第92話 ~戦いに向けて~
「軍を編成せよ!!」
国王の言葉に会議室は揺れ、軍事会議が終わる。
各々の持ち場へと高官達が走って行った。
「では陛下。私も魔界へ戻り、軍の編成をして参ります。」
シグナルが敬礼する。
「ドラゴンライダー隊はお任せ下さい。」
龍人族のゼルダも敬礼をする。
「魔界へはワシがついて行こう。アルはリリィと共に先の会議室を司令室としておくのじゃ。」
ダルガが僕とリリィを見て言った。
「分かった。」
僕は頷く。
「水晶の映像をもう少し上手く投影できるようにしておきます。」
リリィも頷く。
「じゃあ、アル。僕も第一方面隊を整えてくるよ。ジルの意見も聞きたいから一緒にどうかな?」
ジョージがジルを連れる。
「それじゃあ、明朝までにそれぞれ整える為、一旦別れよう。」
ジョージの言葉にみんなで目を合わせ、頷き合う。
強い眼差しで、各々の持ち場へと向かった。
僕はリリィと会議室へと歩く。
「ねぇ。リリィ。どうしてダルガは僕を離れさせたのかな?魔王軍を編成するのに、なんか不自然な感じがしたんだよね。。。」
「えぇ。私も感じたわ。アルがいて邪魔とかそういう感じでは無いけれど、なんだか不自然ではあったわよね。」
二人だけになると、リリィは優しくなる。
公私をハッキリと区別しすぎるところもまた魅力だ。
「けれど、みんなでコッソリと話し合いをする時間も無かったわ。私たちの気のせいかもしれないわ。」
「あぁ。そうか。。。リリィは知らないか。。。実はさ、僕とジルとダルガは、脳内で会話できるよ?考えを読み取るとかそういう感じかな?」
「そんな事ができるの?便利ね。。。でも、そうなると、ジョージも一枚噛んでるかもしれないわ。”龍の民”として覚醒したのなら、その能力、使えそうじゃない?」
「そっか。そうだね。。。でも、僕を仲間はずれにする理由が分からないな。。。」
「そうね。振り出しに戻るわね。。。」
「とりあえず、司令室をつくりましょうか?」
「そうだね。そのうち何か思いつくかもしれないしね。」
僕たちは、真面目に司令室を整え始めたのだった。
「ドラゴンライダーはどの組み合わせで行くつもりだ?」
シグナルがゼルダに問う。
「そうですね。龍は全ての種類を連れて行こうかと。何せ相手はガルーダですからね。確かあいつは多重結界が使えたはずです。属性攻撃は通じないものと考えておくべきでしょう。」
「詳しいな。」
シグナルが舌を巻く。
「一度、闘ったことがあるんです。数百年前になりますが。。。それからの年数を考えるとさらに熟練しているでしょうからね。気をつけないと。」
「闘いはどうだったんだ?」
「あいつが村を荒らしてましてね。たまたま私たちの部隊がプライベートで近くにいたものですから、止めに入りましたが。。。言うまでもなく惨敗ですよ。まぁ、僕たちをこてんぱんにやったんで、気が済んだのか、村の被害はそれ以上広がりませんでしたから、魔界的にはドローなんでしょうけどね。」
頭を掻きながらゼルダが苦笑する。
「そうか。。相棒の龍がいないとしても。。。ライダー達だけではそういう結果なのか。。。」
シグナルが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ま、僕たちも成長してるんでね。前回みたいな事はありませんよ。雪辱戦です。」
シグナルとゼルダは、ダルガの意見を聞きながら、軍を編成していった。
「ジル。無理を言ってごめんよ。どうしても君と話しがしたくてね。」
ジョージがジルの肩に手を置き歩く。
「構わないよ。僕も考えを纏めたかったから。」
ジルもジョージを見上げながら話す。
だが、その場所は。。。。
世界樹へと続く森の中だった。
「”龍の民”として覚醒してから、途切れ途切れの映像を見るんだ。一番最初に見たのは、黄色と青色の2匹の竜だった。。。」
「僕と姉さんだ。。。」
