第83話 ~復旧作業の始まり~
海軍の話も終わったことだし、次はっと。
「そうだ、街の修復に行かないとね。」
シグナルを見る。
「それなら、直接、街の人にどうしたいか聞いてみようか?」
ジルが提案する。
「え?でも、いきなり行ってもさ。話してくれるかな?」
「大丈夫。こないだ来たときに良いお店を見つけたんだ。そこで話を聞いてみようよ。」
「ほう。ジル。それは、身分はもちろん隠しての店だよね?」
「当たり前だよ。ジョージ。知られてないから、本音が聞けるんじゃん。」
二人が、良い笑顔で頷きあう。
う~ん。お忍び好きな仲間ができてしまったようだ。。。
「えっと。うん。まぁ。とりあえず。そこ行こっか。」
若干の不安を抱えて了承をする。
こんな時、スムーズに事が運んだ試しがない。
「では、国王様。街の人の意見を優先って話で良かったですよね?何か要求が大きそうなこととか、問題点が出るようであれば、またお伺いします。お城の方は、街の目処が付き次第、取りかかりますので。いいでしょうか?」
「何から何まで。。。申し訳ない。よろしくお願い申し上げる。」
ガウディが深々と頭を下げた。
「ねぇ。アル様?」
モジモジとジェーンがこちらを見る。
「ん?どうかしました?それと、”様”ってガラじゃないんで。呼び捨てでお願いします。」
「え?そんな。呼び捨てなど。ん~~。ではアルさん?は、まだ堅苦しいかしら?アル君?かしら?」
名前だけで悩ませてしまった。
「じゃ。君でいいですかね?親しみやすいので。」
「えぇ。では。アル君。また、いらして欲しいの。あの。。。その。。。できればお友達とか。。。」
消え入りそうな言葉だった。
「え?僕的には、もうお友達だと思ってたんですが。。。」
「ホントに?よろしいの?私、お友達らしいお友達がいなかったから。お話できる方が欲しかったの。とても嬉しいわ。」
飛び跳ねて喜んでくれた。
「えっと。それなら、話し相手でしょ?僕の友達、結構個性的な人ばかりなんで、また連れてきますよ。女の子の話にうってつけな人とか。。。エンドレスで話をするオウムとか。。。」
僕の話に目をキラキラと輝かせていた。
「楽しみにしているわ。絶対よ?約束ね?ありがとう。アル君。」
そう言って僕を手に乗せると、おでこにキスをした。
(こんなに楽しみにされると。。。困るな。。。若干問題有りメンバーだもんな。)
(あはははは。本人が判断すればいいんだよ。その時の彼女の反応が楽しみだな。)
(シエイラは、問題ないじゃろうな。何をさせても完璧じゃからな。)
ジルとダルガが、勝手に僕の思考に入り込み、勝手な事を言っていた。
白の国、国王ガウディと、王女ジェーンに見送られ、まずは中庭の兵士の元へと向かう。
リリィを元に、緑の国の兵士と魔王軍が。。。。
めっちゃ親しくなってるんですけど。。。
「いやぁ。アル!久しぶりだな!なんだお前、”魔王”になったんだって?」
「リリィに聞いてびっくりしたよぉ。」
いつものジョージ子飼いの『第一方面遊撃隊』メンバーだ。
「なんだ。みんなが来てくれたんだ。良かった~。」
「それにしても小さくなってないか?大丈夫なのか?」
「また、無理してるんじゃないの?」
みんな口々に久方ぶりの再会と僕の心配をしてくれる。
「うわーん。すっごいうれしいよぉー!!」
ダイキに飛びつき、顔を擦りつける。
「おい。汚すなよ?」
「えへへっへ。その冷たい感じも久しぶりで、大好きだよぉ!!」
僕とダイキがじゃれ合っていると。。。
「オホン。陛下。よろしいですか?」
シグナルの冷たい声がした。
「あ!すいません。はしゃぎ過ぎました。」
僕とダイキは先生に怒られた生徒のように固まる。
「はっはっはっは。ダイキ、こちら魔王軍の司令官のシグナルさん。。。シグナル君、こちら僕の直轄部隊の隊長を任せてるダイキだ。よろしく頼むよ。」
ジョージが紹介を済ませる。
二人が挨拶を交わしている。
