第69話 ~古代竜の告白 前編~
「僕は『古代竜』ではないんだ。」
「・・・・・・・っ!!!!」
突然のジルの告白に、僕は動揺してしまった。
「いきなりこんな話。驚くよね?でも僕の中では、君と出会ってからずっと、考えていた事なんだ。」
「う、うん。」
どうにも。。。相槌すら困る。。。
「君の力について、ずっと不思議だった。。。力も無いスライムが”世界樹の精”に認められたり、”魔王の力”を継承したり。。。いくらなんでもおかしいだろ?」
「それは、まぁ。」
「それでね。『サクラ』と君の関係性について考えてもみたけど、やっぱり納得するものではなかったよ。なんとか自分の気持ちを納めるために、あの話は、とりあえずの妥協点だったんだ。それで、もう少し時間をかけて、自分なりに調べていくつもりだったんだけど。。。」
「君がジョージを助けるために、僕を邪魔だったと感じた時、僕をオーラで弾き飛ばしたよね?その時に”もしかしたら”と思って、そして、君の夢の中の”白い竜”の話を盗み聞いて。。。話をした方がいいのかな。。。って思ったんだ。。。本当はずっと秘密にしておきたかったんだけど。。。」
あまりのジルの肩の落とし方に、僕はいたたまれない気持ちになった。
「あのさ、ジル。。。君が言ってたじゃん。誰しも秘密の1つや2つあるんだって。だから、ジルが言いたくないことなら、ずっと秘密にしておけばいいよ。僕は気にしないからさ。」
「でも、これはアルに関わってくることだから。君に迷惑をかけているかもしれない。僕の話を聞いたら、きっとみんな友達でいてくれなくなるよ。。。僕には友達なんていなかったから、君を無理矢理に友達にして、そこから、君の友達も巻き込んで、仲良くなって。。。ホントに嬉しかった。楽しかったんだ。でも、やっぱり、隠し続けるわけにはいかない。特に君には。。。」
「だったら。なおさら。」
「ううん。だからだよ。大好きになった君にだからこそ。真実を打ち明けるべきなんだ。大丈夫。話を終えたら、姿を消すから。君が望む世界のために、これからは、全てを壊すようなことはしないからさ。安心してよ。」
「ジル。。。君が今から何を話そうとしているのかは、分からないけどさ。例え君が過去に何をしていようとも、今の君とは違うよ。僕は今の君だから、友達になったんだ。いっぱい助けてもらったり、一緒に笑ったりさ。あの時間が嘘なわけないじゃん。だから、姿を消すなんて言わないで。もしも僕が怒ったとしても、いなくなるのはダメだ!!友達なら喧嘩くらいするもんだよ?」
「うん。ありがと。。。でも。」
ジルは聞き分け悪く、煮え切らない。
絶対に友達やめるとか、ないからな。。。
短い付き合いだけど、いいヤツってことは知っている。
カプッッッ!!!!
僕は無意識にジルの手首に噛みついていた。
「あ!!アル?何するんだよ?」
「フゴッ。ンン~~~。。」噛みついているから喋れない。
伝わらないので、脳内で叫ぶ。
(絶対にいなくなるなんて、ダメだからな~~~!!!!)
「わかった。わかったから。。。」
ジルの言葉を聞いて、僕はジルの手首から離れる。
「うわー!なんだよこれ~~~!!!」
ジルの手首にくっきりと僕の歯形が付いている。。。
「ん?僕、歯なんてないんだけどな。。。ま、とりあえず、それが友達の印だ!!!ジルがもう僕と友達じゃないって言ったって、友達止めれないからな!!」
「ちょっ。。。アル。。。これ契約の紋章だよ!!!それも龍の紋章だ!!!竜の僕に龍の紋章って。。。」
「え?何???契約って何かな?」
身に覚えがない。いつ契約したのだろう。。。
「だからさ、君が”友達”という契約を強く願ったんだろう?しかも”龍”の力を使ってさ。竜の僕によくつけたよ。」
はぁぁぁぁ。とため息をついている。
「だから、僕の話を聞いてって言ったんだよ。。。とりあえず、契約はなされたから、君が嫌だって言うまでは、僕は君の友達だよ。。。契約なんかなくてもさ。。。」
ブツブツと言っている。
まぁ。いいか。友達でいられるなら。
「こうやって、君に”龍の力”が宿っているから、もう君には僕の話を聞く義務があるからね。」
なぜか若干キレ気味に言われた。
「うん。。。。では、どうぞ。」
「まぁ。じゃあ、話を始めるけど。。。君が嫌だと思えば、いつでもやめるし、消えろと言われれば、いなくなる。君の希望に沿う気持ちであることは前提として、聞いて欲しい。」
「うん。」
---僕が生まれる前の話から。。。
『古代竜』という呼び名は、『神』とも呼ばれた、僕の父のことなんだ。
まぁ、父といっても、竜の祖である父は男性でも女性でもなかったんだろう。。。
その頃はまだ、地上しかなくて。魔界は無かった。
人間も魔物もモンスターもすべての生き物が、生物として未熟で、進化途上だった。
竜種も父ひとり。でも、全ての力を持っていたそうなんだ。。。
あふれる自然に対して、生物が少ない。
まして、知能を持った生物など、人間と僅かな魔物やモンスター。。。
人間は数も少なく、力も弱い。
せめてもう少し、知恵や力があれば、進化の道も拓けるものを。と思ったそうだ。
だが、むやみに力を与えるのは公平ではない。
そして、自分だけが力を持っていることも問題であると。
そこで、自分の力を分け与えた者を創造し、少しばかりの拠り所となるように。
