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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
86/322

第85話  ~”龍の民”覚醒~

 

 王城へ戻る。。。

 つい数時間前に結構盛り上がって、出たばかり過ぎて、なんだか気まずい。


「まぁ。アル君!もう戻ってきてくださったの?」

 王女ジェーンが迎えてくれる。


「ただいま。王様いる?」

「えぇ。もうすぐ戻ると思いますわ。」

 ジェーンはジョージから僕を受け取ると、頬ずりをしてくる。


「ジェーン。ちょっとくすぐったいんだけど。」

「冷たくって。ぷるんとしていて、とっても気持ちいいわ。」

 悪気もないようで、頬ずりを止めると、今度は角をつついてくる。


「おぉ。皆様。もしかして待たせてしまったかな?人手が足らずに使いの者も部屋を空けて申し訳ない。」

 国王ガウディが汗をかきながら戻ってきた。


「お忙しいようですが、大丈夫でしょうか?」

 ジョージが心配そうに声をかける。

「あまりにも今回の件に関わった者が多くてな。王城内では、皆、自分でできることは自分たちで行うこととしたのだ。」


「そうでしたか。無理をなさらないように。。。人手が必要でしたら、いつでも手配いたしますので。」

「ジョージ王子。ありがとう。だが、ここで私が変わらねばなるまい?我が国はここから生まれ変わると決めたのだ。」

 ガウディ国王は、強い信念を持った目をしていた。


「差し出がましく、申し訳ありませんでした。ところで。。。。」


 ジョージが、街での事を説明する。

 ガウディ国王は目を閉じ、頷きながら聞いていた。


「それは素晴らしい。そんな建物があれば、良いであろうな。。。だが、問題は山積しておるな。」

 ガウディ国王も僕たちと同じような部分に問題を感じたようだ。



「ドームを建てる件は住民が望むのであればな。。。技術的な事だが、それが流出してはいけないものでなければ、我が国の者達に教えてはもらえないだろうか?指摘のように、我が国はこれまで、発展を拒んできた。自然と共にあることを選んだが、知恵を持った上で拒むのと、何もせず拒むのとでは、大きな差違があることを痛感した。無知や無力では国民を守る事さえもできなかった。龍の件、正しき知識があれば、このような事態を引き起こすことさえ無かったのだ。」


「そっか。僕、白の国の人と一緒にって事を忘れてました。本当に失礼だった。。。ごめんなさい。。。手を取り合わなくちゃいけないのに。。。とは言っても、僕も魔界の技術とか全く知らないんですよね~。うちとしては、僕が決めちゃえばいいので、技術流出とか別にいいと思います。ダメなら、構想すらしないでしょうから。」

 僕は、ガウディ国王の重い空気を払拭しようと、努めて明るく振る舞った。


「私としても、技術の件は問題ありません。寒い国の技術を我々が白の国の方々から教えて頂く方が多くあると思いますし。」

 緑の国としても問題は無いようだ。



「次の問題点としては、魔界の粘土ですな。それに関しては問題は何もありません。ご存じの通り、我が国は呪術が発展しております。その中で、魔界の材料なども使いますので、国民としても魔界の魔力に抵抗を感じる者も殆どいないでしょう。」


「それは良かった。というか、魔界の材料ってどうやって手に入れてたんですか?」

「裏で。という表現が正しいのでしょうな。呪術者たちは、悪魔や魔界の者と、独自の繋がりを持っているようです。市場でも表向きには並んでおりませんが、購入できるはずです。」


「それだったら、今度からは、直接言ってくれれば、持ってきますよ。」

「ほほっ。それは頼もしい。だが、アル殿?それは個人的に。でしょう?」


「え?他に何か方法なんてありますか?」

 僕は首を傾げる。

「私とあなたは”王”としての力がある。アル殿は人間と近くなりたいと仰った。ならば、我が国と国交を結び、貿易という形を取りませんか?」


「え?えぇぇぇぇ!!!!」

 思わず僕は飛び上がってしまった。

「魔界と人間の国が、国交なんて結んでいいものなんでしょうか。。。」

 驚きすぎて、声が震えてしまっていた。


「ダメですかな?裏ルートとなると、商品も高額なのです。危険もある。我が国としては、良質な商品を安定して手に入れることができる。アル殿としては、人間の国に国交があれば、多少なりとも人間との繋がりを持てる。時間はかかるでしょうが、他国も我が国を見て、魔界の印象を和らげる可能性が出るでしょう。いかがですかな?」


