第4話 間違えた!
夜7時半。閉店時間まであと30分。
辺りは少し暗くなって、お客さんは少しずつ自分の家に帰って行く。寂しくなるね。
「ミーナ、こっちのテーブルお願い〜」
「はーい、すぐ行くよ〜」
お客さんが帰った後のテーブルを拭いて、椅子を元に戻して。
やっぱり綺麗な事はいいことだ。
お客さんが全員帰っていなくなった後、1人のさらりーまん? みたいな感じの若い男の人がやって来た。
「いらっしゃいませ。当喫茶店はまもなく閉店時間ですが、それでも大丈夫ですか?」
すると、男の人はネクタイを緩めながらこう言った。
「ただいま〜」
「「えっ?」」
私はリーナと驚いちゃった。
見知らぬ男の人からただいまって言われたのは初めてだったから。
すると、間違いに気づいたのか、男の人は顔を赤くして「間違えました!!」
全力疾走でお店から出ていっちゃった。どうしよう、これ。
しばらくリーナと話していたらさっきの男の人が走って戻ってきました。
気づいたリーナが扉を開ける。
「すいません。少し酔っててあんなことを」
「い、いえ。大丈夫です。お水飲みますか?」
男の人を近くの席に座らせて、お水を渡して話を聞きます。
男の人はお水を飲んで少し落ち着いたのか深呼吸。
「それで? どうしたんですか?」
リーナが早速質問。私も気になります。
「いえ、僕の家はすぐ近くにあるんですが、外観が似ていたのでそのままの流れで······」
「そうだったんですか······。家まで帰れますか?」
酔って喫茶店を家と間違えるほどだから心配です!
「いえ、大丈夫です。水もいただいたので、落ち着きましたし。このまま真っ直ぐ帰ります」
「そうですか。気をつけてくださいね」
「ご心配お掛けしました。このお礼は後日させていただきます」
「いえ、お礼だなんて。当然のことですから」
「いやいや、そう言わずに」
そう言って男の人は喫茶店を出て、家に帰って行っちゃった。
「じゃあ、リーナ。もう閉店時間過ぎてるからシャッター下ろしてきて」
「はーい。洗い物は任せたよ〜」
私は1人で洗い物をしながら先程の男の人を思い浮かべたけど、店に来てくれたことは無さそう。
「お店に通ってくれるようになるとか?」
「ん? 何が通ってくれるって?」
「独り言だよ。さ、明日の準備して寝よ?」
「はーい」
今日も喫茶店は楽しかった。最後だけ少しビックリしたけどね。
よく動いた日は眠くなる。早くお風呂に入りたいなぁ。
そう思いながら電気を消して2階に上がったのでした。