第97話 ~ガルーダ討伐戦 前編~
遅くなってすみません。
苦手な戦闘シーン回なもので。。。
僕たちはガルーダを待つ。
「上手く罠に食い付いてくれよ。」
僕は画面をじっと見つめる。
『ガルーダの気配を察知しました。まもなくです。』
その言葉に、司令室は静まりかえり、画面を凝視する。
「ん?あれは。。。」
最初に声を出したのはダルガだった。
「なに?どうかしたの?」
「そう簡単には勝たせてはもらえぬな。」
「え?ちょっ。。。それって?」
「どういうことでしょうか?」
言葉に詰まった僕の代わりに、ジョージが聞く。
「ガーゴイル達を見よ。」
ガルーダの後について飛ぶガーゴイルを見る。
「あのガーゴイル達、色が変だね。」
やけに体色が濃い。。。
「黒魔術をかけられておるな。”狂撃戦士”じゃ。禁忌の術じゃて。」
「聞いたことがないな。。。」
ジョージが呟く。
「そうであろうな。古い術じゃ。かけられた者は必ず死ぬ。故に禁忌の術として、使う者などいまい。ワシも過去に1度だけ、”狂撃戦士”化された人間と闘ったことがあるが、魔王の力をもってしても、苦戦を強いられた。」
「どうして死んじゃうの?」
「術をかけられた者は、自分の能力以上の力を出し闘いを続ける。それがどういうことか分かるか?生きとし生けるもの全て、能力は常にセーブする。100%の力は、心身ともに常には出してはおれぬだろう?その能力を限界まで引き出し続けたまま、さらに術により能力には上乗せがされる。すぐに身体は限界を超えるであろう。だが、拳が砕けようとも、足がもげようとも、その命が消えるまで、闘いを続ける。それが”狂撃戦士”の術じゃ。」
ダルガは首を横に振り、ため息をつく。
「そんなのが、えーと・・・・11匹もいるじゃん!!!」
僕は画面の中のガーゴイルを数えて、目を見開く。
「やつらは元は”飛空隊”であろう?ワシが集めた精鋭たちじゃ。基礎能力も高い上に、能力が飛躍的に上乗せされておる。苦戦は必至。ドラゴンライダー達を集結させよ。」
ダルガは重く低くそして静かに僕へ言った。
「よく分かった。シグナル!ダルガさんの言う通りにしよう!」
「陛下。聞こえております。」
水晶からゼルダが答える。
「我ら龍人族とガルーダは遙か昔より因縁があり、犬猿の仲なのです。ガルーダの同族とはいえ、ガーゴイルに禁忌の術を使うなど、戦士の風上にも置けません!!我らドラゴンライダー隊、命に代えてでも打ち取ってみせます!!!」
気合の入り過ぎた通信が入る。
「ゼルダ!!ありがとう!頼りになるよ!!でもね、勝っては欲しいけど、君たちの命と勝利は比べるまでもなく、命が大切だからね!!!負けてもいいから死ぬことは許さないからね!!!!」
僕は強く念を押す。
「承知しました。生きて勝利!!!これでよろしいでしょうか?」
「うん!!」
「御意!!」
ザッ!!と勢いよく衣が擦れる音が聞こえる。
きっと、水晶の向こうで敬礼なり跪くなりしているのだろう。。。
見えてないけど。。。
ピカッ!!
ドオォォォォオォン!!!
