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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
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第79話  ~復興には・・・~


「じゃあ、白の国の件に話を戻さないとね。妹さんの件は戻ったらすぐに対応するから待っててくれる?」

 僕はみんなを見渡し、皆の頷く姿を確認し、話を続ける。


「僕としては、白の国の復興はできる限りは対応したいんだよね。。。王様の希望と被害状況とあとはこちらの人員の選出だね。」

 

「被害状況は私からご報告を。王城は崩れた部分なども多くありましたが、こちらは主要部分には影響がありませんでしたし、不明者もいませんでしたので、がれきの撤去と応急措置は終了しております。深刻なのは、市街地でしょうか。。。粉砕・火災など、多様な攻撃により、広範囲にわたり、街が破壊されております。その中で、死亡者・行方不明者と、生存者の救出を優先し作業をしたため、がれきの撤去などが進んでおりません。とりあえず、生存者の救出・死亡者・行方不明者は、遺体と魂の数も確認し、住民への聞き取りも終了しておりますので、今後の捜索活動は必要ありません。あとは復旧作業に移るだけです。」

 シグナルがサラッと報告を終える。


 が、文句のつけようのないほどの仕事っぷりだ。


「ありがとう。この短期間で、そこまでやってくれるなんて。人命救助が終わってるなら、一安心だよね?」


「いえ。陛下。私の判断の甘さです。不明者を出さない為とはいえ、魂の確認作業に万全を期すために、悪魔族を使用したのです。それが原因で”緑の国”の方々に不信感を持たせてしまいました。人間が悪魔を忌み嫌うことを知ってはいたのですが。。。もう少し、姿を見せないように配慮すべきでした。」


「いや。君の采配は完璧だよ。うちの国の人間の心の狭さで魔界の人々を傷つけてしまって申し訳ない。我が国は獣やモンスターには日常的に出会うんだが、悪魔や妖魔などの心理的な術を使う者はほとんど目にしたことがなくてね。過剰な反応をしてしまった。本国でも理解をしてもらったし、魔王軍さえ良ければ、今後とも白の国での作業を共にさせてもらいたい。」

 ジョージがシグナルに頭を下げる。


「え?ジョージさんは緑の国の方でしたか?」

 シグナルは知らなかったようだ。


「ジョージは緑の国の王子様なんだよ。」

 僕が説明する。

「えぇ!!そんな方とは存じ上げずに。。。失礼をしました!!!」

 今度はシグナルが頭を下げる。


「まぁ。そんな感じで、仲良くお願いね。」

 なにが”そんな感じ”なのかは分からないが、ホワッと場を流す。


「あとは。。。王様の意向を聞かないとね。」

「あぁ。それについては僕が聞いたよ。」

 ジルが説明を始める。


「とりあえず、街の人々が、緑の国の軍人さんにも、魔王軍の兵士達にも感謝していたというのを伝えておくね。元はと言えば、自国の役人の暴挙から起きた事だというのも分かったから、他国からきた君たちの臣下に対して、分け隔てなく感謝してたよ?」

 ジルは一区切りおく。

「それで、王様だね。彼としては、市街地の復旧を優先したいそうだ。城はいつでもいいらしいよ?まぁ、大部分の役人が捕縛されてしまったからね。それから、自分の進退についてを悩んでいた。ここまでの事が起きてしまって。僕たちがいなければ、国として転覆していたわけだから。アルやジョージと話をしたいと言っていたよ。」


「じゃあ、とりあえずは王様の所へは行くとして、後は魔王軍の人員の選出だね。まずは僕の意見を言うから、その後で、みんなの意見を聞かせてよ。」

 みんなの顔を見る。大方頷いた。


「まず、人間の言葉を話せる人はどれくらいいる?」

 シグナルを見る。

「はい。混血もおりますので、結構な人数かと。獣・モンスター・魔人など各種族におります。」


「そうか。だったら、できるだけ、色んな種族から、それも、魔界色が強い見た目の人を優先して欲しいんだ。」

「陛下。人型の者達でも、人間とは比較にならない力を持っていますから、土木作業など問題ありませんが。。。」

 シグナルは僕の選出方法に疑問を持ったようだ。


「うん。もちろんシグナルの言うとおりだよ。でもね。今回は、街の人々が好意を持ってくれているなら、”魔物たちって、結構近い存在なんだよ。悪さをするばかりじゃないよ”。って思ってもらえないかな?という作戦なんだ。もちろん、自然界に出れば、意思疎通などできないモンスターもいるから、それは違うと言うことも含めて、少しだけでいいから、知って貰いたいんだ。」


「アル。それは理想論だよ。。。長い歴史もあるんだ。中々受け入れてもらえる問題ではないよ。悪魔族の一件だけでも、問題になってしまうんだから。」

 ジョージは先の件もあり、慎重論を唱える。


「ふむん。ワシもジョージに賛成じゃな。やはり”恐怖”という感情は、頭で排除しようとしても、心の奥底から、消えることは無いのじゃ。魔物側としては、”迫害”された恐怖。。。人間側としては、殺されたり、殺されそうになった”死”の恐怖。これは払拭できないと思うぞ?」

