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今回も短めです。よろしくお願いします。
火の始末を終え、彼は再び丸太の上に腰掛ける。辺りには焚き火の匂いがまだ残っていた。
スレイピアを暮れ時に発ってから、彼はアプダスレアへの道を逃げるように辿った。
そしてちょうど真夜中。スレイピアの明かりが完全に見えなくなったところで、彼の歩みが止まった。場所にすると、スレイピアからアプダスレアまでの一本道を四分の三弱くらい進んだ所である。
ちなみに、本来スレイピア−アプダスレア間は徒歩でおよそ半日かかる。その四分の三を六、七時間くらいで歩いたのだから、早すぎるペースで歩いていたのは明らかだろう。
彼は、手頃な毛布を取り出す。それに包まりながら、彼はそっと目を閉じた。
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無限に広がる野原の真ん中に、彼は一人で立っている。
突然の事だと感じながらも、何故か彼はその状況がすんなりと受け入れられていた。
風がその場を流れる度に、サー、と心地の良い音がする。
突然、バタッ、と人が倒れる音がした。振り返ってみると、頭部を撃ち抜かれた人が倒れていた。思い出したくなくてもそれが誰であるかはすぐに分かった。
彼がつい先程までいた国の主、スレイピア国王だったからだ。
気がつくと、いつの間にか彼は銃を握り締めていた。銃を握り締めていた手は、血で真っ赤に染まっている。悲鳴を上げようとしても、ただ闇雲に叫ぼうとしても、何故か声は出なかった。
突然、場所が変わる。彼は、故郷の広場の中央に立っていた。彼の目の前には、一人の小柄だが屈強そうな体系をした、白髪頭の老人が横たわっていた。
「───、」
その顔に懐かしさを覚えた彼は、男の方に駆け寄り、思わず手を伸ばした。しかし、その体に触れようとした所で、その老人は砂でできた山のように崩れていく。そして、その体は跡形もなく消えてしまった。
彼は、誰もいない広場の中央でただ立ち尽くすしかなかった。
今度は、彼の直ぐ後ろの方から茂みを掻き分けるような音がした。僅かではあるが、魔法が起動したような感覚と共に。
──数ヶ月の旅経験から、彼は魔獣の襲撃を察知した。
それも、寝ているところに襲われるという最悪な場合であることに。
もっと言えば、今、彼は夢の中だということも。
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夢から一気に覚めた彼は、魔法の感覚を頼りに銃口を向ける。
「ひゃっ!」
眠い目を凝らして、月明かりのおかげで辛うじて見える銃の先を見つめる。
僅かな月明かりが照らすぼんやりとした景色が一点を中心に集まって、銃の照門に入っていたのは一人の少女だった。そして、その少女は尻餅をついたかのように地面に座り込んでいた。
「ストップ、ストップ! 私たち、悪い人じゃないから!」
後ろで髪を結び、軽めの鎧の下に動きやすそうなドレスを着た少女が、年齢は彼と同じか少し下であろうか、まだ少し子供っぽい顔を恐怖のあまり引きつらせていた。
そして、両手をゆっくりと上げ、目に涙を浮かべながら彼を見上げた。
「全く、突然飛び出して行って……、って大丈夫か!」
一人の少年が、慌てたように少女の方へと駆け寄ってくる。そして、丸くなってしまった少女を抱き寄せながら、彼の方を見上げた。
「取り敢えず、すまなかった。銃を下ろしてくれ」
銃を構えたままになっていた彼は、腕を震わせながら銃を下ろした。ゆっくりと吐き出した白い息は、少し揺れていた。
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