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暗殺勇者  作者: うらいむ
1/3

プロローグ

どうもこんにちはうらいむです。

書いてみたかったんで書いてみました。

頭ん中で考えてるので、(あと受験生なので、)投稿ペースは遅いです。

慣れない小説でとても不愉快にさせてしまうかも知れません。

そうでしたら申し訳ありません。

ぱくりと感じることもあるかもしれませんが、

どうか暖かく見守っていただけると嬉しいです。

では、本編どうぞ。

お楽しみ下さい。

アドバイスや感想お待ちしております。

皆さんは、暗殺者(あんさつしゃ)をご存知だろうか。

一度ぐらいは耳にするだろう。

名前の通り【暗に殺す】そんな者達。

しかしここで疑問なのは、本当にいるのか、だろう。

これについては色々あるが省かせてもらう。

暗殺者はいる。

どこかに、どこにも。

暗殺者という者は、そう簡単になれるものではない。

世に捨てられ、世を捨て、

この世、この世界を恨む数多くの者達が

しかし闇に葬られ、なす術なく消えて行く。

そんな思いを持った、力のある奴らが、

暗殺者になれる。

これはそんな、とある暗殺者の、物語。



















東京 某所

世界への外交に向けた政策は順調に進み、

こころなしか外国人も多くなってきた日本。

海外からの観光客向けの大型総合ビル建設計画は成功。

海外観光客のみならず、日本人にも大人気もなったここ

『東京メタルタワー』

地下20階、地上100階にもなるビルは、

賑わっていた。

地上付近は一度は名を聞くような店が立ち並び、

昼夜問わず賑やかだ。

その上階はマンションになっており、

階が高くなるにつれ家賃などは高くなる。

最も高いところでは月額100万だとか。

そんなマンションには最上階5階が

シークレットになっている。

基本、シークレットは立ち入り禁止のため、

屋上へはいけない、のだが

しかし何故だか、屋上で対峙する二人がいた。

一方はヘリコプターを背に不敵な笑みを浮かべる男。

一方は入口を背に無表情で突っ立ってる少年。

何やら不穏な空気が交じる中、

「クックック、どうやら俺の勝ちのようだな。」

「,,,,あぁそうだな。」

コートを身にまとい、余裕の笑みで告げる男。

対して、不思議な服を全身にまとい無表情で応じる少年。

「これでお前は終わりだなぁ?」

「,,,,あぁそうだな。」

「お前がもし俺を殺せたとして、もう公になることは避けられん。お前は何をすることも出来ない。」

「,,,,あぁそうだな。」

余裕の笑みで続ける男に対し、

何も無く、無表情に淡々と応じる少年。

「何だ?さっきから。もう絶望してるのか?」

「あぁそうだな。確かに絶望だ。」

「フフフフフ、今年もあと数十秒だ。お前、新年は何分がいい?いや、何秒か?クハハハハ」

「まるで俺を殺せるような発言だな。」

「実際殺せる。」

「,,,,フッ、そうか。」

「なんなんだ?貴様。」

とうとう問う男。

会話の中に感じる僅かな余裕。

そしてなによりも違和感なのが、

さっきまでと何かが変わったのだ。

僅かではあるが無視はできない。何より、

相手が暗殺者ということ。

それが一番なのかも入れない。

その手の裏に少なからず通ずる男は思考する。

こいつは『死月』

18歳という若さにして暗殺者になり、

次々と難関な依頼をこなしてきた孤高の死神。

最近になり何らかの組織への加入の噂があるが

その詳細はまったくもって謎だった。

死月の名前の由来は何よりその殺し方であろう。

