表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=牛鬼討伐編=
73/322

第72話  ~青魔竜VS牛魔王 前編~


 ジルが魔法扉マギーゲートを抜けると、そこは戦場から少し離れた、山の中腹だった。

 戦場一帯が見渡せる。


「これは!!古代竜様。援軍は。。。」

 連隊長が歩み寄り、ジルの後ろのゲートを覗き込む。


「悪いね。僕一人だ。魔王軍の戦力も分からなくてね。”牛魔王”を相手にするなら、間違いなく闘うことのできる僕が適任かと思ってね。」


「古代竜様。直々に。。。恐れ多いことでございます。しかし。。。やはり”牛魔王”でしたか。。。。私の予測の甘さでこのようなことに。。申し訳ございません。」

 連隊長はジルの前に跪き、深々と頭を垂れた。


「いや。謝らなくてもいいよ。僕たちもまさか”牛魔王”に進化した個体がいるとは思わなかったしね。」



 ジルと連隊長は二言三言、言葉を交わし、頷き合う。

「それじゃ、そんな感じで。。万が一のことがあれば、魔王アルが向こうで見ているから、援軍をよこしてくれるはずさ。頼んだよ?」


「はい。ご命令通りに。。。御武運を!」



ジルは拳を握りしめ、咆哮する。


 うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!


 

 顕現するは、妖々までの紫光を放つ、”青魔竜”。

 制限無しの力の解放に、戦場が一瞬凍り付いた。



 その一瞬を見逃さず、ジルは雄たけびに『魔王軍撤退』の意志を乗せて吼える。

 グアァァァァァァァァァッ!!!


 牛鬼と闘っていた魔王軍の兵士達は、雄叫びを聞き、即時撤退を始めた。


 その姿に、”牛魔”の指揮する3部隊が動く。

「撤退を許すな!!!かかれぃ!!!」


 牛魔のかけ声に、牛鬼達の目の色が変わった。

 茶色いくすんだ目の色から、真っ赤に滾るような色へと変わり、それぞれが思うままに攻撃していたのが、統率され、軍団としての動きを見せ始めた。


 殿もいない、魔王軍の兵士達は、牛鬼たちの機動力に、戦力を奪われる。


 ジルが天を仰ぎ雷雲を呼ぶ。

 雷鳴が轟き、紫電が牛鬼たちをピンポイントで襲う。


 紫電は雨のように牛鬼たちに降り注いだ。


 牛鬼たちは右往左往し、潰走するかに思えた。

 しかし、牛魔王が雄たけびを上げると、なりふり構わず戦闘を継続する。


「厄介だな。特殊スキルか。。。」

 ジルは、牛鬼たちの本能から湧き出る恐怖を払拭する牛魔王の統率能力に呟く。


(連隊長くん。敵の数が多すぎる。。広範囲攻撃をすると、魔王軍の兵士を巻き込むことになるんだが。。。無差別攻撃は極力避けたい。)


 ジルは、連隊長の脳へ直接話しかける。


(そのようなお気遣いなど、魔物には無用ですが。。。しかし、お助けいただけるのであれば。。。そうですな。。。古代竜様は、伝説では天変地異を起こせるのだとか。。。)

(うん。いろいろできるよ?)


(では、マグマなどは?)

(もちろん!!)


(さすれば、マグマを。。。奴らも鬼火を操りますが、マグマまでの高熱耐性はないと思われます。我が軍の者達は、シャドーのようなガス系やゾンビ系が多く残っておりますので、連携させれば、致死率は下がるものと思います。)


(いいのかい?無傷とはいかないよ?)

(兵士たるもの、前線に出る時は常に死を覚悟するもの。まして魔王軍。その誇りを舐めていただいては困ります。)


(じゃあ。お言葉に甘えるよ。)

(もったいなきお言葉。。。では私は信号弾を打ち上げます。)