 ダルガも加わる。


「だけど、アルの言うことも一理あるよ?街の人たち、本当に魔王軍に感謝してた。人命救助を最優先したから。瓦礫の下敷きになった人、人間達だけでは到底助けられなかった人を助けたり、火災の収まらない中で、火の中に飛び込んで助けたり。魔物だからできたことも多かったんだ。魔王軍がいなければ、数十の命が失われてた。そして、遺体が無くなってしまった犠牲者もいた。けれど、悪魔族がそういった魂をかき集めて、その特徴と、家族の人からの申告から、摺り合わせをして、犠牲者の中でも、身元不明者は一人もでなかった。奇跡的だよ?だから、今なら、魔王軍に対する偏見が少ない時期だと思うんだ。。。この先だって、魔界と人間界、生きていける場所が種族としてどうしても違うんだから、共存なんてできないけれど、少しでも良い印象を持ってもらうのは、いいと思うよ?」


 ジルは自分で見聞きしてきた事を、教えてくれた。


「それならば、人間との混血者だけを集めてはいかがでしょうか?純粋な魔界の者に比べれば、力は多少劣る者もいますが、それでも兵士だけで100名以上はいますので、その中から選出しても良いかと。人間からすれば、多少は親近感が沸くやもしれません。」

 シグナルが妥協案を提示した。


「う~ん。そうか。そうだね。急いだらダメな問題だね。今回はそれで、また機会があれば、ゆっくりと時間をかけて、僕たちのことを知ってもらおう。」



 そして、シグナルの号令の元、兵士が集められた。


「此度の人間界での働き、ご苦労であった。」

 僕のねぎらいの言葉に、兵士達が跪く。


「我々と人間。。。歴史の上でも相容れぬ事も多かろう。しかし、今回は”龍族”が破壊した部分を復旧させる。それぞれに思うところはあるだろうが、仲間が関係した事件。最後まで見届けると決めた。」

 玉座の上から見下ろすが、良くも悪くも反応を示す者はいない。


「そこで、”白の国”の復旧作業に赴く者を選出したい。人間とのいざこざを少しでも減らすため、3つの条件を付ける。人間との混血であること。人間の言葉が話せること。人間を忌み嫌っていないこと。これだけだ。希望者は前へ出よ。」


 僕の言葉に、場がざわつく。顔を見合わせたり相談を始める者もいた。


「あの~。よろしいでしょうか?」

 一人の魔物が立ち上がる。

 眼鏡をかけ、少し猫背で細身。気の弱そうな顔つき。。

 兵士とは思えない。


「どうした?何でも聞くが良い。」

 あまりの気弱そうな雰囲気に、僕もやんわりと話す。


「復旧作業とお聞きしました。僕は”人猫族”なので、力が乏しく、土木作業にはとてもお役には立てないと思うのですが。。。設計技術を持っているので、参加できないものかと。」


 意外な職業が出てきた。

 考えてもいなかったが、建物も一から造るのだ。確かに必要だろう。


「その技術は人間界でも使えるか?」

 一応の確認をする。

「はい。僕はどちらの世界でも仕事をしてきましたので、魔界と人間界のそれぞれの土地の特有のクセも把握しております。”白の国”は父の故郷でもありますので、是非復興にお手伝いできればと。。。」

 消え入りそうに話を終える。


「そうであるか。それは頼もしい。こちらから依頼せねばならぬ人材であったな。そなたは素晴らしい技術があるのだから、もう少し胸を張って話すがよいぞ?」

 僕の言葉に嬉しそうに涙目になりながら、何度も頭を下げる。


「この者のように、単純な力作業だけでなくても良いのだ。破壊された町並みをよりよくするためであれば、皆のそれぞれの技術を集結させたい。どうだ?名乗りを上げる者は他にはいないか?」


 人猫族の若者が前に出た事で、次々と進み出る者が出てきた。

 締め切ってみると、60名ほどが集まった。


 

 シグナルを司令官として、編成などが始まる。

 僕は、事前に大まかな指示をしておいたので、その場を任せ、後から合流してもらうことにした。



 僕、ジョージ、リリィ、ジルの4人で”白の国”へ向かうことにする。


「ねぇ、アルちゃん?これを持って行って?」

 シエイラから大きな包みを預かる。

「なんですか?」

「ご挨拶にいくのだもの。手みやげは必要でしょ?魔界の特産品などが入ってるわ。もちろん人間も知ってる物ばかりだから大丈夫よ?」


 ???の顔をする僕をよそに、ジョージが中を覗く。

「これほどの物を献上されれば、”白の国”の王も喜びましょう。」

「さすが、王子様ね。ではお願いね。」


 二人の眼鏡にかなった品であれば、間違いないだろう。

「ありがたく、お預かりします。」

 僕はペコっと頭を下げた。


「ワシもついていこうかな。」

 シエイラの影から、ダルガが顔を出す。

「え?いいんすか?ダルガさんが来てくれるなら心強いですよ。」


「ならば、皆の影を探して入るのも疲れるのでな。オリハルコンの剣を携えよ。」

「あぁ。それでいいなら。ジョージよろしく。」

 そして、僕はジョージにオリハルコンの剣をつけてもらう。


「よし、じゃこれで、準備は整ったかな?忘れ物ないかな?」


「ふふっ。大丈夫そうね?気をつけてね。行ってらっしゃい。」

 シエイラが優雅に手を振る。


「うん!行ってきます!!」


 僕たち一行は白の国へ向かった。

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