その間に僕はコソコソと料理人のガルンさんの元へと行く。
「ねぇねぇ。やけに魔王軍と仲良くなってるけどさ、どうやって仲良くなったの?」
声を潜めて聞いてみた。
「がっはっはっは。アルは魔王になってもやっぱり変わらねぇな。そんなの、お前さんの話で盛り上がったに決まってるだろう?がっはっはっはっは。」
豪快に笑う。
聞いた相手が馬鹿だった。ヒソヒソ話に一番向いてない人に聞いてしまったな。
僕も諦めて普通に話すとしよう。
「で?何を話したのさ。。。」
ジト目でガルンを見る。
「あぁ。銀狼を単独撃破の武勇伝とか。身体張って仲間を治してくれたりとかな。お前さんが良いヤツってことを伝えといたよ。そしたら、向こうではもっと派手にかましたんだってな。お前さんらしいよ。まぁ。それも含め、いろいろとな。」
「うん。。。褒めてくれたのはありがとう。。。その他のいろいろが気になるけど?」
「がっはっはっは。お菓子食い過ぎて怒られた話とかだよ。。。あんときゃ俺、マジでジョージに殺されると思ったぜ。がっはっはっは。」
「ガルン。後でちょっといいかな。」
今度はジョージが冷たい声で参戦した。
「あっっと。すんません。俺すぐ仕込みにかからにゃならんので。では失礼します。」
華麗にトンズラした。
『チッ!逃げたか』
僕とジョージの舌打ちが響く。
僕はシグナルの肩に乗り、一連の遣り取りの最中に整列をした魔王軍を前にする。
「ふうっ。ねぇ。シグナル。魔王城みたいな感じの方がいいのかな?」
「陛下。先ほどの遣り取りを皆が見ておりました。お心遣いは必要ないかと。」
「そっか。じゃもういいか。」
そして、気を取り直して、みんなを見渡す。
打って変わって、兵士達は僕を真剣な眼差しで見つめていた。
「オホン。それでは、もう面倒なので、いつもの僕で行かせてもらいます。こんな僕に付いてこれない人は、帰ってもらっても、魔王軍を辞めても大丈夫です。特にペナルティとかはないんで。」
前置きをしたが、誰も身じろぎもしない。
「では、これから、白の国の復興をお手伝いしたいと思います。この国の王様とは話し合いを終了しまして、できる限り、住民の安全と希望を取り入れた街作りの許可を頂きました。僕たちはあくまでも、火炎龍の破壊した街を直すんです。街の人々に対して、高圧的な態度や上から目線など、絶対にしないように。何かあれば、一人で抱え込まずに、緑の国の兵士の皆さんも含めて、必ず誰かに相談するように!!」
『はいっ!!』
良い返事が返ってくる。
「それと、緑の国の兵士の皆さんは、僕がとてもお世話になった方々です。とてもいい人たちです。僕が魔物でも一度も嫌な顔もせずに、仲間に迎え入れてくれたんです。人間界ではいろいろあるかと思いますが、この人達だけは、信用してください。」
僕は「お願いします。」と頭を下げる。
何故か、みんなが顔を見合わせ頷き合っている。
正直に言いすぎたかな。。。全員が帰ってしまっては困るんだが。。。
するとあの設計士の魔人が進み出た。
「魔王陛下!!僕たちに分け隔てなくチャンスを与えて頂き、ありがとうございます。そして、緑の国の兵士の皆さんともお話をさせていただきました。陛下が魔界に来てからのお姿と、人間界でのお姿に、嘘偽りがなく、我々の事を考えて下さっていることが分かりました。正直、就任当初は迷う者もいたようですが、ここにいる混血者は全員陛下に忠誠を誓うことにいたしました!!この命に懸けて陛下にお仕えいたします!!」
全員が一斉に跪き、頭を垂れた。
「あ。。。ありがとう。。。」
思ってた事態と逆の光景に驚いてしまった。
そして、一斉に跪くとか。。。ちょっと恥ずかしい。
「あの。みんな、頭を上げて?」
『はい!』
声を揃えて返事が返ってくる。いちいち大げさだな。
「あのさ。シグナルにも言ったんだけどね。忠誠を誓って貰うのはとても嬉しいんだけど、無駄に命を落とすとかは絶対ダメだし、命は僕じゃなく、自分自身の為に懸けてほしいんだ。家族や大切な人の為でもいいよ?そこだけは、お願いね。」
