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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=戦争編=
91/322

第90話  ~不穏~


「うぅん。。。」

 肌寒くて布団に潜り込む。

「はぁ。あったかい。。。」 


 なんだか周りが騒がしい。

 被った布団の隙間から覗くと。。。


「あれ?どこだ?ここ。。。」

「ふふっ。おはよう。アル?」

 ジョージの声だ。


「あっ!!そうだ。昨日。。。」

 ようやく目が覚めてきた。

 もぞもぞと布団と思っていた場所から這い出ると、それはジョージの上着だった。


「ごめん。寝ぼけてた。」

「いや。いつも通りさ。アルと一緒だと安心するよ。いなくなる度に、問題が起きるからね。」


 そう言われると否定できない。。。

 いろいろあったからな。。。


 短い期間に濃縮したように、様々な出来事が起きた。

 毎日が分刻みで目まぐるしく変わっていく。


「たまにはゆっくりしたいなぁ。」

「ふふっ。そうだね。僕たちが出会ってから、毎日、何かしら起きてたね。」


 僕たちが思い出に耽っていると。。。

「おはよ~さ~ん!!早よせんと、朝飯なくなるで~!!」

 聞きなれた声が聞こえて来た。


「ホセ!!!どうしたんだよ?」

「なんやアル?こんな面白い事になってるのに、教えてくれんと。つれないなぁ。」

 羽根でつつかれる。


「という訳で、見学に来たんや。で、ジョージの雰囲気がちょっと違わへんか?」

「あぁ。”ドラゴンの民”の力が覚醒したんだ。僕のスペックにさらなる磨きがかかって、”サクラ”ちゃんをお嫁にもらう条件も整ってると思うんだけど。ホセはどう思う?」


「ええんちゃうか?本人次第やな?アル?」

「なんでそこで僕が出るんだよぉ。サクラが目を覚ましたら聞いてみればいいじゃん。寝てる間は絶対許さないけどね!」

 強めに釘を刺しておく。



 僕たちがハンモックから立ち上がると”五行の精”がやってきて、木に手を翳す。

 木は見る見る小さくなり、種に戻った。


 その様子に、ふとアイデアが浮かぶ。

「ねぇ。それってさ、どんな植物でもできるの?」

『はい。我らの知りうる植物であれば。知らぬ植物であるならば、種や葉などから再生できます。』


「すごいな。。。だったらさ、”レイマンゾ”って花を知ってる?」

『もちろんでございます。』

 そう言って、木の”五行の精”が手のひらの上に、レイマンゾを作り出す。


「すごい!すごい!!これならさ、いつでも薬ができるじゃん!!」

 僕は興奮して言った。

『アル様。。。お喜びのところ、大変申し上げにくいのですが。。。レイマンゾの薬効をお求めなのですか?』


「そうだけど。」

『それでしたら、我らの力では無理でございます。』

「え?なんで?そこにあるのは幻影とかなの?」


『そうではございません。一般的に強い成分を含む特殊な植物を”魔草”と呼びますが、それらの成分は、生育する過程の条件が揃って、初めて植物に含まれるのでございます。このレイマンゾは我らが強制的に作り出した物。本物のレイマンゾではありますが、その薬効成分は含まれていないのです。』


「そっかぁ。そうだよねぇ。そんな上手い話なんて、そうそうあるわけないか。。。」

 がっくりと項垂れる。


「なんや。そう気を落とさんと。ちょっと商売が上手くいかへんかて、次を考えたらええやん。」

 ホセが慰めてくれる。



「ジョージ王子。アル殿。お目覚めですかな?」

 ガウディが歩いてくる。

『おはようございます。』


「いやぁ。私はこの”ハンモック”というものも初めてでしてね。このような大勢の中で眠るのも。。。」

「すいません。僕がワガママを言ったから。」

「いやいや。アル殿。違いますぞ。私は童心に返ったようで、とても愉しみました。娘も連れてきてやれば良かった。」


 よかった。クレームかと思って、少し身構えてしまった。


「そこで、私のワガママを聞いてもらってもよろしいか?」

 ガウディが僕を見る。

「僕ができることなら。。。」


「この、ハンモックという物を、この広場に少し設置していただきたい。それと、このツルを調整すれば、ブランコにもなると思うのだが。。。無理だろうか?」

『容易いことにございます。』

 ”五行の精”が答える。


「いいみたいですね。」

『ですが、アル様。今回は一晩眠るためだけでしたので、寝心地を優先し、柔らかい生の葉を使用したのです。恒久的に設置するとなると、蔓性の植物で枯れても良い物を使用しなくてはなりません。寝心地や座り心地が悪くなってしまうのですが。。。』


 ”五行の精”は常にハイクオリティを求めるようだ。

 子供の遊具に安全性は必要だが、そこまでの心地よさは、求めなくてもいい気がする。


「ハンモックとかで、昼寝くらいはするかもしれないけど、今日みたいに一晩寝る事もないだろうし、ブランコは遊具だから。。。壊れないように安全性を最優先してくれれば、いいと思うよ?設置場所とかは住民の人の意見を聞かないと、だけどさ。」

