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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=牛鬼討伐編=
75/322

第74話  ~スライムVS牛魔王~


「グフッフフフッフ。」

 僕を見る牛魔王の金色の角は、ジルの血で赤く染まっている。


 ワナワナと怒りに震える身体を抑えるべく、僕は大きく息を吐き。。。

「おい、お前、何が目的だ?何が望みなんだ?どうしてこんなことするんだ!!!」

 口調が荒くなる。。。呼吸を整えた程度では、揺さぶられた感情など抑えることはできなかった。



「グフッフフフッフ。さっきもその龍に言ったがな。”魔王”に相応しき者は我のみ。。”魔王”は二人は要らぬのだ。魔界に君臨するのは我のみぞ!!!」

 声高らかに言い放つ。


 その傲岸不遜な態度に、腹立たしさを感じた。


「”魔王の力”は継承されたんだ!何も持たないお前が、”魔王”にはなれないだろう?」


「お前も龍も馬鹿なんだな?そんなもの、無くて良い。。。魔界に君臨すべきは、最強の力を持った者なのだ!!!支配力など、継承せぬでも屈服させればよい。」


 自分勝手も甚だしい。。。

 そんな理由で、魔界を蹂躙する言い訳になるはずがない。


「お前は”魔王”に相応しくない!!」


「グフフフッフフ。今の”魔王”と名乗る者の方が、相応しくないと思うがな。。。龍を寄こしたかと思えば、今度はスライムか。。。我は”牛魔王”であるぞ!舐められたものだな。」


 牛魔王の左右の手のひらそれぞれに、鬼火が浮かぶ。

 両手に出した鬼火を胸の前で統合し、巨大な塊にした。

 両手を頭の上まで上げると、そのまま、僕にめがけて鬼火を繰り出す。


 避けても、その鬼火は僕をロックオンしたかのように追尾してくる。

「ふん。ちょこまかと逃げ回るだけか?お前を捉えるまではその炎は消えぬぞ!」


 その言葉で、僕は止まり振り返る。

 鬼火が目の前に迫る。


 鬼火に向かって、風を送るように羽ばたきを始めると、氷風が吹きすさぶ。

 鬼火のスピードが落ち始めた。

 僕が羽ばたきを強くすると、風は暴風へと変わっていく。。。

 そして、風は徐々にうねり始め、鬼火を喰らうかのように包み込んだ。


「この程度の力で、僕を倒せるとでも思ったのか?」

 僕は何故か自信に満ちていた。

 さっきの氷風すら、どうやったのかも分からない。

 言葉を発したのが自分だと言うことは分かっている。


 だが。。。自分が自分でないかのようなのだ。。。

 怒りに震えながら、冷静でもある。身体は勝手に力を使う。

 自分の事を、ひどく歪に感じた。


「きっ貴様!!!その羽根。。。何者なんだ!!!」

 スライムからの反撃に初めて牛魔王がたじろぐ。。


(羽根がどうした?)

 僕は自分の羽を見る。

 身体に対しては大きすぎる羽根になっていた。

 そして、僕の深紅の身体の上に、黄色のオーラが覆う。

 まるで金色の羽のようだった。


「そんな事、どうだっていいだろ?」

 僕は吐き捨てるように言いながら、ゆっくりと牛魔王へ近づく。



 それを見た牛魔王は毒のジェルを身体中に溢れさせ、突進してくる。


「馬鹿の一つ覚えだな。」

 冷たく呟いて、僕は逡巡なく飛び出した。


 黄色い、オーラの残像が尾を帯び、まるで彗星のような姿で、牛魔王のみぞおちに刺さる。


「グッフウゥウウウ。」

 牛魔王は腹を抑えて呻く。


「どうした?”スライムごとき”なんだろ?人間でも倒せる最弱モンスターのスライムに負けるヤツが、”魔王”になるのか?」


 僕の言葉に牛魔王は怒り狂う。

「ちょこまかとする小さきモンスターを捕らえきれなかっただけだ。次はない。」


「戦いに言い訳をするなんてな。次が無いのはお前のほうだろ?だが僕は優しいんだ。お前の希望に沿ってやるよ。」

 僕はニヤリと笑い、身体に力を込める。


 うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 僕は雄たけびを上げた。


 そして牛魔王の角を掴む。。。。

 ん?掴んだぞ?あれ?

 僕に手があった。そして下を見れば足が。。。

 これが望みの力か?

 だが今は、そんな事どうだっていい。

 牛魔王を倒すのみ。


 両手にそれぞれ持った牛魔王の角に力を込めていく。。。

 バキィ~ン!!!