今度は返事ではなく、困惑した表情が返ってくる。
「皆の者よいか。陛下の御心に迷いはない。まっすぐに我々の事を想ってくださるのだ。故に、我々は強くなり、その御心を煩わすことの無きように精進せねばならぬ。」
『はいっ!』
シグナルの言葉に、涙を浮かべる者までいた。
そんな大それた事、言ってないんだけどな。。。
まぁ。納得してくれたんならいっか。。。
そして第一方面隊の方も話が終わったようで、合流する。
「では、まずは、瓦礫の撤去をお願いするよ。使える物もあるだろうし、まずはまとめて空き地に置いて。僕たちは、住民への聞き取り調査に向かうから。じゃ。よろしくね。」
ジョージは、リリィとシグナルに伝えて、歩き出す。
「シグナル。。。連れて行かなくて大丈夫かな?」
「いいんじゃない?大人数で行くよりは、僕たちだけでも。」
僕を肩に乗せたジルは、何気にジョージと手を繋いでいる。
「なんで、ジョージと手を繋いでるのさ。」
「え?親子って設定にしてみたんだけど。変かな?」
いつの間にか、ジョージとジルで、お忍びの設定をしていたようだ。。。
聞き取り調査というよりは、二人の趣味が色濃く出ている気がする。。。
頭が痛いな。。。
「あっ!ジョージ、そこ曲がったらすぐだから。」
「よし。気合いを入れていこう。」
ジルとジョージが頷き合う。
なんの気合いなんだか。。。
「おや?ジルちゃんじゃないかい?よく来てくれたね。」
ちょっと。いや随分とふくよかなおばちゃんが店の前を掃除していた。
「やぁ。おばちゃん。こないだはごちそうさま!!」
ジルが手を振る。
「先日は息子が大変お世話になったそうで、ありがとうございました。私、父親のジョウと申します。」
ジョージが爽やかな笑顔でおばちゃんに接する。
「まぁ。まぁ。ジルちゃんも可愛らしいけど、お父さん似なんだね。なんてかっこいいのかしら。」
ジョージの腕をバンバンとおばちゃんは叩く。
「えへへ。僕の自慢のパパなんだよ?」
ジルは、ジョージに抱きつくと、ジョージはジルを抱き上げた。
「ははっ。すみませんね。まだ甘えるものですから。」
完璧じゃねぇか。どこで、その親子役を練習してたんだよ?
完全に、思いつきじゃないな。
この店、ピンポイントで来るつもりだったんだろ?
と心でツッコミを入れて、おばちゃんを見ると、もう、ジョージのイケメンっぷりにやられていた。
「まぁまぁ。外は寒いから中に入っておくれ。スープでも飲んでおゆきよ。」
「御礼に伺ったつもりだったんだけどな。。。では遠慮無く頂戴しようかな。。。ジルがすごく美味しかったと言っていたもので。実は興味があったんですよね。」
褒められて照れるおばちゃんの後に続きながら、「これ、つまらないものですが。息子がお世話になった御礼です。」と包みに入った何かを渡している。。。
マジで、用意周到だな。
中に入ると、4人掛けのテーブルに座る。
おばちゃんは奥へと入っていく。
食堂のようだ。
「いつも代わり映えしなくてごめんよ?」
そう言って、おばちゃんは湯気の出る大きなスープカップを出してくれた。
「ううん。本当に美味しかったんだ。僕これ大好きだよ?ありがとう。」
ジルは子供みたいに「ふぅふぅ」としてスープを飲む。
「では、私も。頂きます。」
ジョージも飲みながら、言葉には出さずに、うんうん。と頷く。芸が細かいな。
その姿に、おばちゃんはもの凄く嬉しそうにしている。
そして、ジルの肩に乗った僕と目があった。
「ん?その肩に乗ってるのは、お人形じゃなくて。生きてるのかい?」
おばちゃんは僕を凝視してくる。
「うん。変わってるでしょ?パパが連れてきてくれたんだ。言葉も話せるんだよ?僕の弟がわりさ。」
ジルは僕の角を撫でる。
おっと。そういう設定なのか。。。先に言ってくれ。
「こ。こんにちは。」
あまり流暢じゃない方がいいのかと、一言に留める。