「それからは、年代も場所も様々な映像で、統一感が無いんだ。最初の映像は竜だからね。”龍の民”として見ることができたのも納得なんだけど。。。それ以外が分からなくてね。」
「う~ん。それは。。。歴代の”龍の民”の記憶なのかなぁ?」
「やはり、そう思うか。。。僕もそうかとは思ったんだが。。。それならば、何か意味があるのかと思ったんだ。けれど共通する物がなくてね。」
「僕と姉さんが闘った時、その場に人間が一人いたんだ。姉さんが庇ったけど、僕が殺した。でもその人間は”龍の民”じゃなかった。てか、そもそも、その時代に”龍の民”が存在してない。なのに、ジョージは姉さんの龍鱗で、覚醒したよね。。。う~ん。答えが見つからないな。」
話しながら、二人は世界樹へと到着する。
「あー!!!二人とも久しぶり~~~!!」
脳天気に、”世界樹の精”カルアが出迎える。
「やぁ。久しぶりだねカルア。今日も可愛らしいね。」
精霊の姿で出てきたカルアをジョージが褒める。
「えへへ。ありがとうジョージ。。。ところで、力が覚醒してるけど、急にどうしたの?」
流石は”世界樹の精”だ。脳天気そうに見えても、ジョージの変化に気付いている。
「あぁ。まぁいろいろあってね。ところで、世界樹の葉をもらえないかな?」
「はぁぁぁ。やっぱそういうこと?私に会いに来たんじゃないんだね~。」
カルアが寂しそうに呟く。
「あはははは。違うよカルア。ちょっと歴史について考えてたんだ。それで、”世界樹”に来れば、謎が解けるかもしれないと思ってね。葉っぱが丁度良いかと思って聞いてみただけさ。無いなら、ちょっと樹を削るかもだけど。。。」
ジルが揺さぶりをかけると。。。
「あるよ。あるある。だから樹を傷つけないでよ?アルが交代してくれるまでに樹が枯れたら、シャレになんないんだからぁ。」
カルアは急いで樹の中へと戻り、すぐさま”世界樹の葉”を持ってきた。
「アルが来てから、世界樹の落葉が止まらないの。このままじゃ、アルと交代する前に枯れちゃいそうなんだけど。。。」
カルアは心配そうに告げる。
「まぁ、その辺も考えてはいるんだ。」
ジルはそういうと、徐に”世界樹の葉”を口にする。
「え?食べるの?」
カルアがジルを見つめる。
その横で、ジョージも”世界樹の葉”を食べた。
「くっっ。」
ジョージが口を押さえ、屈み込む。
「ちょっと。どうしたの?大丈夫?」
カルアがジョージの周りを飛び回る。
「どうして?”世界樹の葉”だよ?なんで?」
泣きそうにカルアが叫ぶ。
「だ。大丈夫だ。。カルア。。大丈夫。だよ。」
ジョージが汗を吹き出しながらカルアに伝える。
「全然大丈夫そうじゃないよぉ。。。しっかりしてよ。ジョージ!!」
ジョージが答えた事でかえってカルアは心配して、泣いてしまった。
「カルア。落ち着いて。」
ジルがカルアを抱きかかえる。
「うぇ~ん。」
カルアはジルにしがみついて泣いていた。
「はぁっ。はぁっ。もう大丈夫。。。ジル。ビンゴだ。」
ジョージは息を切らして、仰向けになり、大の字に寝転がる。
「じゃあ、この樹も黄天竜のアイテムの一つなんだね。」
ジルはジョージを覗き込み、そして横に座った。
「あぁ。間違いないよ。だがしかし、君はお姉さんを。。。映像と一緒に匂いも音も全てを再現されて、思わず取り乱した。。。ごめんよ。」
「そこの映像を再生するんだ。。。参ったな。。。今はそんなことしないから。。。」
ジルが深くため息をつく。
「そんなことは分かってるさ。ジルはジル。僕たちの良き友人であることにかわりは無いさ。」
ジョージは隣に座るジルの頭を撫でる。
「ははっ。アルと同じ事を言ってくれるんだね?ありがとうジョージ。」
ジルは頭を撫でるジョージの手を握り、目を瞑って静かにお礼を言った。
「でも、僕には何の変化も無いな。。。このままじゃ、足手まといになりかねない。。」
暗く沈んだジルの声だった。
「ん?何をどうしたのか知らないけど。。。どうしたかったの?」
カルアがジルに聞く。
