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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
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第84話  ~ドーム構想~


 食堂のおばちゃんから、”五行の精”というワードを聞いて、すぐにでも確かめに行きたい気持ちもあったが、まずは街の状況を立て直さなくてはならないな。


(ジル。今度はさ、新しい街並みについて希望があるか聞いてみてよ。)

(オッケー。)


「ねぇ。おばちゃん。建物、いっぱい壊れちゃったけど、新しく作るんだよね?」

「そりゃあ。そうさねぇ。家を無くした人たちが困ってるだろうからねぇ。」

 心配そうにおばちゃんが呟く。


「マダム。新しく建物を作り直すとすると、街並み自体も手を加えられますね。」

「あの辺りは道が混んでたからね。広くなったらいいだろうけど。立て直すにもお金がかかるだろ?この国には材料となる原料が少ないから、他の国から運ぶとなるとね。時間もかかるしね。いつになるかも分からないから、質素でも建つのであれば、有難いって、みんな話してたよ。」


「それじゃ、お金もかかんなくて、材料もあって、できるだけ早く建つなら、変えたいところがあるんだね。」

「そんな夢のような話があるならね。商店街が一つの大きな建物だったら、助かるだろうね。この国は寒いからね。雪や雹が降る日は、店を回るだけでも一苦労だからさ。」


「大きな建物は無いの?」

「お城だけだね。そんな技術もお金も、うちの国にはないさ。」

 おばちゃんは肩を竦めて、降参のポーズをする。


(ほうほう。そうか。中々良いアイデアだね。他の人にも聞いてみよう!!)

(りょーかい!)

 

 ジルはジョージの服を引っ張る。

「よし。それでは長居しても申し訳ないので、そろそろ失礼しようか?ジル、いいかい?」

 ジョージは立ち上がると、頷くジルの頭を撫でる。


「では、マダム。貴重なお話をしていただきまして。そして美味しいスープも。ありがとうございました。あとで、お礼の気持ちとして、少しばかり食材をお届けしますね。それでは失礼します。」


 僕たちは、おばちゃんの店を後にする。


 数時間後、ジョージの手配により、大量の食材が運ばれ、驚いたおばちゃんが腰を抜かしてしまったと、兵士から報告をもらうこととなった。




 僕たちは、被害の大きかった地区へと移動する。

 瓦礫の山だった場所は、随分と片付けられ、空き地が出来ていた。


 僕たちの姿を見ると、『おかえりなさいませ!』と、どちらの兵士からも声がかかる。

『ただいま~!』


「かなり作業が進んだね。ありがとう。」

 ジョージが労いの言葉をかける。


 遊撃隊、斧使いのディオと人猫族の若者が地面に図面らしきものを書き、何やら話し込んでいる。

「ディオ、上手くいかないの?」

 僕は二人の間に割って入る。


「これは、陛下!!」

 猫らしく、驚いた若者は飛び退く。


「驚かせてごめん。それで、何を話してたの?」


「あぁ。それがな。アル。。。どこまで自由にやっていいもんかね?」

 ディオが若者と目を合わせ、僕を見る。


「そりゃあ。やれることはできる限り。だよね?この街の人が、住みやすいのが一番だと思うよ?」

 僕は当たり前の事を言ったのだが。。。。


「陛下。そうなりますと。。。材料・費用・人材の問題が出てくるのです。それから、この国の技術においても、突出した他の地域の技術を用いるとなると。。。自分たちでメンテナンスができるかどうか。。。」

 人猫族の若者が残念そうにつぶやく。


「問題点はとりあえず置いとくとして、どんな構想があったか聞きたいな。」

 ジョージが図面を覗き込む。


「はい。住民の方に話を聞いたところですね。。。」

 ディオが話を引き継ぐ。



----まずもっての問題点は、数十世帯が家を失っていることですね。

 商店街の石炭屋からの火災が酷かったようです。


 そのために家を失った家族は知人などの家に身を寄せているようですが、長期間となると難しいのではと。お互い気兼ねなく。とはいきませんからね。


 ですので、仮設住宅が必要かと。

 勝手ながら、遊撃隊のテントの内部に空間魔法を施し、数人ごとの個室を作り、希望者には移っていただきました。


 仮説住宅もしくは新築の住居を早急に建てる必要があります。



 また、焼失した街の中で、商店街が無くなっております。

 住人に聞き取り調査をしたところ、緑の国でいうところの雨季・乾季のような季節があるようです。

 

