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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
88/322

第87話  ~五行の精~


「え?レイラって誰?」

『・・・・・・。』

 場にそぐわない僕の質問に、ビミョーな空気が。。。


「いや。まずかったかな?もう少し丁寧にいくべきだったかな?」

 ジョージの肩に移り、耳元で囁く。

「今のはダメだろうね。とりあえず、もう少し丁寧に行くべきだったと思うよ?」

 ジョージもこっそり耳打ちした。



「あの~。僕たち”五行の精”様にお会いしたくて来たんですが。。。お取り次ぎ願えますでしょうか?」

 丁寧にしすぎて、仕事に来たみたいになってしまった。


『・・・・・・。』


 う~ん。丁寧にしても無言か。どうしたものか。


「私は緑の国の第一王子。ジョージと申します。”ドラゴンの民”として目覚め、”五行の精”の皆様にご挨拶に参りました。」

 ジョージは片膝をつき、恭しくお辞儀をする。


『”五行の精”というのは我らの事であろう。』


 先ほどの声が、答える。

 年老いた声。”神”とまで呼ばれているのだ。

 仙人のような人たちなのだろうか。



(つーか、ジョージには答えるのかよ。。。)

 僕は不満げにため息をついた。


『レイラ様。お気を悪くされませぬな?我らとしても困惑しておりましたのです。』


(ん?これは。。。もしかして僕が”レイラ”って人だと勘違いしてる?)


「あの~。僕、アルって言うんです。」

 一応、自己紹介っぽく間違いを指摘しておく。


『なんと。レイラ様は記憶すら無くしておいでか。。。』

 その声色が慌て始めた。


「”五行の精”様。どういうことなのでしょうか?」

 ジョージが問う。


『それは、レイラ様のご意志であろうか?』

 質問に質問してきた。

 とりあえず、勘違いがあるのなら、活用しよう。

「えーと。僕も聞きたいです。」


『レイラ様のお望みでありますれば。。。』


『我ら”五行の精”はレイラ様より生まれ、レイラ様の為に存在する者。レイラ様が訪れた時、我らに与えられし、お力をその御身にお戻しするのが役目。』


「そうなると、この”アル”があなた方の言う、”レイラ様”なのでしょうか?」


『問うまでもなく、そのお方こそがレイラ様であろう。姿形は違えど、その高貴なオーラに間違いはない。』

 確信を持った言い方だった。


 そうか。。。となると、僕のオーラが”レイラ”とするとだな。

 結構もらい物ばっかだしなぁ。どれかな。

 ”世界樹の加護”のオーラ?

 ”魔王”のオーラ?

 ”黄天竜”のオーラ?

 それとも根本的に”サクラ”?


