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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
84/322

第83話  ~復旧作業の始まり~


 海軍の話も終わったことだし、次はっと。


「そうだ、街の修復に行かないとね。」

 シグナルを見る。


「それなら、直接、街の人にどうしたいか聞いてみようか?」

 ジルが提案する。

「え?でも、いきなり行ってもさ。話してくれるかな?」

「大丈夫。こないだ来たときに良いお店を見つけたんだ。そこで話を聞いてみようよ。」


「ほう。ジル。それは、身分はもちろん隠しての店だよね?」

「当たり前だよ。ジョージ。知られてないから、本音が聞けるんじゃん。」


 二人が、良い笑顔で頷きあう。

 う~ん。お忍び好きな仲間ができてしまったようだ。。。


「えっと。うん。まぁ。とりあえず。そこ行こっか。」

 若干の不安を抱えて了承をする。


 こんな時、スムーズに事が運んだ試しがない。



 

「では、国王様。街の人の意見を優先って話で良かったですよね?何か要求が大きそうなこととか、問題点が出るようであれば、またお伺いします。お城の方は、街の目処が付き次第、取りかかりますので。いいでしょうか?」


「何から何まで。。。申し訳ない。よろしくお願い申し上げる。」

 ガウディが深々と頭を下げた。


「ねぇ。アル様?」

 モジモジとジェーンがこちらを見る。

「ん?どうかしました?それと、”様”ってガラじゃないんで。呼び捨てでお願いします。」


「え?そんな。呼び捨てなど。ん~~。ではアルさん?は、まだ堅苦しいかしら?アル君?かしら?」

 名前だけで悩ませてしまった。


「じゃ。君でいいですかね?親しみやすいので。」

「えぇ。では。アル君。また、いらして欲しいの。あの。。。その。。。できればお友達とか。。。」

 消え入りそうな言葉だった。


「え?僕的には、もうお友達だと思ってたんですが。。。」

「ホントに?よろしいの?私、お友達らしいお友達がいなかったから。お話できる方が欲しかったの。とても嬉しいわ。」

 飛び跳ねて喜んでくれた。


「えっと。それなら、話し相手でしょ?僕の友達、結構個性的な人ばかりなんで、また連れてきますよ。女の子の話にうってつけな人とか。。。エンドレスで話をするオウムとか。。。」

 僕の話に目をキラキラと輝かせていた。


「楽しみにしているわ。絶対よ?約束ね?ありがとう。アル君。」

 そう言って僕を手に乗せると、おでこにキスをした。


(こんなに楽しみにされると。。。困るな。。。若干問題有りメンバーだもんな。)

(あはははは。本人が判断すればいいんだよ。その時の彼女の反応が楽しみだな。)

(シエイラは、問題ないじゃろうな。何をさせても完璧じゃからな。)