 雪や吹雪が強い季節には、買い物をするために店を回るのも一苦労のようです。

 一つながりの雪避けの道か、商店街が入るような大きな建物があると助かるとのことでした。



 そういった希望を聞きますと、雪避け道よりは、大きな建物を建てる方が効率が良さそうなのですが。。。

 そこで先ほどの問題が出てくるのです。---



 そうか。。。この国に技術者がいなければ、こちら側で全てを造ることとなる。

 それは構わないが、そうなると、技術の継承をしない限り、メンテナンスなどが出来ない。。。


 そして、建造物の大きさが大きければ大きいほど、材料や費用もかかる。

 生活をできる限り早い段階で、元の水準に戻そうとすれば、急がねばならない。。人手も必要だ。


 中々、簡単にはいかないものだな。。。

 僕は簡単に考え過ぎていたようだ。。。



「う~ん。人手はどうにかなるよね?緑の国と魔界、そして白の国。3国がいるからね。そして費用に関しては、予算に合わせなくてはいけないしね。あとは技術の問題か。。。こればかりは、国王の意見を聞かなければね。これまでのように、過度な発展を望まないのであれば、僕たちがこれ以上干渉すべきではないから。」

 ジョージが考えを示す。

 大体の所は僕も賛成だ。

 しかし、費用と材料の件に関しては、魔界ではどうしているのだろう?魔王としての財政状況は全く把握していない。


「そうだ!地下に街を造るってのはどう?掘っていくんだから、材料はいらなさそうじゃない?」

 中々名案が浮かんだ。


「はぁ。陛下。。。無理です。技術的な問題もありますが、明かりの問題が大きすぎます。ランプを使うとすれば、換気が必要ですし、魔法光では、底なしの魔力でもない限り、生活する為の光力が得られません。」

 冒頭の「はぁ。」にすっごい呆れた感じを含ませながら人猫族の若者が話す。


「そっか。。。ごめんごめん。深く考えて無かった。。。そう言えば、君の名前聞いてなかったな。」

「私は、ペーターと言います。」


「そうか。。。ペーター君。君の考えとしては?」


「はい。問題点を考えないのであれば、ディオさんと書いたこの図面がベストかと。ドーム型にして、雪の重みや強風の抵抗なども排除できます。屋根・外壁部分には地下にある温水を通すことによって、雪や氷を溶かすと共に、多少の暖にもなるでしょう。中は、3層にし、1階を商店街に、2階から上に、住居や共用施設を入れ、空間はドーナツ型に。中央は広場と吹き抜けにします。運動量・時間共に、世界に比べ極端に少ない国ですので、その解消と、採光を効率よく各区画に届けることができるようになります。」


 人猫族ペーターが構造について語り、ディオがその後に続く。


「この方法にすると、今、更地になった部分と、あと13軒が立ち退いてもらう必要が出てくる。だが、それをすると、内部に住居を構える事ができる住民は、焼失した家屋よりも多くなるから、半壊の家の者達も、修復をせずとも入居できるようになるんだ。」