 凄まじい音を立てて、角が折れる。


「グアァァァッァァァァ!!!」

 牛魔王は倒れ、のたうちまわる。


 転げる牛魔王の腹を思い切り蹴り上げると、2メートルほど飛んだ。

「う。。。うぉあ。。。」


 僕は悠然と歩み寄り、牛魔王の頭を足で踏みつける。

「グアァッ!!!」

「これくらいで、許されると思っているのか?」



 屈辱に顔を歪めた牛魔王は、僕の足を掴み、どけようとしている。

 しかし、僕には関係のないことだ。

 折れた角の付け根にさらに足をねじ込む。


「ウガァァァ!!!」

「分かるか?それが痛みだ!それが苦しみだ!お前が身勝手な理由で蹂躙してきた魔界の者達の叫びだぁ!!」

 

 牛魔王と闘いを始めてから、ヤツが蹂躙してきた、村や集落の映像が、絶え間なく僕に入ってきていた。

 

 樹木妖精ドライアドの森を笑いながら焼き、

 逃げ惑うエルフを遊びがてらに狩る。

 ユニコーンの群れに入って、羽をもぎ、

 ケンタウロスを能力ごと喰らう。

 

 種族も何も関係なく、目についた者は全て蹂躙してきたようだ。


(許されることなんて、一つもない!!!)


 僕は牛魔王を足で抑えたまま、拳に氷を纏い、胸にパンチを叩き込む。


「お前がやってきたことは、こういうことだ!!!負けを認めてさっさと降伏しろ!!!」

「ふん。スライムごときに降伏するならば、死を選ぶわ!!!」


「チッ。分からないヤツだな。」

 僕は極小の雷雲を手のひらに作る。。。

 そしてそれを握りつぶした。


 バチバチバチッ!!!!

 雷雲の電気を拳に纏わせる。


「負けを認めろぉーー!!!」

 両の拳を同時に叩き込む。

「グハッァ。。。死んでも。。。降伏などしないっ!!!」


 牛魔王が苦しみながらも口から鬼火を繰り出した。

 僕はそれを顔面に受ける。

「ふっざけるなぁーーー!!!!」

 叫び、そしてその鬼火を力の限り吸い込む。


 身体の内側からも熱を感じる。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 拳を握り僕は哮り立つ。

 オーラは焔へと変わっていった。


 そして、僕を中心に焔は爆発を起こし、周辺の大地を削り取った。


 足元に居た牛魔王はぐったりとしているものの、炎への耐性があるため、死んではいない。。。


「おい!これが最後通告だ!!!降伏する気になったか?」

「しっ死んでも。。。こ、うふく、しない。。。」

 途切れ途切れに言葉を繋ぐ。


「そうか。残念だな。」

 僕が牛魔王に手を翳した時だった。


「おっお待ちくださいっ!!!!」

 離れたところから声が聞こえる。


「・・・・・。」

 僕は無言で、声がした方を見る。


 地面に這いつくばり、起き上がろうともがいている。

 僕は牛魔王の首を掴み、引き摺りながら、その方向へ歩いていく。


 近づくと、それは”牛魔”だった。

 ジルが最初に氷漬けにしたヤツだ。さっきの焔の爆発で、氷が溶けたようだ。


 僕の顔を見るなり、涙を流す。

「ぎ、牛魔王さまだけが、悪いんではないんです。」


 何か事情があるのだろうか?

 涙を見て、僕は少し冷静さを取り戻した。


「分かった。話があるなら、聞くだけ聞いてやるよ。」

「あぁ。。。ありがとうございます。」

 牛魔はひれ伏した。


 

 離れていたジルを呼び、話を聞くことにした。



 牛魔が話を始めると、おおよそコボルト達の話と似通っていた。


 牛鬼の暮らす地域はコボルトの集落から、随分離れていたが、同じ水脈を使っていたようだ。

 年々、水が少なくなり、今年に入ると井戸が涸れ果てたのだという。

 当然、領主への払いは難しくなった。



 牛鬼は、数多くの集落が存在し、1つの集落で100匹ほどが暮らす。

 4匹の進化固体、”牛魔”が誕生したのをきっかけに、さらに各地に点在する集落を地域で4分割し、牛魔が取り仕切ったそうだ。


 それにより、牛鬼たちは互いの集落の状況などを知ることが出来るようになり、助け合い暮らすようになった。


 そこへ、干ばつが来たのだ。

 ほぼすべての集落に同時に起きたため、食料などを分け合うことすら難しくなる。

 

