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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新魔王誕生編=
62/322

第62話  ~オリハルコンの剣~


「なんか。。。頭使ったら。。。お腹すいたんですけど。。。」

 ふと空腹を感じた。


「あら?そんな時間ね。アルちゃんはリュウセイ君がお気に入りだったわよね?作ってもらう?」

 シエイラが気を利かせてくれる。

「うん!!!でも、急に言ったら迷惑じゃないかな?」


「ふふっ。ここの厨房は24時間いつでも大丈夫よ?モンスターの中には夜行性の子達もいるから。。。それにアルちゃん、”魔王”なのよ?どんなワガママも通るわ。」

 シエイラはメイドを呼ぶと、耳打ちした。


「皆さんお疲れでしょうし、準備ができたら、ここに運んでもらうようにしたけれど、良かったかしら?」

「えぇ。もちろん。お心遣い感謝いたします。」

 ジョージが優雅に会釈する。



 執事服に身を包んだ魔人たちが、テーブルなどを運び入れ、手際よくテーブルセッティングを行っていく。



 僕たちもやることもないので、執事に邪魔にならないように、部屋を案内する。

「ねぇねぇ。見て。この絨毯、職人さんの手作りで、150年もかかって作ってもらったんだって。」

「この玉座の肘掛けを見てよ。宝王玉オーブが入ってるんだ。」

「ソファーの毛皮、柔らかいでしょ。冬兎ヒエムスラビットの毛なんだって。」


 ここに初めて来たとき、魔王ダルガに案内してもらったように、ジョージ達に見せてまわる。


 あの時の魔王ダルガを見て、子供が友達を初めて家に連れてきたときのようだ。と笑って見ていたが、いざ、自分が案内するとなるとテンションが上がる。

 僕が集めた物でもないのに、なんだか自慢気になってしまう。


「この水槽の中にはね。すっごい綺麗な魔人魚セイレーンがいるんだよ。。。ねぇソフィア。出てきてよ。友達を連れてきたんだ。」

 

 流木の陰から、ヒョコッと顔を出して、こちらの様子を窺っている。


「この魚も綺麗だね。なんていう名前の魚なのかな?」

 ジョージが水槽を覗き込む。

「これ魔界魚の稚魚なんだって。」


 僕が説明をしていると、赤いスタンドカラーのシャツを着た、魔人魚セイレーンのソフィアが、ダンスを踊るように華麗に泳いできた。

「へぇ。とっても美しいね。」

 

 マズイ。ジョージがイケメンスマイルを出しているな。。。

 ソフィアは水槽の縁に飛び出すと、水をフルッと落とし、尾びれを足にする。

 スタンドカラーのシャツは、チャイナドレスへと変わり。足にはパンプスを履いていた。


「魔人魚の(セイレーン)のソフィアです。はじめまして。」

 めっちゃ可愛らしく、ジョージに向けて挨拶をする。

 隣にいるホセは完全無視だ。


「僕はジョージだよ?よろしくね。小さくてかわいいお嬢さん。」

 そう言って、ジョージは人差し指を出す。

 ソフィアは顔を真っ赤にして、その指と握手をした。


「なんや。俺の事は眼中にあらへんな。ま、ジョージに勝てるわけあらへんな。」

「だよねー。いつもイケメンスマイルでどうにかなると思ってるよねー。やだね。自覚してるイケメンってさ。イヤミだよね~。」

 僕とホセは、ジョージ達をからかうように、会話をする。


「ふふ。。ヤキモチを焼いてくれるのかい?君たちもとっても魅力的だよ?」

 ジョージが笑顔で僕とホセの頭を撫でる。


「アル。このドレス。ありがと。あんたがダルガさまに言ってくれたって。。。でも、あんたが魔王ってのは、まだ認めないわ。あんたのペットってのは腑に落ちないから。」


 素直にお礼を言ってくれたと思ったのに。もしかして、ツンデレなのか?僕はそんな属性持ってないから、萌えないし、どちらかというと腹立つな。


「君は素直にお礼の言えるとても素晴らしい子なんだね?」

 ジョージはソフィアをまず褒めてから、続ける。

「アルは、誰の事も”ペット”なんて思わないよ?君の事はきっと友達だと思ったから、魔王ダルガに進言したんだと思うよ?」

 優しい笑顔でソフィアの目を見つめ、最後に「ねっ?」っとウインクしてトドメを差す。


「そっそうかな?そうなのかもね。。。」

 ソフィアは真っ赤な顔で俯いて、モジモジと答えていた。


 なんかな。。。ペットとも思ってなかったが、友達とも思ってなかったので、若干違和感が残ったものの、まぁ、ソフィアに迷惑を掛けられることもないだろうから、良しとしよう。


「よろしくね。ソフィア。」

 僕がとりあえず声を掛ける。


「よろしくー。」

「ちょ。。なんだよ。その棒読みな挨拶はさ~。その性格どうにかしろよー。もうジョージ連れてきてやらないからな。」

「ッチッ。」

「おい。舌打ちしただろ~~~~。」


「ははっ。アル。落ち着いて。彼女に悪気はないさ。魔界の住人だよ?優しすぎる性格では生きていけない。お淑やかに振る舞う姿も、強気に振る舞う姿も、全部纏めて彼女の魅力なんだよ?」

