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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
92/322

第91話  ~作戦会議~


 緑の国に戻り、ジョージが国王の元へと走る。


 全員はジョージについてはいけないので、僕だけがポケットの中に忍び込む。


 ジョージは国王へ白の国からもたらされた情報を報告する。

 だが、赤の国の挙兵の情報はもちろん、突拍子もないような武装飛行艇団など、信じてもらえない。


「父上、真偽を確認するためにも、上層部の者の招集を願います。」

 ジョージはひたすら頭を下げる。


「そこまで言うのであれば、よかろう。招集を行う。だがしかし、偽の情報であったのならば、その責を取るつもりはあるのだろうな。」

 為政者らしく、威圧感のある言葉を発する。


「もちろんです。万が一の際には、司令官の座を降ります。一軍人として出直すか、それ以上の失態であったならば、国を出る事も厭いません。」

 ジョージは跪き、頭を垂れる。


「よし。では30分後に軍事会議を始める。」




 僕たちはジョージの部屋へと戻り、打ち合わせを行う。


「ジョージ。。。良かったの?あんな啖呵を切っちゃって。」

「仕方ないさ。我が国の歴史上、他国が攻めてくることが無かったんだから。ガウディ国王陛下の情報が間違っていたとは思えない。」


「陛下。よろしいでしょうか。」

 シグナルが話に入ってくる。

「もちろんだよ。みんなも気付いたことは何でも言ってよ。時間が無いから。」


「では、こちらを。」

 その言葉と共に、小さな水晶を取り出す。

 中には映像が浮かぶが、大勢では小さすぎて、上手く見えない。


「投影しましょう。」

 リリィがベッドの天蓋のカーテンを閉め、水晶の映像を投影した。


「これは。。。」

 ジョージが絶句する。


 映し出された映像には50隻はあろうかという武装飛行船団が映し出される。


「これ、どこ情報?」

 どこから入手したのか、映しているのか、確認をする。

「はい、魔王軍偵察部隊からの報告です。飛行艇団とのことでしたので、ガーゴイルと妖魔を中心に構成させました。また、地上部隊からはこの映像が。。。」


 そう言って、もう一つの水晶が取り出され、リリィが、隣に投影する。

 赤の国の、軍施設の映像のようで、完全武装の兵士や、大砲などの重火器を運び出す様子が映し出される。


 言葉を失う僕たちを余所に、さらにもう一つの水晶が取り出され、投影をする。


「一番の問題は、これです。」


 最後の映像を指差し、シグナルが続ける。


「ガルーダです。」

 シグナルの声が低い。


 その映像には飛行船団の先頭にガルーダが飛び、その後ろにガーゴイルの群れが飛んでいる。

 総数100頭にはなりそうだ。


「ガルーダとは神と言われるほどの魔獣ではないのか?なぜ戦争を先導しているんだ?」

 ジョージがシグナルに詰め寄る。


「ジョージ王子、落ち着いてください。確かにその昔、人間を助けた”ガルーダ”がおりました。その為、人間界では、”ガルーダ”は神のように崇められておりますが、元々、ガルーダに進化する個体は気性が荒く、神とはかけ離れている魔獣なのです。」


 シグナルが話を続ける。


「そして、あいつは魔界でも有名でして。一時はその力で軍人としても活躍しておりました。ですが、前魔王ダルガ様の、戦を好まないスタイルに反感を覚えたようで、軍を離れています。魔王の交代劇で、また復活を企んでいたようですが、アル陛下がさらに平和路線を掲げたことで、憤慨していたとガーゴイルから報告がありました。」



「そんなことがあったの?教えてくれれば良かったのに。」

「それまでも、問題を起こしてはおりましたが、全て魔界でのことでしたし、軍が出動するほどのことでもありませんでしたので。。。まさか人間界にて挙兵するとは考えも及ばず。。。申し訳ありません。」

 シグナルが謝罪する。


「そうか。。。そうだよね。」

「そして、軍国主義の赤の国に目を付けたというワケか。。。たぶん相性的に一番落としやすい、この国が目を付けられたんだね。」

「おそらく。」



 最早、人間界だけの問題では無くなっている。

「ジョージ、軍事会議に僕とシグナルも参加させて。ガルーダを止めたい。」

「あぁ。我が国の軍だけでは、陥落は間違いない。魔王軍の協力を仰ぎたい。」


「ところでシグナル?初歩的な質問で申し訳無いんだけど、ガルーダの戦闘力はどれくらいなんだろう?」

「はっ。そうですね。。。ガルーダは統率個体。先の牛魔王と並ぶと考えて良いのですが、あいつは戦闘に関してはかなりの経験値がありますので、それ以上と考えて間違いないでしょう。」


