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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=白の国 復興編=
79/322

第78話  ~ヴァンパイアの葛藤~

遅くなってすみません。

仕事に追われてました。


 部屋へ戻ると、シエイラとメイドさんが出迎えてくれる。


「魔王様。お言葉に甘えて、お茶を持って帰ります。妹の為に、ありがとうございました。」

 深々と頭を下げる。

 僕はメイドさんの肩へと飛び乗る。


「ねぇねぇ。君の妹さんは、どこが悪いの?」

 僕が肩に飛び乗ったことに、驚きの表情を出したが、そっと答えてくれる。

「私、エルフなんですけど。。。今は絶滅してしまった特殊な人間の種族とのハーフでして。。。私は、魔物の血が濃いんですが、妹は人間の血が色濃く出てしまって。。。その種族とエルフとの血は相性が悪いので、妹は生まれながらに身体が弱いんです。」


「へぇ~。そんな事もあるんだ。血の相性ねぇ。。。じゃ、これを飲んでも治らないかもしれないかな。」

「えぇ。でも、少しでも試せることは、全てやってあげたいので。。。」

 僕とメイドさんが会話をしていると、シグナルが割って入る。


「君は、いくつかな?」

「私。ですか?こう見えて、500歳と少しです。ハーフだからか、エルフの寿命は遙かに超えていますが。。。」


「そうか。。。うん。。。もしかして、君の人間としての半分は、”アトラス族”の血ではないのか?」

 シグナルは口に手を添え質問を投げかける。

「え?えぇ。そうです。どうしてお分かりに?」

 眉を上げ、目を見開く。。。


「エルフと相性が悪く、途絶えた血族、そして混血することにより、寿命を延ばすとなれば、”アトラス族”だろ?僕はヴァンパイアだが、1500歳を超えた。。。」

「えっと。。。それは?もしかして。。。」

「うん。私も”アトラス”の血を引くものだ。」

 シグナルの突然のカミングアウトだった。


「あの~。お取込み中すみませんが、”アトラス族”ってなんですか?」

 置いてけぼりになった僕が、様子を窺いながら、話に割り込む。


「陛下。。。失礼しました。”アトラス族”というのはですね。。。」

 シグナルが語り始める。



---”アトラス族”それは古代神話時代から続く。。。


 巨人族の末裔とも、人間の始祖とも呼ばれていた。

 その姿は、人間と変わりがないが、魔物とも人間とも違う進化をしたようだ。


 一時は人間界で栄華を誇る種族であった。

 知能が高く、文明は人間の1世紀は先を進む。


 そんな先んじた種族であったが、悩みの種は、交配にあった。

 どれほどの手を尽くしても、数が増える事が無かったのだ。


 婚姻関係は種族内だけに限られた。

 その理由は、別種族との繁殖が、望みが薄い事にほかならない。


 人間の姿でありながら、その寿命は100年から150年程。

 しかし、人間との混血児になると、その寿命は著しく低下し、50年程となる。


 魔族や、モンスターとの混血児となると、逆に、寿命が延びる傾向にあった。。

 だが、魔界の者との混血は種族により、血が合わない者が生まれる事もある。

 普通であれば生まれてくることすらないのだろうが、寿命が延びるという強さ故に、生まれ落ち、そして弱い身体ながらに苦しみながら、長い年月を過ごす者が多かった。


 特に、エルフとの相性が悪いことは有名だった。

 人間の姿に近く、また、容姿端麗なエルフ。。。恋をするものも多かった。

 ”アトラス族”の歴史上で、何度も婚姻が結ばれたが、その子供の末路は気の毒な結果に終わっていたという。


 逆に、ヴァンパイアや狼男などとは相性が良く、不老とさえ言われるほどの寿命を得たと言われた。しかし、その種族の数が極端に少ないために、”アトラス族”と出会うことがかなわなかった。


 そんな状況だったために、”種族内婚姻”が進められた。

 そして、人口は減少の一途をたどる。


 未来を憂いた種族は、2000年ほど前に、別種族を受け入れることとした。

 しかし時すでに遅し。。。

 血が濃くなり過ぎた”アトラス族”の血は、さらに、別種族を迎えにくくなっていた。


 そして、500年程前に、その姿を消した---



「私は、”アトラス族”が衰退をしてから生まれたので、この程度の話しかできませんが。」

「うん。ありがとう。なんとなく分かったよ。。。」


「私は、その最後の”アトラス族”の娘です。」

「そっか。。。残念だったね。」

 メイドさんは僕の言葉に、静かに首を振る。


「もし。なんだが。。。もし君と妹さんさえ良ければ、僕の血を分けようか?」

「え?何それ?どういうこと?」

 メイドさんよりも先に、僕が食いつく。


「古来より、受け継がれた治療法らしいのですが、ヴァンパイアの血を与えると良いと伝えられております。ただ、その方法というのが。。。」

 シグナルが言い淀む。


「いや。そこまで言ったらさ、気になるじゃん。せめて方法だけでも教えてよ。」

「はい。望みがあるのなら、縋りつきたいのです!!」

 僕もメイドさんもシグナルににじり寄る。


「はぁ。」

 シグナルは項垂れ、呼吸を整える。

「私も、同族と会えたのが初めてなので、ここまで話してしまいましたが。。。」

「だから~。。。早く!!」

 躊躇うシグナルを僕は急かす。


「陛下。。。この件で、首にはなりたくないのですが。。。」

「大丈夫だって!!」

「では。。。お嬢さんも、引かないでくださいね。」

「大丈夫です!!」


「では。。。私の血を与える行為は、私が血を飲む行為と酷似しておりまして。。。その首筋に牙を突き立て、私の血を流し込むのです。」

 なぜかシグナルの頬が赤い。


「え?それだけでよろしいのですか?」

「なんで、それで、僕たちがドン引きするのさ?」

 意味が分からずメイドさんと僕はキョトンと目を丸くする。


「ですから。。。ヴァンパイアというのはですね。。。その。。。純潔の子の血を好むといいましょうか。。。多分、妹さんは。。。身体が弱いので、そういったことはなかったのではないかと。。。」

 シグナルは耳まで赤くなっている。

「あ。。。そうですね。。。。たぶん。。。」

 メイドさんも俯きながら答える。


「だから、それがどうしたの?つい、血を飲んじゃうかもってこと?」

 二人が困った顔でこちらを向く。

(何がいけないのだ?)


