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『大きな世界の樹の下で』  作者: 星乃湶
=新魔王誕生編=
58/322

第58話  ~魔王として~


「ジルゥー!!!力を解放しろーー!!!!」

 僕の叫びにジルが応える。


「お許し頂きありがとうございます!!!魔王様!!!!」


 ”魔王”その言葉にいつもなら怒っていただろう。

 だが、憤激していた僕には、心地よく聞こえた。


 ジルは両手を握り、天に向かって吠える。

「うおぉぉぉぉっぉっっーーー!!!!」


 ジルの身体が紫の強い光に包まれ、見る見る大きくなっていく。。。


 見る間にその姿は天を覆い尽くさんばかりの古代竜へと変貌を遂げた。


 紫の光に包まれたその姿は神々しくあった。

 しかし、次の瞬間。。。


 グハァァァッァーーーー!!!

 古代竜が天に向かって炎の息を吐く。空は炎の雲を纏った。

 目が光ったかと思うと、雷鳴が轟く。。。熱い炎の雲に覆われ、雷は幕電のように見える。

 唸りを上げると、地面が波打った。


 人々は立っていることさえままならなくなっていた。

 

「我こそは古代竜なり!!!」


 その言葉に、白の国の軍人達は恐慌状態に陥った。


 下から見上げると、赤黒い炎の空を背に紫の龍。。。禍々しさがハンパない。。。


「我は太古の昔より、正しき者には豊穣を。悪しき者には破壊を与えてきた。お前達はどちらだ?」

 ギロリと大臣を睨み付ける。


「うわぁぁぁぁ!!!」

 大臣は赤子のように泣き叫び、頭を抱え蹲る。


「我が友の魔王は要らぬ争いを望まぬゆえ、お前達の暴挙にも目を瞑ってきたが、友は我に力の解放を許した。すなわち、我の太古よりの役割をお認めになった。。。」

「さぁ。お前達の答えを聞かせるが良い。」


 パニックになっている軍人達に答える者などいるはずがない。


「古代竜さま。。。此度の件、全ては国王である私の責任。この老いぼれの命でどうかお許しをいただけないでしょうか?」

 後ろから、小姓に両脇を抱えられたおじいさんが歩いてくる。

 聞いていた話からすると60才前後のはずだ。やけに老けているな。。。


(アル?その人、毒に侵されているようだよ?今の君なら、その人に触れれば、僕みたいに気持ちが読み取れると思うから。いってみてごらん?君の気持ちに添って僕は動くから。)

 ジルから声が届く。


(うん。やってみる。)

 ポヨンポヨンと、国王様に近づいていく。


「国王陛下。ご無沙汰しております。どうぞこちらへ。」

 ジョージが国王の手を取る。リリィはポケットから椅子を出す。


「ジョージ君。迷惑をかけたようだね。申し訳ない。」

 国王がジョージへ頭を下げている。


 僕はどさくさに紛れ、肘掛けの下に潜り込む。下から、隠れるように国王の手に触れた。



 流れ込むのは懺悔の気持ち。

 王女を救いたい。しかし、それによって龍が犠牲になる。

 葛藤が垣間見えた。。


 龍の瞳の効果が得られないと、臣下達の暴走が始まった。

 止めようとするも、自分の元に残るのは僅かな古参のみ。

 実戦になれば、勝つ見込みもない。

 信じていた臣下に裏切られ、国王として民すら守ることができなかった。


 絶望に打ちひしがれる中でも気丈に振る舞う。

 しかし、追い打ちをかけるように、さらなる暴挙を重ねられる。

 食事に毒が混ぜ始められたのだ。

 

 王子として、王として。

 権力の中心を生きてきた人生には、毒は付きものだった。

 無味無臭でも毒の気配が分かるほど身近な存在であったのだ。


 王はその毒を甘んじて受け入れることとした。

 信頼のおける古参には他の一手を打つために動いてもらったが、動いた者はみな殺された。

 万事休す。。。


 不思議と怒りはなかった。ただ自分の力の無さに絶望・不安・悔しさ・後悔・懺悔・・・・



 僕の心に流れてきたのはいたたまれない程の国王の気持ちだった。

 それでも尚、国の為に命を差しだそうとしている。無用な犠牲は払わせない為に。。。


「王様?あなたは何をお望みですか?」

 僕は肘掛けの下からヒョッコリと顔を出し、聞いてみた。


 王は少しびっくりした様子だが、僕に警戒はしなかった。

「おう!スライムが話せるのか。。。私は混乱は望んではいない。この状況を作ってしまったのにと笑われるだろうがね。。。全ての民が平和であることが一番であろうな。。。それはもう叶わぬのであろう。この老いぼれの命だけでは、到底許されることではない。。。神の使いと謂われるドラゴンに手を出したのだ。。。それでも、古代竜さまの怒りを納めていただかなくてはな。。。」

 その目には涙が滲む。僕を撫でる手から伝わるのは、暖かな優しい気持ちだった。


 僕のことを”魔王”として認識していないその口から語られた言葉と、流れ込むその感情を僕は信じることにした。


「王様がいい人で良かった。」

 僕は目を瞑り意識を集中する。僕の身体が白く光ると、その手にキスをする。


「おおぉっ!!!毒が。。。消えていく。。。」

 窶れ老いた身体が、壮健さを取り戻していく。。。


(ジル。この国を許そう。)

(オーケー。アル。でもさ、魔王がスライムってバラす?)