「そんな。。。願ってもないお言葉です。。。」

「では、落ち着きましたら、正式にお考え頂き、内容を詰めましょう。そこで相容れないかもしれない。その時は、その時。国としては手を取れなくても、友人としてはお付き合いできれば嬉しいですがな。」

 国王は朗らかに笑う。


「もちろんです!国の事はまだまだ僕も勉強中なので、国交の件は嬉しいですけど、すぐに返事できませんでした。この話は僕にとっては考えた事もない話でしたし、友人として今後もお付き合い頂けるんでしたら、本当に感謝しかありません!」

 僕は、興奮して前のめりになりながら返事をした。




「では、最後の問題点としては、金銭面ですな。。。我が国としては、大規模な修繕費用としては、あまり出せない、というか先立つものが足りないのが現状です。ですから、我が国に資材があるのであれば、飛びつきたいですがな。。。北の霊峰となると。。。神の地に足を踏み入れるなど。聖者のみが許される行為です。我が国には現在相応しき者がおりません。」



「それならば、”聖”の認められた力を持った者ならば、入ることが可能なのでしょうか?」

 ジョージは少し考え、真剣な面持ちで、ガウディに問う。


「もちろん。しかし、そのような者が簡単に見つかるでしょうか?」


 ジョージとジルは僕を見つめる。

「え?僕?いやいやいや。それなら、竜のジルか、ドラゴンの民のジョージでしょ?」

 僕の叫びに、ガウディが驚愕する。


「ジョージ王子は”ドラゴンの民”なのですか?」

「本当の。。。とはまだ、行きませんが。」

 ジョージは諦めたように腕の痣を見せる。


「これは。。。素晴らしい。この目で”ドラゴンの民”にお会いできる日が来るとは。」

 涙ぐむほど喜んでいる。


「ガウディ国王。私ではなく、このアルの方が資格を持っていると思われます。」

 ジョージが僕の背中を押す。

「アルは、”世界樹”に認められていますので。」


「なんと。魔王でありながらですか?それも”世界樹”と言うことは、”世界樹の精”に?」

「王様は”世界樹の精”をご存じなのですか?」

 僕はガウディが”世界樹の精”を知っていることに驚いた。


「もちろんです。王家のみが知ることができる情報ではありますが。。。我が国には、”五行の精”がいるためか、精霊についても詳しく、”ドラゴンの民”については、その秘宝をお預かりしております。もしも”ドラゴンの民”が訪れる事あらば。と。」


 ガウディは「どうぞ地下の部屋へ。」と言って、後ろの書棚から、本を抜き出した。


 すると書架は左右へ開き、そこに螺旋階段が現れた。


 僕たちは案内されるままにその中へと入っていった。国王と僕たち3人が入ったところで、後ろの扉が閉まった。


「”世界樹の精”に認められた魔王に、”ドラゴンの民の王子。そして古代竜さま。どのお方であってもその地へ赴く事は可能かと思われます。」

 ガウディは狭い階段を下りながら話をする。


「その言い方だと、その場所に行くだけでも、入れないこともあるって聞こえるんだけど。」

 ジルは手のひらに魔法光を出し、辺りを照らしながら、ガウディに質問をした。


「はい。霊峰の麓に村が一つありますが、そこが人間の住まう境界線となっております。その昔、その村の者達は案内役として、神々に住まうことを許されたのだとか。そしてその先は、聖者のみが立ち入れるのです。資格の無い者は、その先に足を踏み出すこともできず、力で押し分け入ったとしても、帰ってきた者はいないそうです。」


