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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=牛鬼討伐編=
69/322

第68話  ~スライムの能力~


「はぁぁぁぁ。」

 僕はカレンに起こった出来事に溜息をついた。


「アル?これが君の作った光の力なんだよ?」

 ジョージが言った。


「カレンは。。。どうして?」

 僕には何がどうなっているのか分からない。


 彼女は何が起きるかも聞かされないで連れてこられたようだった。

 カレンの気持ちを優先させるべきではなかったのか?

 僕は心の中で葛藤した。


「アル。。。それは違うんだよ?」

 ジルが僕の心を読み取ったようだ。

「どうして?カレンの気持ちを聞いてからでも遅くなかったでしょ?それに、これはどうなっているの?」

 困惑の気持ちを伝える。


「それこそが、奇跡の力の答えなんだよ?ただ単に、傷や体力などが戻る訳じゃない。シエイラの身体が定着したことだって、理由が付かないだろう?この力は、その者が望んだ姿。それを手助けする力のようなんだ。」

「・・・・・・?」

 説明されても、ピンと来ない。


「だからね?傷ついた者は、それが癒えるのを願った。疲れ果てた者は体力の回復を望んだ。シエイラは常にダルガの不安を消したかった。そしてね。。。。」

 ジルは一旦言葉を区切り。「ダルガ。。。」と呼ぶ。


「うむ。」

 とダルガの声がしたが、それはジョージのオリハルコンの剣からではなく、ジルの背後からだった。


「え?どこ?」

 僕はオリハルコンの剣と、ジルの背後を交互に見る。


 ジルの背後から顔を出したのは。。。

 ”シャドー”だった。


「ワシは、オリハルコンの剣に魂が宿ってしまってから、ずっと悲しく思っておった。剣のままでは、シエイラが持てない。懐中時計になれば、ワシの意識が出せない。。。どんな姿であっても、一緒にいたかったのじゃ。」


「ダルガの魂が、オリハルコンの剣と分離して、尚かつ、器がないのに、霧散せず消滅せず。シャドーとして身体を維持した時に、気付いたんだ。アルの力は”治す”力ではなかったんだな。って。」

 ジルが静かに話をする。


「いつも、君がみんなを治すとき、どう思ってる?『治したい』じゃなかった?君の想いと、《世界樹》関係のアイテムの力が重なって、今まで君の能力に気付かなかった。。。でも、思い出してごらん?一番最初に君がオーラを纏ったときのこと。。。」


「えーと。いつかな。。。銀狼シルバーウルフの時かな。。。」


「そう。ホセの話では、君が銀狼シルバーウルフに突撃した時だった。と。。。そして、その時の君は身体が震えるほど感情的になってた。ただのスライムがピック1本で、銀狼シルバーウルフに突撃して、致命傷を与えるなど、奇跡が起きたって無理な話だよ?」


「・・・・・。」


「そして、ホセが言ってたんだ。君が倒した銀狼シルバーウルフの傷口から、白い炎のようなものが吹き出したって。そして、その白い炎が銀狼シルバーウルフの身体を包み込むと、そいつは動かなくなった。ってね。その白い炎こそが、君のオーラだったんだ。」


「その時、君はジョージを助ける事を願ったのだろう?それが、銀狼シルバーウルフを倒すことだった。その願いを助けるように、銀狼シルバーウルフを凌ぐ戦闘力が付き、それでも足りない分は白い炎となって、銀狼シルバーウルフの息の根を止めた。」


「そのあとの事は、良く分かるだろう?オーラは常に、君の感情に比例するように、その力も強くなる。だが、過剰な力を使えば、当然反動がきてしまう。眠ってしまったり、それ以上の場合は、身体を削って力を補充し、気付けば、身体が縮む事態になっていた。。。そんなとこじゃないかな?」



「でも。それなら、カレンは身体を治したいって思ってたのかな。。。」

「いいえ。違うわ。私、身体を気にしたことない。」

 カレンは目覚めていたようだ。

 起きあがろうとして、いつもと違う身体の動きに、慣れず、リリィの腕から落ちてしまう。


「生まれた時から、この身体なの。。。不便だなと思うことはあっても、他の人の”普通”が分からないんだもの。比べようがないわ。。。だから、今の話。。。不思議なの。。。」