 ジルとダルガが、勝手に僕の思考に入り込み、勝手な事を言っていた。




 白の国、国王ガウディと、王女ジェーンに見送られ、まずは中庭の兵士の元へと向かう。


 リリィを元に、緑の国の兵士と魔王軍が。。。。

 めっちゃ親しくなってるんですけど。。。


「いやぁ。アル!久しぶりだな!なんだお前、”魔王”になったんだって?」

「リリィに聞いてびっくりしたよぉ。」


 いつものジョージ子飼いの『第一方面遊撃隊』メンバーだ。

「なんだ。みんなが来てくれたんだ。良かった~。」


「それにしても小さくなってないか?大丈夫なのか?」

「また、無理してるんじゃないの?」


 みんな口々に久方ぶりの再会と僕の心配をしてくれる。


「うわーん。すっごいうれしいよぉー!!」

 ダイキに飛びつき、顔を擦りつける。

「おい。汚すなよ?」


「えへへっへ。その冷たい感じも久しぶりで、大好きだよぉ!!」

 僕とダイキがじゃれ合っていると。。。


「オホン。陛下。よろしいですか?」

 シグナルの冷たい声がした。


「あ!すいません。はしゃぎ過ぎました。」

 僕とダイキは先生に怒られた生徒のように固まる。


「はっはっはっは。ダイキ、こちら魔王軍の司令官のシグナルさん。。。シグナル君、こちら僕の直轄部隊の隊長を任せてるダイキだ。よろしく頼むよ。」

 ジョージが紹介を済ませる。


 二人が挨拶を交わしている。


 その間に僕はコソコソと料理人のガルンさんの元へと行く。

「ねぇねぇ。やけに魔王軍と仲良くなってるけどさ、どうやって仲良くなったの?」

 声を潜めて聞いてみた。


「がっはっはっは。アルは魔王になってもやっぱり変わらねぇな。そんなの、お前さんの話で盛り上がったに決まってるだろう?がっはっはっはっは。」

 豪快に笑う。


 聞いた相手が馬鹿だった。ヒソヒソ話に一番向いてない人に聞いてしまったな。

 僕も諦めて普通に話すとしよう。


「で?何を話したのさ。。。」

 ジト目でガルンを見る。


「あぁ。銀狼シルバーウルフを単独撃破の武勇伝とか。身体張って仲間を治してくれたりとかな。お前さんが良いヤツってことを伝えといたよ。そしたら、向こうではもっと派手にかましたんだってな。お前さんらしいよ。まぁ。それも含め、いろいろとな。」


「うん。。。褒めてくれたのはありがとう。。。その他のいろいろが気になるけど?」

「がっはっはっは。お菓子食い過ぎて怒られた話とかだよ。。。あんときゃ俺、マジでジョージに殺されると思ったぜ。がっはっはっは。」

 

「ガルン。後でちょっといいかな。」

 今度はジョージが冷たい声で参戦した。


「あっっと。すんません。俺すぐ仕込みにかからにゃならんので。では失礼します。」

 華麗にトンズラした。


『チッ!逃げたか』

 僕とジョージの舌打ちが響く。



 僕はシグナルの肩に乗り、一連の遣り取りの最中に整列をした魔王軍を前にする。

「ふうっ。ねぇ。シグナル。魔王城みたいな感じの方がいいのかな?」

「陛下。先ほどの遣り取りを皆が見ておりました。お心遣いは必要ないかと。」

「そっか。じゃもういいか。」


 そして、気を取り直して、みんなを見渡す。

 打って変わって、兵士達は僕を真剣な眼差しで見つめていた。


「オホン。それでは、もう面倒なので、いつもの僕で行かせてもらいます。こんな僕に付いてこれない人は、帰ってもらっても、魔王軍を辞めても大丈夫です。特にペナルティとかはないんで。」

 前置きをしたが、誰も身じろぎもしない。


「では、これから、白の国の復興をお手伝いしたいと思います。この国の王様とは話し合いを終了しまして、できる限り、住民の安全と希望を取り入れた街作りの許可を頂きました。僕たちはあくまでも、火炎龍ファイヤードラゴンの破壊した街を直すんです。街の人々に対して、高圧的な態度や上から目線など、絶対にしないように。何かあれば、一人で抱え込まずに、緑の国の兵士の皆さんも含めて、必ず誰かに相談するように!!」


『はいっ!!』

 良い返事が返ってくる。


「それと、緑の国の兵士の皆さんは、僕がとてもお世話になった方々です。とてもいい人たちです。僕が魔物でも一度も嫌な顔もせずに、仲間に迎え入れてくれたんです。人間界ではいろいろあるかと思いますが、この人達だけは、信用してください。」

 僕は「お願いします。」と頭を下げる。


 何故か、みんなが顔を見合わせ頷き合っている。

 正直に言いすぎたかな。。。全員が帰ってしまっては困るんだが。。。


 するとあの設計士の魔人が進み出た。

「魔王陛下!!僕たちに分け隔てなくチャンスを与えて頂き、ありがとうございます。そして、緑の国の兵士の皆さんともお話をさせていただきました。陛下が魔界に来てからのお姿と、人間界でのお姿に、嘘偽りがなく、我々の事を考えて下さっていることが分かりました。正直、就任当初は迷う者もいたようですが、ここにいる混血者は全員陛下に忠誠を誓うことにいたしました!!この命に懸けて陛下にお仕えいたします!!」


 全員が一斉に跪き、頭を垂れた。


「あ。。。ありがとう。。。」

 思ってた事態と逆の光景に驚いてしまった。

 そして、一斉に跪くとか。。。ちょっと恥ずかしい。


「あの。みんな、頭を上げて?」

『はい!』

 声を揃えて返事が返ってくる。いちいち大げさだな。


「あのさ。シグナルにも言ったんだけどね。忠誠を誓って貰うのはとても嬉しいんだけど、無駄に命を落とすとかは絶対ダメだし、命は僕じゃなく、自分自身の為に懸けてほしいんだ。家族や大切な人の為でもいいよ?そこだけは、お願いね。」


