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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=牛鬼討伐編=
70/322

第69話  ~古代竜の告白 前編~


「僕は『古代竜』ではないんだ。」

「・・・・・・・っ!!!!」

 突然のジルの告白に、僕は動揺してしまった。


「いきなりこんな話。驚くよね?でも僕の中では、君と出会ってからずっと、考えていた事なんだ。」

「う、うん。」

 どうにも。。。相槌すら困る。。。


「君の力について、ずっと不思議だった。。。力も無いスライムが”世界樹の精”に認められたり、”魔王の力”を継承したり。。。いくらなんでもおかしいだろ?」

「それは、まぁ。」


「それでね。『サクラ』と君の関係性について考えてもみたけど、やっぱり納得するものではなかったよ。なんとか自分の気持ちを納めるために、あの話は、とりあえずの妥協点だったんだ。それで、もう少し時間をかけて、自分なりに調べていくつもりだったんだけど。。。」


「君がジョージを助けるために、僕を邪魔だったと感じた時、僕をオーラで弾き飛ばしたよね?その時に”もしかしたら”と思って、そして、君の夢の中の”白い竜”の話を盗み聞いて。。。話をした方がいいのかな。。。って思ったんだ。。。本当はずっと秘密にしておきたかったんだけど。。。」


 あまりのジルの肩の落とし方に、僕はいたたまれない気持ちになった。


「あのさ、ジル。。。君が言ってたじゃん。誰しも秘密の1つや2つあるんだって。だから、ジルが言いたくないことなら、ずっと秘密にしておけばいいよ。僕は気にしないからさ。」


「でも、これはアルに関わってくることだから。君に迷惑をかけているかもしれない。僕の話を聞いたら、きっとみんな友達でいてくれなくなるよ。。。僕には友達なんていなかったから、君を無理矢理に友達にして、そこから、君の友達も巻き込んで、仲良くなって。。。ホントに嬉しかった。楽しかったんだ。でも、やっぱり、隠し続けるわけにはいかない。特に君には。。。」


「だったら。なおさら。」


「ううん。だからだよ。大好きになった君にだからこそ。真実を打ち明けるべきなんだ。大丈夫。話を終えたら、姿を消すから。君が望む世界のために、これからは、全てを壊すようなことはしないからさ。安心してよ。」


「ジル。。。君が今から何を話そうとしているのかは、分からないけどさ。例え君が過去に何をしていようとも、今の君とは違うよ。僕は今の君だから、友達になったんだ。いっぱい助けてもらったり、一緒に笑ったりさ。あの時間が嘘なわけないじゃん。だから、姿を消すなんて言わないで。もしも僕が怒ったとしても、いなくなるのはダメだ!!友達なら喧嘩くらいするもんだよ?」


「うん。ありがと。。。でも。」


 ジルは聞き分け悪く、煮え切らない。

 絶対に友達やめるとか、ないからな。。。

 短い付き合いだけど、いいヤツってことは知っている。


 カプッッッ!!!!

 僕は無意識にジルの手首に噛みついていた。


「あ!!アル?何するんだよ?」

「フゴッ。ンン~~~。。」噛みついているから喋れない。

 伝わらないので、脳内で叫ぶ。

(絶対にいなくなるなんて、ダメだからな~~~!!!!)


