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ポーターと魔法銃  作者: ゆーの
第二章 スレイピア
30/48

10

 看守兵が彼らの元に来た翌日のことである。


「……んで、どうだ、結論は出たか?」

「ええ、何とか」


 あの後、看守の言う事を信じるか、それを信じるとして、実際に頼みを聞き入れるかを決めかねた彼は、一晩置いた今朝、朝食の配膳当番が宣言通りに昨日の看守兵だった事を確認して、ようやく腹を決めた。


「罠かもしれませんが、信じてみようと思います」

「……ふぅん、なるほど」

「手数は多い方が良いですからね」


 まぁな、と男も頷いた。


「それでは、これからの大雑把な動きを説明します。これから、といっても実際に動くのは昼になってからですが」

「……作戦、ってやつか」


 男は身を乗り出しながらニヤリ、と笑った。


「作戦、と言えるほどのものでもありませんけどね」


 苦笑いしながらも、彼は話し始めた。



───────────────



 魔法銃の魔法石をなぞり、感覚を確かめてから持ち手を握り締め、それを前方に突き出す。


「……どうだ、終わったか」

「まぁ、もう時間もないですからね」

「……そうだな」


 彼は、部屋を軽く見回した。


「……今日で終わりなんですね」

「まぁ、この鬱陶しい監獄暮らしからな」

「それもそうですけど……」


 言葉を詰まらせながら、彼はしばらく天井の方を見上げた。


「何か、寂しい気もして」

「マジかよ」

「……あぁ、そうでしたね。ごめんなさい、不謹慎だったかもしれないですけど」


 少し伸びをして、その場で軽く飛び跳ねてから、彼は続けた。


「この時も休息だと思って楽しむようにしているんです。何と言っても、旅の本質は休息にあり、ですからね」

「……スゲェな」

「いえ、一ヶ月も居たら、そんな事も言えなくなっていると思いますが。……これがあったのも大きかったですけどね」


 そう言って、ショルダーバッグを軽く叩いた。


「それと、最後に一つ、聞きたいのですが」

「何だ?」

「いえ、大した事では無いのですが。何でこの国の国王は人を力づくで支配しようと思ったのかなぁ、と思いまして」

「……知らねぇ、というよりどうでも良い」


 興味なさそうに、男はそっぽ向いたまま答えた。


「どっちかの親に似てしまったとか?」

「それは無いな。一応両方会ったことがあるが、どちらもそんなんじゃ無かった」

「となると」


 そう言って、彼は顎に手を当てて首を傾げた。


「何でそんなにこだわる、どうでも良いだろ、正直」

「いえ、今までにそういう人に会ったことがないので」

「……意外といるぞ、そんな奴」

「そうですか」


 扉を叩くような音が聞こえる。もうすぐ昼食の配膳の時間だ。


「それでは、始めますか」

「だな」


 彼は、銃を構えてから扉の脇の壁に体を沿わせるようにして立った。


「……ブースト」


 扉が開く。それと同時に、彼は一気に看守兵との距離を詰めた。そして銃口が顔に触れるように飛びかかり、ゼロ距離になったところで引き金を引いた。

 狭い牢屋に銃声が響く。兵士は崩れるように倒れていった。


「……やったか」


 男が看守兵の持ち物を漁ると、胸ポケットの中から魔法銃が出てきた。


「これか? ……おーい、聞いているか?」


 銃を握ったまま突っ立ったままの彼を、男は回収した銃で突いた。


「はっ、はい!」

「……どうしたんだ、ぼけっとして」

「いえ、ただ……、本当に抵抗して来なかったな、と思って」

「まぁ、当然だろうよ」


 そう言って、男は小瓶を彼の目の前でちらつかせた。


「毒薬だ。コイツが持っていた」


 そして、男は看守の持っていた銃を彼に見せた。その用心金(ようじんがね)には、鍵が紐で(くく)り付けられていた。


「……この鍵は?」

「アイツの妻の牢屋の鍵なんじゃねえの、全く。あんなとこに付けたら、何かにひっ絡まって発射される危険もあるだろうに。……それと、何かあった時のためにこの銃も借りたいんだが、いいか?」

「良いですが」


 彼は、少し考えてから続けた。


「ただ、その銃は扱いが難しいので、気をつけてください」

「大丈夫だ、そういう銃には慣れている」

「なるほど。それなら弾の切り替えの説明は省きますが、良いですね」

「ああ」


 男は、頷きながら答えた。


「では、一つだけ。その銃は弾の加速にドレインが使われいているので、魔力消費には気をつけて下さい」

「……マジか」


 苦い顔をしながら、男は、その銃の持ち手の部分に打ち付けられた金色のプレートを見た。


「L-231 Aか、初めて聞く名前だな。……まあ良い、俺がここに閉じ込められていた間に時代は進んだのだろうよ」


 そう言って、男は自嘲的に笑った。


「それじゃあ、賭けに勝ってこい」


 それだけ言って、男は部屋から走り去っていった。


「賭けじゃないです! ……ってもう無駄か」


 彼は、小さく呟いた。

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