 もうホント、マジで勘弁してほしい。。。

 牛魔王でも手を焼いたのに、それ以上とか。。。


「ジル。どうしよう。。。」

「アル。申し訳ないんだけど、最近、力の加減が上手くいかない事があるんだ。牛魔王の時にハッキリとした。本来の僕であれば、牛魔王に触れさせることも無かったはずなんだ。それがあれほどの失敗をするなんて。。。今回もどこまで力を維持できるか自分でも分からない。その事だけは報告しておくよ。」

 ジルが項垂れるように話した。


「うん。分かった。よく考えれば、永い封印が解けたばかりだもんね。僕がいつも頼りすぎてたんだ。ごめんね。」

「できることは今まで通り、全力で協力するから。」



「緑の国の戦力はいかがでしょうか?」

 シグナルがジョージに聞く。

「そうだね。これでは、空中戦だろ?地上戦ならば、自信があるんだが、空中戦はできない。そもそも飛行船をもっていないからね。この国にあるのは気球くらいさ。」


「そうですか。偵察隊からの映像を見る限りでは、地上戦の武器も用意していることから、あの飛行艇団に地上部隊も乗っているとみて間違いないでしょう。緑の国の軍には、地上戦をお願いするとして、魔王軍は空中戦に集中してもよろしいでしょうか?」


「ありがとう。そうしてもらえると助かるよ。」

 ジョージが安堵のため息を漏らす。


「それでは、陛下。我が軍は”ドラゴンライダー”の出撃を許可いただきたいのですが。」

「シグナルがそう判断するなら、それが一番だと思う。」


「じゃがな。アル。”ドラゴンライダー”達は、ガルーダよりも気性が荒いぞ?キレたら、緑の国ごと、消滅させるやもしれぬ。」

 静かに聞いていたダルガが口を開く。


「え?わざわざ僕に許可を取ったのはそう言うこと?」

「え。えぇ。まぁ。。。しかし、確実に勝利を掴むのであれば”ドラゴンライダー”達の出撃が理想です。」

 シグナルが言葉を濁しながら答えた。


「それは間違いないな。であるならば、アルよ。出撃前に”ドラゴンライダー”達に忠誠を誓わせるのだ。さすれば、暴走が起きそうになった際に、止めることができるやもしれぬ。」


「分かった。ダルガさん。なんとか取り付けるよ。」

 僕はダルガの提案に乗ることにした。


「それには及びません。」

 知らない声に、後ろを振り返る。


「ゼルダ!!」

 シグナルに呼ばれた青年を見ると、うっすらと身体に鱗が見え、肘の辺りには小さな鰭があった。


「陛下。我々”ドラゴンライダー”隊は、陛下に忠誠を誓っております。古代竜であらせられるジル様、そして竜族のオーラを纏うアル陛下。。その派生種族の龍族である我らが、忠誠を誓わないはずがございません。我らの命は陛下の為に。此度の戦、命に代えてでも勝利をもぎ取ります。」


 ゼルダと呼ばれた龍人族の青年は、僕の前に跪き語った。



「盛り上がっているところ申し訳ありませんが、お時間です。」

 リリィがいつも通りの冷静さで伝える。


「よし、まずは、この国を説得しないとだな。」

 ジョージが気合いを入れるように、軍服の襟を直す。

「ダメならその時は僕たちだけでいいさ。」

 僕はジョージの肩に乗る。

「魔界の問題は我らで決着を。一般人に被害をもたらさぬように。」

 シグナルが自分に言い聞かせるように頷く。


『さぁ。行こう!!』


 僕たちは戦場に赴くかのように、軍事会議場へと歩き出した。




「失礼します。」

 ジョージを先頭に部屋へ入ると、すでに皆が揃っており、僕たちが最後だった。


「言い出した王子が最後とはね。やる気があるのかないのか。」

 バカにしたような笑いと共に、いかにもくせ者そうな中年の男性が葉巻をくゆらす。

 だが、その胸には勲章が多く付けられている。

 