画面の向こう、偽世界樹の結界に、特大の雷が落ちる。
「え?ガルーダって雷系が使えるの?」
「あやつは魔法にも長けておるでの。」
ダルガは冷静だった。
『ですが、あれはガルーダの本気ではありません。もう少し力を削がなくては。』
”五行の精”も冷静だ。
一喜一憂しているのは僕だけか。。。
ガーゴイルが羽を抜き、それを空に浮かべる。
6枚の羽根を基点に真っ黒な五芒星が描かれた。
「次は何の術を使うつもりじゃ?」
ダルガが食い入るように画面を見る。
「大丈夫かな。。。。」
不安が募る。
「アルよ。よく見ておくのじゃ。黒魔術は五芒星を使う。故にそこが欠点となるのだ。完全なる六芒星とは違う。黒魔術を破るのは、その必ずあるはずの弱点を見つける事じゃ。しかも術者の癖が出やすい。画面越しとはいえ、いくつかの術が見られるじゃろう。万が一、ドラゴンライダー達が破れた時の為に、それを探すのじゃ。」
「うん。」
ダルガに促されて、画面に集中すると、少し冷静になれた気がした。
『真空円陣を作るようです。』
「え?何それ。。」
『範囲結界の一種です。任意の大きさの球体を作り、その中を真空にするのです。結界の種類が分からないので、正攻法で解除は無理ですからね。力ずくで破るとなると、真空状態は有効な手段です。大したことのない結界なら十分に敗れます。ですがガルーダが使うは”黒魔術”、絶対真空など作れません。ただの負圧など、我らの結界には意味を成しません。”世界樹”の結界が雷に耐えたことから、順に試していくつもりなのでしょうが、無駄な努力です。まぁ、力を削ってくれるので、こちらとしてはありがたい話ですね。』
かんっぜんにバカにした言い方だった。
ある意味”五行の精”を敵に回すとヤバイ。
僕みたいな、行き当たりばったりなヤツにはさらに厳しそうだからな。
ガルーダの真空円陣は世界樹の結界に張り付くように、半円球となっていた。
ヤツが頭上に掲げていた手を勢いよく降ろす。
バァァァァアッァァァアァン!!!!
派手な音を立てて、爆発を起こした。
光煙が収まると壊れぬ結界を見て、顔を歪めるガルーダが見えた。
『ふふっ。感情的になっていますね。早く怒りに身を任せ、全力の技を出して欲しいですね。』
冷たく笑う”五行の精”が怖いくらいだ。
ガルーダがまた羽根を毟る。
フウっと息を吹きかけると、長剣が姿を現す。
『ふふっ。今度は何をしてくれるのでしょうね?』
そしてガルーダはまた違う羽根を毟り、結界の上に魔法陣を描く。
さらに、一枚の羽根を自分の腕に突き刺した。見る見る筋肉が盛り上がる。
「ほう。強化魔法か。力技では、打ち破れんがな。。。」
ガルーダが結界に長剣を突き刺した。
「ウオォォォォォォォ!!!」
黒い五芒星が光出し、術が発動している。
『今度は重力操作魔法ですね。加重させていくのでしょう。』
その言葉通り、体重を全て乗せるように、剣に力を込めている。
「来い!!!」
ガルーダの声が響くと、ガーゴイルたちがガルーダの頭上に集まる。
そして。。。
ガルーダ目掛けてガーゴイルが重力を加算していく。
メリメリと音を立てて、ガルーダごと剣が沈み始めた。
ガルーダの顔が苦痛に歪む。
『身を賭して結界を破ろうとは敵ながら。。。ふふっ。これなら、魔力体力ともに削がれましたね。』
”五行の精”は余裕の笑顔で見ている。今まさに結界が破かれようとしているのだが。。。。
バキィィッィィィィン!!!!