「う~~~ん。」僕は考え込む。

「う~~~ん。」ジルが寝返りを打つ。



『ジル様がお目覚めになるぞ!!早う支度をせよ!!』

 その言葉に、妖精達がざわめき始めた。


「早くしなくちゃ。」

「準備して。」

「隠れなきゃ。」

 光が右往左往し始め、僕たちを囲むように、結界が張られた。



「え?何か、結界に閉じこめられたんですけど。」

 僕はジョージを見た。

「しばらく、様子を見よう。」

 結界には諦めた様子のジョージは、ジルをあやすかの様に背中をさすった。


「うぅぅん。」

 ジョージの腕の中で、小さく丸まっていたジルが、目をこすりながら起きた。

「んんっ。アル?ジョージ?おはよう。」



「おはよう。ジル。気分はどうかな?」

 ジョージは、優しくジルのおでこにかかった髪をなで上げた。


 ジルはキョロキョロと辺りを見回す。

「ここ。どこ?」

「あのねぇ。”五行の精”の神殿。」

 僕はサラッと流す。



「え?もう来たの?」

 ジルは驚いて飛び起き、ジョージの顎に頭をぶつけた。


「っっつ!!!どうして、アルもジルも落ち着きがないかなぁ。。。」

 顎を押さえて、ジョージが僕たちを見る。

「ごめんごめん。ちょっとびっくりしてさ。」

 ジルは申し訳なさそうな笑顔で、ぶつけた頭をさすった。



『青魔竜のジル様も記憶がないのだろうか?』

 ”五行の精”の声は戸惑いを隠せない。


「ん?僕はいたって普通だけど?」

 ジルは、”五行の精”の声に、動じることなく答えていた。


『青魔竜のジル様ではないのか?』

「いや。だから!ジルですけど。え?おたくらが”五行の精”?なんなの一体?」

 若干キレ気味だ。ジルは寝起きが悪いようだ。


『我らが伝え聞く青魔竜ジル様とは、かけ離れている。。。』

「あぁ。自己中で暴力の化身みたいな僕?そういうの、卒業したんですけどぉ。今はおとなしく生活してるんですけどね!」


(マジで怒ってるって。”五行の精”さん。てか、この結界ももしかして、ジルの暴力対策?バレる前に解いて。じゃないと、キレるかもだし。めんどくさいから。。。)

 どうにか僕の気持ちが伝わってくれ~と念を送ってみる。届くかどうか分かんないけど。


『ジル様。』

 そう言ったかと思うと、結界は消え、周辺の光が集まり五つの光が浮かび上がった。


『我らが”五行の精”でございます。無礼をお許し下さい。』


 その言葉と共に、光が収まり、姿を現したのは、先ほどまでの年配の男性の声とは比べものにならないような妖艶な美女達だった。


「これは。。。想像とはまるで違っていたな。。。」

 ジョージが思わず口にする。


『我ら、姿を現すのは、たとえジル様であろうとも、本来許されぬ事。されど、レイラ様のご命令であれば、それに従うまで。』

 一言一句、五人で乱れる事無く言葉を紡ぎ、そして、僕の前に跪いた。


 五人は体長が50㎝ほどであろうか。透き通るような白い肌に、背中に虫の羽根が生えている。

 トンボのような羽根や蝶の様な羽根。色も形も様々だ。

 身体が小さく、虫の羽根を有していることから、妖精であることが分かる。


 だがしかし、不思議な点があったのだ。妖精であるならば、光だけにはなることができない。

 先ほどの現象は周辺の光が集まり”五行の精”が出てきたように見えた。

 それができるのは、精霊だけだ。

 しかし、精霊であれば、実態が無いはず。。。


「あの。。。皆さんは一体。。。」

 僕はどうしても我慢できずに聞いてしまった。


『我らの事すらも。。。』

 とても悲しそうに呟いた。

『我ら、黄天竜さまのお力により生を受けました。妖精を器とし、精霊である我らに身体を与えてくださった。レイラ様のお望みが叶うその日まで、この身体に竜の力をお預かりし、レイラ様が再び我らの前にそのお姿を現した時、我らはこの身体を捧げる。それが我らの役目。。。その事すらも。。。』


「いや。ちょっと待って。僕の記憶がどうこうは置いといて。。。捧げるとか言ってるけど、その後、君たちはどうなるのさ。」

 

『レイラ様の喜びが我らの喜び。我らがどうなるかなど、些末なこと。』


「そんな事ないでしょ?大切なことだよ?君たちが守ってきてくれたんならさ、君たちのことを大切にすべきじゃん!」

「アル。ちょっと落ち着いて。」

 ジョージに撫でられて、熱くなっていたことに気付く。


「ごめん。なんだか、生きている人たちを、捧げものだなんて、納得いかなくてさ。つい。。。」

 

『我ら、精霊はレイラ様がお持ちであった”五行”をそれぞれ一つずつ与えられました。最後のお力は、黄天竜レイラ様がお持ちのはず。全ての力が揃い、初めて黄天竜のお姿に戻れるのです。ですから、我らはレイラ様の一部。捧げものとはいえ、元の場所に還るのだと思っております。』