最初は偶然、もしくは無今とされていたが

とある一件、あまりにも不自然すぎる方法(殺し方)により

同一人物による大量殺人の線が浮かび上がった。

死因は異なるが死体にはみなナイフが刺さっていた。

そして死体の向き、ナイフの向きは常に

死亡推定時刻の月のあった場所を指している。

警察の発表ではすべて夜の犯行とのこと。

そしてほとんど毎日起きている殺人が

新月の日には全く無いことなど、

犯人が月を意識していることは明白だった。

そんな事から、警察やニュース

それらを見る一般人にまで

『死月』

と呼ばれるようになった。

そんな事を一瞬考えながら警戒している男を

その考えを知ってか知らぬか、

「,,,,いや、もう少しだなって思ってな。」

年越しがな、と付け加える死月に応じる男。

さっきまでの余裕は既にない。

「、、、、あぁそのようだ。」

「どうした?さっきまでペラペラと話していたのに急に黙って。怖気付いたのか?この雑魚が。」

「、、何?」

いきなりペラペラと話し出す少年に男は

違和感や不信、不安そして何より恐怖を覚えた。

そして、男の違和感は確信へ変わる。

「どうやら俺を殺せるらしいので、それを見してもらおうかな。俺は来年なんて興味ないからお好きにどうぞ。」

「そうか、ならばそうさせてもらおう。ひとついいか。なぜいきなり語り出した?」

そういって懐から獲物を取り出し構える男。

「さあな?」

「なんだと?それはどう言っ、、、、、なっ」

男の顔が歪む。

苦しそうに下を向き視線に入ったものは、

複数のナイフと血が出ている己の身だった。

男は察した。弄ばれたと。

「さて、あと数秒て新年になるわけなのだがな。」

少年はそう区切り、初めて見せる爽やかな笑顔で

「さぁ♪新年は何秒がいい?」

「あ、あぁ、ぉぉおおおおあああああ──あっ」

男は必死に抵抗した。いや、抵抗しようとした。

そして男の新年は、3秒で終わった。

「,,,,,,,,もしもし。」

『,,,,はい。』

「死月だ。任務完了」

『了解』

携帯から流れる無機質な声。

最低限の会話のみ交わすそれは

国家完全機密諜報機関第零室。

暗殺を主に、公にできない仕事をする機関。

通称【暗部】

その中でも秘密裏に動く機関。

第十室まである中の、零番目。

世に捨てられ世を捨てた、表から消えた者ら。

そういった力のある奴らが集まる機関。

第零室。

『お待たせしました。では、』

「あぁ。」

区切ると同時、まるで性格でも変わったかのように。

『やぁ、お疲れ。そしてあけましておめでとう。』

無機質とは正反対、爽やかな声でいう青年。

「あぁ、あけましておめでとう。」

『くくく、時間もぴったり、すごいじゃないか。』

「全くだ。あいつがアホでよかった。」

先程までの無機質な音声が嘘かのように生き生きと語る青年。

そしてそれに応える死月。

『おっと、話はそこまでにしよう。続きだ。』

「了解した。」

しかし、仕事となるとまた無表情に。

さすがはプロ、と言ったところであろう。

『まず、その下である最上階に行ってくれ。』

「承知、方法は?」

『まず、屋上の入口へ。壁の長さと扉の長さを測れ。そして真反対へ回り、同じ寸法の壁に()()()()()を与えろ。まずはそこまでだ。』

「了解。」

目測で寸法を測り、通行止めを通り抜け真後ろへ。

そして立ち止まり、深呼吸をする。

普通ならば無理難題だが、問題なさげに問う。

「確認、不知火型の許可を。」

『それ以外に方法が?』

「了解。」

質問に呆れ声で返されつつ、型を構える。

不知火型(しらぬいがた)