 ジョージに諭される。

 それを聞いてソフィアは満足そう。

 僕は。。。

「分かったよ。僕が折れるから。。。ごめん。ソフィア。」


 魔王になっても、誰からも扱いが雑な気がする。。。あんまり尊敬とかは感じられないな。

 まぁそうか。僕自身が何も変わってないからな。こんなチビスライムに傅けとか。。ないよな。

 ちび魔人魚セイレーンに見下される事くらい。当たり前と割り切ろう。

 僕が下僕側の立場だったとしたら、この状況は確かに納得出来ないからな。


 一人、どうでもいい小さな事の”心の葛藤”と戦っている間に、食事の準備が整いつつあった。


「もう間もなく準備できるようよ?席に着きましょうか?」

 シエイラが呼びに来てくれた。



「その前に。。。アル。このオリハルコンの剣を仕舞ってくれないかな?どうやったら元に戻せるのだろうか?」

「え?え~と。。。知らないな。。。出すのは見てたから真似したんだけど。」


 困ってしまった。。。。どうやるのだろう。。。


「どういう事?君の持ち物だろう?」

 ジョージも困惑している。


「う~ん。実際には僕のじゃなくて。魔王ダルガの持ち物だったんだ。僕のはこっちの紅い宝石が入った懐中時計で。」

 と懐中時計を取り出す。

「なんや。あの時拾った懐中時計やないか。」

 ホセが覗き込む。


「そうなんだ。あの拾った懐中時計が、オリハルコンの武具だったんだよ。魔王ダルガのは、碧い宝石の入った懐中時計で、剣。僕のは赤い宝石が入った懐中時計で、鎧だった。」

「呪いのアイテムやなくて良かったな。」

 ホセが僕の肩を叩く。


「それで、古代竜との闘いの時に、それが分かって、魔王ダルガはオリハルコンの剣と鎧を使ったんだけど。。。仕舞うことはなかったから。。。」


 死んでしまったと言えず。言葉を濁す。



「う~ん。仕舞わないで欲しいのじゃが。。。それでも仕舞うのであれば、『解除』で元に戻せるぞ。」



『えっ?』

 その場の全員が固まる。


 なぜって。。。。


「オリハルコンの剣が喋った~~~~~!!!!」

 僕は目を見開いて叫んでしまった。


 だって。その声は。。。


「ダルガ?ダルガなの?」

 シエイラが剣の前に屈み込む。


「シエイラか。心配かけてすまなかったの。」

「いえ。ご無事でなによりです。」


「無事とは。。。言い難いの。。。魂の保存がイマイチでの。器として無理に剣に寄せたものだから、まだ慣れぬ。」


「えーーー。こうなると『解除』って言いにくいじゃん!」

「うわ~~~。」


 迂闊なことを言った。。。ダルガの叫び声とともに懐中時計に戻ってしまったな。


「アル~。何をしておるんじゃ~。懐中時計に戻ると、視界が悪いのじゃ。出せ。」

「え?そうか。。。えーと。。。出でよ。。。なんでしたっけ?」

 急かされて出てこない。


「アルムじゃ。早くせい。」

「はい。。。出でよ。アルム。」


 懐中時計は剣へと姿を変える。


「いやぁ。どうなることかと思ったわい。」

「はぁ。良かった。。。つか。魔王さま。。。なんかおじいちゃんみたいな喋りっすね。。。」


「あら。アルちゃん。普段はこんな感じよ?みんなの前では”余は・・”とか言ってるけど。あれ魔王用なのよ。」

 シエイラが笑っている。


「シエイラ。カッコつけているわけではないのだぞ?ワシは”TPO”を弁えておるだけじゃ。」


「う~ん。とりあえず、僕が分かったのは、今も前も、シエイラさんには頭が上がらないってことですよね?」

「ふふっ。アルちゃん。面白いわ。でも正解ね。」

 シエイラがウインクしてくる。



「さ。食事にしましょう?話はそこでゆっくりと。」

 シエイラが促す。


 僕は魔人の執事に

「太刀掛台みたいなのってあります?あの剣をテーブルの上に置きたいので。。。」

「すぐにお持ちします。」

 執事は静かに下がる。


 僕たちが席に着くと間もなく執事が戻ってきた。

 はじまりの国の”太刀掛台”をイメージしていた僕は驚きを隠せない。。。


 刀を置く”太刀掛台”はシンプルな物が多い。

 それに比べて、運ばれてきたのは。。。

 ”THE魔王”って感じの派手でごつい物だった。

 重厚感・装飾・レリーフ。。。一つ一つが存在を主張してくる。

 これだけで美術品となりそうだ。

 もはや、剣が主役ではなく、この台が主役をはっているようだ。


「派手ですね。。。」

 だが、それしかないので、とりあえずオリハルコンの剣を置く。



 僕の席には今日もメイドさんがいる。

「よし、それじゃ。ごはんにしようよ。」

 みんなが頷く。


「アル。そなたがここの主人じゃ。そなたが杯を掲げよ。」

 ダルガに促される。


 無理だよ~。やったことないもん。

 とりあえず、メイドさんに代わりに僕のグラスを持ってもらった。


「え~と。じゃあ。う~ん。美味しいご飯を食べましょう。いただきます。」

 メイドさんが僕のグラスを掲げた。

 

 みんなも同じようにグラスを上げる。


「なんや。給食当番みたいやな。」

 ホセの一言に、みんなが笑い始めた。


「僕も同じ事を考えていたよ。」

 ジョージも吹き出していた。



 兎にも角にも楽しく食事の時間が始まったのであった。

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