 当たり前かのように、何一つ疑うことすらなく、真っ直ぐに思っているようだ。

 僕にその心当たりが無いことが、申し訳ないほどに。。。



「僕は、黄天竜の力の一部があるかもしれないとは分かってるんだけど。。。でも、ほんの少しだし、記憶の欠片もないし。君たちには悪いんだけど、力にはなれそうもないな。」

 ”五行の精”には心苦しいが、やはり、断っておくべきだろう。


『ですが、最後のお力である、”時の精霊”をお持ちです。それがあなたが”レイラ様”である証拠。』


 ん???

 ”時の精霊”とは?

 持ってないけど。


「レイラは僕の姉だよね?いつ君たちが生まれたの?僕が姉にトドメを差したんだ。君たちを作り出せるワケがない!!」

 僕が物思いに耽った僅かな時間に、ジルが”五行の精”に問いただし始めた。


『我らはレイラ様の為に存在します。』

 ”五行の精”は答えをはぐらかす。というよりも、僕以外にはハッキリとした会話はしないかのようだ。


「ねぇ。僕は自分でも良く分かっていないんだけど、もし、僕のルーツが分かるのであれば、君たちの協力が欲しいんだ。もしも、僕がレイラという人で、君たちのことを思い出せないのであれば、本当に申し訳なく思うよ?でも、それも分からないんだ。。。どうかな?協力してくれないかな?」


『それがレイラ様のお望みであるならば。』

 会話はイマイチ成立しないが、もう、放っておこう。

 どれだけお願いをしたところで、精霊としての役目に従い続けるのだろうから。


『我らは、ジル様が黄天竜様を食された後に生み出されました。』

 そして”五行の精”が語り始める。



---黄天竜様は、ジル様にトドメを差されるその瞬間、古代竜様により救い出されました。


 古代竜様は、戦いに敗れ、力の一部をジル様に奪われ、命の危機となっておりましたゆえ、その力を保護されたのでございます。


 されど、レイラ様は頑なに、その竜としての力を拒みました。

 無力になりたいと。


 大きすぎる力は、皆に与える幸であっても、不幸であっても、大きすぎると。。。


 古代竜様に保護された後、レイラ様は、その望みを叶えるべく、我らを生み出すのです。

 そして、我らに、竜の精霊としての役目を与え、そして、もしも自分が帰ってくるような事があるならば、力になって欲しい。と。そう告げこの地を去ったのでございます。


 まだ、”時の精霊”の力は持ったまま。


 

 我らは、レイラ様の意志に沿い、この地で”五行の精”として、この場に留まり、力を求める者の言葉を聞き、相応しき者には助言をしていました。


 それが、いつしか、ねじ曲がり、今に至るのでございましょう。



 そして、永き年月を過ごし、ようやくあなた様が到着なさったのです。

 ”青魔竜”さまと”ドラゴンの民”のお二人を連れて。


 時の魔法を纏ったあなた様を見紛うはずがございません。----




 ”五行の精”の話が終わり、僕としては。。。特に何もなかった。

 だって、人違いだと思ってるから。

 けれど、人違いと認めないなら、ちょっと無理を聞いてもらってもいいよね。


「ねぇ。そしたらさ、とりあえず、僕の意見を聞いてもらえるんだよね?」

『もちろんでございます。』


「それならさ、この山の石をもらいたいんだけど。。。」

 唐突に本題に入って、どさくさに紛れて勢いで「はい。」と答えさせよう。


『それがレイラ様のお望みであるならば、この山ごと、お持ち下さい。』

 

「・・・あ。あぁ。ありがとう。」

 想像以上の返答に、思わず言葉を詰まらせてしまった。


 まぁいいか。結果オーライ!!

 山ごとは、いらないけどね。



 う~ん。謎が謎のままではあるが。。。


 石をもらう。

 この案件は無事に?終了した。


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