 連隊長は3種の信号弾を打ち上げる。≪連携≫、≪熱≫、≪地≫



 信号弾の炸裂に合わせ、ジルが大地を揺るがす。

 地面は隆起し、地割れを起こした。


 兵士達は、信号弾の意味を即座に読み取り、次の一手に備える。



 地割れした大地からはマグマが溢れ出し、容赦なくその上に居る者を飲み込んでいった。。。


 魔王軍の浮遊能力を持ったものは、飛翔できない者を抱え上げる。

 マミーは、牛鬼の背を渡る様に駆け、マグマを避けながら、まどいの息で牛鬼を混乱させる。

 ゴーストに抱え上げられたスカルナイトは、防御力降下魔法ルカナンで牛鬼の守備力を下げる。

 ガストは浮遊しながら、睡眠魔法ラリホーを唱えていく。



 信号弾の意味が分からない牛鬼は、構える事すらできずに、次々とマグマに飲み込まれていった。。。。



「なかなかいいね。」

 即席とはいえ、連携をとった魔王軍兵士達の働きぶりに、ジルは舌を巻く。


 溢れるマグマをかいくぐり、魔王軍兵士達は牛鬼の群れとの距離をとり始める。

 ジルは牛鬼と兵士の間に僅かにできた隙間に雷電を打ち込む。


 牛鬼はマグマと雷の挟撃に狼狽えた。

「怯むな~。いけ~!!!」

 3匹の牛魔が命を下すと、牛鬼は、仲間の焼けこげた死体を足場に、駆け回り、魔王軍を追撃した。


「しぶといな。。。指揮官の牛魔が邪魔だ。」

 ジルは牛魔に狙いを定める。


(まずは指揮官を潰しに行くよ。兵士達をお願いね。)

(承知しました。)


 ジルと連隊長は思念を飛ばし会話をする。



 禍々しく闘気を纏った竜が向かうは、右側面から指揮をする”牛魔”。




 ”牛鬼”は茶色い毛並み。牛の頭に、2本の角。。蜘蛛のような6本足の下半身を持つ。


 ”牛魔”に進化すると、毛並みは全身黒く、額にもう一本の大きな角が生える。それが指令機能を持つらしい。6本足の先端には、黒い爪が鈍く光る。


 

 ジルは戦場に着いてから、抜かりなく、観察をしていた。

 右端の”牛魔”が真っ先に全体の動きを決める役目。。。

 左端に陣取る”牛魔”は足りない部分を補う役目。。。

 そして中央”牛魔王”の前に立ちはだかる”牛魔”は、王を守る役目のようだった。



「まずは司令塔!!」

 ジルは大空から一気に右端の”牛魔”を目掛けて間合いを詰める。

 右の羽根から炎の風を。

 左の羽根から氷の粒を。


 羽ばたきながら、叩きつけるように風を送り込む。

「やはり、炎には耐性があるな。」


 牛魔のダメージはそれほどでもない。が周りを囲む”牛鬼”の表情が一変し、ジルを睨み付け、毒や炎を飛ばしてきた。


 ジルは凍える息を吐き出し、牛魔の盾になる牛鬼に対抗する。

 盾となった牛鬼は凍り付き、倒れていく。


 ”凍える息”が有効打となったことを確認し、ジルは吹雪を造る。

 氷雪魔法も織り交ぜ、司令塔”牛魔”を追いつめた。


「僕の勝ちだね。」

 そう呟いて、氷で造った檻をかぶせ、動けなくしたところで、牛魔を完全に凍らせた。



「まずは一匹。」

 

