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ポーターと魔法銃  作者: ゆーの
第三章 アプダスレア
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8

「ふぅ、一仕事終わった……」


 ギルドでの用事の済んだ彼は、出てすぐのところのベンチに腰掛け、ギルド会館の道向かいの店で調達したカタラ(巨人国の名産で、酢や、卵黄から作られたドレッシングで和えた野菜や肉などをパンに挟み込んだもの)にかぶり付いた。

 すっかり痛くなった肩を回しつつ、彼は腕を揉みほぐす。ギルド会館自体が非常に大きかったことに加え、次の配達依頼やら、魔獣かどうか分からない熊の死骸の処理、果てまたダートらへの伝言と、色々な仕事を纏めてこなしていたこともあったためか、正午からは一時間以上過ぎていた。


「あっ、アルザ君!」


 ギルド会館から出てきたサナが、手を振って走ってくる。その数歩後ろを追うようにして、コルドが走ってきていた。


「ごめーん、待たせちゃった?」

「待たせたも何も、約束すらしてないだろ」

「……同感です」

「まーまー、細かいことは気にしない。それで、どうだったの? 熊の方は。受付で何やら頑張っていたようだけど」

「……特には。ただ、熊の死骸は、処分費向こう持ちでギルド側に渡して来ました。巨人的には、食料は大歓迎だそうで」

「それもそうだけどー」


 ふふん、とサナが小悪魔のように笑った。


「ほら。カウンターで懸垂していたじゃん」

「えーと、なんのことでしょーか」


 彼は、サナから大きく目を逸らして、カタラを口に放り込んだ。


「ほら、カウンターが巨人仕様で高すぎて届かなくて懸垂してたじゃん。それも、親切な巨人さんがビール箱を足元に積んでくれるまで。可愛かったなー、腕をプルプルさせながら必死にしがみついてるの」


「巨人仕様って……、そんな高かったか?」


 コルドが、不思議そうに訊いた。


「へっ? 結構高かったと思うんだけど。ほら、受付の人も巨人が多かったし」

「そうか? こっちは殆ど人族だったけど」


「一階と二階の差です。二階なら、頑張れば僕でも何とかなります」

「あっ、そっか」


 サナが、合点がいったように手を叩いた。


「コルドは二階に行ってたんだっけ」

運び屋(ポーター)ギルド自体が二階だったからな。えーと、ってことはアルザは一階に寄ってたのか。何やってたんだ?」

「一階に冒険者ギルドがありましたからね。熊の処理の関係で、少し」

「……あれ? 今さっき見た時は戦士ギルドにいた気がするけど?」


 サナが、見間違えたかなー、と首を捻る。


「いえ、戦士ギルドの方にも行きましたよ。少し知り合いに伝言を、と思いまして。その人が戦士だったので、そっちにも残しておいた方が伝わりやすいかと」

「あー、なるほど」


 サナが、納得したように頷いた。


「……それにしても大きい建物だよな、全てにおいて。巨人国仕様なだけでも階段とか大変なのに、加えて全てのギルドがこの建物を共有しているなんて」

「本当ですね。分かれてますもんね、普通」


 ギルド会館を見上げながら、彼らは思わず苦笑いした。


「……あぁ、そうだ。サナ、あの依頼は取れたか?」

「あっ、そうだった。取れたよー。三人までなら同行してもいいって」

「なら俺も大丈夫か。……折角だし、アルザも来るか?」

「来るって……、何の依頼ですか?」

「それは、行ってみてからのお楽しみ、ってことで!」


 サナが彼に向けてウインクした。


「いいのか、一応確認とった方が……」


 コルドが、彼には聞こえないように小声でサナに聞いた。

 ただ、会話内容が聞き取れなかった彼でも、彼のことを心配してくれているのだろう、ということは、コルドの顔色からも伺えた。


「……危ない依頼か何かですか?」

「いや、危ないかって言われたら危ないけど……」


 サナが、少し悩んでから彼に聞いた。


「そうだ、アルザって高いとこ平気?」

「一応は大丈夫ですが……、何にせよ戦闘は勘弁ですよ?」

「そこは大丈夫! 戦闘はこっちでやるから」

「なら……」


 彼は、顎に手を当てながら足元の方へ目線を移した。

 危険性が見通せてない依頼を受けることの危うさは、経験の浅い彼にも十分過ぎるほどわかっていた。

 戦闘がない時点で、もしくはただの同伴として依頼に参加する時点で、一般的な依頼で考えられるような重大な危険性は全て潰した。だとしたら、”高い”ことがよほど危険なものなのだろうか。

 道路を挟むように並ぶ建物を見上げながら腕を組む。

 それらは一般的な建物よりかは高いものの、過去に登ったことのあるモノの中で最も高いかと聞かれれば、そうではなかった。屋根の修理とかなら危険かもしれないが、それは冒険者の仕事ではないだろう。


 考えれば考えるほど、尚更分からなかった。ただ、一つ分かるとすれば、サナがさっきから期待に満ち溢れた眼差しを痛いほど彼に向けていることであった。

 それに耐え切れなくなった彼は、とやかく考えるのを諦めた。


「……分かりました、分かりました。……いいですよ。どっちみち今日の午後は暇なので」

「んじゃ、決まり! 付いてきて、アルザ君」


 彼は、最後の一口を水で流し込み、口の周りについたドレッシングを指で軽く拭き取ってから、それを舐めた。食べるためにまくってあったコートの袖を一度伸ばしてから再び折り返した後、彼は立ち上がって長いコートの裾を(はた)いた。

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