 コボルト達よりも深刻だったのは、牛鬼の数であろう。。。

 周辺地域に1万頭以上いるのだ。

 比較的豊かな土地に暮らしていたとはいえ、干ばつの前にはどうすることもできない。

 領主からは見捨てられ、獣に近い種族。。。知恵など4匹の”牛魔”しか持ち合わせない。


 そして、危惧していた事態となる。

 飢餓により、バタバタと仲間が死んでゆく。2千頭ほどが、あっという間に死んでいった。

 もちろん死んでいくのは、子供や年寄りばかり。。。


 現状を憂いた1匹の”牛魔”が旅に出る。


 助けてくれる種族でもいい。

 皆が暮らせる新天地でもいい。

 多くは望まない。この現状を打破できればいいのだ。


 旅に出て暫くした頃。

 1匹のユニコーンに出会う。

 ユニコーンは賢く、話を聞いてくれた。

 だが、助けるどころか、暴言を吐いた。

「頭の悪い種族など、魔界にいなくてもいい。滅びるのが運命なのだろう。」と。


 ”牛魔”ははらわたが煮えくり返る思いがした。

 我を忘れ、ユニコーンに牙を剥く。。。


 気がついたときには、ユニコーンを倒し、その生き血を吸っていた。。。

 飢餓状態であったためだろうか。。。肉も貪り食う。


 そして。。。翠色の何かが見えた。。。が食べ進めるのを止めることができずに、その翠の物まで、飲み込んでしまった。

 ガリッ音がしたので、硬い物だったのだろう。。。



 飲み込んだ瞬間に劇的な変化が起きる。

 身体が熱くなり、全身が痺れる感覚。。。

 思わず床に倒れ込むと、今度は全身を貫く激痛が起きた。。。

 のたうち回り、叫び、そして疲れ果てて眠る。


 数時間後に目を覚ますと、身体はより一層大きくなったようだ。

 額の上程に、何か違和感を感じる。角だ!!

 上半身は人化している。

 下半身は漆黒の長い毛になっていた。艶めく毛並みが美しかった。

 そして、”牛魔”とは比較にならないほどの賢さもあった。


「あぁ。”牛魔王”へ進化したのか。。。」

 


 ”牛魔王”へと進化した”牛魔”は、仲間の元に急いで帰った。

 自分が”魔王”へとなれる可能性が出てきたからだ。


 牛鬼族から”魔王”が出れば、この飢饉も財力で凌げるだろう。。。


 だが、しかし、領主への怒りがあった。

 普段は搾り取るように魔王への供物を捧げさせ、取れないと判断すると、即座に切り捨てる領主が許せなかった。

 同じ魔界のモンスターであるのに、『頭が悪い種族は滅びる運命。』と言ったユニコーンも許せなかった。

 


 どうせなら、力を鼓舞しよう。ぐうの音も出ないほど、魔界に名を轟かせれば、あるいは”魔王になれるかも知れない。


 そんな考えからの”牛魔王”の行動だったのだ。。


 

「牛魔王さまは、我々種族全員を救うために、闘って来られたのであります。水が干上がり、食べ物もない集落には誰も置いておく事ができないので、全ての者を引き連れたのです。」

 涙を止めることもなく、”牛魔”が話を終えた。



「そうか。。。情状酌量の余地はあるな。。。だが、悪行までしていいはずはない。城に戻り、裁判にでもかけよう。まずは立ってくれ。」


 僕は牛魔王の首根っこを持ち上げるが、動く気配がない。


「仕方ない。今回だけだ。少しばかり傷を治そう。歩ける程度に」


 目を瞑り深呼吸をした。そして、回復魔法を練りながら、牛魔王の胸に手を置く。


「・・・・・・!!!!!」

 牛魔王が僕の腕を千切らんばかりに掴む。

 そして。。。。僕の回復魔法を吸収していくのだ。


 牛魔王はみるみる回復していく。。。

 だがその吸収が止まらないのだ。

 全ての傷が癒えると、回復魔法は行き場を失う。。。

 それでも吸収が止まることはない。


 徐々に牛魔王の身体が膨らむ。


「おい!やめろ!!それ以上は危険だ!!!」

 僕が手を振り解こうとするが、牛魔王の力は強く、離す気配はない。

 身体は構わず膨らみ続ける。


「ぐっふっふっふっふ。言ったであろう?負けを認めるのであれば、死んだ方がマシだと!!!!」


 僕の魔法力も、今だけは無限にあるかのように思えるほど溢れ、回復魔法を止めることができない。



 ドッッパッァァ~~ン!!!


 ついに限界を迎えた”牛魔王”の身体が、爆発し四散した。


「あぁぁぁぁ。牛魔王さま~~~。」

 牛魔は泣き崩れた。



 戦場に最後まで残ったのは、僕とジルと牛魔1匹、それと牛鬼が1000匹ほど。。。

 そして、牛魔王がいた場所には、翠宝王玉グリーンオーブが転がっていた。


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