 だが、司令塔をやられた残り2匹の牛魔は冷静に判断をする。

 2匹は合流し、王の前に立ち塞がった。


 王を守っていた”牛魔”は特殊スキルを持っていたようで、即座に、土と毒で壁を作った。

 触れても、砕いても、毒を浴びる事になる。


 ジルは当然、毒に対する耐性を持っているが、無闇に近付く程、バカではない。他に何か罠を仕掛けられているかも分からないのだ。



 後ろに控える”牛魔王”その姿は。。。

 上半身の牛は、人化し、見た目は牛人といったところ。

 牛魔のように3本の角だが、額から生える角は金色だ。

 そして6本足を持つ蜘蛛の下半身は、漆黒の毛並み。

 足先の爪も金色に輝き、その面妖な肢体をさらにあやかしめいた雰囲気にする。



 牛魔王は玉座を神輿のように担がせ、余裕の笑みを浮かべている。


ドラゴンごときが、何か楽しませてくれるのか?」

 頬杖を突き、不敵な笑みでジルを見やる。


「あぁ。君はなぜこんなことをしているんだ?魔界を荒らす必要などないだろう?」

 ジルは牛魔王の笑みを不快に思いながらも問う。


「ふふん。魔王が交代したらしいな。次に魔王となるべきは我であった。相応しき者がいるということを知らしめ、そしてその座をいただく。。。それだけの事だ。」

 さも当然の事を何故聞くのだ。という空気だ。


「だが、魔王の継承はなされた。」


「どんな奴かは知らぬが、倒して奪うまで。まずは力を示すため、魔界を蹂躙する。」


「己を知らないというのは、これほどまでに醜いものとはな。。。」

 ジルは牛魔王を見つめ、しみじみと呟いた。


「貴様~~~!!!牛魔王様に向かって、なんという暴言を!!!」

 先にキレたのは、従う牛魔であった。

 毒の玉をジルに投げながら、突進してくる。


「悪いが、僕も君たちと同じ、王を守るものなんだよ。。。正真正銘の”魔王”をね。」

 ジルは言葉を終える前に、その2匹を足で押さえつけ、悶絶させる。


「王を守る”犬”がこれではね。。。力の差は歴然だろう?降伏を進めるよ。」

 ジルは気絶した牛魔を牛魔王の前に投げ転がす。

(挑発に乗ってくれるだろうか。。。)


「ふふん。面白い。ただのドラゴンではないのか?ならば我も、力の差を見せつけてくれようぞ!」



 ブオォォォォ~~~~ン!!!!

 玉座から悠然と降り立った、牛魔王が雄たけびを上げる。



 戦闘を継続していた牛鬼たちが、牛魔王の元へ集まり始める。

 

 牛魔王はジルが気絶させた”牛魔”を手に取ると、毒を吐きかけた。

 毒をかけられた、その肢体はみるみるうちに緑色のジェーリー状へと溶けていく。。。


 ジュルッ。ジュルジュルッ。。。。ゴクン。

 気味の悪い音を立てながら、牛魔王はそのジェリーマンを飲み始めた。


「うっぇっ。」

 その様子にジルは顔を顰める。



 一口飲み込むたびに、牛魔王の身体から、紫色の毒のジェルが汗のように滴り落ちる。

 2匹の”牛魔”を飲み干し終わるころには、牛魔王の足元は、紫色のジェルの水たまりになっていた。



 周りを注視すれば、牛鬼たちはこちらへ向かい、魔王軍は魔法扉マギーゲートへ向かっている。

 もう少しで、撤退が完了するだろう。

(よし。作戦は成功だな。連隊長の撤退完了の合図とともに、一気にカタを付けよう。)


 ジルは、魔王軍と牛鬼たちを引き離すために、挑発行為をしていたのだった。


(あと少し。。。)


 魔王軍の撤退完了まであと少し。。。。

 だが、その判断が遅れを取ることになった。




 最初の変化は唐突だった。


 牛魔王から漏れ出たジェルは、気付けば、かなり広範囲に広がっていた。

 500メートルほど離れた場所に、1匹目の牛鬼が到達する。


 牛鬼がジェルに触れた瞬間、身体が溶け落ちる。

 2匹目・・・3匹目・・・立て続けに牛鬼は毒に飲み込まれる。


 目の色が赤く支配色に染まる牛鬼たちは、その状況にも止まることなく毒の海へと進入する。


 牛魔王が出した紫色のジェルは、いつしか溶けた牛鬼の緑色のジェリーへと変容している。


(あと少し。。。)

 ジルがタイミングを見計らっていると、徐に牛魔王が地面に伏す。


(何をするんだ?)

 ジルはその姿を目で追う。


 

 ズズズズッズズゥゥ。。。

 牛魔王が、地面のジェルを飲み始めたのだ。


「グフフフッフフ。」

 奇妙な笑い声と、ジェルを啜る音だけが戦場に響く。


 

 ジルが気付いた時には遅かった。

 飲むたびに、牛魔王の身体が少しずつ大きくなっていたのだった。


 目に見えて大きくなった時には時すでに遅し。。。。

 牛鬼の3/1程が飲まれた後だった。

 

「しまった!!!融合とは!!!」

 ジルが叫び、凍てつく息を吐くも、牛魔王の身体はそれを弾き返す。

 雷電を落とすが、変化はない。

 そうしている間も牛魔王は大きくなっていく。



「融合はケンタウロスの能力だろ。。。」

 ジルが独り言をつぶやく。


「グフフフッフフ。そのケンタウロスを我は喰ったのよ。力は継承した。」

 地面に伏し、ジェルを飲みながら、光る眼でジルを見る。



「ちっ。面倒だな。」

 ジルは大地を割りながら、舌打ちをした。


風邪のため、次回の投稿がすこし遅れるかもしれません。


皆様も体調を崩さぬようご自愛ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございました。 小説家になろう 勝手にランキング ↑参加してみました。 クリックで応援していただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