 今度は返事ではなく、困惑した表情が返ってくる。


「皆の者よいか。陛下の御心に迷いはない。まっすぐに我々の事を想ってくださるのだ。故に、我々は強くなり、その御心を煩わすことの無きように精進せねばならぬ。」

『はいっ!』

 シグナルの言葉に、涙を浮かべる者までいた。


 そんな大それた事、言ってないんだけどな。。。

 まぁ。納得してくれたんならいっか。。。



 そして第一方面隊の方も話が終わったようで、合流する。

「では、まずは、瓦礫の撤去をお願いするよ。使える物もあるだろうし、まずはまとめて空き地に置いて。僕たちは、住民への聞き取り調査に向かうから。じゃ。よろしくね。」

 ジョージは、リリィとシグナルに伝えて、歩き出す。



「シグナル。。。連れて行かなくて大丈夫かな?」

「いいんじゃない?大人数で行くよりは、僕たちだけでも。」

 僕を肩に乗せたジルは、何気にジョージと手を繋いでいる。


「なんで、ジョージと手を繋いでるのさ。」

「え?親子って設定にしてみたんだけど。変かな?」


 いつの間にか、ジョージとジルで、お忍びの設定をしていたようだ。。。

 聞き取り調査というよりは、二人の趣味が色濃く出ている気がする。。。

 頭が痛いな。。。



「あっ!ジョージ、そこ曲がったらすぐだから。」

「よし。気合いを入れていこう。」

 ジルとジョージが頷き合う。


 なんの気合いなんだか。。。


「おや?ジルちゃんじゃないかい?よく来てくれたね。」

 ちょっと。いや随分とふくよかなおばちゃんが店の前を掃除していた。


「やぁ。おばちゃん。こないだはごちそうさま!!」

 ジルが手を振る。

「先日は息子が大変お世話になったそうで、ありがとうございました。私、父親のジョウと申します。」

 ジョージが爽やかな笑顔でおばちゃんに接する。


「まぁ。まぁ。ジルちゃんも可愛らしいけど、お父さん似なんだね。なんてかっこいいのかしら。」

 ジョージの腕をバンバンとおばちゃんは叩く。

「えへへ。僕の自慢のパパなんだよ?」

 ジルは、ジョージに抱きつくと、ジョージはジルを抱き上げた。

「ははっ。すみませんね。まだ甘えるものですから。」


 完璧じゃねぇか。どこで、その親子役を練習してたんだよ?

 完全に、思いつきじゃないな。

 この店、ピンポイントで来るつもりだったんだろ?