「わかった。わかったから。。。」

 ジルの言葉を聞いて、僕はジルの手首から離れる。


「うわー!なんだよこれ~~~!!!」

 ジルの手首にくっきりと僕の歯形が付いている。。。

「ん?僕、歯なんてないんだけどな。。。ま、とりあえず、それが友達の印だ!!!ジルがもう僕と友達じゃないって言ったって、友達止めれないからな!!」


「ちょっ。。。アル。。。これ契約の紋章だよ!!!それもドラゴンの紋章だ!!!竜の僕にドラゴンの紋章って。。。」


「え?何???契約って何かな?」

 身に覚えがない。いつ契約したのだろう。。。


「だからさ、君が”友達”という契約を強く願ったんだろう?しかも”ドラゴン”の力を使ってさ。竜の僕によくつけたよ。」

 はぁぁぁぁ。とため息をついている。


「だから、僕の話を聞いてって言ったんだよ。。。とりあえず、契約はなされたから、君が嫌だって言うまでは、僕は君の友達だよ。。。契約なんかなくてもさ。。。」

 ブツブツと言っている。


 まぁ。いいか。友達でいられるなら。


「こうやって、君に”ドラゴンの力”が宿っているから、もう君には僕の話を聞く義務があるからね。」

 なぜか若干キレ気味に言われた。

「うん。。。。では、どうぞ。」



「まぁ。じゃあ、話を始めるけど。。。君が嫌だと思えば、いつでもやめるし、消えろと言われれば、いなくなる。君の希望に沿う気持ちであることは前提として、聞いて欲しい。」

「うん。」



---僕が生まれる前の話から。。。


 『古代竜』という呼び名は、『神』とも呼ばれた、僕の父のことなんだ。


 まぁ、父といっても、竜の祖である父は男性でも女性でもなかったんだろう。。。


 その頃はまだ、地上しかなくて。魔界は無かった。

 人間も魔物もモンスターもすべての生き物が、生物として未熟で、進化途上だった。


 竜種も父ひとり。でも、全ての力を持っていたそうなんだ。。。


 あふれる自然に対して、生物が少ない。

 まして、知能を持った生物など、人間と僅かな魔物やモンスター。。。


 人間は数も少なく、力も弱い。

 せめてもう少し、知恵や力があれば、進化の道も拓けるものを。と思ったそうだ。

 だが、むやみに力を与えるのは公平ではない。


 そして、自分だけが力を持っていることも問題であると。


 そこで、自分の力を分け与えた者を創造し、少しばかりの拠り所となるように。

 進化の妨げとならず、進化の多様化を促せればと。。。


 ある時、一匹の竜を生み出した。

 慈愛の竜、『黄天竜』を。


 黄天竜はその優しき心で、生き物たちを癒した。


 その力は、傷ついた者を癒し、時には死者を蘇らせることもあったそうなんだ。

 知恵を望む者には、僅かばかりの知恵を与える。

 力を欲する者には、僅かばかりの力を授ける。


 努力することの大切さを伝えるために、僅かな力と、きっかけを与えた。


 父の考えに従い、全ての者に公平になるよう、何度も同じ者が、その恩恵の力を受けぬようにすることを、殊の外、気を付けたそうだ。



 すると、黄天竜との出会いを有効に使ったものは進化を始める。

 少しずつ。少しずつ。年月をかけ、代替わりをし、随分と種族の多様化がなされた。


 文明ができ、武器や知恵により、権力がうまれ。。。

 数を増やした生き物たちは、争いを起こすようになった。


 生きるための弱肉強食の世界ではなく、欲の為の世界。

 世界はまだまだ広いのに、少しでも自分たちの領域テリトリーを増やすため、人間も魔物もモンスターも。。。醜い争いが始まり、父は心を痛めた。



 そして、魔界を作ることを決めたそうだ。

 力弱い人間に地上を与え、強くたくましい魔物やモンスターに魔界を与える。


 そして、それぞれの均衡を保つために、もう一匹の竜を生み出す。

 力の竜、『青魔竜』を。


 地上には『黄天竜』

 魔界には『青魔竜』


 それぞれがその力で見守ることになった。


 僕は『青魔竜』として、魔界へ行ったんだ。。。

 そして、姉の『黄天竜』は地上に残る。。。


 その差は歴然さ。

 今までの実績もあるしね。黄天竜は、それこそ人間から崇められる存在だった。

 奇跡だのなんだの。。ってね。

 魔物やモンスターも魔界へ行ったから、人間たちはそりゃもう安泰だし、その出来事すら、姉の力だと思ったようだよ?