「うーん。立ち退きねぇ。今は問題ない建物の住人とすると。。。複雑だよねぇ?全員の了承は得られないかもしれないな。」

 ジョージが難しい顔をする。


「理想は高いけど、工事期間とか。。。そんな大きな建物に見合って、短期間で大量に手に入れられるような材料ってあるの?」

 僕は根本的な事を聞いてみる。


 机上の空論で理想だけを聞いていたのでは話にならない。

 せめて、現実的なのかどうかも聞かねば。。。


「はい。。。時間や費用が無限にあるのなら、問題は無いんです。ですが、そうもいきませんよね?」

 ペーターが俯く。

 ディオがその背中を叩き、耳元で「アルはいいヤツだから。大丈夫。」と囁く。

「うん。。。だめで元々だよね?」

 ディオにそう呟き、ペーターは僕を見る。


「陛下。あの。。。本当かどうかも疑わしい話なんです。それでも聞いて下さいますか?」

「え?当たり前じゃん。全然いいよ。気を遣わなくてもいいって。」


「はい。。。僕の父の生まれ故郷の伝承なんですが。。。」



---この国の最北端にある霊山と呼ばれる山の麓に、僕の父の村があるんです。


 その霊峰には、精霊の神様が住まうと言い伝えられています。

 そして、霊山と言われる一際大きな山は、一つの大きな岩で、精霊の神々の力を浴び続け、その岩は”聖輝陽石”に変質したのだと。。。


 自国ですし、それが使えるのならば、材料としてはもったいないほどの物ですし、費用もいらなさそうではありますよね?


 ただ。。。霊峰を削るとか、ありえないかな?と。。。

 霊峰の神々”五行の精”の罰があたってしまいます。


 他の材料としては、温水を巡らすパイプなんですが、僕の魔界の家にある粘土を使わないとちょっと無理かと。人間界の材料では、長距離のパイプができないんです。


 けれど、魔界の粘土には、微量とはいえ、魔力が含まれていますので、この国の人々の了解を得られなければ難しいですよね。---

 

 

 ペーターが話を終えた。


 僕とジルは顔を見合わせる。

「いやぁ。ペーター君、いい話を聞いたよ。ぜひ行こう!すぐ行こう!!」


(なんちゅう良いタイミングだ。これで堂々と”五行の精”を見に行ける。上手くすれば、”聖輝陽石”なんでいう伝説でしか聞かないような、材料も手に入るかもじゃん!)

(なんか。楽しくなってきたね?けどさ、アル?そうなると、一応、国王にも確認した方が良いんじゃない?流石に”霊峰”とか言ってるのを丸ごともらったら、怒られない?)


 脳内でニヤニヤとジルと話をしたが、まさか、ジルは山を丸ごともらおうと思っているとは。。。

 

(流石に丸ごとはマズイよね。そこまでは言ってないよ?)

(せっかくなら、全部もらえばいいのに~。)

 残念そうにジルがしていた。



「う~ん。霊峰の件はガウディ国王に確認しなくては、出発はないよ?それから、そこまで大きな建物になるという件もね。住民の意見も聞きたいし、魔界の物を材料として使う件に関しても。だ!!アルとジルは勝手に行動しそうだから、僕から離れるのを、たった今から、禁止とするからね?」


 ジョージに強く釘を刺された。完全に見透かされてた。



「あ~あ。ダメじゃん。」

「アルが”すぐ行こう”とか口に出すからだよ~。」

「ちょっとくらい良いじゃん。」

 僕たちは口を尖らせて抗議する。


「聞き入れられないよ?二人とも、出会ってから、今までの行動を、胸に手を当ててよ~く思い出してね!


「あ~。心当たりがあるような。ないような。」

 ちらっとジョージを見る。

「心当たりしかないと思うんだけどな。」


 これはもう、諦めるしかない。


 魔王と古代竜が、人間の王子様に、子供のように叱られるという珍事に、遊撃隊は爆笑し、魔王軍兵士は目を伏せ肩を震わせていた。。。



「で。では。陛下。私はリリィ殿と街の住民の意見をとりまとめておきますので。」

 シグナルが、請け負ってくれたが、その顔は変に頬が強張り、笑いを堪えているのが分かった。


「じゃ、僕たちはガウディ国王の元へ戻ろうか。」

 僕はジョージの胸ポケットへ押し込められ、ジルは手を掴まれた。


 半拉致状態だと思うのだが、誰も助けてくれない。。。

 まぁ、今までの僕の行動からすると、当然なのだが。。。


 目を逸らし見て見ぬフリをする。ある意味、優秀な部下をポケットの中から見ながら、僕たちは王城へと急ぐのだった。

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