(それは。。。隠そっか。舐められそうだし。)



 グハァァァァァ!!!!

 古代竜が天に向かって息を吐く。すると、炎の雲海が晴れていく。。。

 暖かな陽光が差し始めた。。


「皆の者。よく聞け!!魔王は、この国の王を許すこととした。我もそれに従う。故に豊穣も破壊も与えぬ。だが再び、道を外す事があれば、その時は。。この国に未来は無いであろう。。。心優しき”魔王”に感謝するのだな。」


 再び強く光ったと思ったら、ジルは子供の姿に戻っていた。

「ありがとう。ジル。」

「あー。力を使って、スッキリしたよ。僕の方こそありがとね。アル。」

 駆け寄って胸に飛びついた僕をジルが撫でる。


「さあ。次はあの子を助けに行こう。」

 ジルが子龍へと向かって歩き出す。


 兵士達は崇めるようにジルにひれ伏している。


 その向こうに大きな魔法陣が出現した。中からは魔王軍がぞろぞろと出てきた。

 先頭には、あの時、僕に物申した魔人がいる。


「罪人を捕らえるのに、人手が足りないようですので、馳せ参じました。」

 そう言って、僕とジルの前に跪く。


「あ。うん。ありがとう。。。」

 なぜか、複雑だ。僕の事は受け入れてくれたのだろうか。。。


「あら?ありがとう。もしかして、ウォールちゃんの家庭教師って。。。」

 シエイラがニコニコしている。

「はい。私です。隠すつもりはありませんでしたが、あえて口にすることもありませんでしたので。。。」


 意外な人が関係者だった。。。



 子龍の前に到着する。近くで見ると、状態は目を背けたくなるものだった。


 両目が抉られ、龍鱗は剥がされ、その下の肉も抉り取った形跡が見られる。。。

 ドラゴンであるが為に助かったが、ドラゴンであるがゆえ苦しむことになった。



「ごめん。よく頑張ったね。」

 僕は子龍を撫で、最後の《世界樹の葉》を使おうとした。


「アル。ちょっと待って。」

「え?」

 ジルに止められた。僕は意味が分からない。


「あの時の宝王玉オーブはまだ持ってる?」

「あの時って。君の封印に使ったヤツ?」

 僕は頬袋から、宝王玉オーブを取り出す。


「いいねー。。。この子は火炎龍ファイヤードラゴンだから、朱宝王玉レッドオーブと、そして、この子が身体が弱い理由、気付いていたかい?この子には秘められた力があったからなんだよ?だからこれ。藍宝王玉ブルーオーブ

 そうして、2色の宝王玉オーブを手に取ると、徐にその子龍の眼窩に填め込む。


「さ、アル。いいよ。」

「え?ああ。うん。」


 良く分からないが、始めよう。あの宝王玉オーブが本当の目になってくれたらいいよな。そう思って《世界樹の葉》を子龍に翳す。


 僕は今までに無い感覚を味わうこととなった。

 《世界樹の葉》を翳した瞬間、僕は強制的にオーラを纏った。。。白と朱の。

 そして、《世界樹の葉》にオーラは吸い込まれる。それと一緒に力を持って行かれたようだった。


「う。。。うぅ。。。」

 僕は思わず声を出してしまった。

「大丈夫?アル。。。でも見てごらん?」

 ジルが優しく僕を撫で、子龍を指さす。


 見れば、龍の瞳は宝王玉オーブ色した、綺麗な本物の瞳になっていた。

 クエェェーーーー!!と元気な声を出す。


「あれって。。。。」

「君の力に決まっているだろう?アル。」

 

(魔王の力かな。。。それなら良かった。。。)

 力を使いすぎたのか、睡魔が襲う。


「ジル。。。ごめん。。すこ。し。。ねむる。。か。ら。」

 ジルの手の中で僕は意識を手放した。


 

 

---城下町のゲイルとウォールは埃まみれになりながら、救助を続けていた。

 

「あっちの防空壕はもう大丈夫です。」

「そっちから、声がしたから、確認してくれ。」


 二人は流れる汗を拭う時間も惜しみ、瓦礫を掘る。

「お前、体力あるな。」

 ゲイルが言う。

「何せ、崖っぷちで育ちましたから。」

 ウォールが手を休めることなく答える。


「大丈夫ですか?」

「あぁ。ありがとう。」

「ごめんなさい。。。すいませんでした。遅くなって。。」

 ウォールは助け出す度に謝っていた。


 救助には、一人、また一人と城下町の人々が加わっていく。


 その時だった。王城の空がまぶしく光る。

「我こそは古代竜なり!!!」


 響き渡る声。神々しい姿。

 ウォールは、火炎龍ファイヤードラゴンとは比べものにならない竜を目の辺りにし、言葉を失った。


(僕はなんて人たちに。。。闘いをし、助けてもらうとは。。。)

 涙が滲む。


 魔王など、魔界に行っても一生会うことはないだろう。

 古代竜など、伝説の生き物。

 恐れ多いなどという陳腐な言葉では表せない。。。

 ただ。感謝の気持ちが溢れるばかりだった。

 幼子はダメかもしれないが。。。。


 そう思ったとき、

 クエェェーーーー!!!!

 遠くから、幼子の声が聞こえる。いつもよりも元気な声で。


「助かったんだ。。。。良かった。よかったぁーーー!!!!」


 溢れる涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ウォールは手を高く翳して叫んでいた。



 その光景をゲイルは微笑ましく見守っていた。


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