プロローグ
「・・・・?」
朝の通勤中、彼は自分の頭に違和感を覚えた。
さいきん髪が薄くなってきていることもあり、気になって頭を触る。
ぐちょり、と手のひらに嫌な感触があった。そして彼は予想する。
これは、あれだ。あの白い・・・・あれだ。
手を見ると予想通りに、白い糞がついていた。
この腐れ鳥類が!絶滅しやがれ!!
毎日のように上司に叱られ、下の連中には陰口されストレスが蓄積されていた彼は、思わず叫びそうになる。
しかし彼の頭の中に、ある言葉が響いた。
『悪口はいけませんよね。ほんとうに。この間、たまたま見かけたんですが、どうやら私は相当の嫌われ者のようです。ものすごい量の悪口が、とあるサイトにかかれてました。それもそういうサイトは1つや2つじゃないのです。まぁ、仕方ないのでしょうけど、だけど、すこーーーーーし、私は怒ったので、予言をします』
それは彼がたまたま見た番組での事だった。
狐の面をつけた少女と、同じく面をつけた背の高い男。
番組の内容は世界の不思議な力を持つ人物を紹介する、というようなものだったと思う。
その二人は、ちょくちょくそういう系統の番組で出ていたので、彼も知っていた。
超能力か何だか知らないが、馬鹿馬鹿しい。こういう事でしか金が稼げない詐欺師め。
彼は元々そういう不思議な力を信じない人で、しかもその時は仕事がたまたま行き詰っていたので、これは間が悪かったとしか言い様がない。運が悪いとも言う。
彼はパソコンを立ち上げると、さっそくサイトを探した。
検索はすぐヒットした。たくさんの悪口のカキコミがある。
ざまあみろ。
そう思いながら、彼はさっそくサイトを閲覧する。
彼女達に対する罵詈雑言、中傷のカキコミ、それを見る度に彼は高揚した気分になった。
そして遂に彼は自らカキコミをした。
件名 狐さん
てめぇら気持ち悪いんだよ、頭だいじょうぶか?てか精神病?妄想癖でもあるんじゃねえのwwそんな番組に出てないでさっさと病院いったらどう?あ、でももう手遅れかwwww人間にはチャンネルがたくさんある?なんのアニメの影響だよwwwwもういい加減あきた。●ね。●れ××女とかもう●●●されて××だ方がいいんじゃねえwwwwww
そして彼は後悔することになる。
あの狐は・・・・なんて言ったっけ。
そうだ、こう言ったんだ。予言したんだ。
『もっと非道いこともできるのですが、まぁ、いいのです。とりあえず、予言。明日は晴れてても傘を差してた方がいいのですよ。たとえ、家の中でも。私を好く思っていない人は、頭に運が落ちてきます。どうかお気をつけ下さい』
くすくすくす。
どこかであの狐が笑う声が聞こえた。
その日から彼は改心したらしい。が、それはまた別のお話。