プロローグ
その日はすごく綺麗な夕焼けだった。オレンジでも茜色でもない、怖いぐらいのピンク色だった。だから決して曇っていたわけではない。それなのに雨が降っていた。ベランダからそんな景色を見ながら、君も見ているのかな、なんて考えたりした。
その日、ピンク色の世界に雨が降り、君が消えた。
「ん………?朝?寝ちゃってたんだ。」
どうやらシャワーも浴びずに寝てしまっていたらしい。やろうと思っていた課題があったのに。
すっごい綺麗な夕焼けを見た気がする。現実じゃないんじゃないか、ってくらい鮮やかなピンク色で、変なの、なんて思った。雨まで降っていて。たぶん夢だと思う。
「何時、今?」
スマホの電源ボタンを押す。待ち受けのアニメキャラ(イケメンだ)の上に表示された時間は、8時。
「意外と早かったな~」
今日は午後から講義だし、午前中は溜まった洗濯して掃除して買い出しして……。お菓子も買っとかなきゃな、人が来るかもだし。今日は晴れだったはずだ。窓の方を見る。
「えっ?」
もう一度スマホを見る。8時10分。AM。間違いなく朝だ。でも、朝焼けには遅いはずだ。何故窓の外がピンク色なのだ……?布団から出て、窓を開ける。空は嘘みたいなピンク色の夕焼けで、雨まで降っていた。
「朝だよね?朝8時だよね?」
テレビのリモコンを手に取り電源ボタンを押すが、つかない。角度を変えて何度も押すが、画面は黒いままだ。諦めてパソコンの電源を入れる。起動しない。
「スマホの時計がバクるとかあんのかな……」
冷蔵庫を開ける。電気は着いているし何より涼しい。停電ではないようだ。時計のついでに天気予報も確認をしたかったが、まぁしょうがない。スマホの天気予報アプリを押す。反応がない。
「洗濯はとりあえず明日かな~。今日晴れって言ってたのに。」
掃除機は使えるし、掃除をしてからスーパーに行こう。
私はまだ気付いていなかった。アパートの隣にあるコンビニから、車の音も人の声も、今日は全く聞こえないことに。