 僕は生まれたてで、強大な力だけ。

 魔物やモンスターは元来、気が荒いからね。

 話し合いや慈愛では全く効果ないよ。


 僕に付与された”力”でねじ伏せるばかりさ。


 不思議な事に、慈愛で助けると崇め奉られるけど、力でねじ伏せると何故か下僕ができるんだよね?

 なんでだろ?

 知らない間に、僕は魔界の支配者になってたよ。


 それでも、しばらくは良かった。僕に戦いを挑む者が後を絶たなかったからね。

 けれど、それも長くは続かないさ。

 挑戦者がいなくなれば、やることもない。


 僕は未熟だったからね。

 ヒマになればやることも思いつかずに、人間界にいる姉が、大した事もせずに崇められているのが気に食わなくなった。


 僕の方が力があるのに。。。

 戦えば負けるはずない。。。

 なぜ僕だけ、こんな暗闇に押し込められるんだ。。。


 その時の僕はそうやっかみを感じるようになったんだ。

 今思えばくだらないんだけどさ。その時にはそれしか考えられなくなってた。



 地上へ赴き、姉を見つけ出す。


 姉を見つけた時、人間が一緒にいた。

 その人間から出ている、姉の力が一つでは無いことが感じられた。


 父の言いつけを守らず、2度に渡りそいつに恩恵を与えたのが分かって、僕は嬉しくなったよ。

 こいつは姉のお気に入り。殺してやれば、いつも穏やかですましている姉がどんな顔をするだろうってね。


 少しでも、憂さ晴らしをしたかった。

 その人間には、別に何も思っていなかったけど、姉のゆがむ顔が見たくて、残虐に殺すことにしたんだ。

  

 致命傷を与えないようにそいつを甚振る。

 すると、姉は助けようとそいつを回復させる。

 そして僕はまた甚振る。

 

 姉とすれば、助けたい一心だったのだろう。

 だが、人間にしてみたら、堪らないだろう?

 苦しみが繰り返されるんだから。


 僕としては楽しくてしょうがなかったよ。

 そのうちに、人間が姉に懇願したんだ。

「もう、力を使わないでくれ。」って。


 そしたら、姉はどうしたと思う?

 そいつを庇う様に覆いかぶさった。


 自分の身を挺してでも助けたいだなんて。

 なにをいい子ぶっているのかと、笑ったよ。


 そして、そこまでするならと。僕は姉を突き飛ばし、人間を殺した。

 傷つけ、毒を吐き、凍らせた。致命傷を与えないように、気を失わせないように注意しながらね。

 

 姉が泣き叫ぶのを聞いて、僕は満足感で一杯になり、そして焼き殺した。



 逆上した姉を見た時、僕の気分は高揚したよ。

 ただ、気に入らない姉から、地上を奪うだけのつもりが、姉に得も言われぬ気持ちを味あわせてやれたんだから。


 そして、僕と姉の戦いが始まった。

 怒りに狂った姉は、想像以上に強かったよ。

 何せ、常に力をセーブしていたんだから。

 僕が見ていたのは、力をセーブし、僅かな力を生き物たちに与える姉だったんだ。


 そのセーブしていた力を自らに全力で使う。。。

 自らに回復し、自らに力を与える。

 姉の望み通りの力を自らに付与されては、いくら力の化身とはいえ、苦戦を強いられた。


 三日三晩の死闘の上、地上に立っていたのは僕だった。

 生まれ持った能力の方が、後付けの能力より勝るのは当然だった。


 周辺の大地は消し飛び、地形が変わっていた。


 僕は瀕死になって転がっている姉を見て、晴れやかな気分となっていた。

 それでも僕の野心は収まらなかった。


 どうせなら、この能力も欲しいと思ってしまった。

 それならば、生きている間に継承せねば。。。と。


 そして僕は姉を食べたんだ。


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