 カレンは自分の身体に起きた出来事に戸惑っていた。


「君が願っていたことは、身体の事ではないよね?きっと、君の望みに合わせて、身体がその姿になったんだと思うよ?」

 ジルがそう伝えると、ジョージがその続きを引き継ぐ。


「カレン?君は僕に話してくれたよね?サーカス団には仲間がいて、みんなの言葉は聞けないけれど、ホセが通訳してくれるし、それが無くても、みんなの優しさが伝わる良い場所だって。」

「ええ。」


「だけど、いつか、機会があるならば、勉強をしてみたいと話してくれたね?みんなと一緒に旅をする中で、人間と違い粗雑に扱われ、病気やケガも放置されがちで、それによって死んでゆく仲間がいることが悲しいと。獣医とまでは欲は言わないけれど、多少なりとも知識や技術を学んで、仲間たちに役立てたい。と。」

 ジョージの話に、カレンは黙って頷く。


「でもね。君の身体を調べて分かったんだが、肩にいた君の結合双生児。。。あの子は大きすぎたんだ。脳があるわけではなく、言いにくいんだが、肉塊。。いや腫瘍のようになっていてね。君の心臓を圧迫していた。そして、身体の関節や筋肉は変形萎縮が進んでいた。常に仰向けの四つん這いで生活していたために、内臓にも負担がかかって。。。いつ最悪の事態が起きても不思議ではなかったんだよ?」


「そんなことが。。。」

 カレンは驚きを隠せないでいた。。。自分の身体とはいえ、そんなことになっているとは思っていなかったのだろう。


「それでね。君の”勉強したい”、”仲間の役に立ちたい”という気持ちが、命の危険にさらされた部分を変化させたのだと思う。。。黙って連れてきてしまったことは謝るけれど、僕たちとしても、どこまで、何が起きるか分からなくてね。賭けだったんだ。」


「カレンの真っすぐな気持ちと、アルの力があったら、絶対悪い方にはいかへんからって。俺が頼んだんや。結果オーライやろ?笑ってくれ。」

 ホセがカレンの肩を撫でる。


「ん。ん。」

 カレンは涙で顔を濡らしながら、噛み締めるように頷く。

「ありがとう。」

 涙にむせびながら発した言葉には、感涙と笑顔が添えられていた。



「困ったわ。上手く動けない。。。自分の身体じゃないみたいで。。。」

 関節などが逆になってしまっていた部分もあったために、カレンは動けないでいた。


「急ぐことがあるわけでもない。もう少しここで、ゆっくりしようではないか。」

 シャドーのダルガがシエイラの膝の上でゴロゴロしていた。


 感動の場面が台無しだな。。。


「ん?んん?」

 そして気づく。。。シャドーなのに、シエイラに触れているようだ。


「あの~ダルガさん?なんで、シャドーなのに、シエイラさんといちゃつけるんですかね~?」

「はっ!アルよ。お前はバカなのか?”どんな姿でも”とは言っても、シエイラに触れられないような願いをするわけあるまい?ワシは元魔王じゃぞ?シャドーになりそうだと分かった時点で、ガス状態になることは避けねばならぬ。何が何でも固体化させるくらいのことはするに決まっておるであろうが!!!気合じゃ。気合!!!」


 いや。当然みたいに言ってるけど、そんなことできるの?てか、気合で何とかなるものなのだろうか。。。

 若干バカにされたのが不満だな。どちらかといえば、僕が常識人、ダルガは逸脱しているんだから。



(とりあえずは、みんな悪い方向にいった訳ではなさそうで良かったな。)

 僕は目の前の仲間たちを眺めながら、ごろんと転がった。


 空に浮かぶ月はもうほとんど消えかけていた。

 カレンに力を使った為なのだろう。。。


 そして、夢と現実を考える。

 僕が見た夢と、ジルが話してくれた現実。

 重なるようで。。。。

 僕から実際に出たオーラの軌道は、夢に出た竜の軌道と酷似している。


 僕は途中から記憶がないが、夢では最後までを見た。


 どこからが現実でどこからが夢で。。。そしてそれに意味はあるのだろうか。。。

 白い竜。。。


(アル?勝手に入ってごめん。二人だけで少し話をしたいんだけど。。。)


 ジルが話しかけて来た。その声が少し曇っているのが気になる。


(うん。どうした?)