「ソウゼフ閣下。申し訳ありません。」

 ジョージが頭を下げている。

 態度だけではなく、一応は軍として偉い人なのだろう。


「ジョージ司令官。望み通り招集をした。今一度チャンスをやるが、軍事会議を開いて良いのだな?」

 国王が問う。


「はい。この胸に誓って。」

 ジョージが胸に手を当てその場に跪き、王に誓いを立てる。


「良かろう。では、軍事会議を始める!」

 国王の低い声が、部屋に響く。


「では、ジョージ王子よ。まずはその珍客を説明せよ。」

 出席者の一人が、声を荒げ、僕たちを指さす。


「こちらは、魔界の王、アル陛下です。こちらが魔王軍のシグナル閣下。この方は子供に見えますが、古代竜のジル様です。そして僕は”ドラゴンの民”として覚醒したことも、合わせてご報告申し上げます。」

 ジョージは凛然と答える。


「魔王が列席するなど聞いておらぬ!!」

 前回、白の国に出発する前の会議に参加していない高官が立ち上がる。


「その点は問題が無いことを保証しよう。」

 ジョージの叔父、ダヴィットが反対意見を制す。

「私もリリィから白の国の件で報告を受けたが、一晩で復興を成し遂げたそうだ。しかも伝説の神”五行の精”を従えたと聞く。この場に列席する資格はあるように思うが。」

 大賢者ヴォルガが僕を擁護し、隣に座るおじいちゃんも頷く。リリィの祖父、大賢者ウォルゼスだった。


 立ち上がった高官はばつが悪そうに椅子に座る。


「そうであるか。では、ジョージ司令官。お主の発言を許そう。」

 国王が静かに言った。


「はい。では、まずは映像を投影することをお許し下さい。」

 そう言って、ジョージはシグナルとリリィに目配せをする。


 ジョージからの合図に二人は頷き、先ほどの映像を壁に投影させた。

 三面に映し出された目を疑う光景に、会議室は静まりかえる。


「これはいつのものだ。」

 国王は動じずに問う。


「こちらは、現在進行形の映像です。魔王軍偵察部隊から、直接送られています。」

 シグナルが答える。


「なんと。」

「本物なのか?」

 次々と疑問の声が上がる。


「信じる信じないはお任せしますが、2日ほどで到着すると予想されることだけ、お伝えしておきます。」

 シグナルが付け加える。


「まさか。この国が狙われているとは。。。歴史上でも他国の進軍を許しておらぬのに。」

 国王の声が曇る。



「僕たちの意見を申し上げてもよろしいでしょうか?」

 僕は意を決して発言する。


「ふむ。この映像の真偽も分からぬが、聞くだけ聞くとしよう。」

 国王が迷いながらも僕たちの話を聞くことにしたようだ。



 僕たちは、ジョージの部屋での作戦を話した。

 ジョージは緑の国の軍備を。シグナルは魔王軍の空中戦を。リリィは魔法での援護を。

 それぞれが、各々の役割を熱く語る。


「このように、魔王軍としては、空中戦を。緑の国の方には地上戦を。この線でいきたいと思っています。足りない点があれば、魔王軍はさらに兵を追加させることもできます。」

 僕が話を纏める。


「だが、ガルーダがいるとなると、魔王軍が仕掛けたのではないか?あわよくば、赤の国と緑の国の2国が手に入る。」

 疑うことを止めない高官がいる。



「だがしかし、何もしなければ我が国が陥落するのは間違いないでしょうな。」

 年老いた大賢者ウォルゼスが静かに口を開いた。


「私は若き頃”五行の精”の元へと行った事がある。まさに神と呼ぶに相応しい神々しい”聖”の力に溢れておった。それを従えるのであれば、例え”魔王”であっても、心美しき者であろう。そうでなければ、神の力を従えることなどできもしまい。今回の件は、正しく現実の事であると考える。そして、ジョージ王子は”ドラゴンの民”として覚醒をされた。しからば、2日しかない限られた時を、下らぬ疑義を唱える時間に裂くことは徒爾である。」

 ウォルゼスが反対意見を唱える者に語る。



「そうであるか。。。ウォルゼスも魔王の意見を尊重するのであるな。ならば余もその言葉を信じることとしよう。」

 国王は静かに立ち上がる。


「皆の者!!自衛措置をとる!!急ぎ軍を編成せよ!!」

 国王の声は力強く、緑の国としての命が発せられた。




 もう、後戻りはできない。

 戦争が始まろうとしていた。

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