そう呼ばれる型は知られることは無い。

何故ならばその型、もとい武術は、

『しかし、自ら型を作るとはな。』

そう、不知火型とは『死月』が作った型。

仕事のため、目標のため。

必要な動き、それに伴う運動、それらを調べ

独自の型、武術を生み出した。

暗殺のためだけに、

故に万物へ通ずる動きを可能にした独自武術。

一見何の変哲もない構えだが、

不知火型特有の力がある。

「不知火型、一正拳突き」

腰を落とし、携帯を持った手はそのままに、

左半身を前に出し、右手を握る。

手の甲をしたにして腰のあたりまで持っていく。

しっかりと狙いを定めて、突く。

壁には当てず、寸止め。

すると、扉があるとされるところがちょうど

ピキっとヒビ入り、崩れてゆく。

人間で言うなら鳩尾に当たるそこを中心に広がる。

そして、

「本当に扉があるとは。」

そう、実際に扉はあった。

そう思わせる残骸が散らばっていた。

『よし。次だ。そこの階段があるだろう?それを下り一番最初のドアをひらけ。入るなよ。』

「あぁ。」

返事と同時、その空間へ飛び込む。

着地し、真っ直ぐ扉へ。

警戒しつつドアノブを捻る。

「開けたぞ。何も無いようだが?」

『,,,,,,,,よし。その次は部屋に入ってくれ。そしてどこかにある何かを壊せ。不知火型の使用は許可する。』

「随分でたらめだな。」

そう言いつつ部屋に入る。

不知火型の使用は許可。それはつまり使えということ。

部屋の中心らしき所へ行き、深呼吸をする。

そのまま重心を一切ぶらさず、片足を上げる。

前から真上へ上げられた右足と

地にしっかりくっついた左足が

一本の棒になるように。

そのまま、真下へと足の裏全体を叩きつけるようにする

が、これもまた寸止め。

足の裏と床の間ほんの数ミリ。

しかし見えない衝撃があたりを包む。

音はなく、静寂だけが空間に居座る。

「反響完了、解析、左、三、右、八、前、六、後、十二」

暗号めいたことを呟く死月。

これは通称たたき落とし三型。

と言っても、とくに名前に意味は無く

なんとなくで付けたらしいが。

足の裏から伝える僅かな振動、それを

空気を挟みつつも床へと。

それを空気越しに感じる高等技術。

すべての動きに繊細さと、何より精神統一力を求められる動きをいともたやすくやってのけるところは、やはり熟練者か。

返ってきた振動、方向と長さから場を特定する。

そして、

「見つけた。」

そして何かがあるという場所へ。

そして、ここは特に何もなく殴る。

壁を殴る時の様な鈍い音はなく、

カチッとスイッチのような音がする。

それと同時、空間の真ん中辺りに変化が。

床が動き、台座らしきものが出てくる。

中には、透明すぎるほどのガラスの中に入れられ、

まるで浮いているかのような錯覚を覚える

水晶のようなものが。

「,,,,,,,,これは、」

『意識を強く持て。それに持っていかれるなよ?それが今回の依頼品だ。クリスタルだな。』

いくらプロの暗殺者といえど圧巻するほどに輝き,

いや、輝きすら霞むほど。

自ら発光し輝くその結晶は、

まるでこの世のものとは思えない。

「なんなんだ?これは。」

『説明は無い。ただ、人の心を壊すそうだ。だから我々に来たのだろう。いいか?しっかりしろ。』

「あ、あぁ。了解した。」

死月は警戒しながら説明を促す。

『それを箱ごと回収だ。黒紙に入れて箱に収納そのまま本部へ直行だ。くれぐれも開けるなよ?』

「了解した。」

警戒しつつ、慣れた手つきでガラスを黒紙に包み

箱を取り出す。

そして箱に入れる、その時。

【────】

「ッ!?」

なにかに呼ばれた気がした死月。

慌てて見回すが、何もなく

あるのはクリスタルのみ。そう、クリスタル。

「心を壊す、か。確かにな。」

『どうした?何か問題でもあったのか?』

「あぁ、いや何でもない。」

心の中で苦笑しつつ箱に入れる。

蓋を閉め、鍵を掛けようとしたその時

【助けて、おにぃちゃん。】

「ッ!?なッ!は!?」

見覚えある景色、聞き覚えのある音

そして、

見覚えのある、妹の姿。

「,,,,ハハハ。こりゃきっついわな。」

脂汗を滲ませ、息絶えだえに呟く。

『どうした?何かあったのか。答えろ。』

「何でもねーよ。ちと、トラウマがフラッシュバックしただけだよ。,,,,クソっ。」

思わず飛び退いた時のまま座り込む。