「陛下はヴァンパイアの性質を詳しくないのですね。。。牙を突き立てれば、その子の血を僅かでも舐めてしまいます。僕は、混血児ですし、血を吸わなくては生きていけないわけではありませんでしたので、これまで、ほとんど口にしてこなかったのです。口にしたのは、既婚の女性で合意の上での吸血です。それでも、血の味というのは抑えがたい興奮を与えます。それが、純潔の娘であれば。。。私の理性が。。。」

 シグナルが言葉を詰まらせる。


「少しくらい、飲ませてもらってもいいじゃん!あとから、シグナルの血をあげるんだからさ。」

「陛下。。。興奮の意味が分かっておられない。。。」

 目を瞑り、首をふる。

 メイドさんは頬を抑えて俯いている。


 そこでようやく鈍い僕が気付く。。。

「あ~~~!!!!そういうこと???いろんな意味で襲っちゃうかもってこと???ダメじゃん!!!いや。その子がいいならいいかもだけど。。。いや。倫理的にどうなのかな???」


 メイドさんの肩で、僕は飛び跳ねるように驚き、そして考え込む。


「アル。。。一旦落ち着こうか。。。。そんなはっきりと口に出すべきじゃないよ?シグナルさんが言葉を濁した時点で気付いてあげよう。。。」


 冷静なジョージにつまみ上げられ、テーブルの上に置かれた。


「アルが興奮してしまって申し訳ないね。そういった分野に慣れていないのでね。僕からも一つ疑問点を聞いてもいいかな?」

 ジョージは、椅子に腰かけながら質問をした。


「もちろんです。」

 シグナルも椅子に腰かける。。。それに続いて、メイドさんも座った。


「その君の”血”は飲んでは効果がないのかな?君が血を搾り取らなければならないから、苦痛は伴うが、双方にとって、安全策だと思うんだが。。。アルが心配するような行為は魔界であっても、恋愛感情の元の方が問題にならないだろう?」


 ジョージの言葉に、メイドさんは顔を覆ってしまった。

(ジョージの方がえげつなく口に出してるじゃん!!)


「う~ん。どうなんでしょうか?両親から、同族を助ける術として教えられたのは、直接流し込む方法でしたので。。。考えた事も無かったですね。。。それが可能であるならば、それに越したことはありませんね。」

 シグナルが真剣な表情で頷く。



「それなら、そこにある、”レイマンゾ”の花をヴァンパイアの”血”で煮詰めるといいよ。」

 バルコニーから声がした。


「ジル!!!おかえり!!!」

 僕はテーブルからジルに飛びつく。


「アル。。。誰か死んでしまったの?」

 胸に飛びついた僕を撫でながら、ジルが言った。

「え?誰も死んでないけど?」


「だって。。。ヴァンパイアの”血”を与えるんだろう?」

「そうだけど。。。ヴァンパイアの”血”にそんな力があるの?」


 ジルが困惑の表情を浮かべる。

「え?何の話をしてたの?」

「え?ジルはどこから聞いてたの?」


 二人で首を傾げ、話をすり合わせた。


「あははは。。そういうことだったのか。。。それはごめんよ。。でも、それなら、さっき言った方法で多分大丈夫だから。ただ、”タイタンの力”が目覚めないといいけどね。」

「”タイタン”って巨人の?」


「そうそう。”アトラス族”は元は”巨神族タイタン”だったんだよ。竜族と並ぶ、世界の始まりからの種族だから、その後に生まれた魔物や人間の血は受入難かったんだよ。」

「でも、もう”タイタン”ではないんでしょ?」


「そう。”タイタン”の身体を無理に捨てた人達だからね。確か大きすぎる身体で起こす災害を嫌っていた人達がその巨身を捨てたんだよ。けど、その能力まで捨てたかは分からないな。だから、ヴァンパイアの”血”で覚醒でもしないといいけどなって話。」


 ジルは笑いながら話す。


「もしもってことなら、本人に話して、理解を得られるなら、試してもいいのかな?シグナルさんはどう思う?」

「私もその方法が有難いです。私の血が必要であれば、いくらでも取っていただいて構いませんので。それから、陛下。。。私の事は呼び捨てください。臣下なのですから。」


「そっか。うん。じゃ”シグナル”って呼ばせてもらうね。それと、無駄な血は流したくないから、必要最小限だけもらうね。」

 

「それはいいんだけどさ。白の国。。。先に済ませてでもいいんじゃないかな?あの王様、魔王軍がいなくなったことを、気にしてたよ?自分たちが失礼なことしたんじゃないかって。。。こっちは急ぎじゃないみたいだし、白の国に先に行ったら?」

 ジルから指摘を受ける。


「そうだった。。。また、忘れてた。。。。」


 

 新しい出来事が挟まると、つい予定を忘れる。。。

 悪い癖だ。。。



(あ~秘書が欲しいな。。。。)

(あははは。それくらいは、自分で頑張って。)


 一人心の声に、ジルのツッコミを受けながら、白の国の件を考えるのであった。


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