(できれば、僕の方に来てくれないかな?)


(え?どういうこと?)

(他の人には聞かれたくないんだ。君の心の中ではダルガに聞かれるしね。それに、ここは魔界だから。他にも、入り込む能力を持った者がいるかもしれないから。あの日みたいに、僕の精神世界に来て欲しいんだ。)


(ワシはそんな失礼な事はせぬ。ま、でも秘匿したいのであれば、精神世界であろうな。)


 ちゃっかり、ダルガが参戦してきた。。。

 しかし、ダルガの勧めでもあるなら、ジルの元へ行こう。


(わかった。でも、行き方が分からないけど。)

(大丈夫。僕が引き込むから。)


 脳内での話を終えると、ジルはジョージに身体を向ける。

「ジョージ。ちょっとアルを借りるよ?しばらく僕とアルが眠ってしまうだろうから、よろしくね。」


「あ。あぁ。分かった。だが、緊急の際は起きるのだろうか?」

「うん。その時は僕を起こして。」

「了解だ。」


 そして、僕はジルの精神世界へと引き込まれた。


 あの時と同じ、水晶に囲まれた美しい洞窟。


 その真ん中には、あの日の大きな水晶ではなく、ジルがいた。


「ごめんよ。急に。」

「ううん。いいよ。」


「さっき、君が考え込んでいただろう?その時には、僕は君の心に入り込んでいたんだ。。。黙って盗み見てごめん。本当は黙っていようかとも思ったんだけど。。。夢の内容が気になってしまって。」


 何?僕の心に入り込むだと?そんな芸当ができるのか?

 ということは、今までも、ちょいちょい頭の中を見られていたのだろうか?

 ちょっと恥ずかしいな。


「ちょっと、気になる点がいくつかあるけれども。。。とりあえず、そこはいいや。僕の夢って、どいうことかな?」

 ここは大人の対応を見せよう。本題の方が気になるから。


「うん。その辺りはいろいろごめん。あとで諸々謝罪するよ。それでね。。。」

「ちょ~っと待った~~~~!!!!」


「え?」

「あのさ、気になる所を、あえて大人の対応として、本題に入ってもらおうとしてるのにさ、”いろいろ”とか”諸々”とかさ、すっごい気になるんですけど。謝るような何を見たの?僕のどの辺を覗いたの?」


「え?気になる?そんな大したことじゃないよ?僕はさ、古代竜だから。ちょっと能力が高いんだよ。。。仕方ないだろ?ダルガみたいに思考をちょっと読み取るって感じじゃなくてさ。君が物思いに耽ってたりすると、つい、なんだろうなぁ。って見ちゃうくらいだよ。」


「えーーーーー!!!!それって。それってさ。どこまで見えちゃうんだよ。大問題だよ!!!」

「そんな大したことないって。結構ツッコミ入れてるなー。とか、なんだかんだ言ってもジョージの事を大切に思ってるなぁとかさ。ちゃんと表面上は”さん”付けだけど、心の中じゃ呼び捨てかよ。とか。微笑ましく見てるだけだよ~。君が何か特別に秘密を持ってるみたいだけど、そういうのは見れないんだ。本気を出したら見えるのかもしれないけどさ。ま、めんどくさいし。秘密の一つや二つ。誰にでもあるしね。それに、全部見てしまったら、面白くないだろ?」


 はぁぁぁぁ。秘密か。サクラの事だな。その点は良かったが。。。だが!

「あのさ、結構問題だよね?あーもう恥ずかしいってレベルじゃないじゃん!!」


「ま、しょうがないよ!僕の溢れる才能が罪なんだよ。僕自身はあんまり見ないように自重してるよ?」

「ほぉ?じゃ、次回ゆっくりと”自重”という言葉について語り合おうか。。。」

 

 ”自重”。。。それぞれの主観だと、こんなにも感覚にズレが生じるものとは。。。

 そしてさりげなく才能を自慢されたのか。。。

 納得はできるわけもないが。。。


「もういいや。今度こそ、その件は置いておこう。埒が明かないから。。それで?」


「うん。実は。。。僕は『古代竜』ではないんだ。。。」



 ジルが、とんでもないことを告白し始めた。


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