派手な音と光を放ち、結界が破かれた。
結界は砕けたガラスのように、光となって飛び散る。
「・・・・・・!!!!!」
結界が砕けた事に、司令室はざわつく。
『ん~。分かりやすく結界消滅の際は、ガラスのように割れるようにしましたが。。。少し過剰演出だったかもしれませんね。。次回は改善しませんと。』
”五行の精”たちがブツブツと独り言のように呟いている。
(いやいやいや。。。次回とかないから。あったら困るから。。。)
僕は一人、冷や汗が出る気持ちだった。
「あーっはっはっはっは!!!我にかかれば容易い事よ!!!」
ガルーダが高笑いをしている。
だがその肩は、息を切らしたかのように動いていた。
『いよいよですね。地に降り立った瞬間が、合図となっています。』
ゆっくりとガルーダとガーゴイルは降下してきている。
ドラゴンライダー達が隠れている穴は、ちょうどガルーダ達の背の側にある。
地に足をつけるまでは、気付かれないだろう。
「あーっはっはっはっは!!!これが世界樹であるか!!伝説の通り、荘厳な姿をした樹であるな!!!」
降下しながら、”世界樹”を品定めするように眺め、ガルーダが満足気に言う。
『偽物に喜ぶとは。。。あの目は節穴なのでしょうか?』
(おいおい。今度は暴言を吐き始めたぞ。)
「それだけ、あの偽物が、上手くできてるってことだよ。」
思わずフォローを入れてしまった。。。
ガルーダを先頭にガーゴイル達も地上に降り立つ。
「あーはっはっはっは!!!ここから始まるのだ。我こそが天地魔界を治めるのだ!!!」
ガルーダが世界樹に向かって両手を広げ、勝利宣言とも思える雄叫びを上げる。
「ねぇ。ドラゴンライダーは?」
降りたった瞬間が合図とか言ってなかったけ?と思いながら、”五行の精”に聞く。
『アル様?冥土の土産に、少しばかりの至福の時間を与えてやってもいいのでは?』
(ちょっ。何か僕が心狭いみたいに言われてるんですけどぉ。。。)
なにか納得がいかないが。。。仕方ないか。。。
パチン!
”五行の精”が指を鳴らした。
その音を合図に、ドラゴンライダー達が一斉に穴から飛び出した。
そう一斉に出ることができたのだ。。。複数の場所から飛び出したから。。。
(いつの間に掘ったんだ?。。穴が5カ所もあいてるし。。。もう僕の采配は一切いらないじゃん。)
もう。。。諦めた。。。”五行の精”に任せよう。。。
僻むから納得いかないし、ふて腐れてしまう。
そういうものと割り切ろう。と自分に言い聞かせる。
「なにっ!!!」
ガルーダは飛び出したドラゴンライダー達に驚き、後ろへ飛び退く。
「そうか。。。お前達が出てくるとはな。ドラゴンライダー部隊に守らせるとは、この”世界樹”は、やはり本物なんだな。」
ガルーダは、ニヤリと笑う。
盛大な勘違いだが、僕たちとしては有り難い。
「誘導は成功したようだな。。あとは、無事に倒せるか、か。。。」
ジョージは画面を見て静かに言った。
ドラゴンライダー部隊は11班。10班が戦闘に参加している。1班分は実質補欠要員だ。
そして、負傷者も除外した。挟撃戦士となったガーゴイルに対しては、万全の状態が望ましい。
総勢45組。ドラゴン達は属性様々な種類がいる。
ライダーはゼルダを筆頭に歴戦の戦士達だ。経験値が高い。
ダルガの情報から推測し、苦戦は必至であるが、数でなんとか。。。
こんな時、ジルがいれば。。。
(ダメだ。ジルは調子が悪いって言ってたから。。。無理はさせられない。)
僕は自分の甘さに頭を振る。
「大丈夫。ゼルダ達、ドラゴンライダー達を信じてるから。」
自分を奮い立たせるために自分に言った。
だがそれは、ドラゴンライダー達全員に通信が繋がっていたようだ。
「有り難きお言葉!!必ずや勝利を陛下にお届けいたします!!」
(独り言だし、ドラゴンライダー達への言葉でもなかったんだけどな。。。)
なんだか、ちょっと恥ずかしい。
恥ずかしさで顔が熱い。
でも士気が高まったようなので良しとしよう。。。
飛び出したドラゴンライダー達は、それぞれの目標へと狙いを定め、攻撃を開始した。
ガルーダにはゼルダ班が向かう。ゼルダの手には独特の形をした大剣が携えられていた。
「かわった剣だね。」
「ゼルダ専用の剣、ドラゴンスレイヤーです。」
シグナルが言う。
「え?ドラゴンライダーがドラゴンスレイヤー持ってどうすんの?仲間に当たったら危ないじゃん!!」
僕は思わずシグナルに勢い込んで聞いてしまった。
だって、ドラゴンスレイヤーは”竜殺し”の剣なんだもの。。。
「それこそがゼルダの強さなのです。ドラゴンを仕留めることができる実力があるということの。」
シグナルのゼルダに対する信頼の厚さでもあるのだろう。
ガキイィッィィィン!!!