『かしこまりました。』

 そう言って、”五行の精”が散り散りに飛んでいってしまった。


「大丈夫かな。。。」

「我が国の守り神様ですぞ。なんと感謝したら良いのだろうか。」

 ガウディは”五行の精”の後ろ姿を拝むように見ていた。


「おう!アル!ジョージ様!朝飯はこっちです。」

 遊撃隊料理長のガルンがこちらに向かって手を振っている。


 今朝の朝食は遊撃隊の料理人達が担当したようだ。

 行列ができていた。

 その上をホセが優雅に飛んでいく。


「おい!ホセ。ちゃんと並べよ?」

 ガルンに叱られている。

「なんや。冷たいな!!俺は野菜かフルーツしか食べられへんのや!マンゴーとっといてや!!!」

 捨て台詞を吐いてUターンしてくる。


 それを見てガルンがニヤリと悪い笑顔をした。

「みなさ~ん!今日のおすすめは緑の国の特産”マンゴー”ですよ~。」

 ガルンが大きな声で宣伝する。

「ちょっ。俺の話、聞いてたやろ~!!」


 そんな遣り取りに、行列の人々から笑い声が上がる。


 僕たちも行列に並んだ。


「国王陛下。。。あちらに席をご用意しております!!」

 あわてて、兵士がガウディに駆け寄る。


「私だけが優遇されて良い謂われがない。皆と同じように並び、立食なり、床なりで食すこととする。」

「しかし。。。」


 困り顔の兵士の肩にジョージは無言で手を置き、優しい笑顔で頷く。

 兵士は諦めたように静かに下がった。


 ようやく僕たちの順番がきた。

 ガウディは行列に並んでいる間に、興味津々に観察していた通りに、お盆を持つ。

 スープや野菜を手際よく注文し、最後のデザートの前に来た。


「では、その最後の”マンゴー”を頂こうかな。」

 ニヤリとホセを見た。

「ちょっと。王様、さっきの俺の言葉、聞いてたやろ?」


「あいにく、私もマンゴーが好きだ。そして、行列には私が先に並んだ。私には選ぶ権利がある。」

 正当な主張になおもホセは食い下がる。


「なんや。王様やろ?心狭っ!!!いたいけなオウムに愛の手を差し伸べてや~~!!」

「あははっは。ホセ。君の方が心狭いよ。。。しかもその不遜な態度で”いたいけなオウム”って無理あるよ~~!あはははは。」

 すでに朝食を手に入れ、少し離れた場所にいた、ジルがお腹を抱えて笑っている。


「ホセ。君の負けだよ。ガウディ国王陛下に失礼な態度はいけないよ?せっかくなので、緑の国の城でも、今の罰として、暫くマンゴーを出さないように言っておくよ。」

 ジョージが笑顔で、ホセの肩を叩く。


「うわーん。そんな殺生な~~~~。」

 床に寝そべり、駄々をこね始めた。


「オウムさん。僕のマンゴー食べる?」

 3才くらいの男の子がホセの口に、マンゴーの小さな欠片を放り込む。


 その光景に、笑いを堪えていた周囲の人たちから、どっと笑いが起きた。

 もうそうなると止まらない。

 笑いは伝染し、ドームの中は笑いの渦が巻き起こり、身分も関係なく、愉しい朝食の時間を過ごしたのだった。



 リリィの敷いてくれた、ピクニックシートにガウディやジョージも座り、食後のまったりとした時間を過ごしていた。

 ”五行の精”が、様々な人の意見を聞き、要望されたのだろうか、所々に遊具を設置していた。


「なんだかんだ、”五行の精”も上手くやってるみたいで良かったよね。」

「あぁ。伝説の妖精が動くんだ。この国の人々にとっては夢のようだろうね。」



 そんなのんびりとした空気を破るかのように、白の国の兵士が、真っ青な顔で走ってきた。


 ガウディに耳打ちをする。

「なんだと?それは本当か!」

「はい、先ほど確認をいたしました!」


「ジョージ王子、すぐに城に戻りましょう。」

 ガウディの顔は険しく強張る。


 その様子にただならぬ空気を感じ、僕たちはその場を後にする。


 

 王城へ戻ると、兵士達が完全武装し、広間に集合していた。


「何が起きたんです?」

 その緊迫した雰囲気に、ジョージが険しい顔でガウディに聞く。


「赤の国が挙兵したようです。目標は”緑の国”!!!」

「それは。。。」

 ジョージは事態が飲み込めないようだ。


「赤の国との海峡には、主と呼ばれるモンスターがいて、あの海域を通り抜けることすら不可能。迂回すれば、黒の国を通らざるを得ない。どういうルートなのか。。。」

 ジョージが考え込む。


「兵は、空を使っているようですぞ。飛行艇団を確認したと。」

 ガウディに言葉に、シグナルが不審がる。


「飛行艇団を組むとなれば、それだけの科学力がいるでしょう。武装国家と言われる”赤の国”ですが、戦争用の飛行艇団を用意できるとは思えない。魔法で扱うのであれば、あの国の魔術者にそれらしい者がいないはずだ。」

 シグナルも分析を始めた。


「とりあえず、緑の国に戻りましょう。状況を確認しなくては。」

 リリィが発言する。


「我が国は、このように緑の国に協力する意志がある。力は弱いが、多少は魔力が高い。いつでもお力になれるよう、準備しておきますから、いつでも声をかけて下さい。」

「ガウディ国王。感謝いたします。遊撃隊を一旦引き上げさせていただいて、よろしいでしょうか。」


「もちろんです。これまでのご協力に感謝します。」

「ならば、魔王軍を置いておきます。何かあっても、彼らは第一線の兵士としては使わない者達です。しかし、防壁とはできましょう。この国に飛び火した際には、なんなりとお使い下さい。」

 シグナルは、白の国への配慮も忘れない。



「じゃ。僕たちは一旦、緑の国へ戻ります。いろいろお世話になりました。また来ますね。」

 ガウディに挨拶し、僕たちは緑の国へと引き返した。


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