 と心でツッコミを入れて、おばちゃんを見ると、もう、ジョージのイケメンっぷりにやられていた。



「まぁまぁ。外は寒いから中に入っておくれ。スープでも飲んでおゆきよ。」

「御礼に伺ったつもりだったんだけどな。。。では遠慮無く頂戴しようかな。。。ジルがすごく美味しかったと言っていたもので。実は興味があったんですよね。」

 褒められて照れるおばちゃんの後に続きながら、「これ、つまらないものですが。息子がお世話になった御礼です。」と包みに入った何かを渡している。。。


 マジで、用意周到だな。


 中に入ると、4人掛けのテーブルに座る。

 おばちゃんは奥へと入っていく。

 食堂のようだ。



「いつも代わり映えしなくてごめんよ?」

 そう言って、おばちゃんは湯気の出る大きなスープカップを出してくれた。

「ううん。本当に美味しかったんだ。僕これ大好きだよ?ありがとう。」

 ジルは子供みたいに「ふぅふぅ」としてスープを飲む。


「では、私も。頂きます。」

 ジョージも飲みながら、言葉には出さずに、うんうん。と頷く。芸が細かいな。


 その姿に、おばちゃんはもの凄く嬉しそうにしている。

 そして、ジルの肩に乗った僕と目があった。


「ん?その肩に乗ってるのは、お人形じゃなくて。生きてるのかい?」

 おばちゃんは僕を凝視してくる。


「うん。変わってるでしょ?パパが連れてきてくれたんだ。言葉も話せるんだよ?僕の弟がわりさ。」

 ジルは僕の角を撫でる。


 おっと。そういう設定なのか。。。先に言ってくれ。

「こ。こんにちは。」

 あまり流暢じゃない方がいいのかと、一言に留める。


「オウムみたいだね。へぇ。変わったスライムがいたもんだ。」

 おばちゃんは興味津々に僕を見つめ、角とか尻尾とか。。。突いてきた。


「ところでマダム。息子に聞いたのですが、街の復旧にあたる作業員への食事を提供していたのだとか。」

 ジョージが切り出す。

「やだよ。マダムなんて。。。まぁ。うちは被害が無かったしね。街の中心部がやられたもんだから、結構大変だったんだよ。困ったときは助け合わなくちゃ。」


「けれど、無償でしょう?それに、魔物もいたとか。大変じゃありませんでしたか?」


「商店街もやられたからね。食材があるうちだけだよ?それにね。兵士も魔物も関係ないやね。助けてくれるんだもの。」


 そして、その時の状況をおばちゃんが語り始めた。



 ---あの時、街の石炭屋がやられたから、火が収まらなくてね。

 赤ん坊の泣き声が聞こえるんだが、瓦礫も多すぎて、誰も入れなかったのさ。

 ただ、みんなでオロオロするばかりさ。


 そこへ魔王軍がやってきてね。この国も終わったかと思ったんだが、そうじゃなくてね。

 獣人の一人が入っていったんだよ。躊躇なく。


 みんな何が起きたか分からなかったさ。

 暫くすると、燃えさかる炎の中から、大きな葉っぱの包みを抱えた獣人が出てきたんだ。

 

 毛は焼けてしまって、肌も焼けただれてしまってね。

 見るも無惨だった。


 その獣人は、火傷を気にする様子も無く、その包みを大事そうに、そっと開けたんだ。

 そしたら、赤ん坊が出てきてね。

 母親は涙を流して感謝したよ。


 みんなで手当をするように言ったんだが、

「僕は獣人なので、大丈夫です。まだ、助かる人がいるかもしれないので、行ってきます。」

 って、また炎の中に入っていった。


 その獣人が助けてくれたのは赤ん坊含めて3人。

 焼ける瓦礫を素手でどかして中の人を助けて。葉っぱは耐火性があるらしいんだが、救助の為だけに使うんだよ?

 大人を運ぶ時には、どうしても葉っぱでは覆えないだろう?

 足りない部分は自分が覆い被さって運んでくるんだ。


 3人を助け終えた獣人は息も絶え絶えになってしまってね。

 それでも魔王軍は、「気になさらず。」の一言さ。

 でもね。傷ついた仲間を運ぶのは、それは大事そうに運んでた。

 魔物でも、人間でも一緒なのさね。


 そんな人たちに、私ができるのは、料理を作るくらいだからね。

 「美味しい」「ありがとう」って食べてくれるんだ。作りがいがあるよ。


 緑の国の兵士さん達も駆けつけてくれてね。

 回復薬だとか、お医者さんやら。

 本当に助かったよ。


 魔王軍は悪魔も連れてきてね。魂の数も調べてくれたんだ。分かる範囲で魂と身元の確認もしてくれて、行方不明者は一人も出ずに済んだね。有り難いことさ。


 人命救助が終わったら、帰ってしまったけど、また、来てくれるといいね。


 わたしゃ、また料理を作って御礼をしたいよ。---



 おばちゃんは、思い出しながら涙を浮かべ、話を終えた。


「そうでしたか。。。マダムは、悪魔は恐ろしくはありまんか?」

「いや?この国は、昔から占いやら、呪術が盛んでね。呪術師も何人もいるから、悪魔の生態も知っているし、この国には、”五行の精”がいるから、大丈夫だよ。」


(なにやら聞き慣れぬワードが。。。ジル。ちょっと聞いて。)


「ねぇ。おばちゃん”五行の精”って何?」

 ジルが質問をする。

「ジルちゃんは小さいから知らないさね。。。最近じゃ昔話にも聞かせなくなったからね。」

 


「”五行の精”はその大昔。世界が造られた時、人間界を守るために神様が与えてくださった”精霊”なのさ。今いる、精霊の元になったと謂われているね。」


「それって、まだいるんですかね?」

 ジョージも食いつく。

「そりゃ、もちろんさ。この国の、一番北の霊峰の頂上にいらっしゃるそうだよ?今はもう、そこに辿り着くものもいないけど。なんでも、精霊に認められると、この世の力を授けてくれるそうさ。」


 おばちゃんからの、思わぬキーワードに、僕たちの好奇心がかき立てられてしまった。

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