ゼルダとガルーダの剣がぶつかり合い、火花が散る。
その空いた背中に、別のドラゴンライダーが間髪入れずに攻撃を仕掛ける。
ガルーダは半身になり、際でかわす。
「ふん!魔王軍の中でも正攻法で攻めるのが有名なドラゴンライダーともあろう部隊が、一対複数の闘いとはな。。。随分と汚い真似をするんだな?」
「お前が”正々堂々”を語るとはな。俺達は勝利を収める為の手段として”正攻法”を選んでるだけなんだけどな。」
ニヤリと嫌みを言うガルーダに、ゼルダは同じように笑みを返した。
「若造が!!」
ガルーダは再び剣を構え直し、ゼルダへ振り下ろす。
ゼルダはその剣を剣で受け、派手な金属音が周囲へ鳴り響く。
ドラゴンライダー達はゼルダの攻撃に続いて、隙間無く攻撃を仕掛けていく。
それをガルーダは難なく受け流す。
激しい攻防が繰り広げられていった。
「”挟撃戦士”かぁ。どんな闘いをするんだろう。」
一人の若いドラゴンライダーは不安を口にする。
ゼルダ班の初戦で怪我をした者の補充として、補欠要員から入ったのだ。
騎乗しているのは、その龍。
自分の相方ではない。
常に第一線で戦う、エリートの龍なのだ。
自分のような下っ端が乗っていいのかも不安だ。
(足手まといにだけはならないようにしないと。。。)
((そう気負うな。誰でも慣れないことは不安だけどな。俺がついてる。そんなガチガチだとかえってマイナスになるぞ!))
ドラゴンライダーの気持ちが伝わったのか、龍が答えてくれる。
「そうだよな。。。陛下のお気持ちに応えるためにも、持てる力を発揮しないと。。。よろしくな。」
((おう。))
そして、不気味なガーゴイルへの攻撃に加わる。
乗るのは”水月龍”。水龍なのだが、まるで”水月”という言葉のように、接近し相対する戦闘スタイル。そして相手の急所を確実に捕らえる。
その様から、”水月龍”と呼ばれるようになった英雄龍。
ガーゴイルへの初撃は、緊張気味のドラゴンライダーに配慮するかのように、遠目からのトルネード水流を放った。
ガーゴイルはその太い水流を余裕と見て、手で受け止める。
「ドラゴンライダーがこんな技しか使えないのか?」
ガーゴイルが水流を流そうとした瞬間。。
「うっっ!!」
呻きを上げて、手を押さえる。抑えた指の間からは、血が滴り落ちる。
「クソッ。水月かぁっ!!」
挟撃戦士と化して記憶が曖昧となっていたガーゴイルだが、強烈な痛みで思い出したようだ。
そう、歴戦の戦士である水月龍がそのような無駄撃ちなどするはずがないのだ。
太く軽いトルネードの水流の中心に、細くそれでいて重く鋭い回転のかかった水流が隠されていた。
大したことの無いような太く緩い水流に、思い上がった者ほど、避けることなく受け止める。
その心理を巧みに利用する。
((ふんっ!!挟撃戦士など取るに足らんな。))
水月龍は、ガーゴイルに届くように思念を飛ばす。
「なんだとぉ!!調子にのりやがって。。。」
ガーゴイルが逆上する。
((いいか。常に冷静にいろ。ああやって、理性を無くすほど、戦闘力は上がるが、その分、隙ができていく。隙は攻防共に使えるんだ。勉強と思って気楽にいこうや。))
若きドラゴンライダーに、水月龍は語りかける。
「はい。」
ドラゴンライダーは頷き、そして闘いに集中していくのだった。
次回 ガルーダ討伐戦 後編!!
になるといいなと思っています。
纏められなかったら、中編になってるかも。です。