「すまん、落ち着かせてくれないか?」

『,,,,あぁ了解。ただし1分だ。』

「すまんな。」

この仕事をする上で時間は最も重要。

そんな時間をくれることに感謝しながらも

自分がそんなに切羽詰まっていることに驚く。

そんな時。

ピキリ

と。

微かに、だが確かに聴こえたその音は

あの例の箱からだった。

嫌な予感がしつつ、ある程度落ち着いた心に言い聞かす。

“あれはただの幻想だ。気にするな”と。

そして1分のうち三十秒以上残して仕事へ。

音の出どころを確かめる。

中を確かめるべく鍵に手をつけたその瞬間、

空間が、爆ぜた。

音もなく、風もなく、衝撃もなく。

しかしたしかに大きな力に吹き飛ばされた死月。

全くの想定外に、思わず

「どぉなってんだよ!クソが!」

と、激昂する。

しかしプロ。

すぐさま受け身を取り、距離をとる。

様子を見ながら報告をする。

「聞こえるか?今さっき何やら空間が爆ぜた。よく分からない。しかし現実のようだ。可及的速やかに最も良い判断を求む。」

冷静に、確実に目的を伝える。が、

『───!?─────!!』

「なんだって?聞こえん!」

何らかの影響により電波は遮断、

携帯はほぼ、いや完全に使えなくなってしまった。

仕方なく、前のものに向き合う。

判断は自分がしなければならない。

そんなこと、今までいくつもあった。

しかし、今回は今までとは全く違った。

「クソッ!」

思わず叫ばずにはいられなかった。

しかし空間が爆ぜたとは言えど周りに影響は無い。

が、

目の前にあるそれを目にそんなことは言えたもんじゃなかった。

箱、黒紙、ガラスは無く、

クリスタルのみが浮いていた。

それも、それを中心に幾何学模様を描き、

こちらを見ているようだった。

【君は──かい?】

「あ?聞こえねぇ。何もんだてめぇ。」

いきなりのそれからの問に

自然に返し、探る。

【,,,,そうか、またま君には、でもなら何故、そうか、そういうことか。君は、きっと。】

なにか納得したような音を放つクリスタル。

まるでそれは声のよう、しかし声ではない。

死月は経験上、危険を察知し破壊を試みる。

壊してしまっても後で謝ればいい。

むしろこれを依頼したものを消した方がいいかも知りえない。

「不知火型ッ!」

勢いよく走り出し、拳を振りかざす。

寸止めではなく当てる。

不知火型の神髄、死月の全力攻撃。

だが、間に合わなかった。

判断は正しかったが、遅かった。

【君は、こちらに来るべきだ。来る日に、ここにいてはいけない。助けろ、逃げるな、諦めるのか? が。】

まるで挑発するように脳内に響く音。

相変わらず名前らしきものは聞こえない。

そのことに多少イラつきながらも、拳を振りかざす。

「うるせぇ、何者かは知らねぇが、消えろ。げっK」

技を繰り出そうと飛び出した刹那、

今度は空間が凝縮した。

「かはっ、はっ、はっ、はぁっ、く、ァ」

激しく肩を上下させ呼吸をする少年。

全身は不思議な服で覆われ、

若さの残る顔の、しかし苦痛に歪んだ死月だった。

「はぁっ、はっ、ここは?」

先程とは違うところにいるようだ。

と言うよりは、

「なんだ?この空間。」

そう、空間自体がそもそもとして変だった。

真っ白く、何処までも続く

しかし暗く、狭い場所。

【ようこそ、狭間の世界へ。】

「,,,,てめぇは、」

気配なく現れたそれに向け、殺意むき出しに応じる死月。

【僕のことは置いといて、おいでよ。こちらの世界へ。】

「なんなんだ?こりゃ、夢か?」

【夢じゃないよ?現実さ。ここは狭間の世界。んー、この世とあの世の境目?異世界への扉?】

クスクスと笑いそうに語るそれは死月からするなれば、

「うぜぇ。」

としかいいようのないものだった。

【酷いなぁ。ま、いっか。さて、本題はここから。君は今狭間にいる。まぁ、正確に言うと僕の作った擬似異世界にね。】

「あの凝縮、やはりテメェの」

【そうさ、その通り。僕がやった。驚いたかな?それでね、君はもう向こうにはいけない、いや行かせない。】

「何故だ?」

【だって、呼びに来たんだもの。こっちに。】

「なんなんだ?さっきから。」

【さぁ、そろそろ時間さ。行っておいで。そして助けるんだよ?あの子を。じゃ、死なないようにね?】

最後まで愉快そうに、それがとても不愉快ではあるが、

そしてこの空間に亀裂が走る。

本当に時間らしい。