進化の妨げとならず、進化の多様化を促せればと。。。
ある時、一匹の竜を生み出した。
慈愛の竜、『黄天竜』を。
黄天竜はその優しき心で、生き物たちを癒した。
その力は、傷ついた者を癒し、時には死者を蘇らせることもあったそうなんだ。
知恵を望む者には、僅かばかりの知恵を与える。
力を欲する者には、僅かばかりの力を授ける。
努力することの大切さを伝えるために、僅かな力と、きっかけを与えた。
父の考えに従い、全ての者に公平になるよう、何度も同じ者が、その恩恵の力を受けぬようにすることを、殊の外、気を付けたそうだ。
すると、黄天竜との出会いを有効に使ったものは進化を始める。
少しずつ。少しずつ。年月をかけ、代替わりをし、随分と種族の多様化がなされた。
文明ができ、武器や知恵により、権力がうまれ。。。
数を増やした生き物たちは、争いを起こすようになった。
生きるための弱肉強食の世界ではなく、欲の為の世界。
世界はまだまだ広いのに、少しでも自分たちの領域を増やすため、人間も魔物もモンスターも。。。醜い争いが始まり、父は心を痛めた。
そして、魔界を作ることを決めたそうだ。
力弱い人間に地上を与え、強くたくましい魔物やモンスターに魔界を与える。
そして、それぞれの均衡を保つために、もう一匹の竜を生み出す。
力の竜、『青魔竜』を。
地上には『黄天竜』
魔界には『青魔竜』
それぞれがその力で見守ることになった。
僕は『青魔竜』として、魔界へ行ったんだ。。。
そして、姉の『黄天竜』は地上に残る。。。
その差は歴然さ。
今までの実績もあるしね。黄天竜は、それこそ人間から崇められる存在だった。
奇跡だのなんだの。。ってね。
魔物やモンスターも魔界へ行ったから、人間たちはそりゃもう安泰だし、その出来事すら、姉の力だと思ったようだよ?
僕は生まれたてで、強大な力だけ。
魔物やモンスターは元来、気が荒いからね。
話し合いや慈愛では全く効果ないよ。
僕に付与された”力”でねじ伏せるばかりさ。
不思議な事に、慈愛で助けると崇め奉られるけど、力でねじ伏せると何故か下僕ができるんだよね?
なんでだろ?
知らない間に、僕は魔界の支配者になってたよ。
それでも、しばらくは良かった。僕に戦いを挑む者が後を絶たなかったからね。
けれど、それも長くは続かないさ。
挑戦者がいなくなれば、やることもない。
僕は未熟だったからね。
ヒマになればやることも思いつかずに、人間界にいる姉が、大した事もせずに崇められているのが気に食わなくなった。
僕の方が力があるのに。。。
戦えば負けるはずない。。。
なぜ僕だけ、こんな暗闇に押し込められるんだ。。。
その時の僕はそうやっかみを感じるようになったんだ。
今思えばくだらないんだけどさ。その時にはそれしか考えられなくなってた。
地上へ赴き、姉を見つけ出す。
姉を見つけた時、人間が一緒にいた。
その人間から出ている、姉の力が一つでは無いことが感じられた。
父の言いつけを守らず、2度に渡りそいつに恩恵を与えたのが分かって、僕は嬉しくなったよ。
こいつは姉のお気に入り。殺してやれば、いつも穏やかですましている姉がどんな顔をするだろうってね。
少しでも、憂さ晴らしをしたかった。
その人間には、別に何も思っていなかったけど、姉のゆがむ顔が見たくて、残虐に殺すことにしたんだ。
致命傷を与えないようにそいつを甚振る。
すると、姉は助けようとそいつを回復させる。
そして僕はまた甚振る。
姉とすれば、助けたい一心だったのだろう。
だが、人間にしてみたら、堪らないだろう?
苦しみが繰り返されるんだから。
僕としては楽しくてしょうがなかったよ。
そのうちに、人間が姉に懇願したんだ。
「もう、力を使わないでくれ。」って。
そしたら、姉はどうしたと思う?
そいつを庇う様に覆いかぶさった。
自分の身を挺してでも助けたいだなんて。
なにをいい子ぶっているのかと、笑ったよ。
そして、そこまでするならと。僕は姉を突き飛ばし、人間を殺した。
傷つけ、毒を吐き、凍らせた。致命傷を与えないように、気を失わせないように注意しながらね。
姉が泣き叫ぶのを聞いて、僕は満足感で一杯になり、そして焼き殺した。
逆上した姉を見た時、僕の気分は高揚したよ。
ただ、気に入らない姉から、地上を奪うだけのつもりが、姉に得も言われぬ気持ちを味あわせてやれたんだから。
そして、僕と姉の戦いが始まった。
怒りに狂った姉は、想像以上に強かったよ。
何せ、常に力をセーブしていたんだから。
僕が見ていたのは、力をセーブし、僅かな力を生き物たちに与える姉だったんだ。
そのセーブしていた力を自らに全力で使う。。。
自らに回復し、自らに力を与える。
姉の望み通りの力を自らに付与されては、いくら力の化身とはいえ、苦戦を強いられた。
三日三晩の死闘の上、地上に立っていたのは僕だった。
生まれ持った能力の方が、後付けの能力より勝るのは当然だった。
周辺の大地は消し飛び、地形が変わっていた。
僕は瀕死になって転がっている姉を見て、晴れやかな気分となっていた。
それでも僕の野心は収まらなかった。
どうせなら、この能力も欲しいと思ってしまった。
それならば、生きている間に継承せねば。。。と。
そして僕は姉を食べたんだ。