「うん。。。上手く力を使いこなせないんだ。原因が分からなくてね。。。これ以上アルにもみんなにも迷惑をかけられないから、困ってたんだ。」
「封印が残ってるからでしょ?その心の闇にかかった封印は解かないの?」
当たり前のようなカルアは言った。
『え?』
二人でシンクロするかのように見つめ合う。
「え?違うの?」
その様子にカルアが疑問形になる。
「いや。封印が僕にかかってるの?」
「そうでしょ?闇の力が残ってるじゃん。それが邪魔してると思うんだけど。。。」
カルアが不思議そうにジルを見る。
「気付かなかった。。。」
ジルが呟く。
「その封印はどうしたら解けるんだろうか。。。ジル自身も気付かないような封印なんだろ?」
ジョージが考え込む。
「闇の封印だから、私でも解けるけど?」
何気なくカルアが話す。
「え?ホント?」
「ホントも何も。。。簡単だけど?」
「そんな簡単なら、何でもっと早く言ってくれないんだよ。。。解いてよ。」
「え?なんで逆ギレされてるわけ?別に何にも言われないから言わなかっただけでしょ?解くのは良いけどぉ。」
カルアの言葉が尻すぼみになる。
「けど。なに?」
ジルがちょっと強めに聞き返す。
「あのね?その封印を解く方法がね。。。私はいいんだけど。。。ジルはどうかな?って。嫌だったらできないし。。。」
チラチラとジルとジョージを交互に見る。
「封印を解いてもらうのに嫌がるわけないだろ?」
「そう?でもね”世界樹の精”の祝福を与えるから。。。口づけなんだけど。。。」
「え?いや。。。え?」
ジルがキレイな2度見をする。
「ほらね。。。結構びっくりするでしょ?」
「いや。カルアが嫌いとかじゃなくてさ。。。僕、竜だし。。。人間の女の子に興味ないんだけどさ。。。」
ジルが顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
「じゃあ。問題ないじゃないか。それに、人間としても精霊としても、カルアはもの凄く可愛いし、ジルだって同じだよ?役得だね。羨ましいな。」
ジョージが笑いながら二人を見る。
からかわれた事で、さらに二人の顔は赤くなる。
「世界樹の精としてだからね!」
「僕だって竜だから!」
「ツンデレなのかな?ムキになるところもかわいいよ!!」
全力でジョージは愉しむ。
「じゃ、じゃあ、始めるけど。。。恥ずかしいから目を瞑ってよ。」
カルアに促され、「うん。」と小さく頷いてジルが目を瞑る。
カルアの身体がオーラに包まれ、美しく光り出す。
ジルの頬にカルアが手を添えると、ジルがピクっと身体を硬直させた。
カルアの光は強まり、唇が重なる。。。。
小さな精霊と小さな男の子がキスをする姿は、なんとも微笑ましかった。
カルアが大きく息を吸い込む様な仕草をして、ジルから離れる。
「もういいわよ。ちゃんと解除できたわ。」
その言葉にジルが目をゆっくりと開ける。
「ありがとう。」
恥ずかしそうにお礼を言った。
「大丈夫なのか?カルア。。。」
ジョージが心配そうにその腕を触る。
「うん。ジルにかかってた闇の力を吸い込んだから。。。あとは”聖”の力でなんとか押さえ込んで消し去るわ。」
カルアが黒くなった腕をさすりながら答える。
「え?それ。。。僕のせい?痛む?大丈夫なの?」
ジルがカルアに駆け寄り、その腕を取る。
「うん。ちょっと痛むけど、大丈夫だと思う。」
「ごめん。こんな事になるなんて、思ってもみなかったから。。。気軽に頼んじゃって。。。本当にごめん。」
ジルがカルアの腕をさすりながら何度も謝る。
「大丈夫。これでも”世界樹の精”なんだから。。。心配してくれてありがとう。」
ジルを見つめてカルアが答える。
「ふふっ。中々良い雰囲気だね。精霊と竜のカップルも悪くないと思うよ?」
『もう!!ジョージーーーー!!!』
息がぴったりと合った二人の叫びに、ジョージはほのぼのとするのであった。