【本当にくれぐれも死なないでよ?バイバーい】

「オイ、てめぇは、」

何者だ?と聞こうとした時、

強制的に意識を向けさせられる。

真っ白な空間が歪む。

逃げようにも逃げられずただ見ることしか出来ない。

そして、

世界は光で満たされた。










世界か光で満たされた。

そう判断できたのは網膜を焼くような痛みゆえ。

「ここは、」

眩しさに慣れ、目を開けるとそこには、絶景が広がっていた。

エレベストすら霞むほど高い山々、

鬱蒼と生い茂る木々が織り成す荘厳な森、

どこまでも続きそうな平原、

何より、

「おいおい嘘だろ。ドラゴンとか勘弁してくれ。」

そう、多種多様な見たこともない容姿の怪物。

そして死月の目の前にいるのはいかにもな姿のドラゴン。

身体の外側は鱗に覆われ、内側にも薄い鱗がある。

しっかりした後ろ足と、おまけほどの前足。

ドラゴンの象徴とも言えよう、大きな羽は

後ろでたたんでいてもなお存在感は大きい。

「いきなり異世界らしきとこ飛ばされて最初にこれかよ。ついてねぇ。まぁ、どのくらい通用するのか、試させてもらおうか。ドラゴンよォ。」

ドラゴンは威嚇のようなことをしている。

しかし気にせず飛び込む。

ドラゴンから見て右前のあたりへ大きく跳躍。

着地と同時体の向きをずらす。

そしてドラゴンの左前へ移動。

左足で着地し、勢いそのままに回し蹴り。

左足を軸にし、龍の腹あたりに蹴りを入れる。

「ググォァギュゥグ」

「チッ、飛ばなかったか。」

後ろへ大きく飛んで距離をとる。

不知火型ではないとはいえそこそこの威力を出していた死月。結果に満足はしていなかった。

「まぁいい。じゃあ本気で行くか。」

軽く準備運動そして一度下を向き、深呼吸。

表情を消し、暗殺者の顔へ。

低く屈み、前へ飛ぶ。

慣れない痛みに混乱しているドラゴンをよそに

死月はドラゴンの横へ。飛んだ勢いを殺さないままに拳を繰り出す。容赦ない一撃、そして乱舞。

止まらず、反撃を許さず、集中的に、全体的に。

多種多様な素早い動きでドラゴン相手に圧倒する。

そして、ついにバランスを崩したドラゴンへ

斜め下から突き上げるように蹴りを入れる。

鳩尾あたりにヒットした蹴りは、

比喩ではなくドラゴンを浮かした。

死月はそれを見逃さずに追撃。

地面につく前に上向きに攻撃をしていく。

そして地面から三十センチ程上がったところで

片足を上に突き出しながら飛ぶ。

そして重力に任せ足を振り落とす。

そのケリは脳天に直撃し、ドラゴンを唸らせた。

地面に叩きつけられたドラゴンは一度大きく痙攣し

動かなくなった。気絶したのか、死んだのか。

どっちにしろ、戦闘に勝利したらしい死月。

「取り敢えずはこんなもんか。」

警戒姿勢を解き大きく息をつく。

暗殺者と言えど所詮は人間。

重量のあるドラゴン相手にこんなことをしたのだ。

疲れるのは当然だろう。

むしろ疲れてないのがおかしいほどには。

「さてと。とりあえず倒しはしたと思うが」

表情を崩し、長らく出さなかった本性を出す。

どうやら本当に地球では無いらしい。

理性で無理矢理に判断し、思考する。

「仕事中に異世界に飛ばされ、よく分からん()にトラウマフラッシュバックさせられ、なんか世界救え的なことも言われ。持ち物は仕事道具にスマホ、ソーラーチャージャーとマルチバッテリー、あとは充電器、か。」

不思議な服の中から沢山出てくるもの。

使えるのかわからないが少なくはない道具類。

それを確認し死月は苦笑交じりに呟く。

「多いんだか少ないんだか。全くよぉ。あっちでの目標達成できてねぇのに。ま、いっか。アレの言ってたことから察するに姫様救えってことだろ?どうせ。」

そして説いしたように辺りを見回す。

見たこともないものだらけ。

よくわからない世界。

それらをじっくり見て、深呼吸し、

アレに宣言するように

「おもしれぇ、いいじゃねーか。やってやるよ。」

死月は長らく感じなかった感情を胸に、

子供の頃に感じた、心躍る感情と共に。

前へ突き進む。

─前に。

先程より大きく息を吸って、

ここに来てき思ってたことを言う。

「どぉーなってんだァ!この世界はー!!!!」

そうして、ようやく。

何の前情報もなく飛ばされた世界を生きるため、

どこかへ突き進む。

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