「オウムみたいだね。へぇ。変わったスライムがいたもんだ。」
おばちゃんは興味津々に僕を見つめ、角とか尻尾とか。。。突いてきた。
「ところでマダム。息子に聞いたのですが、街の復旧にあたる作業員への食事を提供していたのだとか。」
ジョージが切り出す。
「やだよ。マダムなんて。。。まぁ。うちは被害が無かったしね。街の中心部がやられたもんだから、結構大変だったんだよ。困ったときは助け合わなくちゃ。」
「けれど、無償でしょう?それに、魔物もいたとか。大変じゃありませんでしたか?」
「商店街もやられたからね。食材があるうちだけだよ?それにね。兵士も魔物も関係ないやね。助けてくれるんだもの。」
そして、その時の状況をおばちゃんが語り始めた。
---あの時、街の石炭屋がやられたから、火が収まらなくてね。
赤ん坊の泣き声が聞こえるんだが、瓦礫も多すぎて、誰も入れなかったのさ。
ただ、みんなでオロオロするばかりさ。
そこへ魔王軍がやってきてね。この国も終わったかと思ったんだが、そうじゃなくてね。
獣人の一人が入っていったんだよ。躊躇なく。
みんな何が起きたか分からなかったさ。
暫くすると、燃えさかる炎の中から、大きな葉っぱの包みを抱えた獣人が出てきたんだ。
毛は焼けてしまって、肌も焼けただれてしまってね。
見るも無惨だった。
その獣人は、火傷を気にする様子も無く、その包みを大事そうに、そっと開けたんだ。
そしたら、赤ん坊が出てきてね。
母親は涙を流して感謝したよ。
みんなで手当をするように言ったんだが、
「僕は獣人なので、大丈夫です。まだ、助かる人がいるかもしれないので、行ってきます。」
って、また炎の中に入っていった。
その獣人が助けてくれたのは赤ん坊含めて3人。
焼ける瓦礫を素手でどかして中の人を助けて。葉っぱは耐火性があるらしいんだが、救助の為だけに使うんだよ?
大人を運ぶ時には、どうしても葉っぱでは覆えないだろう?
足りない部分は自分が覆い被さって運んでくるんだ。
3人を助け終えた獣人は息も絶え絶えになってしまってね。
それでも魔王軍は、「気になさらず。」の一言さ。
でもね。傷ついた仲間を運ぶのは、それは大事そうに運んでた。
魔物でも、人間でも一緒なのさね。
そんな人たちに、私ができるのは、料理を作るくらいだからね。
「美味しい」「ありがとう」って食べてくれるんだ。作りがいがあるよ。
緑の国の兵士さん達も駆けつけてくれてね。
回復薬だとか、お医者さんやら。
本当に助かったよ。
魔王軍は悪魔も連れてきてね。魂の数も調べてくれたんだ。分かる範囲で魂と身元の確認もしてくれて、行方不明者は一人も出ずに済んだね。有り難いことさ。
人命救助が終わったら、帰ってしまったけど、また、来てくれるといいね。
わたしゃ、また料理を作って御礼をしたいよ。---
おばちゃんは、思い出しながら涙を浮かべ、話を終えた。
「そうでしたか。。。マダムは、悪魔は恐ろしくはありまんか?」
「いや?この国は、昔から占いやら、呪術が盛んでね。呪術師も何人もいるから、悪魔の生態も知っているし、この国には、”五行の精”がいるから、大丈夫だよ。」
(なにやら聞き慣れぬワードが。。。ジル。ちょっと聞いて。)
「ねぇ。おばちゃん”五行の精”って何?」
ジルが質問をする。
「ジルちゃんは小さいから知らないさね。。。最近じゃ昔話にも聞かせなくなったからね。」
「”五行の精”はその大昔。世界が造られた時、人間界を守るために神様が与えてくださった”精霊”なのさ。今いる、精霊の元になったと謂われているね。」
「それって、まだいるんですかね?」
ジョージも食いつく。
「そりゃ、もちろんさ。この国の、一番北の霊峰の頂上にいらっしゃるそうだよ?今はもう、そこに辿り着くものもいないけど。なんでも、精霊に認められると、この世の力を授けてくれるそうさ。」
おばちゃんからの、思わぬキーワードに、僕たちの好奇心がかき立てられてしまった。