「なんだか、精霊の神とか言う割に、物騒な話ですね。」

 ジョージの肩で、思わず身震いをしてしまった。

「ふふっ。アル大丈夫かい?とりあえず、ダメなら引き返そう。無理に行くべきではなさそうだ。そこまでして、行く必要はないだろう?入れなければ、また考えればいい。」

 ジョージは僕を撫でながら、笑っていた。


 しばらくすると、階段は行き止まり、石の壁に道を塞がれた。

「何もないけど。。。どうやって進むの?」


 ガウディが口を開こうとしたときだった。

「ジョージよ。痣を出せ。」

 オリハルコンの剣に隠れていたダルガが口を開く。


「え?誰が今、声を出したのです?」

 ガウディが戸惑いの表情を見せた。

 だが、ジョージはそれに答えることなく、腕を出す。


 すると、石の壁とジョージの腕とオリハルコンの剣、そして僕の頬袋が共鳴して鈴の音の様な音がした。

 僕は口の中がうるさいので、慌てて懐中時計を取り出す。


 共鳴音に合わせるかのように、ゆっくりと石の壁が開いてゆく。。。

「古代魔法じゃ。資格のあるものだけに道が開かれる。」

 ダルガの言葉に、「その通りです。」とガウディが頷いていた。



 壁が開ききると、僕たちは吸い込まれるようにと、その奥へ歩を進めた。


 小さな部屋はとても不思議な構造をしていた。

 部屋は円錐形になっているのだが、上を見上げても、天上が見えない程高い。


 中央に台座があり、ガラスの瓶が乗る。

 その中にある物を見つめ、僕たちは言葉を失った。


 黄色というか黄金色というか。。。手のひらサイズのガラスでできたような皿が入っていたのだ。


「なんだろう。。これ。。触ってもいいのかな?」

 僕が近付く。


「先ほどと同じような魔法じゃ。それを触れる資格があれば、触れることができるであろう。」

 ダルガが答える。


 ジョージが蓋を開け、僕が触ろうとしたとき、ジルが横から手を出し、それに触れた。

「うっ。」

 そう言って、ジルが手を引っ込めた。


「大丈夫?ジル?」

 その顔は青ざめており、僕は心配になって覗き込む。

 ジルはただ、頷くのみ。


 僕とジョージは顔を見合わせる。

「ジョージ。ここは僕が先に触るね?リスク的には僕の方が大丈夫だと思うから。」

 ジョージは珍しく反対せずに頷いた。


 僕は恐る恐るそれに触れる。

 バチィッ!!!

 音がしたのではなかった。。あの時、僕がサクラの血だまりに触れた瞬間の様な衝撃が走った。

 今回は記憶では無く、感情が。。。。


 誰に対する感情だろうか。。。後悔・懺悔。。。それが強く感じられたが、その中に愛情が混じっているのが感じられる。だが、どの感情も相手が一人ではないようだ。。。相手は誰なのだろうか。。。


「アル?大丈夫?」

 今度はジョージが僕を覗き込む。


「うん。。。大丈夫。」

「じゃあ、次は僕の番だね。」

 本命の”ドラゴンの民”のジョージがそれに触れる。


 うあぁっぁぁっぁ!!!!

 ジョージは腕を押さえながら膝をついた。


「ジョージ?」

 僕は慌ててジョージに駆け寄る。

 

 ジョージの腕の痣が、光を帯び明滅していた。そして、痣の龍が盛り上がり、皮膚の下を蠢きだした。

「う。。。。うぅ。。。。」

 ジョージの額からは汗が噴き出している。


「がぁっぁぁっぁ!!!」

 その叫びと同時に、抑えていた痣のある手は跳ね上がり、天に向けられた。

 痣の龍はそこから、天井へと飛び出た。


 はぁはぁ。と肩で息をしながら、ジョージは立ち上がり、痣のあった左手を天に翳す。

「我に力を!!!」

 そう叫ぶと、ジョージから飛び出て、天井の闇へと消えた龍が、身体を翻し、ジョージ目掛けてもの凄いスピードで降りてきた。


 そして、そのままジョージの手に。。。。あたった瞬間、火花が散り、ジョージは左手を押さえる。

「くっっっ!!」

 ジョージの表情が苦痛に歪む。


「う。。。うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 そう叫ぶと、ジョージの手へと吸い込まれるように龍が手のひらへ消えていった。

 

 全ての龍の身体をその手のひらに飲み込むと、ジョージは左手を握り込み、床に片膝を付いた。


「ジョージ!!!」

 僕はジョージの膝に飛び乗る。

「これで、完全に覚醒したようじゃな。」

 ダルガが静かに言った。


「はい。力は我がものとしました。」

そう答えたジョージの顔は、今まで見たことも無いような、力強い表情だった。

 


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