が淀んでいるはずの室内で、燭台(しょくだい)に立てた蝋燭(ろうそく)の炎が(またた)き、世の(ことわり)が反転する。


 そして白骨に白い(もや)のようなものが覆い、肉体へと変容していくのだ。


 只の白骨が次第に血肉を備えた生々しい裸体へと変化(へんげ)していくのは圧巻だ。


「あっ!? これは美女ではなく老婆ではないか!!」


 何と蘇生されつつあるシャーロッテ姫の容姿は美女姿ではなく、還暦も過ぎた白髪交じりの『(げん)典侍(ないしのすけ)』の如き老婆であった。


 そう言えば、シャーロッテ姫は多くの子供や孫に見守られながら大往生を遂げたのであった。


 どうやら〈反魂(はんごん)術〉で蘇るのは、死者が亡くなった年齢らしい。


 俺は〈反魂(はんごん)術〉を中断すると、蘇生途上の遺体の心の臓に白木の(くい)を打ち込んだ。


「ぎゃあぁあぁぁ……ぁ……」


 シャーロッテ姫は、断末魔の悲鳴をあげ、遺体は風化して消失した。


 折角、苦労して〈反魂(はんごん)術〉を試したというのにしょっぱい結果に終わってしまった。


 次は、若くして夭折(ようせつ)した美少女の遺骨で〈反魂(はんごん)術〉を試すことにしよう。




 今度のターゲットは悲劇の美少女として演劇でも有名なオリビア姫である。


 オリビア姫も類い稀なる美貌で知られた美姫(びき)であった。


 彼女は、とある偶然から敵対する貴族家の若様と知合いとなり、幼い恋心を燃やして悲劇へと突き進んだ。


 駆け落ちをしたオリビア姫は追っ手に迫られ、急峻(きゅうしゅん)(がけ)からふたりで身を躍らせたという。


 その後、ふたりの遺体は回収されたのだが、各々の生家が引き取り離れ離れに埋葬されたという悲恋物語は有名であった。


 つまり、大往生したシャーロッテ姫の場合と異なり、オリビア姫は年若い段階で亡くなっている。


 オリビア姫ならば、美少女として蘇生するはずだ。


 俺はオリビア姫の遺骨が納められている墓所へと侵入した。


 オリビア姫の家系は、随分前に断絶していたことから容易に侵入することが叶ったが、墓は(あば)かれて金目の副葬品は軒並み強奪されていた。


 しかしながら、盗掘団としても遺骨には興味がなかったらしく、奇跡的にオリビア姫の遺骨は残っていた。


 俺はシャーロッテ姫の遺骨と同様の処理をして〈反魂(はんごん)術〉を開始した。


 呪文を唱えるに従い、オリビア姫の肉体が構成されていく。


 (くび)れた腰に豊かな胸、伸びやかな手足が形造られていき、俺の興奮も最高潮だ。


「こんどこそ、美少女が俺のものに……」


 ところが、俺の期待は失望へと変わった。


 確かに蘇生されつつあるオリビア姫の肉体は、俺好みの瑞々(みずみず)しい裸体であったが、顔が下膨(しもぶく)れの阿亀(おかめ)顔であったからだ。


 そう言えば、この当時は、こういった顔が美少女だったことを思い出した。


 (くだん)の物語に(なぞら)えるなら『末摘花(すえつむはな)』辺りだろうか? 否、彼女は痩身(そうしん)で鼻の先が赤かったのだったか?


「ぎゃあぁあぁぁぁ……――」


 俺は躊躇(ちゅうちょ)なく、〈反魂(はんごん)術〉を中断すると、白木の杭を心臓に打ち込んでいた。


 当時は美少女だったかも知れないが、現在のオリビア姫は単なる醜女(しこめ)であったからだ。




 何というか、美少女の遺骨を探すというのは、存外に骨の折れるものである。


 お師匠様は一発で、おっぱいの大きな美少女を蘇生させたというのに大違いであった。


 俺としては高嶺の花である『紫の上』は無理でも、『藤壺の中宮』の如き母性に溢れた美女や『(あおい)の上』の如きツンデレ美少女や、『朧月夜(おぼろづきよ)の君』の如き情熱的な美少女でも大歓迎なのだが……。


 俺は美少女と云われた人物の遺骨を〈反魂(はんごん)術〉で蘇生させかけたが、何れの者も、伝承や姿絵は美化されているものばかりであった。


 酷い場合には、美少女ではなく美少年の遺骨が納められている場合すらあったのだ。


 股間に見慣れたものを見つけた時は、仰天したものである。


 しかしながら、よくよく思い出してみると、骨盤の形状が女性とは異なっていた。


 何時(いつ)しか、冒険者としても大成していた俺であったが、(いま)だに美少女を蘇生するには至っていない。


 〈反魂(はんごん)術〉で蘇り、仮初(かりそ)めの肉体が安定化する一千日を守りたいと思える程の(すこぶ)る付きの美少女に早く出逢いたい。


お読み下さり、ありがとうございました。


一般的な『蘇生魔法』では、死亡後一定時間内であれば、遺体を蘇生できるという設定が多いと思います。

本作品では、反魂術による蘇生であることから、蘇生対象は遺骨であり、生前の容姿は不明であります。

そのことから主人公は、美少女の蘇生に苦労しています。

美少女というものは、主観的なものであり、人や時代によって判断基準が異なります。

また、この世界では生前の写真のようなものはないために、人物描写や絵姿は美化されています。

現実世界でも、老人の本人確認は証明するのに困難を伴う場合がありますよね。

果たして『サイキョウ』は理想の美少女を蘇生することが出来たのか!?

きっと最終的にはハッピーエンドだったと信じることにしたいですが、経験を積むごとに美少女のハードルが高くなっているような!?

今回、美少女の区分として、源氏物語の登場人物を用いて説明してみました。

考えてみると、現在のラノベよりも設定がぶっ飛んでいるような気がしないでもありません。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 次こそは次こそは……と、血眼になって遺骨を漁る姿……もう手段が目的になりかけているような? そんなギャンブル性に虜になったら、と思うと……あれ? [気になる点] そこまで実力を兼ね備えた…
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